サンプル百貨店:価値創造型サンプリング(2)

試供品を配布したい企業と、
試供品をもらいたい消費者を結びつけるWebサイト、

「サンプル百貨店」
http://www.3ple.jp/

を運営する

(株)ルーク19
http://www.luke19.jp/index2.html

では、従来の試供品配布方法にはなかった、
新しい付加価値を創造することに積極的に取り組んでいます。


その一つは、

「リアルサンプリングプロモーション」


これは、ホテルの宴会場を借り、
OL、主婦を中心に1000人ほどを一同に集めて行う
大サンプリングイベントです。

同イベントには、
メーカーなど20-30社が参加して試供品を提供。

集まった女性たちの前で、
開発担当者が、商品に対する思いや開発秘話を
プレゼンテーションすることができます。


このイベントへの参加は、ブロガー優先。

したがって、当日のイベントの模様や、
もらった試供品あれこれ(合計数万円相当)についての感想が
後日ブログにアップされることで、口コミマーケティングが
展開されるという仕組みです。


先日の11月18日には、特別企画として、
横浜港から出航する豪華客船「ふじ丸」を12時間貸切。

東京湾内をクルーズする客船内で、
大手メーカー20社のプレゼンとサンプル配布が行われています。


このイベント、約500名の会員が参加したようですが、
1人8000円の参加料を払っています。

でも、豪華客船でのランチ、ディナー付ですし、
キャスター付バッグ一杯の試供品を持って帰れるわけですから
参加された方は皆大満足でしょう。


こうしたイベントでは、試供品の清涼飲料を
バカラのグラスに注いで飲んでもらうこともするそうですが、
たかが100円のドリンクであっても、
バカラで飲めばるかにおいしく感じられるでしょうね。

また、一流ホテルの宴会場、あるいは海上に浮かぶ豪華客船と
いう環境は、そこで配布される試供品に対する好意的なイメージ
を強化することに役立っていることは間違いありません。

これこそ確かに「価値創造型サンプリング」と言えますね。


さらに、ルーク19が始めた新たな取り組みに興味を惹かれました。

それは、試供品ではなくて、コンビニやドラッグストアの棚に
並んでいる実売品を無料でもらえるというもの。

この仕組みはそもそも、アイスクリームなど温度管理が必要な製品を
試してもらいたいと思っても、サンプル百貨店で従来採用してきた
宅配便等を使って送っていたのでは、送料が高くなりすぎてしまう
という問題を解決するためでした。


そこで、試供品本体ではなく、はがきの引き換え券を希望者に送り、
その引き換え券を持って協力店舗(セブンイレブンを始めとする
大手小売チェーン)に行けば、対象商品がもらえるという仕組みを
考え出したというわけです。

これだと、従来は法規制上困難だった、
医薬品のサンプリングも可能なのだそうです。


同社渡辺社長によれば、
この引き換え券の引き換え率は87%。

ほぼ全員に近い人が、
店頭に足を運んで商品を受け取っています。


実は、この仕組みは単に送付コストを抑えつつ、
試供品を確実にターゲットユーザーに渡す以外の

「副次的効果」

がありました。

それは、まずこの仕組みで流すことになった新製品は、
協力コンビニの全店舗の棚に確実に並ぶということです。

ご存知かと思いますが、売り場面積の限られたコンビニの
販売スペース獲得競争は熾烈なものがあります。

そうそう簡単に置いてもらえないし、
売れなければさっさと撤去されてしまうのが現実。


しかし、引き換え券を持った全国の会員が、
交換に現れるわけですから、当該製品は棚に置いてもらえる。

こうして店頭に並んでいることで、
会員以外の人が見つけて買うこともあるでしょうし、
それだけヒット商品になる可能性も高くなるというわけです。

しかも、引き換えに来た会員も、対象商品をもらうだけでなく、
ついでにあれこれ買っていく。

つまり、店舗の売上にも貢献する。


というわけで、サンプルとしての実売品を無料でもらえる
消費者、そして販売スペースを確保できるメーカー、
売上アップになる小売店と、関係者全員にとってメリットの
ある仕組みになっているのです。


*以上の記事は、ルーク19、サンプル百貨店についての公開資料、
および、渡辺明日香氏の講演(IMプレスビジネスセミナー)を
元に書きました。

投稿者 松尾 順 : 12:05 | コメント (0) | トラックバック

サンプル百貨店:価値創造型サンプリング(1)

「試供品配布」、いわゆる「サンプリング」と言えば、
長い間、路上での無差別配布が主流でしたね。

しかし、この方法だと、
対象商品を実際買いそうもない人にも
お試し品が渡ってしまいます。

このため、販売促進効果がもうひとつ。


というわけで最近増えてきたのが、
登録会員制で詳細なプロフィールをあらかじめ把握しておき、
試供品のターゲットユーザーの属性に合致していて、
かつ自分から欲しいと手を上げた人だけに試供品を渡す
ビジネスモデルです。

例えば、今年07年7月には表参道に、
試供品がもらえるリアルな店舗「サンプル・ラボ」が
オープンしてます。


さて、こうした新しいサンプリングを展開する企業の中でも、
とりわけ面白い事業をあれこれ手がけているのが、

(株)ルーク19
http://www.luke19.jp/index2.html

です。

同社は、試供品を配布したい企業と、
試供品をもらいたい消費者を結びつけるWebサイト、

サンプル百貨店」
http://www.3ple.jp/

を2005年8月から運営。直近の登録会員数は30万人です。

実は、私もこのビジネスモデルには以前から注目しており、
一年ほど前からいちおう会員になってます。

会員のおよそ8割が女性、その多くが主婦のようですので、
私のようなオヤジは、やはりどうも場違いなんですけど・・・


「サンプル百貨店」の基本的な仕組みは、
同サイトで行われるサンプリングに、擬似通貨の

「サンプラー」(=ポイントですね)

を使って応募するというもの。

例えば、ある試供品をもらうためには「100サンプラー」
が必要といった具合です。このため、会員たちは、
「サンプラー」を貯めるのに必死なんだそうです。

サンプラーは、試供品を使用した後のアンケートに
答えるとか、ブログに記事としてアップしたことに対する
報酬としてもらえます。

この仕組みによって、試供品を単に配布するだけでなく、
試用者の調査や口コミプロモーションまでつなげられる
というわけです。

また、登録会員は、サンプル配布だけでなく、
新商品開発にも協力しています。


例えば、大正製薬の女性向けの栄養ドリンク、

「リポビタン・ファイン」

では、開発段階からサンプル百貨店の女性会員が、

「パッケージはピンクのほうが手に取りやすい」

など、約8000件の意見を寄せた内容を元に、
製品仕様が決定されたそうです。


同製品の発売は05年10月でした。

大正製薬では、発売後しばらくはサンプル百貨店以外での
広告宣伝はしない方針で臨んだようですが売り上げは順調に伸び、
今年5月から本格的なマーケティングを展開しています。


ルーク19の代表取締役社長、渡辺明日香氏によれば、
単なる試供品配布にとどまらず、それ以上の新たな価値を付加する、
そんな

「価値創造型のサンプリング」

に取り組んでいるのだそうです。


では、明日は、バーチャルな「サンプル百貨店」に、
リアルな場を組み合わせた同社のユニークなイベントや
ビジネスモデルをご紹介したいと思います。


*以上の記事は、ルーク19、サンプル百貨店についての公開資料、
および、渡辺明日香氏の講演(IMプレスビジネスセミナー)を
元に書きました。

投稿者 松尾 順 : 09:58 | コメント (0) | トラックバック

「ジョブ・エンゲージメント」からの示唆

昨日、マーケティングにおける「エンゲージメント」に
ついての記事を書きました。


その中で、人材マネジメント業界においても、

「エンゲージメント」

が近年最もホットなテーマであることに触れました。


今日は、このメルマガ&ブログの基本軸から多少ずれますが、
この人材マネジメントにおける「エンゲージメント」に
ついて簡単にご紹介した上で、マーケティングへの示唆を
考えてみたいと思います。


さて、人材マネジメントにおける「エンゲージメント」は、

「ジョブ・エンゲージメント」

と一般に呼ばれます。


これは、文字通りに訳せば、

「仕事と婚約している状態」

です。

具体的に言えば、自分の仕事が好きで好きでたまらず、
仕事が楽しくて、思わず時間を忘れてしまうほど
「のめりこんでしまう」ことを意味します。


では、なぜ「ジョブ・エンゲージメント」が、
人材マネジメントにおいて注目を集めているのか。

それは、このところより一層、昇進・昇格、昇給といった
「外的報酬」だけでは社員のやる気を高めることが困難に
なってきたからです。

今の多くの私たちの生活は十分に満たされていますからね。

昔のように「にんじん」をぶらさげられても、
あまり走る気にはなりません。


逆に、降格、減給、左遷といった「罰則」でも、
やる気を高めることはできません。

簡単に転職できる世の中になりましたし。


つまり、ニンジンやムチといった

「外的な動機付け」

ではなく、むしろ、

仕事そのものが面白いか、楽しいかということ
(=「内的動機付け」)

が、社員のやる気を高め、
結果的に仕事上の高い成果に結びつくということが
わかってきたのです。

まあ確かに、夢中になって仕事に打ち込めるなら、
仕事も速いし、仕上がりだってすばらしいものに
なる可能性が高いですよね。


これが、「ジョブ・エンゲージメント」が
重視されるようになってきた理由です。


さて、人材コンサルティング会社、
ワトソンワイアットのコンサルタント、川上真史氏によれば、
これまでの調査研究から、「ジョブ・エンゲージメント」が
実現するためには、次の3つの視点が必要なことがわかって
きています。

1.自己効力感
2.シナジー
3.プライベート


「自己効力感」とは、
自分の能力が仕事を通じて発揮できているという感覚、
また、何かを成し遂げている、成功したという事実に基づく
自尊感情のこと。

要するに

「オレって結構いけてるじゃん、えらい」

と自分を肯定できることです。


次の「シナジー」とは、
職場の良好な人間関係が生み出すもの。

お互いを認め合い、支えあい、褒めあう。
そんな中から、一人ではできないことが実現していく。

要するに、好きな仲間、気の合う仲間となら、
どんな仕事だってある意味楽しくなる、のめりこみやすい
ということです。


最後の「プライベート」。

夫婦関係、恋愛関係や親子関係が良好でないと
いくら好きな仕事でもさすがになかなか集中できませんよね。
健康状態も然りです。

オンの仕事にがんばれるためには、
オフのプライベートが良好であることが望ましいわけです。

(したがって、今後の人材マネジメントでは、
社員のプライベートなことは社員自身の問題である、
と切り離すのではなく、会社として可能な支援を行うべきである
という方向になっています。)


以上、「ジョブ・エンゲージメント」の考え方を
ご説明しました。


さて、企業と社員という人材マネジメント固有の問題である
「プライベート」の問題はさておき、

・自己効力感
・シナジー

については、

「エンゲージメント・マーケティング」

に対して貴重なヒントを与えてくれているように思いませんか?


「自己効力感」を与えやすいマーケティング施策は、
たとえば「ゲーム」ですよね。

たとえ簡単なゲームであっても、
高い得点をあげることができればうれしい。

思わずのめりこんでしまいます。


また、「シナジー」を実現しやすい仕組みが、
ブログ、SNSに代表されるCGMではないでしょうか?

もちろん、ネガティブな問題もいろいろ起きますけど、
基本的には、お互いにコメントやトラックバックなどを
通じて承認しあい、時にほめ、励ましあえるそんな心地よい
コミュニティが、SNSやブログつながりの仲間ですよね。


人材マネジメントにおける「エンゲージメント」を
安易にマーケティング分野に当てはめることには注意が
必要かもしれませんが、それにしても、

・自己効力感
・シナジー

は、エンゲージメント・マーケティングにおける具体施策に
おいても重要なキーワードになりうると私は思っています。

投稿者 松尾 順 : 10:17 | コメント (0) | トラックバック

エンゲージメント、エンゲージメント・マーケティングとは何か?

最近のマーケティングにおける、
最もホットな「バズワード」(流行り言葉)のひとつに

「エンゲージメント」

がありますね。

(実は「エンゲージメント」は、
 人材マネジメント業界においてもホットなバズワードですが!)


ところが、さまざまな情報に当たってみても
未だにその正体ははっきりしません。

先日参加した某勉強会でも

「エンゲージメント・マーケティング」

が、旬のテーマとして取り上げられてました。

しかし、現時点では言葉だけが独り歩きしていて、
中身はまだ空虚なままであるということがはっきりしました。


そこで、今日は私なりの「エンゲージメント」についての考えを
書いてみます。


まず「エンゲージメント」を日本語にどう訳すかですが、
これは、

「のめりこみ」

という言葉がしっくりくると思います。

人材マネジメント業界では、この「のめりこみ」という言葉が、
ワトソンワイアットの人材コンサルタント、川上真史によって
紹介されています。

人材マネジメントの枠組みでは、社員が、
どれだけ自分の仕事に“のめりこめている”かどうかが、
高い生産性や成果をあげるために重要だという視点で
注目されています。

つまり、従来のように企業本位の視点で、
どうやって働かせるかという発想ではありません。

逆に、社員本位の視点で、
どうやったら仕事に自発的に取り組んでもらえるかを考えるのが、
人材マネジメントにおける「エンゲージメント」です。


マーケティングの枠組みにおける「エンゲージメント」、
つまり「のめりこみ」も、同様に視点(立ち位置)の移動が
あります。


従来のマーケティング・コミュニケーションは、

どうやって伝えるか、理解してもらうか、買ってもらうか

という企業本位の発想でした。


しかし、「エンゲージメント」の考え方では、

対象ユーザー(消費者)が、どの程度、
当該商品・サービスにのめり込んでいるか
(エンゲージしているか)

を重視します。


すなわち、「対象ユーザーの視点」で、
マーケティング・コミュニケーションを評価しようするのが、

「エンゲージメント」(のめりこみ)

の基本発想だと言えます。

より具体的に説明すれば、「エンゲージメント」(のめりこみ)
では、この言葉が示すとおり、従来の

「ブランド認知」「ブランド理解」

といった浅いレベルではなく、
より深いレベルでの対象ユーザーとブランドとの関わり方に
焦点を当てます。

すなわち、対象ユーザーと当該商品・サービスとの間に
どの程度強い「心の絆」が形成されているかという、

「心理面での関わり度合い」

と、その目に見える形での現れとしての

「行動面での関わり度合い」

に着目します。


そして、エンゲージメントの基本思想である、

「深いレベルでの対象ユーザーとブランドの関わり方を
 強化すること」

を目指した具体的なマーケティング施策のことを

「エンゲージ・マーケティング」

と呼ぶのだと私は考えています。


さて、すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、
「エンゲージメント」の基本思想は、

「CRM」(Customer Relationship Management)

のそれとほぼ同じです。

どちらも、対象ユーザーとブランド(企業を含む)との
関係性強化を狙うものだからです。

ただし、「CRM」は、どちらかといえば企業本位の視点が
強かったのに対し、「エンゲージメント」では、
企業のマーケティング活動の成果を対象ユーザーの深いレベルの
心理面や行動面の変化で評価しようとする点が異なると言えます。


問題は、「エンゲージメント」をどう測定するかですね。
この点で、米国でも日本でも論争が続いています。


行動面の評価指標の候補としては、例えばインターネットなら

サイトの滞在時間、ブログでのキーワード頻出数、
コメント数、トラックバック数

といったものが挙げられます。


一方、心理面の評価指標は、目に見えない心理状態を
把握するわけですから、なんらかのアンケート調査を行うか、
人間の脳を直接測定する「神経生理学」(ニューロサイエンス)
の手法を採用することが考えられます。
(このニューロサイエンスを活用したマーケティングである、
「ニューロマーケティング」も最近のバズワードのひとつですね)


ニューロサイエンスはまだ敷居が高いのですが、
アンケート調査による、対象ユーザーの心理状態の把握については、
すでに利用可能と思われる先行指標があります。

それは先日ご紹介した、

「BRQ:Brand Relationship Quality」

です。

「BRQ」は、10年ほど前に開発された評価指標ですが、
ブランドの関係性の「質」を測定するものです。


具体的には、

“消費者が、ブランドに対して持っている感情的なつながり”

を評価します。

これは、「エンゲージメント」で言われる「心の絆」に
他なりません。


「BRQ」では、次の7つの軸で「心の絆」の強さを見ます。

1 親密さ(Intimacy)
2 こだわり(Commitment)
3 パートナー品質(Partner Quality)
4 今の自分とのつながり(Self-connection)
5 愛着(nostalgic feeling)
6 相互依存(Interdependence)
7 愛情(Love/Passion)

そして、この7つの軸の強弱を競合ブランド間で比較分析
することなどによって、具体的なマーケティング施策を
立案することが可能です。


さて長々と説明してきましたが、まとめます。


エンゲージメントとは、
対象ユーザーが当該商品・サービスに対して持っている
「心の絆の強さ」のことです。

ひらたく言えば、対象ユーザーが、

当該ブランドにどれだけのめり込んでいるか

ということです。

「心の絆」を強化することを狙ったマーケティング施策を
「エンゲージマーケティング」と呼びます。

「エンゲージマーケティング」の効果測定は、
心理面と行動面の2面で行う必要がありますが、
まだ一般に認知された指標はありません。

ただし、心理面の指標としては、
「BRQ」が採用可能だと考えています。


(関連記事)
*[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(0)イントロダクション

*[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(1)感情的なつながり

*[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(2)活用の具体手順

*[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(3)効果と具体施策

*[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(4)BRQ低下をもたらすもの

*[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(5)まとめ

*ニューロマーケティング:コークvsペプシ

*欲望解剖

*fMRI:機能的磁気共鳴画像法の利用増えてます。

投稿者 松尾 順 : 09:37 | コメント (2) | トラックバック

『人間失格』と「日本酒」の復活

今年の夏ごろのことです。

長女(中2)が、

「太宰治の『人間失格』の本を買って買って!」

とせがんできました。


田舎にある古い日本文学全集の中に、
『人間失格』も入ってたから送ってもらおうか?

と私が答えたら、娘は、

「集英社文庫のものが欲しい」

と言うのです。

聞くと装丁が新しいらしい。

ただ単に外側のパッケージが変わっただけで、
あの純文学小説を買いたいのかと苦笑したものです。


実際娘に買ってあげた集英社文庫の本を見てみると、
表紙はもろマンガなんですよね。

「デスノート」の小畑健氏作。
中身は純文学だけど、見た目は「ライトノベル」。

そして、新装丁版『人間失格』は、
13万部を超えるベストセラーになりました。

このパッケージリニューアルの成功を見ると、
古いイメージを持つ商品のデザインを大胆に変えることで
イメージを刷新し、新たな購買層の関心を呼び起こすことが可能だ
ということがわかりますね。

もちろん、「中身が優れていること」が大前提ですが。


さて、同様の試みが求められているのが、

「日本酒」

でしょう。

日本酒の低迷はずいぶん以前からですが、
今や日本酒のシェアは酒類全出荷量の9%に過ぎない
厳しい状況です。
(ちなみに、ビール類は35%、焼酎18%)


また、全国の酒蔵の数は、
50年前は4000蔵以上ありましたが、
現在は約2000蔵と半減してしまっています。


実は、世界に目を転じてみると、
爆発的な和食ブームに伴い、「日本酒」に対する評価も
どんどん高まっています。

しかし、足元の国内では、

古臭い、オヤジっぽい、悪酔いしそう

といったネガティブなイメージがありますよね。


こんなイメージが払拭できないのは、
結局のところ、若年層があまり飲まないからです。

そして、若年層があまり飲まないのは、
若年層に対して魅力を感じさせることができていないからです。

特に、コンビニに置いてある「カップ酒」は、
もろ「オヤジのための酒」というイメージを与えますよね。


日本酒党の私も、コンビニでよくカップ酒を買います。

しかし、コップ酒を飲んでいる自分を引いて眺めてみると、
自分が既に「オヤジ」であることを再認識させられるため、
ちょっとしたわびしさを感じざるを得ません・・・


そんな今、日本酒の新商品が、
ファミリーマートのオリジナル商品として発売されています。

*「粋ボトル」シリーズ


上記商品の開発の模様は、
先日の「ガイアの夜明け」でも放映されましたし、
実際ファミマで購入した方もいらっしゃると思います。


現在4ブランド(日本盛、白鶴、月桂冠、松竹梅)が
店頭に並んでいる「粋」シリーズの特徴は、

「広口アルミボトル」

のパッケージを採用したこと。
一部の缶コーヒーにも見られるボトルですね。

デザインも、従来の日本酒のイメージを覆す派手な色合いです。

要するに、まったく「日本酒」らしくないわけです。


この「粋ボトル」、昔から日本酒を飲んできた中高年の方には
受けがあまりよくないかも知れません。

タイアップした清酒メーカー内部の意見としても、

「コーヒーに間違えそう」「毒々しい」「人工的」

といった意見が上がっていました。


しかし、若年層の日本酒に対するイメージを変え、
まず手に取ってもらうためには「粋ボトル」のような
大胆なパッケージが必要だと、開発担当者は考えていました。


私も早速、粋ボトルを飲んでみました。

従来のカップ酒のように、
フタを開けるときにこぼれそうにならないし、
リキャップが可能なので安心。

広口は飲みやすいし、なにより「気分がいい」です。
カップ酒のときのようなわびしさが漂いません・・・


同シリーズは、多少値段設定が高めではありますが、
若年層開拓の先陣として成長する可能性大だと感じました。

投稿者 松尾 順 : 12:29 | コメント (2) | トラックバック

fMRI:機能的磁気共鳴画像法の利用増えてます。

ニューロマーケティングは、着実に進展してるようです。


ニューロマーケティングは、
最先端の機器(fMRI:機能的磁気共鳴画像法)
などを用いて脳の活動を測定することで、
消費者心理や行動の仕組みを脳神経科学の視点から
解き明かそうとする試み。


関連記事にこんなものがあります。

*ニューロマーケティング:コークvsペプシ


さて、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)では、
1台数億円はする高額な機器である、

fMRI:機能的磁気共鳴画像法

を1時間当たり18万円で時間貸ししています。

借り手は、ニューロマーケティング研究に取り組んでいる
広告会社など。

利用件数は2000年20件だったものが2006年には70件、
今年は上半期だけで、60件に達しているそうです。

投稿者 松尾 順 : 08:29 | コメント (0) | トラックバック

SURFER'S VOICE

なんか、電話で話してる相手の反応が変だなあ・・・
あいづちばかり多くて、しかも生返事っぽい・・・

と感じたことがありませんか。


おそらく、相手はパソコンでネットサーフィンでもしながら
話してる可能性大ですよね。

こちらとしては、
ちょっと不愉快な気持ちになるものです。


そんな電話口の相手の声の調子のことを英語では、

“surfer's voice”

と言うそうです。


さて、日本語ではなんと言ったらいいでしょうね?

投稿者 松尾 順 : 01:12 | コメント (0) | トラックバック

1億円の広告費

先日の記事でご紹介した

「まるびぃ」(金沢21世紀美術館)

の特任館長、蓑豊氏は、大阪市立美術館館長時代の2000年、

「フェルメール展」

の開催を主導しました。

開催のための費用は約10億円と、
企画展としては最大級のお金が必要でした。


蓑氏は、フェルメール展は絶対「受ける」と
考えていたそうですが、開催当初はあまり客足が伸びず
相当つらい思いをしたそうです。

しかし、広告宣伝費におよそ1億円を投じた結果、
期間中の総入館者数60万人という大成功を収めました。


蓑氏によれば、欧米では、美術館の企画展の広告宣伝費に
1億円程度の予算を計上するのはそれほど珍しいことでは
ないようです。

この点も、広告宣伝にお金を使おうとしない
日本の美術館とは大違い。


やはり、日本の美術館は、どんなにいい展示でも、
開催を知らなければお客さんはそうそう入らないという、
当然のことがわかっていないということでしょう。

また、別の見方をすれば、いい展示であるからこそ、
しっかり広告して多くのお客さんに見てもらうべきですよね。

投稿者 松尾 順 : 09:34 | コメント (2) | トラックバック

シニアライフの未来形・・・カレッジリンク型シニア住宅

私の義母、つまり妻の母親は昨年、自ら自分の資産を処分し、
千葉房総の鴨川に近い山の中に建つ

「介護付マンション」(端的に言えば「有料老人ホーム」)

に居を移しました。

そこは、栗を拾いに野生のサルが顔を出すような、
自然にあふれた素晴らしい場所です。


幸い、私の自宅は千葉・松戸にありまして、
鴨川・勝浦近辺には年に何度も旅行に行く場所でした。

ですので、家族旅行の度に義母のところを訪ねています。


さて、このマンションの入居者は、当然ながら全員ご老人です。
ロビーで見かけるのはご老人の方ばかり。
(受付の方とか、介護士の方々は皆さんお若いですが)

入居者の間で様々なサークル活動が盛んのようですし、
夏祭りなどの行事も盛大にやってます。


しかし、やはりお年寄りしかいない食堂で
お昼をいただいている時などに感じるのですが、
いわゆる「老人専用マンション」は、正直言って、
あまり活気のあるものではないですね。


ある意味「現世」から隔離されているとも言える、
刺激の少ない大自然の中で、老人たちだけで固まって
毎日を過ごすというのはどうなんだろう?

よっぽど自分で自覚してないと、あまり頭も体も使わなくなり、
老化の進行が早まるんじゃないか?

といった疑問がよぎります。


年をとれば誰もが体力・気力が衰えはしますが、
従来理想とされてきた「静かな余生」は、
人にとって本当に望ましいものなのでしょうか?


「必ずしもそうではない」

と言える興味深い事例があります。


それは、「カレッジリンク型」のシニア向け住宅です。

カレッジ、すなわち「大学」と連携したシニア住宅。

米国では10年ほど前に登場し、じわじわと普及しつつある、
いわばシニアライフの未来形と呼べるものでしょう。


「カレッジリンク型シニア住宅」の具体例としては、
ボストン郊外の高級住宅地、ニュートンにある

「ラッセルビレッジ」

があります。

ここは、「ラッセルカレッジ」という大学と一体となって
運営されているシニア住宅です。

ラッセルビレッジは、
入居者を募集開始したとたん即売。
現在も100人以上の空き待ちの方がいる人気だそうです。


この住宅、他とちょっと違っているのは、
入居の条件として、なんと年間450時間以上、
大学の講義を受講しなければならないという点。

金さえあれば入居できるわけではないのがユニークですね。


もちろん、入居者は大学の施設を自由に利用できます。

カフェテリアでは、若い学生たちと共に食事を楽しむ
入居者の老人たちを見ることができます。

大学の授業は、若い学生と共に受講しますが、
歴史の授業などでは、ご老人たちは文字通り

「生きた歴史の教科書」

となり、学生たちに自分の経験談を語ることができます。


また、詩の朗読のクラスなどでは、
入居者の老人がリーダーとなって学生をまとめることも
あるそうです。

しかも、人生の先輩として、
入居者たちは、学生のキャリア・人生相談役も務めます。

すでに引退しているとはいえ、
現役のころは様々な職業を経験してきている人がいます。

学生にとってはとてもありがたいアドバイスが得られますよね。


さて、以上は学生にとってのメリットですが、
入居している老人にとってのメリット、それは、
授業で頭を使い、学生たちと交流して彼らの若いエキスを
吸収できることで(笑)、いつまでも若々しく元気で
いられることです。

実際、入居者の方々の写真を見ましたが、
90歳近くの方でも、60歳代にしか見えないほどでした。


通常、老人ホーム入所5年後の要介護率は、
約10%だそうですが、ラッセルビレッジでは、
同3%に止まっているそうです。

つまり、老化のスピードが明らかに減速する。
かなり強力なアンチエイジング効果ではないでしょうか。


私は、決して従来型の介護付マンションがダメとは
思いませんが、年を取っても元気いっぱいでいられて、
若い人にとっても人生の先輩の知恵が得られる、

「カレッジリンク型のシニア住宅」

は、日本でも今後人気を集めるのは確実だと思います。


実は、来年(2008年)5月に、
日本初のカレッジリンク型のシニア住宅がオープン
するそうです。関西大学との連携です。

*クラブアンクラージュ御影
http://www.encourage.co.jp/


以上は、シニアビジネスの第一人者、
村田アソシエイツ代表、村田裕之氏のお話を元にしました。

投稿者 松尾 順 : 15:53 | コメント (2) | トラックバック

奇跡の美術館・・・「まるびぃ」

「奇跡の動物園」と言えば、

「旭山動物園」(北海道旭川市)

ですね。


では、「奇跡の美術館」と言えば・・・?

それは、

「金沢21世紀美術館」(石川県金沢市)

です。


同美術館は、円形の建物。
そこで“丸い美術館”の意味を取って、通称

「まるびぃ」

と呼ばれています。


さて、「まるびぃ」は、2004年10月オープン。

初年度の年間入場者数は157万人、
2年目は120万人でした。


たかだか人口46万人の地方都市に過ぎない金沢の美術館が、
これだけの来場者数を集めるのは驚きです。

というのも、全国の美術館の
平均年間来場者数はせいぜい5-6万人。

開館日一日当たりで200人たらず。


ところが、まるびぃには、

土日は7-8千人、平日でも4-5千人

が来場します。


「まるびぃ」の奇跡を主導した特任館長、
蓑豊(みのゆたか)氏は、この美術館を任される前は、
「大阪市立美術館」の館長を務めていました。

大阪は人口300万人、
京都、神戸を含めると周辺人口は500万人になりますが、
大阪私立美術館の年間来場者数は

100万人

を超えたことがないそうです。

ちなみに、金沢の最大の観光名所といえる、
日本三大名園のひとつ、兼六園の年間入場者数は
160万人程度です。

なるほど、「まるびぃ」が、旭山動物園と並んで

「奇跡」

と称されるのは納得ですね。


では、なぜこのような奇跡が起きたのでしょうか?

もちろん、単に運が良かったわけではなく、
蓑館長はじめ、関係者の努力の賜物ですが。


成功要因のひとつは、
「まるびぃ」が金沢市中心部にあること。

他の地方都市に多い、郊外にある美術館よりも、
人々が気軽に立ち寄りやすいという立地上のメリットが
ありました。


さらに、円形の建物はガラス張りで開放的。

従来の美術館の薄暗いイメージを覆す
明るい雰囲気があります。しかも、
出入り口が5カ所もあるので、入りやすい
敷居の低い美術館なのです。


しかし、こうした環境要因以上に、
成功の決め手となったのは、モントリオール美術館、
インディアナポリス美術館、シカゴ美術館など、
北米の名だたる美術館の東洋部長を経験された蓑氏が、

「美術館も人が来てナンボ!」

という「経営・マーケティング発想」で、
「まるびぃ」を積極的にプロモートした点にあります。


おおむね日本の美術館は、館長にしろ、学芸員にしろ、
客が入ろうが入るまいが、自分たちには関係ない、
高尚な芸術を理解できない大衆が悪い、という

開き直りの運営

が一般的。

蓑氏のように、

美術館を経営する、マーケティングする

という発想はまったくないのです。

日本の美術館のほとんどが、
うまくいっていないのは当然ですよね。


では、まるびぃの人気の秘密をご紹介しましょう。

まず、施設について。

まるびぃは、全体の3分の1が無料スペースです。
無料スペースにもいくつか展示物があります。

またレストラン、ミュージアムショップは
無料スペース内にあるので、入場料なしで遊びに行けます。

実際、来場者120万人前後のうち、
有料スペースに入るために入館料を払う人は、
約3分の1、40万人程度だそうです。

東京都内で開催される大型の企画展では、
40-50万人前後の来場者を集めますが、
そのかなりの割合が招待券、
つまりタダ券によるものであることを考えると、
まるびぃの有料入場者が

40万人

もいることは驚くべきことでしょう。


おそらく、無料スペースがなければ、
これだけの来場者も集められないでしょうし、
また、有料来場者も大幅に少ないはずです。

無料スペース=単なる経費、無駄

ではないということです。


この無料スペース、
閉館日の月曜も開放してありますし、
営業時間は朝九時~夜10時まで。

仕事帰りの方でも立ち寄りやすいですね。

この長い営業時間も、
他の美術館では考えられないことです。


次にマーケティング。

蓑館長は、

「子供も楽しめる美術館」

というコンセプトを打ち立てました。

そして、子供たちを積極的に集めることにしたのです。

急がば回れということなのでしょうか、
子供のころから美術館を経験し、その楽しさを知れば、
彼らが大人になった時、自分の子供も美術館に連れてくる
という長期的な視点を蓑氏は持っています。


開業した年、蓑氏は、
金沢市の4万人の小中学生を全員「まるびぃ」に無料招待。

その際、子供たちには、

「もう一回券」(無料入場券)

を渡しました。

すると、子供たちは、「もう一回券」を手に、
親を連れて再来場してくれました。

回収された「もう一回券」は、7000枚に上ったそうです。
つまり、子供たちだけでなく、大人の来場者の促進にも
効果があったということです。


また、「まるびぃ」単体だけでなく、
周辺の街も巻き込んで、面的な集客策にも
取り組んできました。

飲食店街では、まるびぃの半券を見せると
特別サービスを提供する店舗がありますし、
蓑氏の名前を取った

「MINO丼」「MINOスパゲティ」

をメニューに載せ、
半券で100円引きにするところもあるそうです。


蓑氏のすごい点は、こうした初期の成功にあぐらをかかず、
常に斬新な人をひきつける企画を次々と打ち出すことが
必要だと考え、継続してきた点です。

また、金沢市内の全小中学生を招待すると言った時、

「事故でも起きたら誰が責任取るんですか?」

といった官僚的発言をする人にひるむことなく、

「子供たちであふれる美術館」

にしたいという強い思いを貫くため、
リスクを取って実行した蓑氏の度量の大きさ。


蓑氏のこの情熱的なリーダーシップが、
「まるびぃ」の成功をもたらした最大の要因でしょう。


以上は、下記文献、および蓑氏の講演(夕学五十講)に
基づいて書きました。


*『超・美術館革命 -金沢21世紀美術館の挑戦』
(蓑豊著、角川oneテーマ21)

投稿者 松尾 順 : 10:57 | コメント (0) | トラックバック

インフルエンサー・マーケティング

先日開催されたSPSS(統計解析ソフト)のユーザー会

「SPSS Directions Japan 2007」
http://www.spss.co.jp/directions/index.html

に参加してきました。


このユーザー会最終日のトリに講演された
ニフティ研究所 所長、友澤大輔氏は、

ブログ、SNSなど「CGM」(Consumer Generated Media)
の存在を企業が無視できなくなった背景

について、「物言う客」と「物言わぬ客」の対比で
わかりやすい説明をされていました。


その部分を簡単にご紹介しましょう。

これまで、企業に対して「物言う客」というのは、
コールセンターなどに電話してクレームを言う人や、
お客様アンケートを回答してくる人たちだけに
限られていましたよね。

これは、顧客全体をピラミッドとして捉えると、
頂点のほんのわずかな人たちだけ。すなわち氷山の一角。

残りの大多数の人たちの考えを知るのは困難でした。


ところが、今まで「物言わぬ客」だった人たちが、
パーソナルメディアである、ブログ、SNS上で盛んに情報を
発信するようになった。

こうした「物言う客」が爆発的に増大していること、
そして、あいかわらず自らは情報を発信しない
「物言わぬ客」ながら、ネット上に大量に流通する
「物言う客」の情報(いわゆる「口コミ情報」)に
影響を受ける顧客が増えています。


ですから、

・自社商品について、
 CGM上ではどのようなことが言われているか

に目が離せないし、

・企業は、CGMとどのような関係をつくるべきか

が企業のマーケティング・コミュニケーションに
おける重要課題になってきたというわけです。


ちなみに、友澤氏が示してくれた野村総研の調査によれば、
2006年末現在のブログの書き手(ブロガー)は
約1,000万人、一方、読者は約5,000万人。

合計6,000万人が「ブログユーザー」となります。

これが5年後の2011年には、
ブロガー1,800万人、読者8,000万人となり、
およそ「1億人」がブログを利用して情報を発信したり
収集することが予測されています。

つまり、数年後にブログは、
国民的メディアになるということです。

なるほど確かに、
企業としてはCGMとの関係づくりを
真剣に考える必要がありますね。


さて、では、私たちマーケターとしては、
実際これにどう取り組んだらいいのかということですが、
ご参考として専門書を一冊ご紹介しておきます。


「その1人が30万人を動かす!影響力を見方につける
 インフルエンサー・マーケティング」
(本田哲也著、東洋経済新報社)

これはインフルエンサーとの関係形成や、
コミュニケーションの方法について体系的に解説した
初めての専門書。つい先日発刊されたばかりです。


同書では、「消費者に影響を与える存在」である
「インフルエンサー」を次の3つに大別。

・マスメディア 
(テレビ、ラジオ、深部、雑誌、ネットメディア)

・プロフェッショナル・インフルエンサー
 (専門家、有名人、タレント、カリスマモデルなど)

・個人インフルエンサー
 (情報発信力を持ち、他に影響力を与える消費者)


そして、これらインフルエンサーと共に
企業が情報発信する内容を

「関心テーマ」

と呼んでいます。

関心テーマは、
企業本位の単なる商品情報ではありません。

関心テーマとは、

(1)対象となる商品の便益や社会に貢献できるポイント
(2)インフルエンサーのそれぞれの立場における関心事
(3)消費者の関心事とメリット

をつなぐ架け橋であり、
インフルエンサー・マーケティングの「生命線」となるもの
だそうです。


著者の本田氏は、同書の中で、
インフルエンサー・マーケティングの戦略づくりとは、

(1)どんな関心テーマのもとに
(2)どのように3つのインフルエンサーを配置するか

ということに他ならないと述べています。


この本は、専門書とはいえ、
事例も豊富ですし、平易な文章で書かれていますので、
読みやすいですよ。

投稿者 松尾 順 : 10:05 | コメント (0) | トラックバック

吉兆ブランドの再生なるか?・・・お詫びの力

高級料亭「吉兆」のブランドイメージも
ずいぶん墜ちてしまいましたねぇ・・・


吉兆といえば、九代目林家正蔵氏(前林家こぶ平さん)
に似て親しみやすい雰囲気を持つ徳岡邦夫氏が有名です。

今年7月に徳岡氏の話を聞く機会がありましたが、
とても深い話をされてました。

*徳岡氏の講演レポートがこちらにあります。
→夕学五十講 受講生レポート
→夕学五十講 トップページ


さて、ご存知かと思いますが、
吉兆には次の5の料亭(法人)があります。

・本吉兆
・船場吉兆
・神戸吉兆
・京都吉兆
・東京吉兆


上記の店は、グループ会社とはいえ、
それぞれ独立経営です。

したがって、同じブランド名を共有しつつも、
お互いの経営内容についてそうそう口をはさめません。

ところが、不正が発覚した「船場吉兆」のおかげで
他の吉兆まで多大な悪影響(とばっちり)を
受けるという結果になってますよね。


徳岡氏は、京都吉兆の総料理長。
やはり今回は相当苦慮されているようです。

彼のブログでは、船場吉兆問題発覚後、
繰り返し3回もお詫びの文章を掲載しています。

*京都吉兆 三代目徳岡邦夫のブログ
http://kyotokitcho.seesaa.net/


徳岡氏の真摯な文章を読むと、
同じ吉兆でも、「京都吉兆」は、また他の吉兆は、

「船場吉兆」

とは違うと信じたいところです。


まあ、お互いに資本的な影響力はほとんどない別会社
だったわけですから、他の吉兆の不正がこれ以上暴露
されない限りは、吉兆ブランドの再生は大丈夫じゃないかと
思います。


しかし、万が一、他の吉兆のどこかで不正が
行われていたなら、第三者から暴露される前に、
いさぎよく自ら告白し、心からお詫びすべきでしょう。


というのも、日本では特に、

「心からのお詫び」

つまり誠意を感じさせるお詫びには、
相手の赦しを得る魔術的な力があるからです。


古典的名著、

『「甘え」の構造』(土居健郎著、弘文堂)

によれば、

日本人の場合、自分が属している社会・集団の中での
信頼関係を裏切るのが最も大きな罪悪感を感じること

だと説明されています。


だからこそ、逆説的ですが、

「内輪の中での信頼の裏切りが重大な罪である」

ということを自覚していることが伝わる

「心からのお詫び」

が効果的です。


私たちが最も嫌う、
信頼の裏切りという罪を犯したことを自覚し、
心からすまないと思っているのなら、
もういいだろう、赦してあげようか・・・

と聞き手は寛容になれるわけです。


上記の本の中には、こんなことが書かれています。

日本人に罪の赦しを説くべくやってきたキリスト教の宣教師が、
日本人の間では心から詫びれば容易に和解が成立するということ
を知って感心している。


ですから、逆に、不祥事発生時に言い逃ればかりして

「心からのお詫び」

を示すことのできなかった企業・個人のブランドは
失墜したままであり、信頼回復は極めて難しいものになります。


「心からのお詫び」を感じさせた石屋製菓は、
「白い恋人」の製造再開(11/22から)を果たし、
信頼回復の道を歩み始めましたね。


しかし、現状では「赤福餅」のブランド再生は無理です。
「船場吉兆」も不可能でしょう。

投稿者 松尾 順 : 11:39 | コメント (0) | トラックバック

モンゴルで活躍、富山の置き薬

使った薬の分だけお金を払う「配置薬」、
いわゆる「富山の置き薬」は300年以上の歴史が
あるそうですね。

しかし、近年は、従来ながらの薬局だけでなく、
大型のドラッグストアが増えて気軽に安く買えることも
あって、相当苦戦してるようです。


私は以前、事務所に1年間だけ置いたことがあります。
かなり強引な売り込みにあい、安売り店に対抗してか、

「全薬品3割引にします」

と価格的には遜色なかったので試しにと置いてみました。

ところが、普段からほとんど病気・けがをしないため
結局、薬1錠もつかわずじまい。

置き薬のおじさんもあきれて引き上げていきました。


さて、わが国ではこんな状況ですが、
日本発祥の置き薬システムはモンゴルの遊牧民に人気で、
6万人のユーザーがいるそうです。

(日経産業新聞、07/11/09)


年に一度、遊牧民が現金収入を得る季節に、
医師が代金回収する仕組み。回収率はほぼ100%。

持続可能な医療モデルになりつつあり、
創業130年の配置薬の老舗、廣貫堂も同国での事業を
拡大中です。


医療制度がまだ整備されていない発展途上国では、
この独特の配置薬システムのニーズはかなり高いようですね。

投稿者 松尾 順 : 08:27 | コメント (0) | トラックバック

早すぎる映画レビュー『AUGUST RUSH』-オーガスト・ラッシュ-(邦題:奇跡のシンフォニー)

先日、某チャリティ試写会に出席し、
米国でも今月21日に封切りされる予定の
デキタテホヤホヤ最新作、

『AUGUST RUSH』-オーガスト・ラッシュ-
http://augustrushmovie.warnerbros.com/

を見てきました。

日本での公開は、
おそらく来年(2008年)春以降でしょう・・・


この映画、あまりにもすばらしくて、
いきなり私の好きな映画ナンバーワン!に
ランクインさせました。

劇場公開したら改めて見に行きます。
DVDも絶対買います。

今はとりあえず、
先行発売されたサウンドトラック(輸入版)を
購入して毎日聞いております・・・


さて、「AUGUST RUSH」の主人公は、
11歳の少年、エヴァン・テイラーです。

彼は生まれた時から、
ニューヨークの孤児院に預けられています。

両親が誰かは知りません。まだ生きているかどうかも
わからない。もちろん顔も見たこともない。

でも、きっといつか出会えると信じています。


彼には天賦の才能が与えられていました。

耳に飛び込んでくる周囲のあらゆる音の中に
「メロディ」を感じることができたのです。


彼は音楽の天才でした。

それもそのはず、
母親のライラはニューヨーク交響楽団に招待され、
協演をするほどのチェロ奏者。

一方の父親、ルイスは、
ロックバンドのボーカリストでした。

エヴァンは、2人の才能を受け継いでいたのです。


ある日、エヴァンは両親を探すために
孤児院を脱走します。

そして、ひょんなきっかけで大道芸人の元締めと
出会い、音楽の才能を見出されます。

そこから、彼はまず、
ストリートミュージシャンとしての道を
歩み始めるのです。


これ以上はネタバレになるのでやめときましょう。


ストーリー自体は、よくありがちではあります。
しかし、脚本、配役、演出、映像、音楽は最高です。

エヴァン役には、
自然な演技が光るフレディ・ハイモア。

『チャーリーとチョコレート工場』
『アーサーとミニモイの不思議な国』

の主役を演じた子ですね。

両親役として、
母親の清楚なチェロ奏者、
ライラにケリーラッセル。

父親のクールなロックボーカリスト、
ルイスにはジョナサン・リース・マイヤーズ。

そして、大道芸人の元締め役として、
私も大好きな名優、ロビン・ウイリアムスが出演。
脇を固めています。

しかしなによりも、
エヴァンを両親の元に導びいていく
音楽のすばらしさ!


初めて手にしたギターでエヴァンが弾く、
幻想的なアコスティックギターソロ。
(押尾コータローを連想しました)

ライラとルイスの住む世界の違いを暗示するように交錯する、
ライラの気品あるチェロ演奏と、ルイスの歌う情熱的なロック。

エヴァンが迷い込んだ教会で出会うゴスペル。

エヴァンが初めて作ったクラシック曲「8月のラブソディ」。


音楽好きにはたまらない映画です。

そして、、たくさんの感動の涙で心を浄化したい方に
お勧めします。

ちょっと早すぎるレビューですけど・・・!


なお、「AUGUST RUSH」とは、
エヴァンのアーティストとしての芸名です。

“The music is all around us.
          All you have to do is listen.”
            - August Rush

 音楽は、僕たちの周りにあふれてる。
ただ耳をすますだけでいいんだよ。

投稿者 松尾 順 : 06:42 | コメント (27) | トラックバック

ドクターの代理人・・・民間医局とは?

「医師のキャリアづくり」を支援するビジネス。

この分野で成功を収めているのが、

(株)メディカルプリンシプル社(以下、MP社)
 http://www.medical-principle.co.jp/

です。


MP社は、端的に言えば、
医師の転職先やアルバイト先を紹介する事業、
すなわち、

「人材紹介業」

を行っています。

医師の紹介先は、もちろん医療機関・施設です。

ただし、この医療機関・施設には、
いわゆる一般の病院だけでなく、介護施設や製薬会社の研究職、
産業医として勤める企業なども含みます。


MP社は、他の人材紹介会社と異なり、

「医師」

だけに専門特化しているのが競争優位性の源泉です。

医師の人材紹介に固有の深い知識・ノウハウを
社内に蓄積、共有してきています。

そして、同社が展開する医師向けのサービスを
包括する名称として

「民間医局」

というブランド名称が与えられています。


さて、MP社と医師との主な接点は、次の3つです。

------------------------------------

1.「民間医局」専任エージェント

人対人のハイタッチな接点。

民間医局の登録会員1人ひとりに専任の担当者が任命され、
まるでメジャーリーガーの代理人(エージェント)のように、
医師の立場に立ち、医師のキャリアづくりのお手伝い
や転職先探し、待遇などの条件交渉を代行しています。


2.「民間医局」Webサイト

Webサイトを通じたヴァーチャルな接点。

民間医局サイトでは、転職やアルバイト先を希望する
医師などが、求人検索や各種サービスを利用できます。

なお、民間医局の登録会員には、
医師、および医学生、研修医だけがなれます。


3.ドクターズマガジン 

ブランディングのための接点です。

医療機関や民間医局の登録会員に無料で配布される
MP社独自発行の専門誌がドクターズマガジン。

同誌では、医師の方にとって有益な各種情報に加えて、
オピニオンリーダー的存在の医師の方々の「人となり」に
フォーカスした記事が掲載されており、MP社に対する
信頼感と高品質なイメージの醸成に寄与しているそうです。

--------------------------------------


ところで、そもそも医師のキャリアはどのようなものなのか、
一般の方はあまりご存じないと思います。


実は、医師のキャリアは、
各医師が在籍している大学病院の

「医局」

によってコントロールされていました。
(現在でも、この仕組みは基本的に変わっていません)

*「医局」について、
 Wikipediaでは次のように説明されています。

「大学医学部・歯学部の附属病院での診療科ごとの、
 教授を頂点とした人事組織」


これは、大企業に入社した社員のキャリアが、
人事部によってコントロールされているのと
ほぼ同じ仕組みだと言えるでしょう。


しかし、このところの医療行政の変化などにより、
大学医局のコントロール力(人事権)が弱まってきました。

このため、医師側としても、
これまでのように医局に命令されるままに異動する

「受身のキャリア」

ではなく、
自らのキャリアを自主的にデザインし、
勤務先・転職先を積極的に選択する

「自律的なキャリア」

の必要性が高まってきています。


こうした、医師の自律的なキャリアづくりのための
サービスを提供しているのが

「民間医局」

であり、「大学医局」で対応しきれなくなった部分を
補完する役割を果たしているのだそうです。


では、MP社の最大の強みはなんだと思いますか?


私の見るところ、それは、

「専任エージェントによるきめ細かいサービス」

です。


同社では、医師の

「転職先紹介」

をメインのサービスとしながらも、
医学生から研修医、そして新米医師からベテラン医師に
至るまでの

「医師の長いキャリア全般」

をカバーする様々なサービスをワンストップで
提供しています。

そして、こうした医師人生の要所要所での点的なサービスを
つなぎ、医師との長い「線的な関係性」を構築・維持するのが
生身の人間である、

「民間医局の専任エージェント」

なのだそうです。


民間医局を利用した医師によれば、
単に求人情報を送りつけてくるだけの競合他社と異なり、
まず直接面談する時間を持ち、自分のキャリアについて
じっくり話すことができる点を高く評価しているとのこと。

ここには、

効率よりも効果、
短期的な収益よりも長期的な収益最大化を狙う

という同社の基本方向がうかがえるように思います。

また、こうした教育に時間のかかる人的なサービスは、
簡単に他社が真似することができません。

つまり、民間医局の最大の競争優位性は

「現場」

にあります。


CRM(Costomer Relationship Management)の本質を
踏まえた、専任エージェントによる

「ハイタッチなサービス」

こそが、MP社を成功に導いたビジネスモデルの核に
あると感じました。


*上記内容は、同社への取材に基づいて独自に
 書き起こしたものであり、文責は当記事執筆者である
 松尾にあります。

*MP社については、INSIGHT NOWの特集、

「Secrets of First Most Only
-なぜ、あの企業は「日本初・日本一・日本唯一なのか-」

で詳細な取材記事(執筆:竹林篤美氏)が来週以降
アップされますのでお楽しみに!


*民間医局Webサイト
http://www.doctor-agent.com/da/member/top/index

投稿者 松尾 順 : 10:48 | コメント (0) | トラックバック

いびつな協調性-「KY」を恐れる心

臨床心理士であり、
心理カウンセリング関連の著作で知られる

諸富祥彦氏(明治大学文学部 教授)

によれば、現代の若者の行動には、

「いびつな協調性」

が見られるそうです。


特に男子学生同士の間でそれは顕著です。

彼らは、

「KY」(空気が読めない)

を極度に恐れており、友人から

「お前はKYだな」

と言われないことに命を懸けているらしい。(笑)


また、ゲイだからというわけではないと思いますが、
ペアルックを着てくる男子学生がいるそうです。

そして、彼女よりも男友達の方が大切。

友人の交友関係を気にして、
携帯のメールをこっそりチェックするとか。

自分以上に親密な友人が他にいるかもしれない・・・
と心配なのです。


まあ、これはかなり極端なケースだと思います。

しかし、過去数十年、
欧米に習って個人主義が志向されてきたはずの日本で、
再び、昔ながらの

「日本的集団志向」

に大きく振り子が戻っているように感じるのは、
私だけではないようです。


さて、諸富氏が示した「いびつな協調性」、
すなわち、過度に相手に合わせようとする行動は、
TVプロデューサーのおちまさと氏が発見した

「鉄板病」

の症状に他なりません。


「鉄板病」とは、常に

「正解ゾーン」

にいることにこだわる病気です。

言い換えると、

「ハズしたくない」「間違いたくない」

という思いに囚われていること。


この結果、

「過度に多数側にいる」

ことを志向します。

そして「予定調和」を好み、
場の雰囲気を壊すことをできるだけ避けようとする。

また、世の中の常識や通説、
多数派の意見を鵜呑みにするため、

「思考停止」

に陥りがち。


おちまさと氏は、
こうした鉄板病に罹った人たちが増えてきたことに
警鐘を鳴らしています。

私も、従来の日本社会に見られた、
ウチとソトを厳密に区別し、ルールも使い分ける

「閉鎖的な集団行動」

を過度の協調性が再び強化し、
社会をよりよいものにしていくために必要な
異端なアイディアや創造性、そして
現状を変えようとする意欲を阻害するのではないか
と心配しています。


それにしても、なぜ、

「鉄板病」

はこれほどまでに勢力を増してきたのでしょうね・・・?


『鉄板病』
(おちまさと著、NHK出版)

投稿者 松尾 順 : 10:59 | コメント (0) | トラックバック

地域密着型SNS・・・JIMOT(ジモット)

近年開始された企業主宰のユーザーコミュニティとして
そこそこ成功していると言えるのは、

・ダイエット食品ユーザーのための
 「リエータカフェ」

・補正下着ユーザーのための
 「ワコール・スタイルサイエンス・スタスタ部」

でしょうか。


(関連記事)

*孤独感を和らげるダイエットブログ

*「愛すべきなまけものたちへ」・・・
ワコール・スタイルサイエンスのWeb-CRM


リエータカフェ、スタイルサイエンスとも女性専用。

どちらも、

「ダイエット」「痩身」

といった女性の切実な願いを支援するコミュニティです。

こうした明確な目的をユーザーが共有しているのが、
両コミュニティ成功の最大の要因でしょうね。


一方、明確な目的を共有しないコミュニティは、
自由度は高いものの、ダイエットのような強いテーマを
設定しにくく、ユーザーを引き付け続けるのが難しい。

このため、運営側は、
コミュニティの活性化に苦労してきています。


そこで、従来型のコミュニティよりも、
人と人の個人的なつながりを形成しやすく、
自分の居場所的な感覚を持てる

「SNS型」

のコミュニティを企業主宰で立ち上げるケースが
ぼちぼち出てきていますね。


たとえば、住友不動産販売では、地域密着型SNS、

「JIMOT(ジモット)」
http://www.jimot.com/

を今年(07年)1月に開設。

当初の9ヶ月で1万人の登録会員を獲得しています。
(日経ネットマーケティング、2007.11)


同SNSを主宰する住友不動産販売としては、

「チラシに代わる自社媒体を持つ」

というのがJIMOT開設の狙いです。


このため、地域限定のマーケティングを標榜。

これまでは、

東京世田谷区と神奈川湘南地区

を中心にユーザーを募集してきています。
(11月から首都圏全域に拡大中)


さて、JIMOTの最大の特徴は、
自分の地元地域を市町村より細かい

「エリア」

単位で登録できることです。
(私の場合、自宅よりも長い時間を過ごす事務所の
 所在地である「東京都文京区本郷」で登録してます)

サイトをごらんいただくとわかりますが、
実にローカルでジモティな話題やイベントが
アップされてます。

コミュニティによっては活発な議論が交わされている
ところもありますが、全体としてはまだまだこれから
ということろでしょうか。


なお、住友不動産販売では、
当初の会員獲得方法として、対象地域に限定した
チラシ配布と、ターゲティングメールを採用しました。

この結果、30-40歳代のユーザーが
全体の7割を占めるSNSとなっています。


実は、SNS最大手、
ミクシィのユーザーの年齢別構成を見ると、

30歳代は24.5%、40歳代は5.6%

しかいません。(07年3月末時点)

つまり、中高年層は、
SNSの未開拓市場と考えられるわけで、
「JIMOT」のようなローカルなSNSが
成功する余地はまだまだ残されていると言えますね。

投稿者 松尾 順 : 08:37 | コメント (0) | トラックバック

木の根っこ問題

「何が問題なのかがわかれば、その問題は解決したも同然だ」

という表現を聞いたことがありますか?

言うまでもなく、問題が特定できなければ、
解決策を考えることができません。

逆に、問題が特定できさえすれば、
解決策は、案外シンプルなものであることが多いですよね。

ですから、何が問題であるかさえわかれば、
解決に大きく近づいたことになるというのは確かです。


ただ、組織上の「問題」を特定するのは
それほど簡単ではありません。

なぜなら、何が問題かということについて、関係者が

「共通の認識」

を持つことが難しいからです。


各関係者が認識している問題が異なると、
それぞれの解決策も異なってくるため、議論が噛み合わない。

その結果、解決策がなかなか決まらないということになります。


こうなるのは、各関係者が目指す目的・目標や、重視点が
それぞれ違うからという点も大きいのですが、そもそも、

何が問題で、何が原因か

といった思考法に慣れていないという理由もあります。


そこで、私は、関係者(プロジェクトメンバー等)の間で、

「木の根っこ問題」

というトレーニングをすることがあります。

これは、

「問題とは何か」

を理解してもらうためのもの。

以前、日経コンピュータに掲載されていた
プロジェクトマネジメントの記事で見つけて、
なかなか面白いと思ったので業務に使わせてもらっています。


では、「木の根っこ問題」が
どんなものか簡単にご紹介しましょう。


次の文章を読んでください。


「道路作業員が、毎日5メートルの道を作っている。
 しかし、ある日は3メートルしか作れなかった。
 調べたら、 前方に障害物があることがわかった。
 それは‘木の根っこ’だった。」


さて、ここで「問題」は何でしょうか?


すんなり問題が特定できることもあります。

しかし、ビジネス的な観点から深読みしすぎたのか、
次のような答えが返ってくることが結構あります。

「障害物にでくわす前提で計画ができていない」

そして、この原因を聞くと、

「障害物にでくわす前提で計画ができていなかった」

と問題と同じ答えになり、解決策はその裏返しの

「障害物にでくわす前提で計画を立てる」

となってしまいます。


一読すると、以上のやりとりには、
なんら「問題」はないように思えます。

しかし、目先にある「根っこ」を
どうするのかということについては
何も答えていませんね。


さて、「木の根っこ問題」の正解は次の通り。

問 題:5メートルの目標に対し、
    3メートルしか道路が作れなかったこと
原 因:木の根っこがあったから
解決策:木の根っこを取り除くこと


正解を聞いてみればなんてことはありませんね。

要するに、問題とは、

「目標と実績のかい離」

のことなのです。

そして、そのかい離を生み出したのが「原因」であり、
その原因を取り除くことが「解決策」なのです。

したがって、問題を議論するときには、
「目標」が何かを念頭に置く必要があるわけです。


先ほどの深読みしすぎたような答え、

「障害物にでくわす前提で計画ができていなかった」

は、3メートルしか道路が作れなかったという「問題」
を生み出す間接的な原因(要因)と言えます。ですから、

問題の「背景」

と考えるべき事項でしょう。


普段なにげなく使っている、

「問題」や「原因」「解決策」

といった言葉は、その意味を十分把握して使うことを
お勧めします。

投稿者 松尾 順 : 11:55 | コメント (1) | トラックバック

「あなたは民事裁判を起こされた」

こう書かれたはがきが届いた女性会社員(47歳)。


この女性が電話をすると、
弁護士などを名乗る4人の男性が

「訴訟取り下げには金が必要」

と現金の振込みを指示。


そこで、この女性、相手に言われるがまま、
1回当たり10万円ずつ146回にわたってATMから送金。

合計1455万円を振り込んだところで、
男性たちと連絡が取れなくなった。

女性は、この時点でようやく

「振り込め詐欺」

と気づいたようです。


だました詐欺師が一番悪いけれど、
この女性の世間知らずというか、お人よしぶりにも
ほどがありますね・・・

なぜ、人はこうやすやすとだまされてしまうのか?

投稿者 松尾 順 : 10:49 | コメント (1) | トラックバック

成人・未成年を自動判別する自動販売機

先日、カメラで捉えた顧客の顔つきを元に、
性別や年齢等を判別するシステムの実用化が近いことを
記事に書きました。

*自動化される顧客情報収集


同様の技術を用いて

成人・未成年

を判別するたばこ自販機が、今月12日に発売されるそうです。
(日経産業新聞、07/11/02)


この自販機は5円玉サイズの小型カメラを搭載、
「成人確認ボタン」を押すと、カメラが購入者の顔を写し、
「成人」と判断されればたばこの購入が可能です。

成人・未成年の判別は、
目や口の周りのしわ、たるみ具合、骨格などで行います。

精度は、10代~60代の500人のテストでは90%。


10代、20代の境目の方など、微妙な年齢層の場合は、

「判別不能」

と表示されるので、免許証を挿入して、
本人確認を行う仕組みです。


でも、すごく童顔でしわが少なく、
肌のハリもある若々しい30-40代の人などが、

「未成年」

と判別されたらどうなるんでしょうね。


たかが自販機の分際で、

「あんたは未成年だからダメよ」

と、たばこの購入を拒否するなんて屈辱的ですよね!

私だったら、メーカーにクレームの電話を入れます。

まあ、私はタバコを吸わないので、
そんなことにはそもそもならないのですけど。

投稿者 松尾 順 : 12:04 | コメント (0) | トラックバック

「味集中システム」とは?

博多発祥、とんこつラーメンの

「一蘭」

はご存知でしょうか?


首都圏には10店舗ほど展開してますが、
まだ知る人ぞ知るという存在でしょう。

私は、事務所に近い、
東京ドームシティ・ラクーア店にたまに行きます。


先日も午後4時ごろ、
仕事のついでに立ち寄りましたが、
店内は満席でした。

おおむねどの時間帯にいっても混んでます。


さて、わたしが「一蘭」をご紹介するのは、
店舗の構造や仕組みが極めてユニークだからです。

こだわりかたが、半端ではありません。

おそらく、創業者はよほどの変人、
いや天才かなと・・・


このユニークな仕組みは、


「味集中システム」

と命名され、特許出願済みです。
(出願番号:特願2003-289989)


席はすべてカウンターのみ。

1席づつ、両脇がパーティション(仕切り壁)で
仕切られているブーススタイルです。

また、正面は、赤いのれんで半分隠されているため、
店員の顔は見えません。彼らの前掛けのおなか部分が
かろうじて見えるだけです。


入り口の自販機で食券を買い、店内に入ったら、
席の埋まり具合を教えてくれる表示板を見ます。

「空」の表示があれば、そのブースに行き、
紙のオーダーシートにスープの味や麺の硬さを記入。
呼釦を押して店員を呼びます。

そして正面に30センチほど開いたすきまから、
顔の見えない店員に、食券とオーダーシートを渡す。

およそ1-2分でラーメンが出てくると、
前のわずかなすきまにも「すだれ」が下ろされ、
ほぼ完全に自分だけの空間になります。


おかげで、食べている間はひたすら

「味」

に集中できるというわけです。


替え玉の注文は、箸袋が追加注文シートを
兼ねているのでそれに記入して呼釦を押せばOK。

誰が追加注文したかは、ほかの客にはわかりません。

ですから、女性の方でも気兼ねなく、
何玉でもおかわりできますよ!


というわけで、確かに「味集中システム」は、
「味」に集中できるようにと、あらゆる工夫が施された

「完成されたシステム」

です。


しかし、ラーメンを食べている自分が、まるで

「食欲マシーン」

になったような気分になることがあります・・・


店頭には、混雑時でも、

「40秒にお一人の割合で、
 ご案内できるようになっています」

といった表示があります。

つまり、「客」自身もこのシステムの一部となり、
流れ作業的にラーメンが作られ、供され、食されている
というわけです。実に効率的なシステム。


また、前述したように、
ブーススタイルのカウンターしかありませんので、
家族だろうがカップルだろうが、それぞれ別のブースに
分かれて入ることになります。

したがって、
店内ではほとんど会話する気が起きません。


ちょっと味気ないですね。
家族連れやカップルは入りにくいでしょう。

そのせいでしょうか、客の多くは一人の男性客のようです。


一蘭のラーメンは、えぐみが少なく、
とんこつスープながら、とても透明感のある味です。

また、ぴりっと辛い「秘伝のたれ」が
アクセントになっていて味そのものもとてもユニーク。

事務所のそばにあれば、
私は、もっと頻繁に通うだろうなと思います。


それにしても、一蘭のラーメンをたいらげて
店を出た時の胃の満腹感と裏腹に、
心に一抹の寂しさが吹き抜けるのは私だけでしょうか。

まだ一蘭を体験されていない方は、
ぜひお試しになり、感想を聞かせてくださいね。


*一蘭Webページ

投稿者 松尾 順 : 11:12 | コメント (6) | トラックバック

「綾鷹」と「一(はじめ)茶織」のすみわけ

日本コカ・コーラが今年10月に発売した、
ペットボトル茶の新商品、

「綾鷹」

をあなたはもう飲んでみましたか?


「綾鷹」は、宇治の老舗茶舗と組んだ商品。

お茶本来の

「にごり」

を活かしているのが特徴ですね。

確かに、急須で入れたお茶にとても近い味わいだと、
私は感じました。

京都の茶舗とのタイアップという点は、
伊右衛門の二番煎じですが、「味」については、
しっかり差別化できているんじゃないでしょうか。


さて、日本コカ・コーラのペットボトル茶としては、

「一(はじめ)茶織(さおり)」

もありますね。


同じお茶カテゴリーなので

「カニバリ(共食い)」

しないのかと気になりますね。

もちろん、コカ・コーラとしては、
その点は考慮済み。


以前ご紹介した、同社の新しい分析手法、

「CBL」(Consumer Beverage Landscape)

に基づき、それぞれ消費者の異なる

「ニードステート」(欲求状態)

に対応し、うまくすみわけられるように
設計されているのです。
(日経情報ストラテジー、December 2007)


「CBL」は、数千人規模の消費者を
対象とするインターネット調査でデータを収集します。

具体的には、対象者が1週間に口にしたすべての飲料の名称や
サイズ、購入・飲用した場所、時間、その時の気分等を把握。

そしてこの調査結果の分析に基づいて、

「飲用機会」

を19種類のニードステートに分類するものです。
このニードステートは、具体的には

「食事との相性」
「気分一新」
「栄養補給」
「自分らしさ」

などの名称が与えられています。


「CBL」によれば、綾鷹が対応するのは、

「リラックス系」

のニードステート。


一方、「一(はじめ)茶織」が対応しているのは、

「リフレッシュメント系」

のニードステート。


端的に言えば、

・綾鷹は仕事の合間に飲みたくなるもの
・一(はじめ)は、休日に飲みたいもの

という違いになります。

コカ・コーラでは、綾鷹の発売に当たって、
30-50代の男性が働く職場に100万本以上の
無料サンプルを送るというキャンペーンを
行いました。


これは言うまでもなく、

「リラックス系」

のニードステートを意識したものですよね。


なお、同社の旧ダイエットコークを改称した、

「ノーカロリーコカコーラ」

と、今年7月発売の

「コカ・コーラ ゼロ」

も商品特性としてはほぼ同じですが、
やはり対応するニードステートが異なるように、
CBLに基づいて開発されています。


消費者の性別、年齢等の

「デモグラフィック属性」

だけでなく、飲むときの気分のような

「心理的(サイコグラフィック)属性」

を加えたセグメンテーション、ターゲティングを
行えば、商品開発の精度を高めることができると
いうわけです。


(参考記事)
*コカ・コーラの「CBL」:消費者調査の新手法

投稿者 松尾 順 : 09:12 | コメント (2) | トラックバック

人工生命体Boidsの基本ルール

空を飛ぶ鳥の群れや、あるいは
水の中の魚の群れとそっくりの動きをする
コンピュータ・シミュレーションがあります。


これは、ソニーコンピュータエンタテイメントの
米国研究開発部門で働く、クレイグ・レイノルズ氏が
開発した「人工生命体」です。

「Boids」(ボイド)

と名づけられています。

*シミュレーションはこちらで見ることができます。

まるで生きているかのように、
群れをなして飛び回るボイズの動きは、
次のわずか3つの行動ルールに基づいているだけです。


-----------------------------------

1 セパレーション(Separation):分離

  →仲間に近づきすぎたら離れる

2 アラインメント(Alignment):整列

  →仲間と同じ方向に同じ速度で飛ぶ

3 コアージョン(Cohesion):凝集

  →仲間の中心方向に飛ぶ

------------------------------------


「Boids」の動きは、
鳥でいえば「飛行」を模したものになっていますが、
鳥と同じく

「群れる動物」

である「人間」の社会的活動の多くは、
こうした基本的なルールが背景にあると考えても
いいのではないでしょうか。


以前から何度か書いてきたように、人間の3大本能は、

・食欲
・性欲
・集団欲

です。つまり、食欲、性欲と並んで、

「群れたい」

というのはDNAに埋め込まれた本能です。


これは、上記の3つのルールの中では、

・コアージョン:凝集

に該当する行動になるかと思います。


要するに、仲間同士で寄り集まること。

こうして、外敵から身を守ったり、
お互いに助け合って生きていこうとするわけです。


さて、集団を維持するためには、
構成員があまり身勝手な動きをするわけにはいきません。

そこで、お互いの動きを見ながら同調しようとします。


これは、

・アラインメント:整列

のルールに該当しますね。

社会現象におけるトレンド、ブームの発生は
結局のところ、こうした、他の人に合わせようとする
行動が根底にあるということだと思います。

ついでながら、他の人の意見や行動に基づいて
物事を判断したり、自分の行動を決める傾向のことを
社会心理学では、

「社会的証明」

と言います。


さて、人は群れたがるとはいえ、
一方で「個」としてのアイデンティティを維持したいとう
欲求もあります。

自分という存在を他と明確に識別したいということです。
このため、必要以上に近づきすぎるのを避けようとする。

これは、

・セパレーション:分離

というルールに基づく行動として現れることになります。


「群れたい」という「コアージョン」(凝集)と
「離れたい」という「セパレーション」(分離)は、
相反する行動ですが、鳥にしろ、人間にしろ、

くっついたり離れたり
(同調したり、しなかったり)

を繰り返しながら集団生活をしているということでしょう。


そして、この行動のブレは、
当然ながら消費行動にも反映されてきます。


・新商品が出たばかりのころに手を出すのは、
 集団の変わり者だけ。

・でも、買う人が増えてくると、
 「みんな買っているから」というだけで買いだす。

・そうして、多くの人に行き渡ってしまうと、
 みんな同じだと、つまらなく感じてしまって買わなくなる

投稿者 松尾 順 : 11:11 | コメント (0) | トラックバック

自己流「ペルソナ」・・・ジャガビーのケース

昨日のカルビーつながりで、
もうひとつ取り上げたいと思っていたネタがあります。

今回は、「ジャガビー」の商品開発に、
「ペルソナ法」的アプローチが採用されていたという話です。


新商品やWebサイト等の開発にあたって、
最も重要で象徴的な顧客像(顧客モデル)を詳細に描く

「ペルソナ法」

については、これまでさまざまな形でご紹介してきました。

また、私自身、実際の業務でもペルソナ法を活用して、
Webサイト等を設計してきた経験がいくつかあります。

このところ「ペルソナ法」が注目を浴びているのは、

「体系的な方法論」

として確立され、きちんとした「ノウハウ」として
学ぶことが可能になったからです。


ただ、ペルソナ法のノウハウの確立以前から、
ヒットメーカーとして名を馳せている商品開発者の多くは、
ペルソナ法的なアプローチが有効だとわかっていました。

つまり、漠然としたマスを想定した商品は売れない。

むしろ、ターゲットを絞込み、詳細に規定した
プロフィールを持つユーザーを想定した商品の方が、
結果的に大衆の心を掴むことができるということです。


さて、現在、バカ売れしているカルビーの「ジャガビー」。

確かにおいしいですよね。ポテトチップスとはまた異なる
さくっとした食感が新鮮。私も大好きです!

*ジャガビーのサイト


さて、「じゃがりこ」以来の大ヒット商品になっている
同商品の開発に当たって、開発担当の方は、
ペルソナ法的なアプローチを採用していました。
(ペルソナ法のことは、当時はまだ知らなかったそうです)


「ジャガビー」が狙ったのは、
スナック菓子をあまり買わない20-30代の独身女性。

ただし、単に年齢と性別だけの規定だけでなく、
対象とする顧客のライフスタイルや価値観など、
詳細なプロフィールを作成しています。


具体的には、対象とする女性がよく読む雑誌から、
ライフスタイルを類推、また独身の女性社員とのミーティング
を通じて顧客像を形成していきました。


そして最終的には、

「27歳独身女性、文京区在住、ヨガと水泳に凝っている・・・」

といった記述が並ぶ1枚のプロフィールにまとめています。


このプロフィールには、
顧客像のイメージに近いタレントの写真も貼ったそうです。


カルビーが行った上記の手順は、
標準的なペルソナ法の流れを踏んではいないという点で、

自己流の「ペルソナ」

と呼べますが、「ジャガビー」のヒットに
大いに貢献したものと思われます。


ペルソナ法の最大のメリットは、
ありありとイメージできる顧客像を描くことで、
真の意味での

「顧客の視点」

で、商品開発やマーケティングコミュニケーション展開が
できること。

また、そこに、特定の顧客像という「一本の軸」が
あるため、方向性がブレにくいことにあります。


「ジャガビー」の場合、ペルソナで描いた、
おしゃれで情報感度が高い都心の独り暮らしの女性の部屋に
置かれても違和感がないような「落ち着いたデザイン」が
採用されました。

同商品のサイトも、
ターゲットの部屋をイメージしたデザイン。

また、TVCMに出演しているモデルのヨンア氏。

彼女は、ファッション雑誌「Oggi」で活躍していますが、
ヨンア氏も、「Oggi」もターゲットの視点で評価した結果の
選定だそうです。


「ジャガビー」の販路は、原則としてコンビニのみ。

男性客の多いコンビニに、
独身女性をターゲットとする商品を置くことに対しては、
当初不安視する声もあったようです。

しかし、実際には、
購入者の半数は女性が占める結果となり、
大ヒットへとつながったというわけです。


(参考情報)ITpro CIO情報交差点
カルビー 自己流「ペルソナ」で大ヒット商品生み出す


(ご参考)ペルソナ関連記事

*「ユーザビリティ」から「デザイアビリティ」へ

*ペルソナマーケティング(BtoB事例)

*ペルソナマーケティング(BtoC事例)

*その商品は、どんな奴だ。

*できるだけリアルな「顧客の仮面」をかぶる方法

投稿者 松尾 順 : 11:09 | コメント (4) | トラックバック

ナレッジマネジメントの「コロンブスの卵」

社員一人ひとりが持つ知識や情報を企業全体で共有し、
有効活用ができるような仕組みを

「ナレッジマネジメント」

と呼びます。


この「社内情報の共有」が
とりわけ有効なのは、営業現場ですね。

あるクライアントでうまくいった提案(成功事例)や
競合情報などを営業担当者間で共有し、横展開を図ることで、
全社的な営業活動を成果につなげやすくなるからです。


ですから、近年、
営業現場のナレッジマネジメントを推進するため、
単に営業活動の進捗状況等を管理するだけでなく、
営業活動を通じて得られた情報を入力・共有できる機能も備えた

「営業支援システム」(SFA:Sales Force Automation)

の導入が盛んです。


ただ、こうしたITシステムの導入は比較的簡単ですが、
運用(定着)はとても難しい。

というのも、一日外回りで忙しい営業マンにとって、
自分が持っている情報を自分で入力するのは、
実に面倒なこと。

営業日報の作成だけでもけっこう面倒なのに、
それ以外にこまごまと情報を入力する時間なんか取れないよ
ということで、なかなかうまくいかないのです。


実は、カルビーも、
当初導入した営業支援システムでこの問題に直面しました。


同社の約250人いる営業担当者は、
1人あたり約40店舗を担当、情報収集をしています。

彼らは、

・棚の品揃え
・同社商品がお客様とどう受け入れられているのか、
・小売店が同社に対してどう思っているのか

などの情報をシステムを通じて全社で共有できるように
しています。


当初は、営業担当者が帰宅後、
自宅のパソコンから情報を入力する仕組みとしていました。

ところが、それだと1時間も2時間もかかってしまう。

同社の営業担当者は、主婦が多いそうですが、
この仕組みだと、ご主人や子供の世話をする時間が
なくなってしまうと苦情が殺到したそうです。


そこで、解決策として、
同社は、携帯電話を活用することにしました。

具体的には、
携帯電話を使って商品のバーコードを読み取り、
商品情報を取り込めるようにしたのです。

こうすることで、店舗の品揃え情報の収集を
簡単にしたわけです。


もうひとつは、営業担当者がお店で気づいたこと、
お店の人から聞いたこと、お客さまから聞いたことなどを
自分で入力するのではなく、コールセンターに電話して、
コールセンター側で入力するようにしました。


なるほど、

言われてみればそんなやりかたもあったなあ!

と思いませんか?


私が、同社のこの話を初めて聞いたのは
数年前のことでしたが、その時は、

「コロンブスの卵」

的なアイディアだなあと感心したものです。


よく考えてみれば、
営業担当者自身が情報を入力しなければならない
必然性はありません。

カルビーのように、
コールセンターのオペレータとの連携プレーで情報を
蓄積すれば運用が円滑になりますよね。

実際、この仕組みに変えたおかげで、
どんどん情報が集まるようになり、
営業担当者の家庭も円満になったそうです。


さらに興味深いのが、
この仕組みには、思いもしなかった別のおまけが
ついてきたことです。


コールセンターの入力担当者は、
日々、営業から寄せられた情報をシステムに
入力しています。

この時、入力担当者の頭の中にも、
それらの情報が入るわけです。

すると、コールセンターの担当者自身も、
営業情報の中に新たな発見や気づきを得るようになった。


つまり、

「ナレッジの創造」

が、営業とコールセンターの情報のやりとりを
通じて起きるようになったのです。


参考情報:NBonline IT経営問答
*「馬鈴薯の底力」をイノベーションで引き出す

投稿者 松尾 順 : 10:44 | コメント (2) | トラックバック

いつまでもデブと思うなよ!

1年間で50キロもの減量に成功した岡田斗司夫さん。

ベストセラーになってる

『いつまでもデブと思うなよ!』
(岡田斗司夫著、新潮新書)

で岡田さんが提唱するダイエット法は、

「レコーディングダイエット法」

ってやつですね。

具体的には、

毎日自分が何を食べたのか、また可能であれば
摂取カロリーを食べた後にすぐにメモする

だけ。

食事内容をきっちり「記録」するという厳格なやり方ではなく、
メモへのなぐり書き程度でも良いという敷居の低い方法。


私は、最近ちょっと

「おデブちゃん」

になりつつあり、上記本を買ってこの方法を実践してみるか、
でも、ダイエット本を買うほどまだ太ってないぞ(認めたくない)
という心の葛藤に悩んでいます。(笑)


ところで、岡田さんのインタビュー記事を読むと、

「レコーディングダイエット法」は、

食べたものをメモするだけでいい

ということが強調されすぎてますが、
重要なのは、記録することを通じて、
1日あたりの摂取カロリーを一定以下に抑えることです。


岡田さんによれば、

「1日1500キロカロリー」

に抑えるように食事量を調整することを

「ゲーム」

のように楽しめるようになれば、あまり苦にならないとか。


結局のところ、「レコーディングダイエット法」も、
「消費カロリー」以下に「摂取カロリー」を抑えれば
自然にやせるという単純な原理に基づいているわけですね。

投稿者 松尾 順 : 01:11 | コメント (4) | トラックバック

花王の「快適感」定量分析

ちょっと前になりますが、数年前に花王に転職した、
前職の広告会社の元同僚(女性)と会う機会がありました。

花王は、さすがに日用品メーカーとして長年トップの座に
君臨してきただけあって、製品開発に対するこだわりは、
徹底しているようですね。

ひとつの新製品を出すのにも、
品質や耐久性、安全性などの維持、確保のための
実験や検証に、莫大な時間とお金をかけているそうです。

彼女も、広告会社から花王のようなトップメーカーに
移ってみて初めて、

「ものづくり」

の難しさや厳しさに驚いたようです。


ただ、いくら普段の生活で使う必需品とはいえ、
単に機能や品質が優れているだけでは売れなくなったのが
日本のマーケットですよね。


2004年に就任した尾崎元規社長は、
この点を強く認識しており、就任当初から

「高付加価値戦略」

を推進してきました。


具体的には、

・機能的価値
 (きっちりとした技術に裏づけされた機能的なメリット、
  効果を実感できる価値)

・情緒的価値
 (その商品を使えばきれいになる、わくわくするという
  快適さを与える価値)

の2つの価値の向上に力を入れてきています。


その実際の成果として、以前は、

「クイックルワイパーハンディ」

の事例をご紹介したことがありました。

*情緒価値重視の製品開発戦略

また、2003年に発売したヘアケア製品、

「アジエンス」

も、東洋人に多い「黒髪」をより美しく見せるという点を
機能的価値、情緒的価値の両面で追求することによって、
ヒット商品へと育てることに成功してますね。


さて、花王では、こうした高付加価値戦略における

「情緒価値」

向上を支える調査・分析手法を編み出しています。


具体的には、

消費者が「快適感」を強く感じる商品作りを目的として、
日常生活の様々なシーンで感じる快適感を数値で測定する方法

だそうです。


ここで、同社が定義する快適感は次の16種類。
これらは「感情項目」と呼ばれています。

・熱中・興味
・対人的な好感情
・強さ
・やる気・前向き
・豪華さ
・ときめき
・自身
・感動
・安静・リラックス
・満足・幸福
・爽快・リフレッシュ
・親和・愛情
・活気・陽気
・気楽・気軽
・開放感
・達成感

実際の調査のやり方ですが、たとえば、

「バーゲンで買い物をする時の快適感」

「テーマパークで遊ぶ時の快適感」

など、さまざまな「生活シーン」において、
上述の16種類の感情項目のそれぞれについて
消費者に

「全く感じない」(0)

から、

「はっきり感じる」(4)

までの4段階で評価してもらいます。


花王が実施した調査(調査回答者数:3158人)
では、上記2つの生活シーンについては、

・ときめき
・満足・幸福
・活気・陽気

の項目の評価が高かったため、
同社は、これを「娯楽型」の快適感と
名づけています。


花王によれば、日常生活における快適感は、
16種類の感情項目の分布から判断して、
次の6パターンに大別できるという分析結果を
明らかにしています。

・娯楽型
・癒し型
・満足型
・愛情型
・達成型
・ときめき型


このところ、マーケティング研究の分野では、
「情緒価値」とほぼ同じ意味の

「感性価値」

に対する研究や実務への適用が進んでいますが、
花王が推進している

「情緒価値の定量分析に基づく商品開発」

の動向は、今後も要チェックです。


(参考記事)
*花王、商品の“情緒的価値”を数値化
(日経ビジネスオンライン 日経情報ストラテジーニュース)

投稿者 松尾 順 : 10:59 | コメント (0) | トラックバック

星野リゾート「白銀屋」のサイトリニューアル事例

ある企業さんのプレゼント企画に応募したら、運よく当選して賞品の

「日経ネットマーケティング」創刊号(2007.11)

をいただいたので、早速読んでみました。

事例が豊富に掲載されていて、
なかなかいい専門誌に仕上がっていると思います。


さて、同誌の事例のひとつとして、
星野リゾートのユーザビリティテストの詳細が
紹介されていました。


ちょっと前に書いた記事、

*ホームページのユーザビリティテスト結果をどう解釈するか?

で、星野リゾート代表取締役、
星野佳路氏の講演内容をご紹介しました。

この中で、星野氏は、同社が運営する宿泊施設のWebサイトに
対して行ったユーザビリティテストの結果、

・想像以上に、写真のインパクトが大きいこと
・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと
・アクセスマップも非常に重要だということ
・デザイン的に素晴らしいホームページが、
 予約獲得に直接結びつかないケースがあるということ

などがわかったと話されているのですが、
具体的に、どのサイトにどんな問題点が発見できたのかを
日経ネットマーケティングの事例記事で知ることができます。


対象サイトは、山代温泉の「白銀屋」です。

*白銀屋
http://www.shiroganeya.co.jp/


このWebサイトではユーザビリティテストの結果を基に、
現在のWebサイトにリニューアル(2006年11月)したところ、

予約率55%増(2007年8月の前年同期比)

という成果を収めています。


リニューアル前のWebサイトは、白銀屋の新装オープンに
合わせて2005年8月にオープンしたばかりでした。

旧サイトのデザインは、残念ながらネット上で
閲覧できない(archive.orgでも表示されず)ので、
日経ネットマーケティングの記事をぜひ見てください。

確かに、旧サイトは、
洗練されたカッコいいデザインではありました。


しかし、星野リゾートが、
サイトの効果測定や設計、開発を行っている「ビービット」
に依頼して、サイト上のユーザーの視線を追う

「アイトラッキング調査」

を旧サイトを対象に行ったところ、
以下のようなことがわかったそうです。


・写真から写真へと目線が移動していた

・「時の旅人になる」といった抽象的なキャッチフレーズは
 ほとんど目に留まらずスルーされていた


また、ユーザーインタビューの結果、
旅館サイトに求めている情報は、

食事、客室、風呂

の3つに集中していることが確認できています。


これらの結果を受けて、星野リゾートでは、
92項目のユーザビリティガイドラインを作成し、
サイトのリニューアルを行ったわけです。


記事で紹介されている改訂のポイントは次の3つです。


1.トップページの改善

 関心が高い、「食事」「客室」「温泉」を目立つ位置に置く。
 
 現サイトをみていただくとわかるように、画面中央に
 大きくこれらの見出しが置かれていますよね。

 旧サイトでは、「北大路魯山人ゆかりの宿」といった
 コンセプトの解説がメインに置かれており、上記のような
 見出しは左下に小さく表示されていてあまり目立たなかった
 のです。


2.ナビゲーションの改善

 すべてのページに、宿泊予約へのリンクを
 上部、下部、右サイドの3箇所に表示
 こうすることで、ユーザーの予約行動を容易にしています。

 旧サイトでは、予約は右下に1つだけ控えめに置かれて
 いただけでした。


3.泊まりたくなる演出

 ユーザーの目線で写真を選択。おいしそうな料理や清潔感
 あふれれう広々とした風呂の写真を掲載。

 旧サイトでは、木々の間から部屋を望む構図や、
 照明を落とした食事処を遠巻きに撮影したものなど、
 えん曲なイメージがほとんどでした。

 確かに、こんな写真ばかりでは、ユーザーの泊まってみたい
 という欲求をかきたてるのはなかなか難しいでしょうね。


結局のところ、白銀屋の旧サイトでは、

“ガイドラインに沿って旧サイトを見ると、
 デザインの良しあし以前に、ユーザーが期待する情報が
 提供できていなかった”(サイトを手がけた黄日錫氏)

ということです。


Webサイトにおける「デザイン」は、
そもそも、ユーザーの求める「情報」や「機能」を
的確に提供するための

「手段」

であるという基本が、
旧サイトでは押さえられていなかったということでしょうね。


最後に、この事例記事に掲載されている
星野リゾートの「ユーザビリティガイドライン」(要旨)
の一部を引用しておきます。

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・全ページから宿泊予約のページにアクセスできる

・注目度の高い「客室」「食事」「風呂」のメニューが
 目立っている

・写真は抽象的なものでなく、被写体が明確になっている

・写真の近くに訴えたいフレーズ(言葉)が置かれている

・Flash 動画などでの再生待ち時間がストレスにならない

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投稿者 松尾 順 : 10:22 | コメント (4) | トラックバック