長期的視点が成功をもたらした資生堂の経営改革
資生堂の業績は絶好調。
2008年3月期の営業利益は
580億円
と過去最高益を更新する見込みです。
(日経情報ストラテジー、FEBRUARY 2008)
売り上げ・利益とも前年を上回っており、
通期で売り上げ100億円、利益で20億円の上方修正
を行っています。
業績に大きく寄与しているのは海外事業。
海外の現地売上高は2桁の伸びです。
しかし、国内事業も、
化粧品市場が横ばいを続ける中、
店頭売り上げが1%増と堅調な結果を得ています。
こうした好調な業績の要因としてはまず第一に、ご存知
「メガブランド戦略」
の成功がありますよね。
(関連記事)
*資生堂のメガブランド戦略・・・悪魔のスパイラルからの脱却
*資生堂のメガブランド戦略・・・ブランドではなく意味を多様化せよ
従来は100以上もあった雑多なブランドを統廃合し、
資生堂が展開する各カテゴリー(17カテゴリー)の
それぞれでトップになれるブランドを確立するために、
経営資源を集中投下した。
まさに「選択と集中」を行ったわけです。
その第一弾が、
メーキャップ化粧品の「マキアージュ」でした。
そして、苦戦していたヘアケア分野では、
「TSUBAKI」
を投入。
発売初年度は50億円を超える予算を配分し、
一気にトップシェアを獲得しました。
同社社長、前田新造氏によれば、
先行投資型の製品であり、3年目以降に利益が出ればOKとしていた
「TSUBAKI」ですが、計画をはるかに上回る1.8倍の売り上げを達成したおかげで、
当初から利益が出るようになったそうです。
一方、販売の現場でも大胆な改革を実行に移しました。
同社全社員2万6千人のうち1万人を占める美容部員
(同社ではビューティコンサルタント:BC、以下「BC」)の
「販売ノルマ」
を2006年春から撤廃。
顧客から直接評価してもらう仕組みに変えました。
(意外なことに、従来はBCの評価は、社内の支店長や部長が
行っており、直接の顧客からの評価を仕組みとして得ることは
やっていなかったのです)
(参考記事)
*脱ノルマ・・・資生堂の挑戦
この新しく導入した顧客満足度調査は、
接客が終わったら顧客にアンケートを渡し、
自宅で回答して投函していただく方式です。
当アンケートの当初の回収率は17%程度でしたが、
現在は22%、およそ5人に1人は回答してくれています。
これはかなり高い回収率と言えるでしょう。
しかも、アンケートの自由回答欄には、
回答者の約6割の顧客が意見等を書いてくれており、
大半がお褒めの言葉や応援の言葉だそうです。
顧客満足度調査の結果は、
毎月1回、BC一人ひとりにフィードバックしています。
自由回答欄の記述内容も原文のまま見せます。
したがって、BCは、個々のお客さんが自分の接客をどのように
評価してくれたかを知ることができます。
自分が接客した顧客全体の平均値ではなく、
顧客それぞれに対する接客を振り返り、接客を改善することが
可能になったというわけです。
前田社長によれば、販売ノルマがあった頃は、
たとえば今日の売り上げ目標が40万円だったとして、
それを達成してしまえば息が抜けてしまうことがあった。
ところが、顧客満足度調査の仕組みを導入してからは、
最後のお客さんまで気が抜けなくなった。
顧客一人ひとりに対して真剣勝負を挑まざるを得ず、
前田社長曰く、
“お客様が先生のような存在になり、BCさんも本当の意味で
成長していくという感じがしますね”
なのだそうです。
前田社長は、販売ノルマを撤廃した際、
改革を優先するから売り上げが下がってもいいと明言しました。
なぜなら、
“売り上げよりも何よりも、5年、10年を見た時に、
お客様からの信頼をどれだけ獲得することができるか、
全社員のエネルギーを集中させることが大事だったんですね”
と考えていたからです。
「メガブランド戦略」にしろ、
店頭における「販売ノルマ」の撤廃にしろ、
資生堂の改革の核には、
「長期的な視点」
があったことがおわかりですよね。
目先の売り上げ・利益に一喜一憂しない。
顧客の満足、そして信頼を勝ち得ることが持続的な成長のカギ
であることを示し、それに前田社長はコミットした。
短期的な視点しか持たず、
目先の収益確保に血眼になった企業は、
やはり短期で没落する。
しかし、長期的な視点に立った経営ができる企業は、
長きにわたって栄えるものだということが、
資生堂の改革の成功から実感できますね。
資生堂はもう135年も続いている長寿企業なのです。
投稿者 松尾 順 : 17:38 | コメント (3) | トラックバック
収益至上主義が招く虚偽に満ちた現場
折口雅博氏率いるグッドウィルグループでは、
介護ビジネスの「コムスン」に続いて、人材派遣の
「グッドウィル」
でも様々な法令違反が摘発されましたね。
折口氏は、起業家としては優れた才覚の持ち主です。
彼の事業センス、マーケティングセンスは
今でも高い評価に値すると思っています。
しかし、経営者としては、昔ながらの
「収益至上主義」
を採用していましたよね。
折口氏のこの経営スタイルが
今回の破綻を招いてしまったのは明らかです。
私が3年前に出席した講演で、折口氏は、
「過去を見れば、未来は予測できる」
と豪語していました。
これは、逆の見方をすれば、
原因となる現在の行動を着実にやれば、
未来(目標)は、自分の予測したとおりになる
という意味でした。
しかし、この考え方は現場にとっては、
単なる押し付けになっていたのだと思います。
なぜなら、折口氏は現場に対して、
必達の売上ノルマ(目標)を与えた。
そして、折口氏曰く、
“執念と鉄の意志を持ち、決してあきらめない”
ことを社員に訴えたのです。
つまり、「過去を見て予測する」というよりも、
未来という名の「目標」を何が何でも達成することを
社員に約束させた。
折口氏の(収益)予測が的中するのは当然ですね。
しかし、現場の社員は、
折口氏の予測を的中させるために、
それこそ、どんな手段でも取らざるを得なくなります。
ノルマ達成のためには、
多少の不正行為も仕方がない、やむを得ないとなる。
そして、不正行為がだんだんと拡大し、
またエスカレートしていく。
こうなることは自明の理のはずでした。
元日本マクドナルドの人材開発室長で、
現(有)ジェイシップ代表取締役社長の田岡純一氏も、
“数字を追いかけると、人は疲弊し必ずうそをつく”
とおっしゃっています。
つまり、コムスンにしろ、グッドウィルにしろ、
「売上」という数字を追いかけさせられたことによって、
誰もが予測できる結末として、
「虚偽に満ちた現場」
を生んでしまったというわけです。
残念なことながら、この必然的な未来を
折口氏は予測できなかったようですね。
顧客の「満足」や「信頼」の先にある結果に過ぎない
「収益」
を現場をコントロールする手段にしてしまっている経営者は、
折口氏に限らずあいかわらず多いのですが、
収益至上主義の経営は、遅かれ早かれ現場の破綻を招く。
これは簡単に予測できる未来ではないでしょうか。
投稿者 松尾 順 : 11:15 | コメント (2) | トラックバック
天国へのお引越し
ある老人の遺品を整理していた吉田太一氏に、
そのおじいさんのお孫さんが尋ねてきました。
「おじさんたち何してるの?」
まだ小学1-2年生くらいの小さい子供に
「遺品整理」
という言葉は難しいだろうと
「亡くなったおじいさんの荷物を整理してるんだよ」
と応えると、その子はこう言ったそうです。
「じゃあ、おじさんたちは、
天国へのお引越しをお手伝いしてるんだね!」
吉田太一氏は、全国初の「遺品整理」の専門会社、
「キーパーズ」
http://www.keepers.jp/
2002年に立ち上げた方です。
「遺品整理」は文字通り、
亡くなった方の自宅や部屋の物を整理し、清掃し、
形見の品を遺族に渡して、残ったものを処分する仕事です。
マスメディアでもたまに取り上げられていますので、
ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
亡くなった方の多くは「孤独死」です。
孤独死した人の親戚縁者は
おおむね故人とは疎遠だったために、
自分では遺品整理をやりたがりません。
そこで、キーパーズのような会社に
お金を払って依頼するというわけです。
独居老人などが「孤独死」した場合、
身内がどこにもいないこともあります。
このような場合には、
部屋を貸していた大家さんが仕方なく、
遺品整理を依頼することが多いようです。
また、「自殺」や「他殺」によって亡くなった方の
遺品整理の仕事もあります。
この場合もやはり、
遺族が自分で遺品整理するのは難しいため、
遺品整理会社に依頼が来るようです。
現場では、
もちろん遺体は既に運び出されていますが、
血が飛び散っていたりする凄惨な状況の中で
遺品整理や清掃の作業をすることになります。
(だから、心情的にも遺族がやるのは難しいわけです)
遺品整理の仕事は、
想像するだけでも大変な仕事だなと思いますが、
「自分たちがやらなかったら誰がやるんだ」
という強い使命感で、
吉田さんたちは仕事を引き受けています。
現在では、こうした遺品整理の会社は全国に
30社くらいあるそうです。
高齢化が進み、独居老人が増加していいる現代、
遺品整理業の方がますます忙しくなることは確実ですね。
もちろん、自殺や他殺による仕事が増えることは、
遺品整理業の方も望んでいないでしょう。
最近は、独居老人の方で、
「生前予約」
をされる方が増えているそうです。
今は元気だけれど、いつ突然死んでしまうかわからない。
その時、身内や周囲の人に迷惑をかけたくないと、
あらかじめ遺品整理の見積もりを取り、代金を払って
その時に備えておきたいということなのだそうです。
生前に「墓」を購入しておくだけでなく、
「遺品整理」
までも、死ぬ前に、
赤の他人に依頼してきたいと考える人が増えている。
これは、人間関係がますます薄くなっている現代を
反映していると言えそうですよね。
ところで、吉田太一氏の著作、
『遺品整理屋は見た!』(扶桑社)
には、孤独死したある女性の部屋には、
28匹の猫
が残されていたという話が出てきます。
可哀想なことですが、飼い主を突然失い、
引き取り手もいない猫たちは保健所が連れて行きました。
最近、自分が死んだ後のペットの面倒を
見てくれるサービスも開始されたようですね。
(キーパーズではありません)
独居老人には犬や猫を子供のように
かわいがっている方もいらっしゃるわけです。
自分亡き後のペットの行く末が心配の種と
なっていた方に応えるサービスもついに登場したのです。
高齢化社会では、これまで思いもしなかったニーズが
生まれているのだと痛感させられます。
なお、同書に書かれていますが、
独居老人の孤独死は、55-65歳が多いとのこと。
高齢だと周囲も気を遣いますが、
60歳前後ならまだまだ若いので周囲もあまり心配しない。
このため、亡くなったことに気づくのが遅れてしまうようです。
一人暮らしの55歳以上の親戚や知人がいたら、
ぜひこまめに連絡を取ってあげてください。
年の瀬にあまり楽しくない話を書きました。
正月にドクロを杖につけて「ご用心、ご用心」と歩き回った一休さん
ではありませんが、私たちは常に死と隣り合わせで生きていること、
そして、「生きていること」の幸せをかみしめてもらえればと思います。
投稿者 松尾 順 : 00:21 | コメント (0) | トラックバック
ヘイロー効果
銀座のアップルストアに「iPod」を買いに来た若い人が、
「Mac」を見つけて、
「へー、アップルってパソコンも作ってるんだ!?」
と驚くのを目にしたという話を
以前、アップルの社員さんから聞いたことがあります。
「iPod」を通じて初めて「Mac」の存在を知ったという人も
おそらく相当数いるんでしょうね。
実際、「iPod」がバカ売れしたおかげで、
アップルのパソコンも売れ行き絶好調のようです!
(日経ビジネス、2007年12月3日号)
国内パソコン市場に占めるMacのシェアは、
今年10月にはとうとう2桁台の11.1%まで上昇してます。
(これまでは5-6%程度でうろうろ)
このように、「iPod」が呼び水となってMacが売れる現象
のことを米国のアナリストは
「ヘイロー効果」
と呼んでいるそうです。
一瞬、「あれ、ヘイローって何のことだろう?」
と思ったら、日本では一般に、
「ハロー効果」(後光効果)
と言われてきた言葉ですね。
文字通り、iPodの後光が、
Macを輝せてくれているということです。
投稿者 松尾 順 : 12:07 | コメント (0) | トラックバック
会社は頭が腐る
元産業再生機構の代表取締役専務COO、冨山和彦氏の著作、
『会社は頭から腐る』
は、今年の経営本の中で3本の指に入る名著だと思います。
ただ、この書名には異議あり!です。
「頭から腐る」
というと現場の社員まで最後には腐ってしまうように
解釈できます。
しかし、現場の社員のほとんどは、
仕方なく腐っているふりをしているだけです。
そうしないと、腐る・腐らない以前に
排除(解雇)されてしまいますからね・・・
どうしようもないから、ただ言われたことをやって、
「ふてくされてるしかない」
という状態が正しいでしょう。
実際、トップが腐っていても
現場の社員が腐っていないと言えるのは、
腐ったトップをフレッシュなトップに変えたことで、
現場が生き生きと動き出し、落ち目な会社が
見事に再生できるケースが多いからです。
ですから、
「会社は頭が腐る」
という表現がより正確だと思います。
投稿者 松尾 順 : 15:29 | コメント (2) | トラックバック
ジャンケン必勝法
年末年始のパーティでは、
たまに参加者が各100円ずつ出して、
「じゃんけん大会」
を余興でやることありますよね。
最後まで勝ち残れば5-6千円位はもらえますから、
出資金が100円だったことを考えると大儲けです。
そこで、「ジャンケン必勝法」(笑)
桜美林大学、芳沢光雄教授が行った大規模実験では、
延べ725人の被験者による11,567回の「ジャンケンデータ」を収集。
このデータを分析した結果、次の2つの法則が発見されてます。
(THE NIKKEI MAGAZINE Sunday 16 December 20007 no.44)
----------------------------------
(法則1)ひたすらパーを出せ
実験によれば、
グーが出る比率は35.0%、一方、チョキは31.7%、パー33.3%
つまり、相手がグーを出すことが一番多い。
したがって、こちらはパーを出せば勝つ確率が上がる
というわけです。
(法則2)あいこになったらその手に負ける手を出せ
実験によれば、
あいこになって二回続けてじゃんけんをした場合のうち、
同じ手を出したのは22.8%。つまり、あいこになった時、
相手は別の手を出してくる可能性が高い。
例えば、お互いにパーを出してあいこだったとします。
次に相手が出してくるのはグーかチョキ。
だとすれば、こちらはグーを出しておけば負けはないですね。
------------------------------------
カナダに本部がある
「世界じゃんけん協会」
では、上記2つの法則を含む
「必勝ワザ7カ条」
が紹介されています。
でも、7つはとても覚えられず、実践で使えそうもない。
というわけで先の2つの法則だけ覚えて、
「じゃんけん大会」
に臨みたいと思います。
投稿者 松尾 順 : 11:59 | コメント (0) | トラックバック
ブログの「気分」を分析
先日、ブログ上の文字情報(テキストデータ)の分析
(テキストマイニング)が、書き手の「性別」や「年齢」の推定
を行えるところまで来ていることをご紹介しましたよね。
この話を知人にしたら、
“それは「ネカマ」(ネットオカマ)との闘いだね・・・”
と切り返されたんですが!
まあ、文章では人格が変わるというか、
男性的な言葉遣いをあえてする女性がいます。
また、男性の中にも、
文章から受ける印象が女性的だと感じられる方がいますよね。
ですから、性別を見分けるのはそう簡単ではないはず。
とはいえ、ブログウォッチャーが行っている性別判定の予測精度は
90%以上ということですから、性別を的確に区別できる手がかりを
うまく組み込んだ分析に成功しているところもあるわけです。
さて、ブログ分析を専門とする「きざしカンパニー」では、
さらに踏み込んだことをやってますね。
最近、ブログの書き手の
「気分」(感情)
を推定する分析を試験サービスとして提供開始してます。
(日経産業新聞、207/12/20)
新サービスの名称は、
「My boo(マイブー)」http://myboo.kizasi.jp/
です。
メインとなる機能は、
上記サイトに解析したいブログのURLを入力すると、
対象としたブログ全体から感じられる
「トーン」(ブログににじみ出る気分・感情)
と、そのブログで取り上げられることの多い、
「テーマ」(話題)
を判定の参考となった文中のキーワードと共に
表示するというものです。
例えば、トーンとしては、
「清く、かしこまっている感じ」
「おいしい!と感じている」
など。
テーマとしては、
「釣り」
「グルメ」
などと表示されます。
早速私自身のブログや、
他の方のブログで試してみました。
私のブログは、
「解析できませんでした。」
というエラーが表示されてしまいました。残念。
他の方のブログでも、
うまく解析できないブログが結構たくさんありました。
うまく解析できた某ブログの場合、
トーンとしては
「感謝の気持ち」
がブログからにじみ出ており、
テーマとしては、
「本」
について多く書かれているという結果が出ました。
ブログ本文とつき合わせてみると、
確かにそんな印象を受けます。
なお、この解析結果にはさらに、
対象としたブログと類似したテーマで書いている
「著名人ブログ」
のリストが同時に表示されます。
きざしカンパニーでは、マイブーの分析を通じて、
「自分はこんな気分でブログを書いていたのか」
「こんなテーマを多く書いていたんだな」
といったことがわかるとしています。
なるほど。
自分の文章を分析することで、
あまり意識していない自分自身の特徴を発見し、
理解することができますね。
ただ、ひとつ気になったのは、
感情の起伏が激しい人のブログは果たして分析できるのか?
という点です。
現在のマイブーの分析対象はあくまでブログ全体です。
日によってコロコロと気分が変わるブロガーの文章からは
一定の気分傾向は取り出しにくいはずですよね・・・
まあ、マイブーはブログを楽しくするための無料の娯楽サービス
ですから、あまり厳密なことを言うのはやめときましょう。
それにしても、マーケティングリサーチャーとして、
また、人間心理に深い関心を持つものとして、私は、
「人が語る、書く生の言葉」
の裏側にある人の意識を深く探る技術にはとても惹かれます。
ですから、無料で収集できる豊富なブログデータを活用した、
テキストマイニングの今後の進展には大いに期待しています。
投稿者 松尾 順 : 15:17 | コメント (2) | トラックバック
経営のABC
「ABC」と言えば、
ティーンエージャーのころスケベ顔して話した
「下半身系隠語」
に始まり、販売・在庫管理などに用いられる
「ABC分析」
や、心理カウンセリングの世界で知られている
「ABC理論」
など、さまざまありますね・・・
しかし、今回取り上げるのは
「経営のABC」
とも呼べるものです。
すなわち、
A:当たり前のことを
B:馬鹿にせず
C:ちゃんとやる
という原理原則を説いたもの。
これにはバリエーションがあって、
B:馬鹿正直に
とか
B:馬鹿みたいに
とか言うこともありますが、要するに、
「そんなこと言われなくてもわかってるよ」
と言いたくなるようなことを愚直にやる!
この重要性や意義を強調しているわけです。
逆に言えば、経営の現場では、
当たり前のことがちゃんとやれていない
という現実があるということでもありますね。
私は、この「経営のABC」という言葉を
次の本を読みながら改めて思い出していました。
『利益を3倍にするたった5つの方法』
(大久保恒夫著、ビジネス社)
著者の大久保氏は、イトーヨーカドー出身。
流通業界ではカリスマコンサルタントとして有名な方です。
以前は、「ユニクロ」「無印良品」の
コンサルタントとして両者の成長を支えました。
また、経営危機に陥ったドラッグストア、
「ドラッグイレブン」
の社長に就任して同社の再建に成功。
ドラッグイレブンでは、マイナス15億円から、
就任後2年で実質プラス14億円の利益へとV字回復させました。
現在は、高級スーパー、「成城石井」の社長として
同スーパーの経営改革に取り組んでいます。
成城石井では、経営改革初年度で
前年比2倍から4倍の利益回復を見込んでいるそうです。
このように、大久保氏は確実に成果を出してきた
コンサルタントであり、経営者です。
でも、こんなすごい人が書いたんだから、
「上記の本には、どんなすばらしいことが書いてあるんだろうか?」
と期待すると拍子抜けします。
まさに、基本中の基本、
当たり前のことしか述べられていないからです。
タイトルにもある「5つの方法」の項目名だけご紹介しましょう。
1.経営と指導が一体となってお客様の満足を実現する
2.仕事を通して現場の人を成長させる
3.重要なことに絞り込んですぐやる
4.売れる商品を価格を下げないで売り込む
5.今までのやり方をやめて、構造的に改革する
なるほどなるほど。
まったく異論を挟む余地のないポイントですよね。
しかし、どれもお題目として唱えるのは簡単ですが、
企業のクセというか、企業の文化と呼べるレベルの
継続的な行動習慣にまで定着させるのは至難の業であることを
大久保氏は実体験を通じて痛感しているのです。
大久保氏は次のように述べています。
“同業者であれば、ほとんどの会社は同じ方向を目指していて、
ほとんど同じ経営戦略を持っています。
いまは情報化社会ですから、会社によって戦略の差など
そんなに大きなものではありません。
どの会社も考えていることはほとんど一緒です。
その中で、どこで違いが生まれるのかというと、
経営者が考えた戦略を現場が実行できる仕組みになっているか
どうかです。この差が業績の差なって表れる
のです。”
「Knowing-Doing Gap」
という言葉がありますよね。
「知っていること(わかってること)」
と
「実際の行動(やってること)」
にはギャップがある。
「やればいい」と知っているけれども、
実行に移せないことがビジネスの現場には多々ある。
このギャップの有り無しが、
業績の差をもたらすと言えます。
ですから経営者は、現場の人々が
A:当たり前のことを
B:馬鹿にせずに
C:ちゃんとやる
ことのできるの仕組みづくりに注力しなければ
ならないというわけです。
企業経営者が、
『利益を3倍にするたった5つの方法』
を読み、単に内容を理解しただけでなく、
自社の経営に実際に反映することができたなら、
おそらくその会社は着実に伸びでしょう。
でもおそらく、実際にこの本に書いてあることを
実践できる経営者はほんの一握りでしょうね・・・
『利益を3倍にするたった5つの方法』
(大久保恒夫著、ビジネス社)
投稿者 松尾 順 : 10:28 | コメント (2) | トラックバック
非効率を追求する!
ダントツ製品、すなわち
「突き抜けたオリジナリティ」を持つ製品づくりは、
当然ながら一朝一夕でできるものではないですよね・・・
ザ・リッツ・カールトン東京のスイートルームに
設置されるほどの圧倒的に魅力的な音を放つエムズシステムの
「波動スピーカー」
にしろ、一口食べただけで違いがわかる「男前豆腐店」の
豆腐にしろ、酒販店の店主に「今までで一番感動した」と
言わせた濃醇旨口の日本酒「十四代」にしろ、
「突き抜けたオリジナリティ」
を実現するためにとことん手間をかけています。
つまり、ダントツ商品の根底には「効率」とは真逆の
「非効率」
の追求があります。
(標準化可能なプロセスでの効率は追求するにしても)
人が面倒臭いと、あまり考えようとしないこと、
やろうとしないことをあえてやる。
手間を抜けば楽なところを
あえてとことんやりぬく。
こんな非効率なこだわりから、
自社製品のみがオンリーワンで存在する
独自のカテゴリーが生み出されるのだと思います。
もうひとつ具体例を紹介しましょう。
日本人の国民食である「お米」。
ありふれた食材ながら、
「全国 米・食味分析鑑定コンクール」
で4年連続最高得点、つまり
「日本一おいしい」と認められた米があります。
山形県高畠町、上和田有機米生産者組合の
遠藤五一さんがつくる「完全無農薬米」です。
稲作りで一番やっかいなのは雑草。
農薬を使えば楽に雑草が除去できます。
でも、遠藤さんは、人の体が蝕まれ、また
自然の生態系を破壊する農薬を使わない米作りに
取り組んできました。
田植え後の約3ヶ月もの間、
遠藤さんは毎日腰をかがめながら手作業で
雑草を取り除く日々だそうです。
しかし、これだけの手間と愛情を注ぐ
「遠藤さんの完全無農薬米」
は、一般に販売されているお米の4-5倍で飛ぶように売れる。
非効率を追求しているからこそ、
これだけの高い価値が生まれるわけですよね。
さて、こうした非効率を追求することによって
成功している企業事例が豊富に掲載されている本が
あります。
『非効率な会社がうまくいく理由』
(中島セイジ著、フォレスト出版)
同書には、無添加せっけんの「しゃぼん玉せっけん」や、
マルセイバターサンドの「六花亭」、イエローハットなど、
比較的よく知られてる事例も出てきますが、
私が特に「面白い」、というか「すごい」と思ったのが、
東京・江東区にある「丸山工務店」です。
例えば、建て替えをする場合、
施主は数ヶ月は仮住まいをしなければなりませんよね。
丸山工務店に頼むと、自社所有のマンションや住宅を
無料で提供してくれるのです。
維持費などを考えると、
多少とも賃貸費をいただいてもよさそうなものですが、
“施主に余分な出費を抑えていただき、
その分をよりよい家づくりのために回してもらいたい”
という丸山社長の思いがあって無料にしているのだそうです。
また、住宅建築後のアフターケアは、
通常10年保証ですよね。
ところが、丸山工務店では、定期点検を始めた20年前から、
手がけた住宅すべてを欠かさず訪問し続けています。
毎年80棟ほど新築物件があるため、
年を重ねるほど大変になっていくわけですが、
現在は3日間かけて、約1,400件の家を訪問する
一大イベントとして実施しています。
丸山社長は当初、大変なことを始めてしまったと
後悔しました。
訪問するたびにあちこち不具合を訴えられる。
ところが、5年目を越えたあたりから、
ほとんどクレームが出なくなったそうです。
丸山社長はこんなことを語っています。
“大工をはじめ職人も一緒に行くので、不具合やクレームの
ポイントがだんだん分かってくるんですね。これは、目先の
利益計算をしていたら絶対に気づかないことですよ。
手間をかけて初めて気づけることなんですね。”
なお、この定期点検、
ある意味格好の営業機会ともなっています。
年二回の定期点検を通じて、
リフォーム依頼や新築物件の紹介の受注が
得られることが多くなり、現在は年間受注の約半分が
定期点検をきっかけに生まれているのだそうです。
価格競争で生き残れるのは、
どの業界もせいぜい1-3社くらいです。
価格で勝負しないためには、
他の会社がやろうとしない非効率を追求して
ダントツ製品を作りだすしかないのでは?
『非効率な会社がうまくいく理由』
(中島セイジ著、フォレスト出版)
投稿者 松尾 順 : 12:38 | コメント (8) | トラックバック
ダントツ製品
「波動スピーカー」
というものがあるんですね。
他のスピーカーにはない、
素晴らしいサウンドを生み出す円筒形のスピーカー。
先日、ショールームで波動スピーカーの音を
体験してきた友人が、その感動をありありと伝えてくれました。
このスピーカーは、
ザ・リッツ・カールトン東京のスイートルーム36室全て
に設置されています。
ザ・リッツ・カールトン支社長の高野登さんをはじめ、
ザ・リッツ・カールトン東京の客室支配人のジェニーさん、
総支配人のリコ・ドゥブランクさんといった人々誰もが、
試聴した瞬間にそのスピーカーの音に魅了されたのです。
その結果、まだ無名のメーカーのスピーカーが
最高級ホテルのスイートルームの音響に採用されることに
なったというわけです。
「波動スピーカー」は、
従来のスピーカーの「常識」を完全に覆すものだそうです。
技術的なことは私にはよくわかりませんが、
従来のように2本は不要。
1本のスピーカーだけで、
リスナーは部屋のどこに居てもOK。
体全体が音で包み込まれるような感覚がある。
音楽療法にも採用されているそうです。
私も早速、波動スピーカーの試聴に行ってみようと
思っています。
さて、このような突き抜けたダントツの製品は、
もはや比較対象を持ちません。
「波動スピーカー」という新たな独自の商品カテゴリーを
創出することに成功しているわけです。
「波動スピーカー」という新カテゴリーの中に
存在しているのはこのスピーカーだけ。
すなわち「オンリーワン」
オンリーワンを生み出すというのは、
従来のカテゴリーを超え、新たなカテゴリーを作ることに
よって可能になるということなんですよね。
同様の事例は山ほどありますが、例えば、
「男前豆腐店」http://otokomae.jp/
の豆腐たち。
男前豆腐店と聞くと、
「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」「厚揚番長」
などのユニークな商品名や、
にぎやかなWebサイトを連想しますよね。
でも、そもそも同豆腐店の人気を支えているのは、
原材料にもこだわった、他の豆腐にない独特の味だ
ということは愛好者の方なら言うまでもないことでしょう。
社長の伊藤信吾氏は、次のように語っています。
(日経ビジネスアソシエ、2008.01.01)
“うちの豆腐は、今までと違う製法で、いかに豆乳濃度を濃く、
大豆のうまみをきちっと抽出するかにポイントを絞っています。
いろいろと商品の種類はありますが、基本的にはどの商品も、
「濃い」「濃厚」という点で統一されています。”
星の数ほどある豆腐メーカーの中で、
後発の豆腐メーカーがオリジナリティを確立するには、
従来製品とは比較できない、突き抜けたダントツ製品を
開発するしかないと、伊藤社長は考えていたのです。
また、高木酒造の「十四代」。
今最も入手困難な日本酒のひとつである
「十四代」が目指した味は、従来の
「淡麗辛口」
ではなく、その対極にあるような
「濃醇旨口」
でした。
(日経ビジネス、2007年12月10日)
酒造りを手がけた高木顕統(あきつな)氏が、
「十四代」を持って東京の名だたる酒販店を直接訪ね、
味にうるさい店主に試飲してもらった時の感想がすごいです。
“今まで飲んだ酒で一番感動した。こういう酒を待っていたんだ”
“寒気がするほどうまい。おまえは天才だ”
高木氏は、
「自分が飲みたかった味にしただけ」
ということだそうですが、
ともあれ、結果的にはやはり比較対象を持たない、
「十四代」という新たな日本酒のカテゴリー
を生み出したと言えます。
熱烈な愛好者を獲得し、価格競争とも無縁でいるためには、
ダントツ=突き抜けたオリジナリティ
を持つ製品を開発するしかないということですよね。
*M's system(波動スピーカー開発企業)
http://www.mssystem.co.jp/top.html
投稿者 松尾 順 : 12:35 | コメント (2) | トラックバック
「プロファイルパスポート」とは?
経済産業省が進めている
「情報大航海プロジェクト」
のことはご存知ですか?
このプロジェクトの目的は、
大量の情報の中からユーザーが求める情報やサービスを
的確に検出する共通技術を開発し、新たな情報サービスを
創出すること
です。
情報大航海プロジェクトには、
V、S、P
の3つの柱があります。具体的には次の通りです。
------------------------
・V(バリュー):
新しい価値を生む次世代のインターネットサービス
・S(ソーシャル):
新たな社会インフラとしてのITサービス
・P(パーソナル)
プライバシーに配慮した未来型パーソナルサービス
-----------------------
さて、この3つの柱のうち、
「P」に該当する興味深い実証実験が始まっています。
それは、
「プロファイルパスポート」
と呼ばれる事業です。
リクルートと東京工業大学が共同で設立した
(株)ブログウォッチャー
http://www.blogwatcher.co.jp/
が実施主体となっています。
「プロファイルパスポート」とは、
端的にいえば、消費者情報を一元的に集約したデータベース。
これまでも、リサーチ、マーケティング業界では、
消費者の意識(心理)や行動をより深く理解するために役立つ、
「一元的消費者情報データベース」
の構築が何度か試みられてきましたが、
コスト面、技術面でのハードルが高く実現には
至っていませんでした。
つまり、ほとんど「夢物語」に止まっていたんですよね。
しかし、IT技術の普及のおかげでとうとう、
「一元的消費者情報データベース」
が、夢物語とは言えなくなる時代になってきました。
さて、プロファイルパスポート事業によって集約される情報は、
多岐にわたっています。
・利用者の基本属性
・利用者が書いた日記(生の声)
・視聴した動画やテレビ
・行った場所、お店
・購入した商品やサービス
・その他の関連情報(天候など)
つまり、消費者の生の声に加えて、
メディア接触・視聴履歴、行動履歴、購買履歴等が
ユーザー個別に収集、蓄積されるというわけです。
これらの情報の収集には、
インターネットや携帯電話が活用されます。
これによって、コスト面や技術面でのハードルが
一気に下がったというわけです。
利用者の日記(生の声)はネット上のブログなどから採取。
視聴した動画やテレビも、ネットを通じて捕捉が容易です。
(テレビは、ネットとの連携がまだ十分ではないですが)
ユーザーの行動情報については、
GPS付の携帯電話が普及していけば簡単に
把握できるようになりますね。
購買情報は、オンラインショッピングであればもちろん
簡単に収集できますし、リアル店での購買情報を収集して
データベースに結びつけることも技術的には可能です。
お天気の情報などのさまざまな関連情報も、
ITを活用すれば自動収集・蓄積ができますよね。
では、こうして一元化された情報は
どのように利用されるのでしょうか?
例えば、ユーザー1人ひとりのレストランの嗜好を分析した
「レストランパスポート」
を作成します。
そして、ユーザーがレストラン紹介サイトにアクセスした際、
この「レストランパスポート」を示すと、その情報を元に
ユーザーの嗜好に合致するレストランが推奨されます。
あるいは、ユーザーのキャリアの志向性を分析した
「キャリアパスポート」
を作成します。
ユーザーが転職情報サイトでこの「キャリアパスポート」を
示すと、その人にとって最適な転職先が紹介されます。
このように、「プロファイルパスポート」の活用によって、
企業は、ユーザーの求める情報、商品、サービスを高い精度で
予測し提案することができるため、ユーザーにとっても、
企業にとってもありがたいシステムと言えるわけです。
さて、この事業で技術的には最も難しいけれど、
最も面白い部分は、ブログなどから収集される「生の声」、
つまり「テキスト情報」の分析でしょう。
消費者のブログからは、
「どこそこに行った」「何を見た」
といった行動や、
「楽しかった」「むかついた」
といった評価、感想、
「こんな生活が理想です」「こんな場所に行きたい」
といった価値観、ニーズ
等が豊富に含まれています。
つまり、顧客の心理を深く洞察することが
可能になる情報の宝庫と言えるわけです。
ただ、こうした分析を行う前に、
まず、スパムブログやアフィリエイトブログ、
やらせブログの情報を排除しなければなりません・・・
ニフティ研究所でも、
「ブログ」を対象としたテキストマイニング、
すなわち「ブログマイニング」に取り組んでいますが、
所長の友澤大輔氏によれば、世の中のブログ全体の半数以上が、
スパムブログを始めとする、分析には使えないブログである
ということが同所の分析からわかっているとのことでした。
なお、ブログウォッチャーでは、
ブログの文章表現から書き手の性別を推測することも
始めています。
例えば、男性は「かわいい」という言葉をあまり使わないと
いった表現上の傾向を元に、書き手が男性なのか女性なのかを
判別するのです。
同社の羽野仁彦氏によれば、
性別の予測精度は90%以上とのことですから、
なかなかですね!
投稿者 松尾 順 : 15:03 | コメント (2) | トラックバック
サンタになるには・・・?
北極に近いグリーンランドにお住まいのサンタさん。
齢(よわい)450歳となり、
もはや一人で全世界の子供たちにプレゼントを
宅配するのは無理じゃわい・・・
というわけで、サンタをサポートする
「公認サンタクロース」
が世界中に120人ほどいるそうです。
(metropolitana December 2007)
公認サンタクロースになるための4つの条件があります。
1.結婚している
2.子供がいる
3.体重120kg以上
4.サンタクロースとしての過去活動経験(家庭内でもOK)
なるほど、サンタさんは基本、
「メタボ」じゃないとなれないわけですね。
書類審査を無事通過したらデンマークの試験会場へ。
試験では、主に身体能力が試されます。
50メートル全力疾走、煙突の外側のはしごを上り、
煙突の中を降り、プレゼントをもみの木に置き、
クッキー6枚と牛乳500ml以上を飲み干し、再び煙突をのぼり、
はしごを降り、50メートル全力疾走で出発地点に戻る。
これを2分以内にクリアしなければ落第です。
現在、アジア地域には公認サンタは一人しかいないそうです。
(残念ながら、今は日本を含むアジア地域からの新規募集は
行われていません・・・)
話飛びますが、あのサンタの紅白の衣装は、
コカコーラのプロモーションの一環で生み出されたらしいのですが
本当でしょうか?
米国の虚礼
日本の伝統文化とも言える
「お歳暮」「お中元」
は「虚礼」だという言い方をされることがありますよね。
しかし、米国で一般的に行われている
「クリスマスプレゼント」
もまた「虚礼」に近いものがあります。
というか、米国のクリスマスプレゼントの慣習は、
日本のお歳暮、お中元以上に、ミもフタもない「虚礼」
そのものじゃないかと感じますね。
米国では、家族、親戚、友人同士で気楽に
クリスマスプレゼントを贈りあいます。
子供なんぞは、1人で数10個もらうこともあります。
その中にはもちろん、欲しくなかったものも混じってます。
そこで、いらないものはお店に返品に行く。
実は、こうして簡単に返品できるのも、
プレゼントにレシートも同封されているからです。
つまり、不要だったら返品して現金化してもいいですよ、
という暗黙の了解がある。
レシートを同封すると、購入金額が相手にバレてしまいます。
ですから、日本ではありえないことですが、米国では逆に、
品のないことではなく、礼儀正しい行為だと考えられています。
それだったら、最初から金券送って、
もらった人が欲しいものを自由に買ってもらうようにすれば
いいのにと思います。
まあ、さすがにそこまでは合理的にはなれないらしい。
売上をゼロにするために余計な手間を
かけさせられる量販店(ウォルマートなど)こそ、
いい迷惑ですね。
クリスマスセールでごったがえす米国の量販店には、
返品にやってきた客が相当数含まれているのが実態なのです!
投稿者 松尾 順 : 08:16 | コメント (2) | トラックバック
情動優位の時代!?
先日、マスコミにもよく登場される精神科医、
香山リカさんの講演に参加する機会がありました。
香山さんのお話の中で、私が一番引っかかったのは、
“現代は、「知性や理性」といったものよりも「感情や感性」
といった「情動的」なものが人々の行動において目立つように
なってきた。”
ということでした。
キャッチフレーズ的に言えば、
「情動優位の時代」
ということになるのでしょうか。
香山さんは、以前から、そして今でも、
臨床医として精神科の患者さんの治療を行っています。
患者さんはうつ病などの病気に罹ってますから、
当然ながら精神的に不安定です。
従来、患者さんとしか接していなかった香山さんは、
「病気だからこうなんだ、元気がなかったりするんだ」
と思っていたそうですが、近年、大学教授として学生に
接するようになって、この認識が間違っていたことに気づきました。
なぜなら、恵まれた環境にいる、ごく普通の学生たちもまた、
ちょっとしたことですぐに落ち込んだりメソメソしている。
あるいは逆に、ちょっとしたことにイライラし、むかついている。
つまり、香山さんは、
病人ではない、健康な一般人が感情の大きな起伏を日常的に
表に出していることに驚いたのだそうです。
考えてみれば、
泣ける本、泣ける映画
などが最近はやたら人気です。
逆に、大笑いできる漫才の人気も根強いものがありますね。
突然、「切れる」人も増えてます。
泣く、笑う、怒るといった感情を以前よりも
遠慮なく表出できるようになったということでしょう。
今は「心」の時代とも言われてもいますね。
「人間脳」と称される「大脳新皮質」を駆使して物事を
科学的に見ようとするアプローチが主流だった20世紀は
「脳」の時代でした。
一方、「心」の時代はいわば先祖帰りです。
つまり、「動物脳」とも称される大脳辺縁系を駆使して、
感情や感性で物事を全体的に捉えようとするアプローチが
主流になりつつあります。
これは、良い・悪いの議論ではありません。
そのような傾向が顕著になっているという現状認識を
お伝えしているだけです。
ただ、情動優位の時代になったのは、逆に言えば、
理性・悟性による感情コントロール力が低下したからと
言えるのかもしれません。
つまり、現代人、特に若い世代は、
自分の感情をうまく扱うことができなくなりつつある
のではないかということです。
このことが、昔は中年期以降の病気だった
「うつ病」が若い人に増えている背景にあるのではないかと
私は感じています。
マーケティングの世界でも、
「感情や感性」
をどう刺激するかということが、
近年ますます大きな関心事となってきてますよね。
(関連記事)
*わがままな3人の王様たち
投稿者 松尾 順 : 11:16 | コメント (2) | トラックバック
会社は頭から腐る・・・「性弱説」の視点
広報専門誌「PRIR」(プリール)が実施した
「企業の不祥事と対応に関する調査」(07年11月実施)
によれば、
「あなたが企業の不祥事・その対応を見て、
信頼できないと感じるのはどのようなときですか?」
という設問(複数回答)に対する回答は、
・不祥事の実態を把握した後、隠そうとしたとき(24%)
・一度発表したことが、後から嘘だったと分かったとき(23%)
・嘘の情報を発表したとき(21%)
が上位に来ています。
・人命や健康に関わる不祥事を起こしたとき(17%)
は4番目です。
PRIRでは、この調査結果に基づく記事に、
消費者は、「事件」ではなく、企業の「対応」を見ている
という見出しをつけています。
つまり、消費者は、
「事件」
そのもの以上に、不祥事を起こした企業が
「どのように対応するか」
を重視していることが、この調査から検証できたというわけです。
企業の対応によって、
その会社の「誠実さ」を測るのが消費者。
なぜなら、「誠実さ」が、
「相手を信頼するかどうか」
の判断基準だからです。
では、「誠実でない」というのはどういうことでしょう?
子供でもわかる簡単なことですよね。
・嘘をつくこと
・隠すこと
・だますこと
・裏切ること
などです。
事件を起こしたことだけでも、
「企業に対する信頼」
はある程度失われますが、さらに不祥事発覚後の
隠蔽工作、現場への責任の転嫁、見苦しい言い逃れ
などによって、企業の信頼性はさらに大きなダメージを受けます。
「実害はなかった」「健康上の問題は発生しなかった」
といったことが争点ではないことは明白なはずなのに。
なぜ、不祥事企業の多くが、
適切な対応ができずに自ら泥沼にはまりこんでいくのか?
不思議ですよね。
しかし、結局のところ、これは「企業」という
「法人格」
の問題ではないのです。
会社トップ個人の「人格」の問題なのです。
産業再生機構の元専務取締役COO、冨山和彦氏が、
最新著作の『会社は頭から腐る』で次のようなことを
書いています。
“・・・さらには産業再生機構での再生の修羅場で見た人間模様。
これらを通じて見えてくるのは、ほとんどの人間は土壇場では、
各人の動機づけの構造と性格に正直にしか行動できないという
現実であった。”
表現がちょっと難しいですが、ひらたく言えば、
土壇場では、その人が本来持っている
本性(特性・特徴)
がそのまま露呈してしまうということです。
“そこには善も悪もなく、言い換えればインセンティブと
性格の奴隷となる「弱さ」にこそ人間性の本質がある”
と冨山氏は述べていますが、会社のリーダーでさえ、
追い詰められると、会社の代表としてではなく、
一人の人間としての判断、行動しか取れなくなるということ
でしょう。
冨山氏は続けて、
“性悪説でもなく、性善説でもない、
「性弱説」
に立って 人間を見つめたときにはじめて
多くの現象が理解可能となってくる”
と書いています。
とすれば、企業の危機管理は、
「性弱説」
に基づいて考えるべきなんでしょうね。
投稿者 松尾 順 : 11:41 | コメント (0) | トラックバック
ビッグ・イシューを買うと・・・?
『ビッグ・イシュー』はホームレスの方が販売する雑誌。
全国主要都市の駅前や交差点などで、
右手に雑誌を高く掲げている人を見かけることがあります。
あの雑誌が『ビッグ・イシュー』です。
以前購入したことがあるよ、毎号買ってるよという方も
いらっしゃると思います。
『ビッグイシュー』は1991年にロンドンで誕生し、
現在は世界28カ国、80都市で発行されています。
そして、『ビッグイシュー日本版』は2003年に創刊され、
現在は月2回発行です。
同誌は1冊300円。うち160円が
ホームレスの方の収入になります。
ビッグイシュー日本版の発行元によれば、
販売者の平均収入は、
3,200~4,000円/日(20-25冊販売)
となるようです。
この結果、路上生活を脱し、1日1000円程度で泊まれる
簡易宿泊所に移れるホームレスの方が増えてきたとのこと。
つまり、ビッグイシューを買うと、
寒空に凍えずにすむホームレスの方が増える。
今年大きな話題を集めたNHK特集「ワーキングプア」では、
年金をもらえない高齢者の方が、空き缶を集めてぎりぎりの
生活をする様子が伝えられていましたよね。
私の事務所がある本郷3丁目近辺の路上でも、
アルミ缶をリヤカーに積んだ方をよく見かけます。
あの仕事、朝から晩まで集めて回っても、
せいぜい1000円/日程度にしかならないため、
食事代をまかなうのがやっとなのだそうです。
したがって、路上での寝泊りを脱出することは
できません。
しかし、ビッグイシューを売れば、
暖かい屋根の下に眠れるだけの現金収入が得られる。
それ以上に、誰かに施しを受けるだけの情けない存在から、
社会の一員としての役割を果たしているという自覚、
働いて収入を得ているという「誇り」と「自信」が生まれる。
ビッグイシューの根底にあるのは
「セルフヘルプ」(自助努力)
です。
お腹を空かせた人に「魚」をあげるのではなく、
「魚の釣り方」を教える
という言葉の通りを実現した、
優れたソーシャルビジネスだと言えます。
さて、ビッグイシュー日本版の発行部数は、
wikipediaによれば現在約3万5千部のようですが、
もっと購入する人が増えてほしいなと思います。
実は、私は募金が苦手です。
もちろん、募金を否定するつもりはありません。
ちゃんと運営されているところがあるのはわかっています。
でも、本当に助けを必要としている人に、
自分のお金が使われるのかという不安が消えません。
しかし、『ビッグイシュー』を買うのは、
そんな不安がありません。目の前のホームレスの方の
収入になることがわかる。しかも、それは、単なる
「施し」でもありませんからね。
ちなみに、
『ビッグイシュー日本版』最新号(84号、2007.12.1)
の表紙を飾っているのは、
「WAR IS OVER」
のパネルを掲げたジョン・レノン、オノ・ヨーコ。
スペシャルインタビューはもちろんオノ・ヨーコです。
巻頭のインタビューには、
あの男前経営者、ピーチジョン代表の野口美佳さんが
登場されてます。
薄い雑誌ですが、
なかなか読み応えのある編集内容です。
(以前と比較するとずいぶん充実してきました)
『ビッグイシュー日本版』ホームページ
http://www.bigissue.jp/
投稿者 松尾 順 : 10:54 | コメント (2) | トラックバック
生の声マーケティング:ヒット商品のなぜ解き!・・・キリン・ザ・ゴールド
「キリンラガー」「一番搾り」
に続く3番目の定番商品としてキリンが17年ぶりに投入した
「キリン・ザ・ゴールド」(以下、「ゴールド」)。
「ゴールド」は、今年(07年)3月の発売当初こそ順調でしたが、
その後の売上の伸びは鈍く、8月に年間販売目標を800万ケース
から600万ケースへと下方修正。
現在もそこそこコンスタントに売れてはいるようですが、
関係者が期待したほどの売れ行きとはなっていません。
しかし、ゴールドの特性を考えると、
例えば、アサヒのスーパードライを打倒できるような
一般大衆向けの商品ではありません。
つまり、期待が過剰だったというのが現実でしょう。
ゴールドの特徴を簡単に挙げると次の3点です。
・苦味の少ないまろやかな味わい
・アルコール度数低め(4.5%)
・高級感と洗練さを感じさせる落ち着いたデザイン
こうした特徴に魅力を感じるのは、
ビールより焼酎系、カクテル系に流れがちな若年層
(特に女性)ですよね。
つまり、ビールをガブガブ飲む私のようなヘビーユーザー
ではなく、ライトユーザーが中心顧客層になる。
当然ながら、販売数量的には、
それほど大きく伸びるはずもない。
ですから、ゴールドの場合、
販売数量の極大化を狙うのではなく、従来のビールでは
苦味が強すぎたり、アルコール度数が高くて1缶(350ml)は
飲みきれないといった理由でビールを敬遠していた層を
がっちり掴むことのできる定番ビールとして育てられるべき
じゃないでしょうか。
さて、以上のようなことを考えるために役立つ、
ゴールドに対する消費者の生の声を教えてくれたのが、
先日発売されたばかりのこの本です。
『なぜ、キリン・ザ・ゴールドは求められるのか』
(喜山荘一編著、ドゥ・ハウス
同書では、ゴールドを飲用している消費者300人を対象とした
自由記述主体のアンケート調査によって、ゴールドに対する
「生の声」
が豊富に掲載されています。
こうした生の声を元に、
ヒット商品の「なぜ」
(なぜ売れているのか、求められるのか)
を読み解くのが、編著者の喜山氏の言う
「なぜ解き」。
興味のある方は、
ぜひこの本を読んでみてもらいたいのですが、
アンケートに回答した消費者は、
ゴールドの特徴やベネフィットをきっちり
理解・把握できているんですよね。
本来のターゲットに該当するユーザーには、
「ゴールド」がなぜ高く評価されるのか?
がよくわかります。
私も、ゴールドを久しぶりに飲んでみて、
確かにバランスの取れた本格派ビールだということ
を再認識しました。ただし、やはり物足りないので
常飲はしませんが。
やはり現状では、
ゴールドのターゲットイメージが拡散気味で、
「誰のためのビールか?」
が不明確になっているのが問題だと思いました。
この点を改善すれば、商品力は高いだけに、
定番ビールの一角を占めるブランドとして安定軌道に
乗れるんじゃないでしょうか?
(関連記事)
投稿者 松尾 順 : 12:48 | コメント (2) | トラックバック
ケータイで服を売る
「試着ができないのに、ネットで服が売れるわけがない」
というのが、EC(電子商取引)が始まったばかりのころの
「常識=思い込み」でしたね。
でもよく考えてみれば、ネット以前から、
セシール、ムトウ、千趣会、ニッセンといったカタログ通販でも、
同様に試着ができないアパレルが山ほど売れていた。
カタログ通販で服を購入する場合、
試着→買う
という流れではなく、
買う→試着→気に入ったらキープ、気に入らなかったら返品
のが実質的な消費者の意識であり購買行動だと言えます。
我が家でも、気楽に通販でモノを買い、
気に入らなければ気楽に返品するという女性(妻)の行動を
目の当たりにしていました。
(ご存知かと思いますが、返品は基本着払いでOK)
それでも、カタログやPCならまだしも、
画面の小さいケータイで服が売れるというのは、
いまだに素直に信じるのが難しいですね。
さて、ケータイで服が売れることを実証した、
携帯向け女性専用サイト
「ガールズウォーカー」
を運営するゼイヴェルの今期(08年3月期)は、
携帯通販だけで100億円を突破する見込みだそうです。
(日経MJ、2007/12/10)
同社社長の大浜史太郎氏によれば、
ゼイヴェルの成功の鍵は、
「クロスメディア戦略」
でした。
ガールズウォーカーの立ち上げは2000年4月。
当事業では当初、主に「広告収入」を見込んでいました。
携帯通販は、大手衣料メーカーに相手されなかったため、
中小の在庫処分を扱うしかなかったとのこと。
しかし、神戸コレクション(リアルなファッションショー)
を協賛。また、「CanCam」などの雑誌と連動させた商品販売方法が
奏功して実績を上げたおかげで商品の取り扱いが広がっていった
のです。
特に、2005年から開催しているリアルなファッションショー、
東京ガールズコレクション(TGC)
のインパクトが大きく、携帯通販に服は卸せないと
言ってたメーカーの態度が変わったそうです。
「TGC」は、複数の女性誌のモデルが横並びで登場し、
リアルクローズ(普段着として使えデザインが斬新な
高級感のある服)を世界に発信する場。
そして来場者は、
山田優や押切もえなどの人気モデルが着ている服を見て
欲しいと思ったら、即座に手元のケータイで発注ができます。
このTGCの第2回には、東京コレクションに来たことのない
グッチの総裁が来場したほど。
今年(2007年)3月に開催された第3回TCGには、
延べ2万2千人が来場。うち3千5百人が購入し、
購入単価は平均1万1千円だったそうです。
今後も同社の基軸は「クロスメディア戦略」。
全国の百貨店や雑誌といかに連動するかが重要だと
大浜氏は述べています。
ゼイヴェル自体も初の携帯発女性ブランドを立ち上げ、
全国に22店舗を展開。
これは近年、女性層の集客力が衰えつつある百貨店に
依存しすぎないための戦略なのかもしれません。
ガールズウォーカーは現在、
F1層(20-34歳の女性)を中心に700万人の会員を
抱えています。
ゼイヴェルでは、この巨大な顧客資産をベースに、
情報やトレンドを売るマーケティング会社を目指しています。
不安定なECが売り上げの大半を占める現状から、
若い女性層への有力媒体として収益率の高い広告販売を強化、
ブランドのコンサルティングを主要な事業として育てていく
方針だそうです。ブランド再生事業も開始してます。
投稿者 松尾 順 : 13:35 | コメント (4) | トラックバック
広辞苑が大ベストセラーになってる場所
広辞苑が10年ぶりの大改訂です。
第6版が来年早々に発刊されますね。
実は、これまでは広辞苑を買ったことはありませんが、
やっぱり1冊くらいは家に備えとこうかなあとか思ってます。
たぶんほとんど使わないでしょうけど!
でも、あの立派な「広辞苑」を持っているだけで
なんとなく自分が賢くなったような気がするでしょうね・・・
ところで、広辞苑が
隠れた大ベストセラー
となっている場所がどこだかご存知ですか?
そこでは、単に用語を調べるためではなく、
カバーツーカバー、つまり一言一句なめるように
精読されるのです。
広辞苑としては「辞書冥利」につきるでしょう。
答えは「拘置所」です。
主に未決囚が収容される場所ですね。
拘置所に入れられている人は判決を待つだけの身です。
刑務所のように労役もなくて、時間を持て余す。
読書がほぼ唯一の楽しみですが、
房の中には1度に10冊しか持ち込めないので、
読むのに時間のかかる広辞苑がありがたいというわけ。
東京拘置所に2年弱拘留された元外務省の佐藤優氏も、
広辞苑を2回通読したそうです。
投稿者 松尾 順 : 20:18 | コメント (0) | トラックバック
はい、ソニーぃ!
写真を撮るとき、
「はい、チーズ!」
というのが決まり文句ですよね。
でも、実際「チーズ!」と発声してしまうと、
口が閉じてしまって笑顔になりません。
だから、
「はい、ウイスキー!」
と言えばいいんだよ、と以前聞いたことがあります。
確かにウイスキーと言えば、最後に口角が上がりますね。
しかし、カメラを持ちながら
「はい、ウイスキー!」
と言うのはなんとなく違和感があります。
実際にはなかなか使えないフレーズでした。
そこで、最近は、
「はい、ソニーぃ!」
と言うようにしてます。
例のソニーのデジカメの宣伝をするつもりはないんですけど。
なお、「はい、ソニーぃ!」と言った後に、
「でも、私のこのデジカメはカシオなんですけどね・・・」
と付け加えると、相手の笑顔が倍増して
もっと良い写真が撮れることがわかりました。(笑)
投稿者 松尾 順 : 11:06 | コメント (2) | トラックバック
もてたい、恋したい
「オヤジだってもてたい!」
という男性の本音をアカラサマに刺激して成功したのは、
「LEON」
でした。
実際「LEON」では、
「もてる」「口説く」
ために有効な商品を見立てる、つまり
「もてたい軸」
という切り口に沿って掲載する商品や記事を厳選することで
中高年のスケベオヤジの心を掴んだわけです。
さて、もてたいのは若い人も一緒です。
というか、もっとギラギラしてますが・・・(笑)
今年(07年)3月に発売されたユニリーバの男性用オーデコロン、
「AXE(アックス)フレグランスボディスプレー」
もまた、
「吹きかけるだけで女性にもてる」
という単純明快なメッセージを前面に打ち出して、
男性の本能への直球勝負を挑みました。(日経MJ、2007/12/07)
*THE AXE EFFECT
http://www.axeeffect.jp/index.html
キャッチコピーは
「女を虜(とりこ)にする香り」
ですし・・・
展開された一連のTVコマーシャルも、
なんとも直截的というか、
「俺もこれ一本欲しい!」
と男性の欲情を掻き立てるものでした。
この結果、「AXE」は、あっという間に
トップブランドに登りつめていますね。
男性用オーデコロンの売れ筋ベスト10を見ると、
上位3位までをAXEが独占してます。
(日経POSデータ、2007年8月1日~10月31日)
現代の日本は、従来秘めてきた欲望を
表沙汰にすることに抵抗がなくなってきていると
言われてますが、これに呼応してか、
マーケティングコミュニケーションも過激さを
増しつつあるようです。
ちなみに、欧米のTVコマーシャルをご覧になったことが
ある方はご存知だと思いますが、あちらでは昔から、
性本能ダイレクト刺激系のクリエイティブが多いですよね。
ところで、女性だってやっぱりもてたい。
ただし女性の場合、「もてたい」という表現ではなく、
「恋したい」
というのがしっくりくるようですが。
実は、こうしたコンセプトに沿って開発されたのが、
今年4月発売の花王のヘアケアブランド、
「セグレタ」
です。
30代後半から40代がメインターゲットの同商品は、
半年で計画の2倍に当たる800万本超えるヒットを
記録してます。(日経MJ、2007/12/07)
*花王セグレタ
http://www.kao.co.jp/segreta/
「セグレタ」のコンセプトワークやリサーチを
担当した同社の海老澤香織さんによれば、
150近くあったコンセプト案からの絞込む際、
当初アンケートで高い支持を得た
「これからも人生を楽しみ、前向きに生きたい」
という回答に疑問を抱き再調査を行ったそうです。
すると、最初の調査ではそれほど評価されなかった、
「恋こそ究極のアンチエイジング」
を内心では支持している人が多いことに気づいたそうです。
こうして、消費者の表面的な態度の奥に隠された
「インサイト」
をうまく発見できたことが
セグレタがヒットした背景にあるようです。
やはり、男性も女性も老いも若きも、
「愛こそがすべて」 -All you need is love-
ですかね。
(LEON関連記事)
投稿者 松尾 順 : 14:33 | コメント (0) | トラックバック
「対話」のマーケティングから「会話」のマーケティングへ
えーと、私は、マーケティングのお仕事以外に、
キャリア系(キャリアデザイン講師など)の仕事も
やっています。
ですので、キャリア系情報の収集のために、
リクナビのメルマガ『リクナビCAFE』なども
読ませてもらってます。
(リクナビさんの見込客でなくて申し訳ないんですけど・・・)
1年ほど前ですが、このメルマガの記事の内容で
ちょっと気になった点がありました。
そこで、感想というか意見を送ったんですね。
ところが、リクナビさんから帰ってきた返事は、
「このたびは貴重なご意見を賜り・・・云々」
という「定型文」だったのでがっかりしました。
このメルマガは、全体的に気さくで親しげなトーンで
書かれていて、読み手との距離感を近づけることに成功している
と思います。
しかし、メルマガ配信のような「1対多」ではなく、
ユーザーからの声に対する回答のように「1対1」の関係に
なった瞬間、生身の人間でない「無機質な法人」として
対応するというチグハグさを露呈してしまう!
リクルートさんでさえこの程度か・・・と
当時は思いましたし、以来、感想や意見を送る気が失せました。
上記の例でもおわかりのように、
消費者自身が自ら積極的に情報発信するようになった今でも、
個々のユーザーときちんと向き合う意思のある、
また向き合うことのできる体制を整えている企業(組織)は
まだまだ少ないのが現実でしょう。
さて、このところ、
マーケティング業界のバズワード(流行言葉)として、
「カンバセーショナル・マーケティング」
も注目を集めつつありますよね。
これは、文字通り訳すと
「会話マーケティング」
となりますが・・・
現時点ではまだ、この「会話マーケティング」を
どのように企画・実行すべきかという「定石」が
固まっていません。試行錯誤の段階だと言えます。
ただ、ふと、以前私の記事でご紹介した、
劇作家・演出家、平田オリザさんの
「会話」と「対話」の区別
の話を思い出しました。
平田さんによれば、
夫婦のような親しい関係で行われるコミュニケーションを
「会話」(カンバセーション)
と呼び、あまり親しくない関係でのそれを
「対話」(ダイアログ)
と区別しています。
「会話」は、基本的に同じ土壌に立つ者同士が、
相手にしてほしいこと、伝えたいことをストレートに
言うことが目的です。
一方、「対話」は、価値や情報の交換が主な目的です。
つまり、異なる人格・価値観を持つ同士が、
お互いの考え方をすり合わせることです。
この見方に立つと、
企業と対象顧客との「関係性の深さ」の違いによって、
「会話」と「対話」
を使いわける必要性がありそうです。
すなわち、企業と顧客との良好な関係性が
十分に確立していない段階では、
「対話」のマーケティング
を行う。
「対話」では「冗長さ」が大切です。
単刀直入に用件に入るのではなく、もろもろと雑談を
入れながら、時間をかけてお互いを理解しあう。
そして、十分に良好な関係性が確立した段階で、
「会話」のマーケティング
へと移行します。
この段階で初めて、
企業と対象顧客はお互い腹を割った話ができますし、
またそうすべきです。
「本音」の情報交換こそが、
強固な「信頼関係」づくりへとつながっていくからです。
投稿者 松尾 順 : 13:20 | コメント (4) | トラックバック
銀座テーラーの戦略転換・・・事業立て直し成功の秘密
東京・銀座の高級注文服店の熟練職人が作る
「オーダーメイドジーンズ」
はご存知ですか?
お値段のほうは、最低でも1本約4万円しますが・・・
ああ、私も自分だけのジーンズ1本だけでいいから欲しい!
とは思うものの、さすがに気軽に手が出る値段ではないですね。
さて、このジーンズを製造・販売しているのは
昭和22年創業の老舗テーラー、
「銀座テーラー」
http://www.gintei.com/index2.html
です。
「銀座テーラー」は長年にわたって、
名だたる政財界の大物を含む富裕層を対象に
商売をしてきました。
販売していたのは、機械を使わず職人の手によって1着1着、
丁寧に作り上げる「オールハンドメイド」のスーツのみ。
1着のお値段は、最低でも30万円から!
同テーラーが擁する職人の技術には定評がありました。
昭和30年代には、読売ジャイアンツの選手のユニフォームを
オーダーメイドで作っていたそうです。
しかし、バブル崩壊以降は業績が低迷。
売り上げは横這いが続いていました。
既製服の浸透と、欧米の高級ブランドが日本市場に
次々と進出してきたためです。
そこで、銀座テーラーでは、
旧態依然とした従来のやり方に見切りをつけ、
過去数年前で大きな戦略転換を成し遂げました。
その結果、見事事業立て直しに成功。
2006年度の売り上げは前年度比約130%増、
2007年度は同140%増と、再び成長軌道に乗っています。
この企業改革を主導した専務取締役、皆川和久氏によれば、
同テーラーでは、「オンリーワン」の存在になるために
以下の3つの基本戦略(方向性)を立てました。
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1.老舗テーラーとして守るべきブランドの「核心(価値観)」
これは、「30万円上」という顧客から見える(金銭的な)「価値」
の裏側にある「技術という価値」をきちんと伝えることでした。
職人の仕事ぶりを一般公開し、匠の技を目の当たりにしてもらう
「見学会」を開催したり、職人のハンドメイドによる全製造工程を
HP上で動画で閲覧できるようにしたのです。
2.ブランドの革新
本来舶来ものである洋服に日本の伝統文化を融合する新たな
ブランド「サムライ」(samurai)を開発。
生地には西陣織を採用、
ボタンには、福井県鯖江市の漆塗りが施されています。
このブランドは、いわば「和的スーツ」です。
こうした取り組みは、
従来のテーラー業界では「タブー」とされてきたことでした。
しかし、銀座テーラーではあえてタブーを破ることで、
同店のビジネスを大きく変えていこうとしたわけです。
「サムライ」は発売当初、顧客の反応もあまり良くなかった
ようですが、3年目くらいから人気を集めるようになり、
現在は売り上げの3割を占めているそうです。
また、同じ生地を使いながらも、
ハンドメイドだけでなく、一部機械縫製も導入。
2プライス制を導入することで値段を引き下げ、
顧客層の拡大を図りました。
3.ブランドの拡張
職人の技を生かしたオーダーメードジーンズがこの戦略が
具現化されたもののひとつです。このジーンズのおかげで、
新規顧客が3割ほど増えたそうです。
また、メンズ美容室を事業化することにより、
男性のおしゃれを総合的にサポートすることを始めています。
さらに、テーラー業界の活性化や職人の技術伝承を目的として
次世代の裁断士を養成する学校「日本テーラー技術学院」を
設立しています。
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さて、以上のような事業戦略の転換を支えたのが、
きめ細かな対顧客コミュニケーションと積極的な広報戦略です。
顧客コミュニケーションについては、
顧客一人ひとりに丁寧なお礼の手紙を送ることに加えて、
購入したスーツに合うワイシャツやネクタイを組み合わせた
そのお客さまだけの提案書を作成したり、
お客様から借りた顔写真と、お似合いのファッションを
PC上で合成してお見せする
「ヴァーチャルコーディネイト提案」
を行っています。
他のテーラーでは、ここまでの手間をかけることは
あまりやっていないそうです。
また、富裕層向けの情報誌
「銀座テーラージャーナル」
を毎月発行。
同誌は、既存顧客(政財界の有名人が多い)に登場して
もらっているため、銀座テーラーのイメージアップにも
寄与しているそうです。
一方、広報については、最低でも月1回はなんらかのニュース
リリースを出すことを目標にしており、その結果、05年は81回、
06年は115回も、各種メディアに記事が掲載されています。
ホームページも、5、6年前はほとんどアクセスがない状況
でしたが、こうした努力の結果でしょう、現在は月間25-30万
ページビューに達しています。
皆川氏によれば、こうした一連の改革は、
外部コンサル等の支援を借りることなく、すべて
同社社長、鰐渕美恵子氏と皆川氏によって行った
のだそうです。
なかなかすごいと思います。
さて、このところ大手欧米ブランドの巨艦店舗が、
銀座に次々とオープンしています。
銀座テーラーとしては、
「オンリーワンブランド」としての地位を固めるために、
気を抜く暇がないでしょうね。
*以上の内容は、皆川和久氏の講演
(IMプレスビジネスセミナー)を元に書きました。
投稿者 松尾 順 : 12:09 | コメント (0) | トラックバック
オープンソースで食っていく、幸せになる
今日もちょっと「人材マネジメント」や
「キャリア」寄りの話です。
先日、
「ジョブ・エンゲージメント」
の考え方をご紹介しましたが、この記事を書いた後になって、
「そういえば、ジョブ・エンゲージメントは、
オープンソースに関わっている方に最もあてはまるなあ」
と気づいたんですよね。
以前、オープンソースの代表としてあまりにも有名な
「リナックス」
の創始者、リーナス・トーバルス氏が自著、
『それが僕には楽しかったから』(just for fun)
の邦訳版の出版に併せて来日された際に行ったインタビューの時、
彼は、リナックスが開発者に与える価値を解説してくれました。
リーナスさんによれば、私たちが生きる意味は、
「生き残り」「社会性」「娯楽」
の3つがあると考えてますが、このうち、リナックスは
「社会性」「娯楽」
の2つを与えると言っていました。
プログラミングは創造的な仕事ですよね。
自分が作成に関わっているプログラム上で実行できる機能が
だんだんと増えていくことを通じて「達成感」と「自己効力感」、
つまり「自分には能力がある」という自尊感情を満たすことが
できます。
しかも、そのプログラムが社会に受け入れられ、
社会で広く利用されるようになれば、自分の社会における
存在意義・価値を実感することができ、承認欲求も満たされる。
ジョブ・エンゲージメントの最初の条件、
「自己効力感」
がオープンソースにはあるというわけです。
もちろん、オープンソースでなくても、
仕事としてプログラミングに関わっていれば、
多かれ少なかれ「自己効力感」を得ることはできます。
しかし、「娯楽性」はあまり与えてくれないでしょう。
というのも、仕事としてのプログラミングは、
生活費を稼ぐためという外的報酬に動機付けられている点が
大きく、それをやりたいかやりたくないかではなく、
「やらざるを得ない仕事」
になってしまうからです。
でも、オープンソースは基本自由参加ですよね。
楽しいと思える人、やりたい人だけが参加すればいい。
しかも、リーナスさんが、リナックスの開発を
「チームスポーツ」
に喩えていたように、
さまざまな個性、能力を持つ世界のプログラマーが
それぞれの得意分野(ポジション)を担当して、
共にゴールを目指すという楽しさがある。
オープンソースの開発は、
自由参加の異質な人間の交わりを通じて
高い「娯楽性」が生じているわけです。
つまり、ジョブエンゲージメントの2番目の要素、
「シナジー」
もオープンソースにはある。
問題は、ジョブ・エンゲージメントの3番目の要素
「プライベート」(の安定)、
リーナスさんの言葉では、
「生き残り」
はどうするんだということです。
オープンソースは文字通り、
ソースコードを無料で公開してしまうわけです。
ライセンスフィーが得られないとなれば、
どうやって食っていくのか・・・
しかし、これは杞憂のようです。
すでにオープンソースに関わることで
メシを食っている人はどんどん増えている現実があります。
日本発のプログラム言語、「Ruby」の創始者、
まつもとゆきひろ氏も、梅田望夫氏との対談で、
すでにオープンソースで数百人単位で飯を食っていると
指摘しています。
オープンソースの隆盛を見ると、
資本主義社会の儲かってナンボの世界とは異なる世界が
インターネットによって拡大しつつあるのを実感しますね。
自分の好きなこと、やりたいことに没頭する。
仲間と共に、協働するからこそ可能な価値を生み出す。
それが、結果的に社会的な価値を持ち、関係者にも、
その価値が回りまわって戻ってくる。飯が食えるようになる。
オープンソースに関わることによって、
純粋な「ジョブ・エンゲージメント」が実現するわけです。
これは、実にうらやましい「幸せなキャリア」でもあります。
*IT Pro 梅田望夫×まつもとゆきひろ対談
「ウェブ時代をひらく新しい仕事,新しい生き方」(前編)
*IT Pro 梅田望夫×まつもとゆきひろ対談
「ウェブ時代をひらく新しい仕事,新しい生き方」(後編)
投稿者 松尾 順 : 09:42 | コメント (0) | トラックバック
ネットビジネスの勝者:オートバイテル・ジャパン
「インターネットで、家や自動車は売れるのか?」
90年代後半、インターネットが普及し始めた頃、
こんな議論が盛んに行われましたよね。
実際のところ、こうした高額商品は、
やはり自分の目で確かめ、試してみた後じゃないと
購買を決めるのは難しい。
ネットで見つけた家(部屋)を買い物カゴに入れて、
ポンと購入ボタンを押すなんてことはできませんよね。
なので、インターネットでできることは、
基本的に情報収集、比較検討段階、モノによっては
価格交渉までということになります。
とはいえ、ネットによる消費者の情報収集や比較検討行動が
企業のマーケティングのあり方を大きく変えてしまったのは
確かです。
さて、当初多くの企業が参入した
「インターネットによる自動車販売仲介サービス」
ですが、現時点で唯一の勝者となっているのが、
「オートバイテル・ジャパン」
http://www.autobytel-japan.com/
です。
私は最近まで知らなかったのですが、
すでに他の競合企業は撤退してしまっていたんですね。
(I.M.Press Vol.139(2007-12)、トップインタビュー)
やはり、この業界でも
「Winner takes all」
の法則が当てはまったということでしょうか。
「オートバイテル」では、
現在発売されている400-500車種のカタログ情報を掲載。
メインのサービスは、
「新車見積もり仲介サービス」
で、複数車種の比較検討、見積もり依頼、eメールによる商談
までを簡便に行えるのがウリです。
現在、同社に加盟しているカーディラーは900社以上、
店舗数では約5,000店に達しているそうです。
上記インタビュー記事の中で、
同社代表取締役社長、加登吉邦氏は、
次のような数字を披露してくれています。
---------------------------------
・日本における年間の新車販売台数(軽自動車含む)は、
500-550万台程度(2007年度)
・見積もり依頼者の2人に1人は新車を購入、つまり、
年間で1000-1200万人の方が新車購入を検討
(同社アンケート調査の結果に基づく推定値)
・オートバイテルのWebサイトユーザー数は年間2000万人、
月間で150-200万人
・上記ユーザーの10%が新車見積もりボタンをクリック
・ユーザープロフィールは、性別で見ると
男性7割、女性3割。女性ユーザーの比率が増加傾向にある
--------------------------------
加登氏は、
「インターネットによる自動車の販売仲介サービス」
において、同社だけが生き残れた要因は、
「継続」
という言葉に尽きると答えています。
このサービスの成功のカギ(KFS:Key Factors for Success)は、
「見積もりを提出できる加盟ディーラーの数」
ですよね。
利用者としては、最終段階で現物を見に行ける
近場のディーラーから見積もりが取れなければ意味ないですから。
結局、1999年のサービス開始からこれまでの8年もの間、
風雪に耐えながら(加登氏の言葉)、地道な訪問営業を通じて
900社まで加盟社を増やすことができたのが同社だけだったのです。
ところで、同社には
「567の法則」
というものがあります。
・見積もり依頼者の商談への移行率:50%
・うち、店舗への来店につながる率:60%
・来店者が、最終的に成約に至る率:70%
のことですが、これらを掛け合わせた
「21%」
を
「目標成約率」(見積もり依頼者が実際に購入する率)
としているそうです。
加登氏によれば、
この3つの数字のうち最も大切なのは、
「新車見積もり依頼から商談への移行」
です。
見積もり依頼が行われてから、
6時間以内にeメールを返信した商談の成約率を100とすると、
24時間以内では60%
48時間超では20%
に成約率が激減するというデータがあるのだそうです。
最初のユーザーからのコンタクトに対する反応スピードの速さが
いかに後々に大きな影響を及ぼすかを実感できる数字です。
投稿者 松尾 順 : 11:04 | コメント (0) | トラックバック
「感性」と「実利性」
女性に受ける商品・サービスづくりを目指す場合、
「感性」と「実利性」
の両軸での追求が必要ですよね。
これは、男性にはなかなかわかりづらい点です。
今月(07年11月)にオープンした日比谷の新劇場、
「シアタークリエ」
のメインターゲットは、20代後半から30―40代の女性。
そこで、女性が好むソフトな色使いや曲線が内装に
採用されていますが、そうした「デザイン性」だけでなく、
男性よりも多い女性の手荷物を置く場所だとか、
トイレの使いやすさといった「実利性」の両面で
細心の注意が払われたようです。
ちなみに、この劇場の支配人は29歳の女性が抜擢されてます。
また、マンションの購入を検討する際の話ですが、
男性は資産価値をイメージを重視する一方、
女性は、機能面を重視する傾向が強いとのこと。
購入を検討しているマンションを見学する時、
男性がベランダからの眺望に感動している脇で、
女性は扉などを一つひとつ開いて使い勝手を緻密に
検証するという風景が見られるようです。
日本女性は、感性面でも実利面でも極めて鋭い鑑識眼を
持っていますから、半端な商品では受け入れられないのですよね。
投稿者 松尾 順 : 01:12 | コメント (0) | トラックバック
女性のダイエットに対する並々ならぬ執着の証
あいかわらず本屋に平積みされてる
『いつまでもデブと思うなよ』
(岡田斗司夫著、新潮新書)
は、あまり売れないと考えられていた
男性向けダイエット本
としては異例の売り上げ。
すでに40万部を超えているそうです。
わずか1年で50キロもやせたという実績に基づく、
説得力のある内容になっていることがヒットの要因でしょう。
ただ、昨年のベストセラー『人は見た目が9割』に
代表されるような、「外見の重要性」を説く本が
増えたことが背景にありそうです。
なお、当初は男性の購入者がもちろん多かったのですが、
最近の購入者の6割は女性だそうです。
同じく男性ターゲットのお茶飲料、花王の「ヘルシア緑茶」も、
実は飲用者の4割は女性なんですよね。
ダイエットに対する女性の異常なまでの関心がうかがえます。