購買代理店「ミスミ」のコア・コンピタンス修正

B2Bの通信販売事業の先駆者、

「ミスミ」

はご存知でしょうか?

*株式会社ミスミグループ本社


ミスミは、主にメーカー向けに、
中間財である各種部品をカタログを通じて販売する
営業マンのいない専門商社として急成長を果たしてきました。


この成長の鍵となったのが、

「マーケットアウト」や「購買代理店」

といった発想に基づく事業展開です。


「マーケットアウト」

は、自社が開発したいもの、開発可能なものを作るという

「プロダクトアウト」

と対極にある考え方です。


すなわち、「マーケットアウト」とは、
マーケット(市場=顧客)の声を聞き、
顧客が求めているものを部品メーカーに開発してもらい、
販売するという「御用聞き」に近いビジネスモデル。

単純に、既存の部品を仕入れて販売するだけ
ということはしていませんでした。

したがって、同社は「商社」ではありますが、
製品企画を自社で行い、生産を外部に委託する
ファブレス企業のはしりと言っても良いかもしれません。


また、

「購買代理店」

とは、

部品メーカーの代理として部品を売るという
「販売サイド」寄りの意識の強い

「販売代理店」

と異なり、「購買サイド」に立って、
部品の品揃えやサービスを充実させるという考え方。

すなわち、「マーケットアウト」を実践する企業のあり方を
端的に示しているのが「購買代理店」というコンセプトです。


これは、インターネット時代における、

「エージェントサービス」
(販売サイドではなく、利用者サイドの代理人として振舞うモデル)

を先取りしたものだったと言えます。


さて、ミスミは、ビジネスモデル自体も革新的でしたが、
組織づくり、組織運営においてもさまざまな先進的・実験的な
取り組みをしてきていますね。


いわゆる

「持たざる経営」

を標榜して、

IT部門を丸ごとアウトソース。コールセンターもアウトソース。
人事部門も廃止して、人事考課を外部のコンサルに依頼、
市場価値(マーケットバリュー)で社員を評価するという試みも
やってきました。

また、事業分別のチーム制を導入し、
毎年ゼロベースで各事業のリーダーを選び、
所属メンバーも再編成するということをやってきました。

つまり、変化に即応しやすい柔軟な組織づくりを目指したわけです。


ミスミが上記のような先進的な組織づくりに取り組んだのは
主に90年代前半のことでしたが、同社の事業自体は順調に発展し、
90年代前半の年商約200億円に対し、現在は同1100億円を
超えています。

現社長は、創業者の田口弘前社長から強く請われて引き受けた
経営コンサルタントとして著名な三枝匡氏です。


三枝氏は、2002年に代表取締役社長・CEOに就任後、
同社の行き過ぎた「持たざる経営」の修正を行ってきました。


まず、営業マンによる訪問セールスを導入。

コールセンター、配送センターなどのアウトソースの
見直しにも着手しています。

IT部門も社内体制を強化したばかり。


三枝氏は、こうした見直しについて次のように語っています。
(日経情報ストラテジー、December 2007)


“持たざる経営という発想の下に、間違えた施策も
 あったと思います。”

“うちにとって最大の営業部隊はコールセンターなんですけど、
 それを外注業者にやらせちゃうと、お客さんから怒られる、
 怒鳴られたりする痛みを感じるべき社員がそこにいません。”

“流通センターが1つは自前ですが、もう1つが建物丸ごと
 外注業者です。ではどちらが仕事の質が高いか、もう歴然と
 自社倉庫の方が高いんですよ。”

“ものづくりをしていない商社が、配送するとか、
 受注するとか、商社という業態における最も重要な機能を
 全部外に出しちゃって、いったい何をやるのと。
 ですから、 自社の倉庫や配送センターへの切り替えも
 今やっている最中です”

メーカー(販売者)と購入者をつなぐ「商社」である
ミスミが核とすべき強み、すなわち

「コア・コンピタンス」

についての見極めが不十分であったことを三枝氏は
率直に指摘していますね。

確かに、「購買代理店」を標榜し、
顧客密着型のビジネスモデルであったにもかかわらず、

「顧客接点」

の多くを外部に任せてしまったのは
不適切な戦略だったと言えます。


また、三枝氏は、

“コンピュータに関しても、外注任せで担当組織が
 あまりに弱くなっちゃって、IT(情報技術)活用に対して
 ミスミは完全に出遅れました。IT関係も組織を再構築して、
 今年の4月にはEC事業部を発足させました”

と述べています。


同社が、基幹情報システムを丸ごとアウトソースしたのは
93年のことでした。

当時は「インターネット以前」でしたし、
ITは同社のコアコンピタンスではないと考えたのも無理は
ありません。

しかしその後のネット革命の進展によって、
「IT」は、通販会社のミスミにとって極めて重要な

「コアコンピタンス」

であると考えざるを得なくなったのです。

コアコンピタンスも、
時代の変化に応じて変えなければならないと言うこと
でしょう。

投稿者 松尾 順 : 11:34 | コメント (0) | トラックバック

ソーセージは赤いもの

先日、日本ハムで多数のヒット商品の開発を手がけた
伝説のマーケターの方の話を聞きました。


私くらいの年代(40代)が小さかった頃、
つまり昭和40年代に、お弁当などに入っているソーセージと言えば、

「赤いもの」

でしたよね。

あの色はもちろん合成着色料の色です。

そして、中身は、魚肉、豚肉、牛肉などを
ミックスしたものが主流でした。


当時、その伝説のマーケターは、
品質にこだわった商品を開発しようと、
着色しない自然のままのソーセージ、
また中身はポーク100%など、高品質の製品を
いろいろと出したそうです。

ところが、手を変え品を変え、
どんなに優れた高品質の製品を出しても、
見た目の色が「赤」でなければまるで売れなかったのです。


食品の添加物には敏感な今の私たちには、
とても信じられない驚愕の話ですよね。


さて、ユーザーが購入に当たって重視する品質のことを

「知覚品質」

と呼びます。

これは、製品の「客観的な評価」ではなく、
ユーザーがどう感じているかという「主観的な評価」のこと。


昭和40年代のソーセージの場合、

「色が赤いこと」

というのが、ソーセージ選択における
最も重要な「知覚品質」だったというわけです。


新製品開発に当たっては、

ターゲットユーザーの「知覚品質」を
的確に理解していないと売れる商品は作れない

ということをこの話は教えてくれますね。


類似の話では、以前もちょっと書きましたが、
米国進出に失敗した化粧品メーカー、

「ファンケル」

の例がありました。


日本では、ファンケルの無添加化粧品は、

「肌に優しい」

ということが評価されて、
瞬く間に大手化粧品ブランドの地位を確立しました。


ところが、米国の女性には受け入れられませんでした。

その理由のひとつが、

「刺激が少なすぎて使った気がしない」

ということらしいです。

実は、化粧品のピリピリする刺激は、
配合されている添加物のせいなんですが。


ユーザーの「知覚品質」って、
どちらかといえば右脳的・感覚的な判断ですから、
必ずしも合理的なものではないということがよくわかりますね。
(もちろん、食品にせよ、化粧品にせよ、
 添加物は一律に良くないと考えるべきではないでしょうけど)

投稿者 松尾 順 : 09:59 | コメント (0) | トラックバック

もうひとつの「基本的欲求」

人の「心」をより的確に読むための第一歩、それは、人が持つ

「基本的欲求」

にはどんなものがあるかを理解しておくことです。


「基本的欲求」と言えば、誰もが思いつくのは

「マズローの欲求階層説」(「欲求5段階説」などとも言う)

でしょう。


この理論を簡単に説明すると、

人の欲求には、低次元から高次元へと
以下の5つの基本欲求があると考えます。

------------------------------------

1.生存の欲求(食欲、性欲など根源的な欲求が満たされたい)
2.安全の欲求(生命が脅かされない、安全に暮らしたい)
3.社会的欲求(所属や愛が欲しい)
4.自我(自尊)の欲求(社会の中で承認、尊敬を得たい)
5.自己実現の欲求(自分らしさを発揮したい)

------------------------------------

そして、低次元の欲求が満たされることで、
初めて次の高次元の欲求へと移行するというものですね。


この理論は、

売れる商品の開発や、
人の琴線に触れるコミュニケーション施策

を考えるに当たっても確かに有用ではあります。

しかし、もうひとつ使いにくいと感じたことはありませんか。

たとえば、

「自己実現の欲求」

は、私は正直、詳しい解説をいくら読んでも、
わかったようでよくわかりません。
(それは、私の勉強不足ですね・・・確かに。すいません!)


また、マズロー説では、
エンタメ系のヒット商品が売れる理由が
うまく説明できないのです。

たとえば、

「ゲームなどをして楽しみたい」

という欲求は、上記の5つの欲求のどれにも
該当しないように思います。


というわけで、マズローの

「欲求階層説」

は、理論としては学ぶ価値があるものの、
現実への適用にはやや無理があると
私は考えています。


さて、実はもうひとつの

「基本的欲求説」

があります。


それは、

「リアリティセラピー」(現実療法)

の考案者として知られる米国の精神科医、

ウイリアム・グラッサー博士
が提唱しているものです。


グラッサー博士によれば、
人は次の5つの基本的欲求を持っています。

------------------------------------

1.生存の欲求
空気や水、食べ物、住居、睡眠など、
  生きていくために必要なすべてに対する欲求

2.愛と所属の欲求
  家族、友人、会社などに所属し、愛し愛される
  人間関係を保ちたいという欲求

3.自由の欲求
  自分の考えや感情のままに自由に行動し、物事を運び、
  決断したいという欲求。誰にも束縛されずに自由でありたい
  という欲求

4.楽しみの欲求
義務感にとらわれることなく、自ら主体的に喜んで何かを
  行いたいという欲求

5.力の欲求
  自分の欲するものを、自分の思う方法で手に入れたいと
  思う。人の役に立ちたい、価値を認められたいという欲求

------------------------------------

そして、人は、
これらの内面から来る欲求に動機付けられて
行動するということです。

なお、5つの欲求のうち、

「力の欲求」

は「人類」だけが持つ欲求だそうです。


上記の欲求は、
マズロー説と一部重複していますね。

しかし、グラッサー説独自の

・自由の欲求
・楽しみの欲求
・力の欲求

の捉え方は、人間のさまざまな行動の背景にある心理を
もっとうまく説明できると思いませんか?


グラッサー博士の諸理論は、私もまだ学習中ですので、
今はまだ聞きかじり程度のお話しかかできませんが、
今後も記事のテーマとしてご紹介していきたいと思います。


なお、マズロー説の

低次元から高次元へと欲求が移行する

という考え方(仮説)は、
現在の心理学では否定されており、
マズロー自身も、この点は間違いだったと認めています。

実際には、
5つの欲求の強弱の度合いが人によって異なる
というのが現在の見方です。

グラッサー説も、
5つの基本的欲求があるということは言っているだけで、
欲求を段階的に移行するようなものとは見ていません。


*グラッサー説の説明は、

『グラッサー博士のモチベーション・フォーラム2007』

のWebサイトの内容、
および私が直接聴講したグラッサー博士の講演内容を
元にしています。

投稿者 松尾 順 : 12:34 | コメント (0) | トラックバック

実用化近い電気自動車

幕張メッセで開催される

「東京モーターショー2007」

が開幕しましたね。

今年は、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない、
いわゆる「エコカー」の中でも、「次世代エコカー」の

「電気自動車」

が、注目株でしょうか。

「電気自動車」の実用化が、
いよいよ射程距離に入ってきてますから・・・


会社の不祥事では赤福の大先輩(笑)と言える
三菱自動車は、電気自動車をテコにした

ブランドイメージの回復

を狙ってるようです。


このところ、同社の電気自動車、

「iMiEV」

のTVコマーシャルが盛んに流れてますよね。


「iMiEV」は、家庭のコンセントから充電可能。

TVコマーシャルの中に登場している
実験車両(東京電力など電力会社の業務用)は、
1回の充電で80km走ります。

業務用としては十分な走行距離だそうです。

三菱自動車としては、07年度中に
これを160kmまで伸ばすことを目標に掲げています。

まあ、一般ユーザーが不満なく乗れるためには、
1回の充電で最低500km(東京-大阪間程度)は走らないと
駄目ですけどね。


ところで、エンジンを使わず、
モーターだけで動く電気自動車の特徴のひとつは、
飛びぬけた「静粛性」ですよね。

走行音が静かなのは、
乗ってる人にとってはありがたいこと。

しかし、歩行者にとっては、
車が接近していることを「エンジン音」で知ることが
難しくなるわけです。

なんだか人身事故が増えそうじゃないですか?


ですから、おそらく、事故防止の観点から、
人工的に適度な音量のエンジン音を作り出すといったことが
求められるでしょう。

ケータイのカメラのシャッター音が、
犯罪防止の観点から作られているのと類似の対応ですね。


静粛性が売りにもかかわらず、
わざわざノイズを作り出すのはちょっと変な対応
ではありますが。

投稿者 松尾 順 : 06:48 | コメント (2) | トラックバック

キリン・ザ・ゴールドの誤算

キリン・ザ・ゴールドって、

「プレミアムビール」

じゃないんですが・・・

でも、プレミアムビール(値段高いやつ!)って
思ってませんでした?


「キリン・ザ・ゴールド」は、キリンにとっては17年ぶりの
大型定番ビールとして、満を持して投入した新ビールでした。

しかし、あいかわらず苦戦中のようです。


苦戦の理由は、たいして違いが感じられない平凡な味、そして
あえてそうした‘控えめ目’のデザインが大きいと思いますが、

「ゴールド」

という名称が与えるゴージャス感が、

「プレミアムビール」

を連想させたことも販売不振の一因じゃないかと思います。


「キリン・ザ・ゴールド」のメインターゲットは
どちらかと言えば、おいしさよりも安さを求める若年層。

プレミアムビールだと勘違いされると厳しかったですね・・・

投稿者 松尾 順 : 07:04 | コメント (0) | トラックバック

「着地型旅行プラン」の充実に期待!

あなたは、旅行は好きですか?
国内旅行にはよくいきますか?


私は旅行が好きです。
とはいってもそう頻繁に行けるほど時間も金もなく、
年に4回ほど、国内旅行(1-2泊)に行く程度です。


国内旅行の行き先としては「温泉地」が多いのですが、
毎回悩むのは、温泉宿にチェックインする前の時間と、
チェックインした後の時間に何をするかです。


周辺の有名な名所・名跡(なんとかの滝、何とか寺)は、
一回行けば十分・・・

沿道に並ぶお土産屋に置いてあるものは、
どこに行っても変わり映えのしないものばかり。
ネーミングが違うだけ、というものも多い。

裏の表示を見ると、どれも

「Made in China」

だったりします。(笑)

「なんとかランド」といったあちこちにある遊園地も、
わざわざ温泉旅行先で行かなくてもいいなと思える。


結局、行きたいところがないわけです。

かといって、何時間もかけて行ったのに、
温泉だけ入って帰ってくるのはもったいない。

そこで、別に行きたくもない名所に再び行って、
まさにお茶を濁して帰ってくる。


あなたの国内旅行も、
多かれ少なかれこんな感じじゃないですか?


国内旅行の不振は、今に始まったことじゃありませんが、
リピーターがなかなか生まれないことも含めて、
国内旅行不振の最大の問題は、旅行先での滞在を楽しいもの
とするための仕掛けや、情報提供が十分になされていないこと
でしょう。


最近は、Webサイトでずいぶん豊富な情報が入手可能ですよね。
しかし、掲載されている情報は型どおりで表面的なものがほとんど。

具体性に欠け、イメージが広がりません。

どんな楽しみ方があるのかといったことまで踏み込んでいないため、
行ってみたいという気持ちがかきたてられない。


結局、旅行者の気持ちになって情報が
提供されていないんですよね。

これは旅行サービス提供者側の怠慢だと
言いたいのですが、要するに、

「ありきたりの旅行プラン」

しか提案できていないわけです。


だから、旅行する側としては、
国内旅行ってたいして楽しくないと感じてしまう。

でも実際には、現地で探してみると、
旅行者が楽しめることっていろいろとあります。


たとえば、今年になって何度か行った群馬の

「四万温泉」(しまおんせん)

の近くには、

「ふるさと公園たけやま」

という観光施設があります。


公式サイトなどでは、

「手打ちそばの体験ができる施設がある」

といった程度の情報しか見つけることができません。


しかし、実際行ってみると、この観光施設から、
標高789mの「嵩山」(たけやま)に上れる登山道が整備され、
普段着の家族連れでも、無理のない登山が楽しめることが
わかりました。

登山途中には、あらかじめ打ちつけてある「くさり」を
使わないと上れない岩場があったりして、結構スリリングです。
(注意すれば危険はありませんし、小学生以上なら十分上れます)

そして、頂上からの眺めは絶景!

ゆっくり上り、ゆっくり下りてきても、
所要時間は3時間程度と手ごろな遊びです。

森の新鮮な空気もたっぷり吸えますし。


登山の後は、ふもとにあるそば屋で
おいしい手打ちそばを堪能するのもよし。

お昼ごろに上って、
山頂でお弁当を広げるというのも気持ちよさそうです。


いかがでしょうか。

こんな情報があれば、あなたも行ってみたくなりますよね。
また、いろんな楽しみ方ができることもわかります。


こういう情報は、

「CGM」(Consumer Generated Media)

つまり消費者が書くブログやSNSに任せておけばいい
という方がいるかもしれません。


しかし、そんな待ちの姿勢ではなく、
地元の人たちが積極的に

「地元ならではの良さ、楽しみ方」

について情報発信していくことで、
国内旅行はもっと活発化するのではないでしょうか。


さて、最近、旅行会社大手は、地域密着の

「着地型」

と呼ばれる観光旅行の拡充に乗り出しているそうです。
(日経産業新聞、07/10/22)


「着地型旅行」は、
従来の出発地の旅行会社が企画する

「発地型旅行」

の対義語。旅行客を受け入れる観光地側で作った
観光プランのことです。


「着地型旅行」の観光プランに含まれるのは、
全国的に有名なものではなく、地域住民だけに親しまれている
名所や伝統料理、生活習慣などを体験させるものが多いようです。


旅行業界関係者も、国内旅行は、

「どこに行っても、見るのは寺、食べるのは刺身」

の紋切り型が多く、顧客離れを招いていることを自覚しています。

しかし、旅行会社は、有名観光地以外の地域の情報を
十分に持っていない。

一方、地元の自治体や商工会は、
旅行商品の企画・販売ノウハウを持っていない。


そこで、地元と旅行会社が連携して、
地元発の、その地域ならではの旅行商品を生み出すことに
取り組み始めたわけです。


よく、田舎に住む人が、

「ここにはなんも面白いものはないからなあ・・・」

と言いますが、地元の人には日常であっても、
外から訪れる旅行者にとっては新鮮で珍しい体験と
感じられるものが意外にたくさんあります。


国内旅行がますます楽しくなるためにも、

「着地型旅行プラン」

の充実を期待したいと思います。

投稿者 松尾 順 : 08:49 | コメント (0) | トラックバック

苦悩する西友・・・WM流を捨てよ

先日、米ウォルマートが、

「西友」

の完全子会社化を決定しましたね。

ウォルマート(以下、WM)が、
西友に資本参加したのは2001年5月のことでした。

WM流経営ノウハウを持ち込み、西友の再建に乗り出したわけです。


WMの日本進出当時から、

果たしてWM流が日本で通用するのかなあ・・・?

と、私も含め多くの人が懐疑的でしたが、
結果的には6年連続の赤字。

「WM流」による西友の再建は、
今までのところ失敗に終わっています。


失敗に終わった理由のひとつは、米国では通用した

「安さ(だけ)重視」

の店は、日本人の消費者には受け入れられなかったということ。


もちろん、一般消費財を売る小売店において「安さ」は
重要です。でも、日本では品質の高さと、サービスの充実も
同時に求められますよね。


しかし、WM流では、安さの代わりに品質や安さを犠牲にします。
このため、顧客にそっぽを向かれてしまった。

たとえば、WMのプライベートブランド(PB)しか
並んでいない腕時計。安いけれどデザインがパッとしません。

しかも売り場では、

「電池交換やベルトの調整は承れません。
 ご理解のうえ、お買い求めください」

と表示してある。

WMになって、
アフターサービスを止めてしまったのです。

お客さんからは「不親切」だと、
怒られっぱなしなのだそうです。


さて、WM流が通用しないもうひとつの理由、
それは、従業員満足をほとんど考慮していない点です。


現在、全390店のうち、300店で24時間営業を実施し、

「(顧客に)最高の利便性を提供している」

とエドワード・カレジェッスキーCEOは胸を張りますが、

現場の従業員は、

「おれはロボットではない。24時間営業といっても限界がある」

と不満を漏らしています。


また、WMになってから、
現場の裁量がほとんど奪われてしまいました。

今の店長には、品揃え、価格の決定権はほとんどありません。

残念ながら、現在の西友の職場で、

「働きがい」「やりがい」

を感じることはあまりできないようです。


WMが経営を握って以来、
たたき上げの人がどんどん去っていきました。

WM進出当時、日本側が、WM幹部に対し、

「そんなやり方は、日本では通用しない」

と具体的な根拠を挙げて反論したところ、
言葉に詰まった彼らの口から出てきたのは、

「We are the capitalist」(我々は資本家だ)

だったそうです。


彼らが、自分たちのことを資本家と言うのなら、
あくまで資本家に徹し、経営に乗り出さなければいいのに!
と思いますよね。


そして今、西友がWMの完全子会社となったとしても
あいかわらず先行きは不透明。

従業員の方にとっては、
将来の希望が持ちにくいでしょう。

今月(10月)、西友では、
450人の希望退職を募集していますが、
会社が想定していなかった優秀な人材の応募も
多いようです。


西友の苦悩は大きい・・・


もしWMが、本気で西友の建て直しに成功したいなら、
WM流経営ノウハウを捨てる必要があります。


日本の消費者を満足させられる品揃え、サービス、価格。
そして、従業員満足の向上につながる組織運営体制の確立、
評価・報酬制度の導入。


前述したように、WMは、資本家としての立場に徹し、
経営は、日本の流通環境に適応させることができる会社に
任せたらどうでしょうか。


(参考資料)
・日経MJ、2007/10/24
・日経ビジネス、2007/05/07

投稿者 松尾 順 : 12:25 | コメント (2) | トラックバック

自動化される顧客情報収集

今日は、技術革新が顧客情報収集の自動化を
可能にしつつあるという話です。


「CRM」(Customer Relationship Managment)

「ワン・ツー・ワンマーケティング」

は、詳細な顧客情報に基づき、
適切な個別対応や提案を行うことを通じて、
良好な関係を形成・維持するもの。

その結果として、
長期的な収益を向上させる考え方です。


「CRM」や「ワン・ツー・ワンマーケティング」
は単なる流行り言葉ではありません。

これからの経営・マーケティングの核となるものです。

なぜなら、製品自体の機能・品質では、
競合との差異を生み出しにくくなっている今、
顧客に対する理解の深さ、密着の強さが多くの企業における

「成功の鍵」

だからです。


問題は、個人情報保護法のしばりや、
ユーザー側のプライバシー意識の高まりによって、
個人情報の収集がますます困難になってきたことですね。


性、年齢、職業といった基本的な情報でさえ、
ストレートに聞きにくい。

また、まともに答えてくれないこともが多い。
(年齢はさばを読むなど・・・)


そこで、進展する情報技術によって顧客を自動識別し、
また情報として蓄積する仕組みが開発されつつあります。
(日経MJ、2007/10/10)


例えば、NECソフトの年代・性別推定システム、

「フィールドアナリスト」

は、デジタルカメラを利用した顔認識技術を応用して、
顔の輪郭やしわ、たるみから、

「年代」「性別」

を瞬時に判定することが可能。

その精度は性別判定で9割だそうです。

このシステムと接続されたデジタルカメラを
リアル店のあちこちに設置しておけば、
売り場毎・時間帯毎にどんな性別・年代の人が多いかを
分析することができるようになります。

あるいは、POSデータ(購買データ)と
組み合わせることによって、より詳細な購買分析が可能。


同様の情報を人手で調査・収集しようとすれば、
1日あたり数十万円かかりますが、このシステムは、
カメラ1台につき年間使用料200万円ということですから、
決して高いものでありません。

同システムが発売されれば、
導入する小売店が結構多いかもしれません。


また、映画「マイノリティリポート」の一場面を
思い出させるシステムも登場してます。
(主演のトム・クルーズが、屋外看板の前を通ると、
彼を個別認識して看板の中の人物が話しかけるシーンが
ありましたよね。)


三菱電機が開発中のシステムは、
通行客の性別と人数を顔認識システムで判断し、
客層にあった情報をディスプレイに表示することが
できます。

たとえば、ショッピングセンター入り口の壁にある
ディスプレイの前をサラリーマンが通過すると、
「旬の魚を使った居酒屋」の案内が表示され、
女性3人組の場合だと「イタリア料理店」が
表示されるという具合。


このシステムでは、顔が比較的大きければ男性、
小さければ女性と認識しますが、精度は8割程度。

年代でも、明らかに20代なのに40代に間違うケースもあり、
まだまだ実用化は先になりそうです。


まあ、いかに正確に顧客を判別したところで、
その後の適切な対応・提案も重要なんですよね。

上記のシステムで表示される

サラリーマン→居酒屋、女性→イタリア料理店

という客層と提案の組み合わせは、
ややステレオタイプ的で、その効果は怪しい・・・


現時点ではまだまだ初歩的なシステムではありますが、
今後どこまですごいものになるのか楽しみです。
(ユーザーの立場では、ちょっと気味が悪い感じもしますけど)

投稿者 松尾 順 : 10:12 | コメント (2) | トラックバック

赤福よ、お前もか!

1707年創業。
伝統に支えられた「信頼」のブランドだったはずの

「赤福」

もまた、地に墜ちてしまいましたね。


赤福は、お客さまを満足させるために

「3つの味」

を大切にしているという話を以前紹介しました。

赤福の3つの味


この「3つの味」とは、

「先味」とは、実際に口に入れる前の期待感
「中味」とは、食べた時の実際の味覚
「後味」とは、食後、心に残った印象

のことです。

このうち、今回発覚した「製造日かいざん」等、数々の不正は、

「中味」

に関わる品質管理のずさんさの表れですね。

しかし、今回の「悪事」露呈によって、
実際だめになったのは、

「先味」すなわち「ブランド」

です。

ブランドは、実際の味そのものに比べて
回復に時間がかかるのに・・・


しかし、これだけあちこちの会社が、
食品に関わる不正で摘発されていたのに、自社だけは

「ばれるはずがない」

と、赤福は思っていたのでしょうか。


また、情けないのは、
ウソがばれた今となっても、やはり社長は苦しい弁明
しかしないことですね。

今回も、記者会見で、お決まりのダメダメ文句が出ました。

(「会社ぐるみではないか」との質問に答えて)

“結果として長年の習慣で行われてきたのは事実


「結果として」というのはどういう意味ですか?

なんか、悪いことするようになったのは「不可抗力」
みたいな、無責任な言い方ですね。

いさぎよく、

「トップの命令で不正に手を染めてました」

と認め、懺悔し、現経営陣、創業者は総退陣して、
ゼロからやり直して欲しい!

投稿者 松尾 順 : 21:22 | コメント (0) | トラックバック

情報化社会の本質

“情報化社会というのは、なんでも情報が入る社会ではなくて、
 何もしなくても自然と個人の内部に情報が入ってきてしまう
 社会だ、みたいなことを書いたことがある”

だから、それに対応するには、何もしないでも入ってくる
 情報以外の情報を蓄積していかいないと、個性なんかなくなる
 と思ったんだ。”
(橘川幸夫氏)


上記のコメントも、昨日ご紹介した新刊、

『微力の力 おバカな21世紀、精神のサバイバル』
(橘川幸夫、村松恒平著、エンターブレイン)

からです。

橘川さんが、「情報化社会」を上記のように捉えたのは
30代の頃、つまり、約20年も前のことでした。

「情報化社会」の本質を見事に突いていますよね。


実際、今の私たちは勝手にやってくる「情報」だけで
いっぱいいっぱいという感覚があります。

しかし、こんな時代を乗り切るためには、
あふれる情報を取捨選択し、かつ自分なりの情報を「好奇心」を
持って、能動的に探索することが必要じゃないかと思いますね。

投稿者 松尾 順 : 06:46 | コメント (0) | トラックバック

『微力の力』

15日の夜、「亀有」というちょっと珍しい場所(「こち亀」の
両津勘吉巡査長の銅像が駅前に立ってますね)で開かれた

『微力の力』ほそぼそ出版パーティ

に参加してきました。


今回は、あえて「ほとんど告知をしない」方針を取られたので、
「ほそぼそパーティ」の名の通り、こじんまりとした集まりと
なりました。

おかげで、著者の方、および参加された方々と
濃密な会話ができて楽しかったです。


さて、『微力の力』(07/10/15発行)は、
本質を鋭く切り取る橘川幸夫さん(ロッキング・オン創刊者)と、
魂を貫くような表現がしびれる村松恒平さん(70年代「宝島」の
編集者)の共著。

内容は、かなりディープなテーマを取り上げながらも、
お二人の対談スタイルで書かれているので読みやすい本です。


同書の中から、気になった発言をひとつだけ紹介しましょう。

“ネットというWeb2.0の考え方に対して、僕は、
 編集機能を加えたWeb1.5という考え方を準備している。
 実際にやらないとわからないと思うので、やるけどね。”
 ネットは書く場所であって、読む場所ではない。
 ネットで見つけた素材を、読むに値する文章に編集する作業が
 絶対に必要なんだ。”(橘川さん)


『微力の力 おバカな21世紀、精神のサバイバル』
(橘川幸夫、村松恒平著、エンターブレイン)

投稿者 松尾 順 : 08:29 | コメント (0) | トラックバック

「名コピー」の秘密

「確かに、うまい」


サントリービール、

「ザ・プレミアム・モルツ」

のキャッチコピーですね。


自社製品をこうして「自画自賛」するのは
いかがなものか?

とちょっと思わないでもないですが、

「名コピー」

だと思います。


その理由は2つあります。


ひとつは、「モンドセレクション」で

「3年連続最高金賞」

を受賞しているというお墨付きがあること。

世界中から優れた製品を発掘・顕彰することを目的としている
「モンドセレクション」は、1961年から続く権威あるコンテスト。

この第三者の客観的評価があるので、

「確かに、うまい」

は、単なる自画自賛、自己満足でないことが
わかるわけです。


もうひとつは、実際飲んだ人の多くが、

「そういえばそうですね」

と、素直に納得できること。


ここに「伝わるコピー」の秘密があります。


昨日も取り上げましたが、
コピーライターの谷山雅計氏の著作、

『広告コピーってこう書くんだ!読本』(宣伝会議)

の中で、谷山氏は、

「常識とコピーと芸術」の3分法

という独自の考え方を教えてくれています。


“ある意見を人に言ったときに、それを聞いた受け手の
 反応は大きく3つに分かれると、ぼくは考えています。
 それは、「そりゃそうだ」と「そういえばそうだね」と
 「そんなのわかんない」。

 この3つの反応の違いに、「常識とコピーと芸術」
 の違いがあると思うのです”
(確かにうまい)


このように谷山氏は述べた後、
次のような具体例を挙げています。

あなたの目の前に豆腐があると想像してください。

そして、私がそれを指さして、

「この豆腐は白いんですよ」

と言えば、あなたは

「そりゃそうでしょう。見ればわかります。」

と答えますよね。

これが「常識」。


次に、私は、

「この豆腐の白さはね、現代の不安を象徴してるんですよ。」

と言います。

これを聞いた人のほとんどは、

「はあ?」「よくわかんない!」

と反応するでしょう。

これが「芸術」。


最後に、

「豆腐はね、すごく栄養があるので、
 “畑のステーキ”みたいなものなだんだよ」

と言ったら、あなたは、

「確かにそうだね」「あ、そういえばそうだ」

と答えるはず。


これが、「コピー」なのだと、谷山氏は考えています。


谷山氏によれば、コピーとは、

「知っていること」(=常識)

でも、

「知らないこと}(=芸術)

でもありません。


ちょっとわかりにくいですが、コピーは、

「知っているのだけれども、
 ふだんは意識の下に眠っているもの」

なのだそうです。


すなわち、コピーとは、

「意識の下に眠っていること」

を言語化することによって「よみがえらせる」行為であり、
その結果、相手の納得や共感を呼ぶメッセージとして
伝わるということなのです。


上記のことに成功している「名コピー」として、
同書では次のようなコピーが例示されています。

「サラリーマンという仕事はありません」
(西武セゾングループ、糸井重里氏作)

「カゼは、社会の迷惑です」
(武田薬品、仲畑貴志氏作)


どちらも、確かに、

「あ、そういえばそうですね」

と思いますよね。


冒頭に紹介した、プレミアムモルツの

「確かに、うまい」

もまた、「名コピー」と呼ぶ理由が
納得いただけたでしょうか。


なお、谷山氏の提唱する「3分法」ですが、
留意しておくべき点があります。

それは、

「そりゃそうだ」
「そういえばそうだね」
「そんなのわかんない」

の3つの感覚は、常に移り変わっていくものだということです。


“世の中の新しい概念は、つねに最初は、
 「そんなのわかんない」のところに現れて、
 それがあるときに「それはそうだね」に移り、
 やがて「そりゃそうだ」になっていく。

 時代の感覚はつねにそういう方向に移り変わって
 いくんじゃないかと、ぼくは考えています。”
 (前掲書)


したがって、

「確かに、うまい」

というコピーが使えるのもあとわずかです。


仮に1年後にも相変わらず、

「確かに、うまい」

と言われたとしたら、

「はいはい、そりゃそうですね。
 十分わかってますから、もうその言葉は結構です」

と答えるんじゃないでしょうか?


『広告コピーってこう書くんだ!読本』
(谷山雅計著、宣伝会議)

投稿者 松尾 順 : 10:51 | コメント (0) | トラックバック

実感のない言葉

私は、マーケターとしてのキャリアを

「リサーチャー」

から始めました。

「リサーチャー」の仕事は、簡単に説明すると、
消費者対象のアンケート調査などの企画立案や調査票の設計、
データの集計・分析、報告書作成等を行うものです。


ところが、30代以降は、
企業の会社案内・製品パンフの文面や、
Webサイトのテキストベースのコンテンツ、
ユーザー導入事例記事の執筆など、

「コピーライティング」

の仕事が段々増えてきました。


これは、リサーチにつきものの「報告書作成」を通じて、
文章力がずいぶん鍛えられたことがベースにあると思います。

しかし、今でこそ白状できますが、
調査報告書を書き始めたばかりの頃の私の文章力は

「幼稚園児レベル」(いや本当に!)


私の支離滅裂な文章を見た上司には、
メタメタにけなされ、ずいぶん落ちこみました。

しかし、落ち込んでばかりではいられないと、
あわてて「文章作成入門」といった通信教育を受講し、
必死になってトレーニングしたものでした。


こんな私ですから、残念ながら、
文章作成や言葉に対して特段優れた感性を
持っているわけではありません。

だからこそ、プロとしてお金をいただいて文章を書く以上は、
言葉の使い方にできるだけ細心の注意を払うようにしています。


さて、前置きが長くてすいません。


最近、私がどうも気になってしょうがないのは、

「一見きれいに決まっているけれど、実感のない言葉」

の氾濫です。


例えば、あるダイレクトEメールのキャッチコピー。


「御社の提案書の説得力が10倍増します!」


一瞬、「おっ」と目に留まる一文ではあります。
しかし、なんか白々しいと思いませんか。

「10倍も増す」なんてどうやって調べたんだい?

と突っ込みたくなる。

伝わってこないですよね。
残念ながら、このコピーの「説得力」は低い。(笑)


なぜ、上記コピーは実感が感じられず、
相手に伝わらない結果に終わっているのでしょうか。


その答えはずばり「ウソ」をついているからです。


資生堂/TSUBAKI「日本の女性は、美しい」
新潮文庫「Yonda?」

などを手がけたコピーライターの谷山雅計氏は、著書の

『広告コピーってこう書くんだ!読本』(宣伝会議)

の中で、

“人はコピーでウソをつく”

と指摘しています。


そして、谷山氏は、その具体例として、
「古本屋に若者をもっと呼ぶためのコピーを作れ」
というお題に対する学生の答えを示してます。


「古本屋で本を買ったら、
 あるページに前にもち主の涙の跡があって、
 自分も同じところで感動した」


一見きれいに決まっている。
でも、実感が感じられないはずです。

本を読んでいるとき、
涙が本の上にぼろぼろ落ちるような人が
そもそもどれだけいるのか?

あるいは、

もし実際に涙がこぼれた跡だとしても、
後日、その本を開いた別の人が、
単なるしみにしかみえないであろうものを
果たして「涙」と認識できるのか?

こんな疑問があれこれわいてきて、
このコピーを信じる気にはなれないですよね。


また、以前、JR東日本のあるポスターには、

「アイラブ東日本」

というキャッチコピーが書かれていたそうです。


谷山氏は、このコピーについて次のように
斬り捨てています。

“「アイラブ東日本」のように、
 日本の東側半分だけを愛している人など
 ひとりもいないはずです。”


「アイラブ東京」「アイラブ大阪」
という人は確かにいますよね。

私はもちろん、

「アイラブ福岡」(ふるさとですから)


でも、

「日本アルプスから東側だけが私は好きなんだ」

というのは、人の感情としてまずありえないでしょう。


谷山氏は、前述した

「古本の涙の跡」

のようなウソはすぐに見抜けるけれど、

「アイラブ東日本」

のようなハイレベルのウソは
なかなか気づきにくいと述べています。


だから、JR東日本のポスターに堂々、
このへんてこりんなコピーが採用されてしまった。

そしてもちろん、このメッセージは
ターゲットユーザーには届かず、

「広告の無駄遣い」

という結果に終わっているわけです。


コピーに限らず、文章作成において、

「実感のない言葉」「伝わらない言葉」

をうっかり書いてないか、注意したいですね。
(自戒を込めて)

*『広告コピーってこう書くんだ!読本』
(谷山雅計著、宣伝会議)

投稿者 松尾 順 : 15:34 | コメント (4) | トラックバック

「面白がり」になる方法

先日書いた「創造性の必要条件とは?」で、
優れたクリエーターたちはみな、強い「好奇心」の持ち主
であることを指摘しました。

すなわち、好奇心を阻害する「固定観念」や「先入観念」を
簡単に捨てることができ、どんなことに対しても虚心坦懐に

「面白がれる」

ということが「創造性の必要条件」であるということです。


ただ、この記事を書きながら、
ひとつ気になっていることがありました。

それは、

・どうしたら「強い好奇心の持ち主」になれるのか?
・どうしたら、何に対しても「面白がれる」ようになれるのか?

ということでした。


正直なところ、「好奇心の強さ」は生まれつきのものか、
子供の頃の環境によって決まるものだと思っていました。

ですから、大人になってから、

「好奇心」

を強化できるトレーニングなんてないだろうと・・・


でも、確実に好奇心を強化する効果がありそうな方法が
ひとつあることが昨日わかりました。


それは、

「お遍路さん」

になって、四国八十八箇所の札所を回ることです!


実は昨日、過去3年間ほど愛媛での仕事のため
四国に住んでいた友人(女性)が今年東京に戻ってきまして、
四国滞在中に「お遍路さん」をやった話を聞きました。


彼女(以下、Yさん)の話で特に面白かったのは、
八十八箇所を回りきった今、

「なにを見てもやっても楽しい」

と、感じるようになったということでした。


それはなぜなのか、私は突っ込んで聞いてみました。

Yさんによれば、お遍路さんをやっている間に
次のような気持ちの変化があったそうです。


八十八箇所を全部回りきるためには、
毎日30キロ程度歩いても40日以上かかります。

すなわち、総歩行距離は1200-1400キロに達します。


最初は、

「なんでこんなこと始めちゃったんだろう・・・?」

と多少後悔したそうです。


しかし、歩く途中に見える田んぼや山、川などの
自然の風景のすばらしさに感動し、だんだんと楽しく
なってきた。

ところが、さらに歩いていると、
どこまでいっても同じような風景が続くため

「飽き」

が来たのだそうです。

しかし、ここからが大事だとYさんは思い、
我慢して歩き続けた。

そうすると、淡々とした単調に見える風景の中に、
新鮮な何かを感じることができるようになったらしいのです。

今日見えている山は、昨日見た山と同じような山だけれども、
歩き続けているわけですから、もちろん違う山です。

ここで、Yさんは、2つの山の同じ点(共通性)ではなく、

微妙な「違い」(異質性)を見つける、感じること

ができるようになったのです。

一言で言えば、感受性が磨かれたということでしょう。


そして、Yさんは、東京に帰ってからも、
日々の何気ない日常の中から自分にとって楽しいことや
面白いことをごく自然に感じ取ることができるようになった
というわけです。


この話を一緒に聞いていた仲間の一人は、

「Yさんは人生の達人になったんですね」

と言ってましたが、まさにその通りでしょう。


毎日を新鮮な気持ちで迎えることができ、
日々、「発見」の喜びを得られる人こそが

「人生の達人」

です。

そして、こうした発見が、
新たな創造へと昇華されていくのだと思います。


さあ、あなたも「面白がり」になりたかったら、
四国八十八箇所、お遍路の旅にチャレンジです。(笑)

投稿者 松尾 順 : 09:00 | コメント (6) | トラックバック

猫缶デザインの革新

最近、

「猫鍋」(ネコ入り鍋)

なるものが、猫マニアの間でブームになってますね。


子猫たちが、空の土鍋に入り丸くなって眠る様子をビデオ撮影、
「YouTube」や「ニコニコ動画」にアップしたら、
一気にブレークした模様。

私も動画を見てみましたが、確かに可愛い・・・
猫好きにはたまらない映像です。

猫に限らず、人・動物の赤ちゃんの寝ている姿って、
本能レベルでの愛情を湧き上がらせる力がありますよね。


さて、「猫鍋」で思い出したのが、
猫缶(ウエットタイプの猫用ペットーフード缶詰)の
パッケージデザインを従来とガラッと変えたら、
売れ行き好調、という話。(日経デザイン、October 2007)


猫を飼ってらっしゃる方ならおわかりになると思いますが、
猫缶のデザインは各社ともほぼ同じようなものですね。

おおむね、缶の上部(円の部分)には、中身の写真
(鳥ササミとか、鮭フレークとか)が表示されています。

そして、側面には猫(バストアップ)の正面写真。


私は20代のころ、
某マーケティングリサーチ会社の調査員として、
あちこちの小売店を回り、ペットフード製品の在庫調査を
やっていたのですが、最近の製品のデザインも当時とほぼ同じ。

変わりばえのしないデザインなのに改めて驚きました。


しかし、マルハ系列のペットフード会社、アイシア(株)
では、今年3月発売した新製品、

「Miaw Miaw(ミャウミャウ)」

で、子猫が目をつぶって幸せそうに眠っている写真を
缶上部に大きくフィーチャー。

一方、中身の写真は、缶側面に小さく表示するという
従来とは異なるデザインを採用しています。

*「Miaw Miaw(ミャウミャウ)」ブランドサイト


銅製品の市場投入時は、
流通から「売れるのか」と心配する声が上がったそうですが、
アイシアの開発担当者によれば、

「ここ数年で発売した新製品の中で最も良く売れている。
 こちらの予想値も超えている」

ということで、9月1日からはドライフードなど、
商品ラインアップを拡充しています。


よく考えてみれば、猫が自分で店に行って、
猫自らパッケージを見ながら、猫缶を選ぶわけでは
ありませんよね。


お店で猫缶を買うのは人間、飼い主です。

中身の「鳥ササミ」などの写真を大きく見せたからといって

「おいしそう!」

と思って選ぶわけではありませんよね。


私がコンビニで、酒のつまみにと

「ホテイのやきとり缶」

を買うのとは違います。(笑)


猫好きの飼い主が店頭でぱっと目を惹かれる、
そして、思わずしげしげと眺めたくなる
ミャウミャウの猫缶のようなデザインが、
猫缶の本来あるべき姿だったのかも知れません。


さて、ミャウミャウの成功を見た
競合他社はどんな手を打ってくるのでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 11:41 | コメント (0) | トラックバック

だまされない心

米国、および日本でロングセラーとなっている名著、

『影響力の武器』

の著者、ロバート・チャルディーニさんが、
日本心理学会の大会での招待講演のため9月に来日されていました。

私は残念ながら同講演を聞くことはできませんでしたが。


日経夕刊(07/10/11)にチャルディーニさんの
来日中に行われたインタビュー記事が掲載されていましたね。


そもそも、チャルディーニさんが、

「あの手この手で買わせようとするテクニック」

を研究することにしたのは、自分自身が

「だまされやすい人間だったから」

だそうです。


実は、私もかなりだまされやすい人間でした。

学生時代に「キャッチセールス」に引っかかったのを手始めとして、
あれこれと敵の術中にはまり、数十万円をどぶに捨てるような
経験を重ねてきたので、

「なんだ、チャルディーニさんも押しに弱い人だったか」

となんだかちょっとホッとしました。


もちろん、私も、人生経験を十分に積んだ今は、
そうそう簡単にだまされることはなくなってきました。

むしろ、たいして金のない若い頃に、
取り返しのつく範囲でだまされたのは、将来の大損を防ぐ

「免疫」

づくりになったと自分では思っています。


私よりも人生経験の長い中高年の方々が、

「出したお金が、半年で2倍になりますよ」

なんて、ありえない話にコロっとだまされ、
なけなしの老後資金等を巻き上げられる事件が
相変わらず頻発していることを考えると、若い頃に適度に

「だまされる経験」

も必要じゃないかと思いますが、どうでしょうか?


さて、チャルディーニさんが

『影響力の武器』

で研究の成果としてまとめている武器(原理)は次の6つです。

・返報性
・一貫性
・好意
・社会的証明
・希少性


それぞれの詳しい説明は、

「INSIGHT NOW」で泉本貴さんが書かれている

[もう一度読み返したい本:影響力の武器]

がわかりやすいですよ。


チャルディーニさんによれば、
社会の情報化、グローバル化が進む中で、
特に影響力を強めているのは

「社会的証明」

の原理だそうです。


ネット社会では、
情報が即時に広範囲に伝わるようになりました。

この結果、口コミの影響力の背景にある

「社会的証明」

のパワーが高まっているという主張にはうなずけます。


この「社会的証明」とは、
多くの人がやっていることに引きずられること、
いわゆる「付和雷同」のことです。


チャルディーニさんが取材の中で明らかにした
「社会的証明」の影響力の実験が興味深いです。

これは、ホテル側が、連泊する宿泊客に対して、
タオルを毎日替えないで、継続使用をお願いする際、
どんな文面を掲示するが効果的かを調べる実験でした。


文面は次の4パターン。

1「継続使用で節約したお金を環境保護団体に寄付する」

2「環境保護のためご協力を」

3「未来の世代のためにご協力を」

4「当方の大多数のお客さまに継続使用を
  ご協力いただいています」

この実験では、前の3つに比べて、
「社会的証明」の原理を盛り込んだ4番目の文面が

[34%]

も多くの客がタオルの再利用に協力することが
分かったそうです。


「社会的証明」の実験は、
日本でやればもっと大きな差異が出そうですよね。

「空気を読む」ことが重視される日本では、
おそらく、他の国以上に「社会的証明」の影響力が強い
でしょうから。


では、インタビューの中でも、
また『影響力の武器』でも説明されているのですが、

「だまされない心」

を持つ人になるコツを最後にご紹介しましょう。


ひとつは上記6つの「影響力の武器」(原理)
を十分理解しておくこと。

売り込もうとしてくる敵が、
どんな武器で攻めてきているかがわかれば、
簡単に乗せられてしまうことはないですよね。


もうひとつは、購入を決める際に、
相手が使う影響力の武器を、
「自分とモノやサービスとの関係」から切り離すことです。


たとえば、テレビショッピングなどで

「本日限りの限定価格!」
「先着100名さま限り!」

といった「希少性」の武器で相手が攻めてきた時。


この口車に乗せられているだけだと、

「今買わないと後悔するかも・・・」

とつい考えてしまいますね。


しかし、

「ちょっと待てよ、そもそもこの商品は
 自分にとって本当に必要だろうか?」

「自分とモノ・サービスの関係」

だけに焦点を当てるようにするのです。


こうすれば、勢いで買ってしまい、後になって

「後悔する」

ことが幾分か減らすことができるでしょう。


『影響力の武器-なぜ、人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、誠信書房)

投稿者 松尾 順 : 11:45 | コメント (0) | トラックバック

DMにしないバースデーカード

演劇集団キャラメルボックスでは、
ファンとの関係づくりをとても重視しています。


例えば、ファンクラブ
(「キャラメルボックス・サポーターズ・クラブ」)
のメンバーには、バースデーカードを送ります。

もちろん、そのくらいやって当然ですが、
文面が違うのです。


普通であれば、次回公演の案内とか、
最新DVDの紹介とかも‘ついでに’掲載するものです。
もろもろ経費がかかりますしね。

しかし、キャラメルボックスのバースデーカードには
お誕生日おめでとう以外のメッセージはありません。

差出人としてキャラメルボックスが記載されているだけ。


代表の加藤昌史氏によれば、
「売り」の要素が入ったら、バースデーカードではなく、
ダイレクトメールなってしまう。

だからそうしないのだそうです。


顧客に送るグリーティングカード
(バースデーカード、クリスマスカード、年賀状など)では、
「売り」の要素が強く出すぎてしまうと、

「親密さ」

が低下します。

「おめでとうなんて、親しげなふりをしながら、
実は「売りたい」という下心が透けて見えるからですね。


キャラメルボックスの場合、

バースデーカードはバースデーカードだ、

と下心をスパッと切り捨て、
お客さんとの良好な関係を作ることに徹しているのが、
実にいさぎよいですね。

投稿者 松尾 順 : 07:53 | コメント (0) | トラックバック

引いたら視聴率が落ちちゃった話

『踊る大走査線』『海猿』で知られる、フジテレビの
映画プロデューサー、亀山千広氏が、『ロンバケ』など、
月9のTVドラマを手がけていた頃の話です。


90年代以降、テレビは大画面化が進みました。

それまで、お茶の間に置いてある、家族みんなで見るテレビは、
せいぜい20インチ程度の大きさでしたが、30インチ、40インチ
の大画面テレビが普及していったのです。


フジテレビでは、この大画面化に合わせて、
TVドラマの制作方法を変えることにしました。

大画面で見ると、アップの映像は圧迫感があるため見苦しい。
そこで、ちょっと引き気味で撮影したのです。


ところが、そうすると月9の視聴率がどんどん低下していった。

この視聴率が低下した理由は、
視聴者の家庭内の状況を知ることでわかりました。


お茶の間に大画面テレビが入ると、
それまで使っていた小さいテレビは子供部屋に移されます。

月9のようなTVドラマは、
そもそも、あまり家族団らんで見るものではありません。

自分の部屋で、一人で見るのがしっくりきます。


つまり、テレビの大画面化が進んでも、
TVドラマは相変わらず20インチ程度の小さい画面で
見られていた。

そうすると、引き気味の構図では見にくい。
その結果、視聴者が減ってしまったのです。

このことがわかったフジテレビでは、
制作方法を元に戻したところ、視聴率の回復に成功したそうです。


情報を伝える「メディア」のちょっとした物理的制約が、
消費者の行動にいかに大きな影響を与えるかということが
わかる話ですよね。

投稿者 松尾 順 : 07:43 | コメント (0) | トラックバック

「業界基準」がユーザーを失望させている事実を認識せよ!

創刊号から愛読している有料メルマガ

『ビジネス知識源プレミアム』

の最新号(07/10/10)で読み流せないことが書いてありました。


同メルマガ作者の吉田繁治さんは、
先日5代目となるノートPCを買ったそうです。

散々迷った末に選んだのは、

東芝ダイナブック(RX1/T8A:07年秋・冬モデル)。

もちろんVista搭載、メインメモリは1.5ギガに増設。
もろもろ含んで出費は約30万円。


同機種選定の理由は、

(1)11時間もつ電池
(2)軽さ(1090g)
(3)薄さ(19.5mm)

でした。


実際に購入してみて、吉田さんは

「軽さ」と「薄さ」

には満足されているようです。

しかし、

「電池の持ち時間」(バッテリー駆動時間)

に問題がありました。


カタログ(広告)では、
同機種は「11時間駆動」とうたわれているにも関わらず、
フル充電後に電源プロパティを見ても、

「残り3時間30分(100%充電)」

としか出ないのだそうです。


変だと思った吉田さんは、購入したヨドバシカメラ梅田店を
通じてメーカーに問い合わせてもらったところ、

「規定の測定法で計ったもので、変ではないそうです」

という答えが返ってきました。


それにしても、

「11時間」と「3時間半」

ではあまりにも違いすぎですね。

吉田さんだけでなく、私もおかしいと思います。
また、同様のことを言ってきたお客さんが他にもいたようです。


「11時間駆動」が購入の決め手だったのに、
吉田さんはがっかりされています。

そして、東芝さんに対して、次のように訴えています。

“ダイナブックさん、ノートブックのイノベーターとして
 「他に先駆けて」カタログ・インフレーションを
 消すため頑張ってください。簡単なことです。”


おそらく、吉田さんは、6代目のノートPCとして
ダイナブックを再び選択する可能性はほとんどないでしょう。

しかも、吉田さん自身のメルマガや、
それを読んだ私がこうして記事に書いているように、
ネガティブな口コミを招く結果となっています。


さて、東芝さんからの回答にあった

「規定の測定法」

というのは、

「JEITAバッテリー動作時間測定法(Ver.1.0)」

のことです。


「JEITA」は、

(社)電子情報技術産業協会

という電子機器・電子部品の業界団体です。


この業界団体が定めた「業界標準の測定法」
に準拠したものですから、11時間駆動は、

「虚偽表示」

ではもちろんありません。


東芝さんとしては、

「当社は何も悪くありません」

と言いたいところでしょう。


しかし、「業界基準」に忠実に従うことで、
ユーザーの失望を招いてしまうケースがあること、
それが結果的に

「顧客流出」

につながるという事実は認識されているのでしょうか。


東芝さんに限りませんが、
企業は、もっと顧客に誠実に相対し、

「顧客の実感」

を大切にすべきでしょう。


蛇足ながら、現在私が使用しているノートPCは

「パナソニック・レッツノート」

です。購入したのは9カ月ほど前。

バッテリーの駆動時間(カタログ記載値)は、
フル充電で「7時間」ほどだったと記憶しています。

私は、バッテリーの寿命を延ばすため、
80%の充電しかしないエコノミーモードにしていて、
残り時間は「4時間強」と電源プロパティに表示されます。

まあ、このぐらいのズレなら許容範囲ですね。

しかし、同じ業界標準の測定法を採用しているのに、
メーカーによって測定値と実測値のズレが大きく異なる
のも変な話です。


また、レッツノートの前は、
ダイナブックの軽量・薄型初代機をずっと愛用していました。
(今でも自宅で現役です)

この機種は6年ほど前に鳴り物入りで登場したんですが、
当時から、最新機種とほぼ変わらぬ軽さと薄さを実現しており、
私も迷わず飛びついたのです。

過去1度も故障することもありませんでしたし、
信頼できるマシンではありました。

ただ、バッテリ-が持たないのがさすがにつらかった。
(せいぜい3時間程度・・・)


そこで、レッツノートに買い換えたというわけです。
(その時点では、まだダイナブックのバッテリー駆動時間は
 レッツノートには勝てませんでした)


さて、よく考えてみると、
吉田さんが購入したダイナブック最新機種の
バッテリー駆動時間の実測値は、
マシンの性能が違うとはいえ、
6年前の私のマシンとあまり変わらないわけです。


やはり、

「いったいどうなってるんだ?」

と、声を上げざるを得ませんね。

投稿者 松尾 順 : 10:53 | コメント (2) | トラックバック

[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(5)まとめ

今回はまとめです。


「消費者」と「ブランド」との間の

「感情的なつながり」

を測定(評価)するのが

「BRQ」(Brand Relationship Quality)

でした。


「感情的なつながり」とは、要するに、
消費者がブランドに対してどんな感情を持っているか
ということです。

そしてこの「感情」の種類として、

・愛情
・愛着
・親密さ
・相互依存

などがあるのでした。

上記の4種類はそれぞれ似たような感情ではありますが、

愛情は、シンプルに「好き」という気持ち、
愛着は、懐かしさを伴う気持ち(「くされ縁」的なもの)
親密さは、お互いに分かり合えているという気持ち
相互依存は、無くてはならない存在という気持ち

と多少異なっています。


例えば、恋人・夫婦関係でも付き合いが長くなってくると、
もはや「愛情」は感じない。

でも、ずっと人生を共にしてきたからということで「愛着」
はある、だから離れられない、ということがありますよね。

これを一般には、「くされ縁」と呼ぶわけです。(+_+)

消費者とブランドの関係も、
最終的にはリピート購入、つまり長いお付き合いに
つながることが目的です。

したがって、自社ブランドについて、
BRQのどの軸を高めるのが、上記目的に効果があるかを
考えてコミュニケーション施策を立案・展開するというわけです。


ところで、

ブランドの強みや特徴を測定(評価)する視点

にはさまざまなものがありますが、
自社のマーケティング施策を改善するために、すなわち、

「PDCA(Plan-Do-Check-Action)」

を回すために最低限実施したい視点としては
次の3つがあります。

・ブランドの認知度(どのくらい知られているか)
・ブランドの好意度(どの程度好かれているか)
・ブランド連想(どんなイメージを持たれているか)


BRQは、これらのうち

「ブランドの好意度」

をより詳細に測定するものです。

そうすることで、より具体的に

顧客とのコミュニケーションの方法やコンテンツ

を考えることができるようになります。


まあ、BRQを本格的に実施するとなると、
結構複雑ですし、お金もかかります。


しかし、マーケティング施策を考える際に、
BRQ的な視点をちょっとでも加えることによって、

顧客との良好な関係作りのためには
どんなコミュニケーションが適切か

という、まさに

「CRMの基本命題」

を考えることに役立ちますよ。

投稿者 松尾 順 : 09:37 | コメント (0) | トラックバック

創造性の必要条件とは?

先日、前職の広告会社のOB(卒業生)のうち、
主にネット系の仕事をやっていた10人ほどが集まり、

「同窓会」

を開きました。場所は、恵比寿のイタメシ屋。


およそ10年ぶりくらいに会う人たちも多くて、
とても懐かしい再会となったのですが、

「あの人、今はどうしてる?」

なんて、懐古趣味的昔話にはまったく花が咲くことなく、
延々とくだらないバカ話に終始したのが最高でした!

みんな過去を振り返ることなく、
前のめりに生きてるやつらばかりということでしょう。


さて、こんな愉快な仲間たちのうち、一人(女性)は

『ほぼ日刊イトイ新聞』

を運営している

「株式会社東京糸井重里事務所」

に数年前に転職しています。

彼女とは、前職以来の再会でしたが、
糸井事務所で楽しく働いているようです。


「ほぼ日」は、
私も大好きなサイトのひとつですし、
関連の本、例えば

『言いまつがいシリーズ』
『経験を盗めシリーズ』

などは全部読んでいます。


ですから、私にとって、糸井さんは憧れの存在。

糸井さんの身近で働けていいなあ・・・と
思いつつ、ミーハー丸出しの質問を彼女にしてみました。


“糸井さんって、どんな人?”

“すごい「面白がり」ですね。なんにでも興味を示して、
 すぐに手を出してみるんです。若い人の話も、
 偉ぶらず、純粋な気持ちで聴けるのがすごいです。”


なるほどねぇ。
糸井さんは来年還暦を迎えられるとのことですが、
いつまでも衰えない創造性の元は、この強い

「好奇心」

にあるようです。


この同窓会の翌日は、
演劇集団キャラメルボックスの代表、
加藤昌史氏の講演会でした。

この講演の中で、加藤氏は、
普段から心がけていることとして

「普通でいること」(=プロの気持ちになりすぎない)
「ミーハーでいること」(=好奇心を持つ)

を挙げていました。

加藤氏は、普段道を歩いても、
あれこれ面白いものを探してキョロキョロしてる
そうです。

また、お店に入っても、
たとえば、注文した料理の出てくるのが遅かったすると、
わざわざ厨房まで見に行って、人の動きを観察し、

「あいつの手際が悪いから、料理が遅くなってるんだな」

などと原因を解明せずにはいられない。


キャラメルボックスは、
斬新なアイディアに基づくユニークな取り組みが有名ですが、
加藤氏のこの「好奇心」が源泉にあるのは間違いないでしょう。


さらに、数日後、「情熱大陸」に出演した放送作家、
の秋元康氏の回を見ていたら・・・

秋元氏は、自分が取材対象なのに、
自ら情熱大陸の台本らしきものを作成していましたが、
そこには「好奇心」というキーワードがいくつも
書かれていました。

秋元氏もまた、自分の創造性を支えているのは、
自身の強い「好奇心」にあることを自覚しているようです。


こうして短期間のうちに、
高い創造性を発揮し続けるクリエイターに共通する特徴は

「好奇心」

であることを改めて再確認できました。


もちろん、好奇心さえあれば、
糸井、加藤、秋元氏のような高い創造性を獲得できる
というわけではないでしょう。

しかし、創造性の必要条件が、

「好奇心」

であることは間違いありません。

投稿者 松尾 順 : 10:31 | コメント (2) | トラックバック

[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(4)BRQ低下をもたらすもの

「BRQ」(Brand Relationship Quality)

における「消費者」と「ブランド」との間の

「感情的なつながり」

は次の7つの軸でした。

1 親密さ(Intimacy)
2 こだわり(Commitment)
3 パートナー品質(Partner Quality)
4 今の自分とのつながり(Self-connection)
5 愛着(nostalgic feeling)
6 相互依存(Interdependence)
7 愛情(Love/Passion)


これら7つの軸のそれぞれの評価方法は、
以前ご説明したように、基本的には、
消費者対象のアンケート調査を自社ブランド、
および競合ブランドについて実施することで数値的に把握します。


その結果、たとえば、1の「親密さ」の軸の数値が、

自社:4.3、競合:3.1

だったとします。

これは、消費者(顧客)がそれぞれのブランドに対して抱く
「親密さ」については、自社ブランドのほうが強い
ということを意味しています。

ところが、7の「愛情」の軸の数値は、

自社:2.2、競合:4.5

だったとします。

これは、競合ブランドについては、
そのブランドを愛する熱狂的なファンが多いと考えられること、
逆に自社ブランドに対しては、消費者は愛情をあまり
持っていないことがうかがえる結果です。

ちなみに、「愛情」の数値が低い結果になるのは、
他ブランドと変わり映えしないのでどれを選んでもいいのだけど、
たまたま近くの店に置いてあるから買っているだけとか、
他に選択肢がないから、仕方なしに買っているようなブランドに
多く見られます。


ともあれ、自社としては、この結果を踏まえて、
どうしたら消費者が自社ブランドに対する

「愛情」

を高めてもらえるのかという「改善施策」を考え、
実行に移すのが次のステップになります。


さて、今回は、BRQの7つの軸を低下(悪化)させる原因になる
企業行動にはどんなものがあるかを解説しておきましょう。


------------------------------------

・勝手な製品仕様の変更

「ニューコーク」の失敗が典型事例ですね。

慣れ親しんだ味やパッケージデザインをいきなり大胆に
変えてしまうと、ユーザーの怒りを買い、「愛情」「愛着」が
低下します。

ですから、多くの企業では、製品仕様は、
消費者の嗜好の変化に合わせて、ごくわずかずつ、
気づかれないように変化させています。

------------------------------------

・在庫切れ

「相互依存」が低下します。

消費者とブランドの間に「なければ困る」という
関係性ができている場合、「在庫切れ」が消費者にとって
最大の悪夢となります。

ちなみに、若者にとって「相互依存」が高いのは、

「コンビニ」

ですね。店として考えた場合、
24時間365日、いつでも開いてるという安心感が
あることが、「相互依存」を高めることに寄与しています。

------------------------------------

・見当外れなメール

先日新車を買ったばかりのディーラーから、
別の車のダイレクトメールが届いたら、

「自分の状況をまるで理解していないな」

と感じますよね。自分を理解していないことがわかる
コミュニケーションは、「親密さ」を低下させます。

------------------------------------

・品質の低下・問題

最近、頻繁に明るみになることの多い、
賞味期限切れ食品の販売や食品表示偽装などが典型例ですが、
「パートナー品質」や、「こだわり」「愛情」を低下させるのが、
品質の低下や問題です。

------------------------------------

・信頼の裏切り

上述した食品表示の偽装などは、
単なる品質上の問題だけでなく、

「信頼の裏切り」

でもあります。

しかも、事件発覚後に自己保身からごまかすためについた
「うそ」がばれることによって二重の裏切りを犯してしまう
企業が多いですね。

これもまた、

“このブランドなら安心だ”

という「パートナー品質」や、

“このブランドでなければ・・・”

という「こだわり」を低下させます。

地に墜ちた「雪印」ブランドが代表的なケースと言えます。

------------------------------------


次回は最終回。まとめです。

投稿者 松尾 順 : 11:15 | コメント (3) | トラックバック

9月の肉まん、あんまん

10月になってもまだまだ暑い日のある東京ですが、
天気が崩れるとさすがに寒く感じますね。

ところで、事務所近くの「サークルKサンクス」では、
9月中旬くらいから、肉まん、あんまんが置いてあって、
ちょっと驚いてました。

いつもの年よりもずいぶん早い販売開始だと思います。

しかし、まだまだ暑い日のほうが多い9月早々から、
肉まん、あんまんを食べたいとは、あまり思わないですよねぇ・・・

結構、買う人いるんでしょうか?


そういえば、ファミリーマートは、
1年中「おでん」を販売してますが。

今夏の猛暑の最中でも、ちゃんと置いてありましたから、
やはり買う人がいるということでしょうか。


いつ、何を食べようと人の勝手ですけど、
コンビニの品揃えは、季節感を失わせる原因に
なってます・・・

投稿者 松尾 順 : 12:16 | コメント (0) | トラックバック

シリンダーを換えなくていいカギ

弊社事務所の隣の部屋に入居していた会社が移転したようで、
業者さんがドアの鍵を付け替えていました。

通常、鍵は、本体のシリンダーと呼ばれる部分も含め、
丸ごと替えるんですよね。


鍵は、入居者が出て行くたびに交換しなければなりませんが、
その費用は、鍵本体の費用と技術費・出張費併せて1万円程度。

したがって、多数の物件を抱える大家さんにとっては、
ばかにならない費用が出て行きます。


先日、シリンダーを交換しなくてもいい新製品が出たという
ニュースを読みました。

この新製品なら、自分で設定をちょっと変えるだけで、
古い鍵から新しい鍵に交換できるらしいです。

費用は、次の入居者に渡す新しい鍵代だけ。


今まで、こんな製品がなかったこと自体、
ちょっと不思議ですね。

従来の製品よりは多少割高のようですが、
鍵交換の費用と手間(立会いとかも不要になりますね)が
大幅に削減できるわけですから、画期的な製品と言えるでしょう。


ホント、「新製品のネタは尽きまじ」だと思います。

投稿者 松尾 順 : 07:46 | コメント (0) | トラックバック

オーシャンドーム・カジノ構想

宮崎のリゾート施設、シーガイアにあった

「オーシャンドーム」

が9月末で閉館したのはご存知でしょうか?


「オーシャンドーム」は、
ギネスブックに掲載されていた世界最大の室内型プール。

私も何度か行く機会があり、子供も大好きでした。

閉館前にもう一度行きたいなと思っていたんですが、
残念ながら果たせませんでした。


気になるのは、残された施設をどう再利用するかです。

カジノ」「水族館」「ウナギ養殖場」

などのアイディアがあるようです。


私は「カジノ」に1票です!

ギャンブルですから賛否両論あるでしょうけど、

「日本のラスベガス」

として人気を集めるんじゃないんでしょうか。


シーガイアはリゾートとしての魅力は大きいのですが、
やはり他の地域、とくに本州に住む人たちからは
遠く感じられますし、旅費が高くなるのが難点でした。


しかし、「カジノ」なら、
遠方からもっと客を呼べそうですよね。

投稿者 松尾 順 : 08:09 | コメント (0) | トラックバック

[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(3)効果と具体施策

「BRQ」(Brand Relationship Quality)

によってわかる、消費者とブランドとの間の

「感情的なつながり」

は次の7つの軸でした。


1 親密さ(Intimacy)
2 こだわり(Commitment)
3 パートナー品質(Partner Quality)
4 今の自分とのつながり(Self-connection)
5 愛着(nostalgic feeling)
6 相互依存(Interdependence)
7 愛情(Love/Passion)


そして、これら7つの軸について、
競合ブランドよりも劣る軸を改善(向上)させるための施策を
立案・実施することが必要です。


ここで、まずいくつかの軸について、
こうした感情のつながりが、消費者(ユーザー)に
どんな行動を取らせるのかを説明します。


・「パートナー品質」、「愛情」が強いブランドは、
 周囲の人への推奨が起きやすくなります。
 “いい製品だから”あるいは“私が大好きな製品だから”
 という理由からです。

・「愛情」、「こだわり」が強いブランドは、
 そのブランドの製品ならなんでも欲しいという気持ちに
 つながります。上から下まで○○ブランドで固めたい、
 というわけです。そのブランドに夢中だからですね。

・「こだわり」、「愛着」が強いブランドは、
 他のブランドへの切り替えができなくなります。
 “このブランドでなけりゃ”という「こだわり」、
 そして、長年利用するうちに強くなる「愛着」は、
 他のブランドを購入することに対する心理的抵抗を
 高めるのです。小さい頃から使ってきたハミガキの
 ブランドを別のものに変える気がしないのは「愛着」が
 効いているからですね。

・「愛着」、「相互依存」が強いブランドは、
 「プレミア価格」でも買われるパワーを持つブランドです。
 たとえば、タバコなどの嗜好性の高いブランドは、
 もともと習慣性があり「相互依存」が強いので、
 割高だから買うのをやめようとはならないわけです。


では、次にどんな施策がどの軸の向上に効果があるか
についていくつかご紹介しましょう。


・「相互依存」の強化には「会員制度」(ポイントシステム)の
 導入が効きます。せっかくためてるポイントを途中で放棄
 するのはもったいないですから。

・「愛着」の強化には「キャラクターの採用」です。
 例えば、最強のキャラクターのひとつは「ミッキーマウス」。
 小さい頃から慣れ親しんだキャラクターに対する愛着って、
 強いものがありますよね。

・「親密さ」は、個人のニーズに合わせてカスタマイズされた
 製品が効きます。「親密さ」は、自分のことをよくわかって
 くれている、自分にぴったりの製品だ、という気持ちが
 高まることによって強化されます。

・「今の自分とのつながり」にはイメージ広告です。
 自分の価値観やライフスタイルに照らした時、
 あるブランドがしっくりくるかどうかは、そのブランドが、
 特定の明確なブランドイメージを確立できてこその話だからです。
 
・「愛情」の強化には、「製品の差別化」です。
 他のブランドにない特徴を持つことは熱狂的なファンを
 生みます。アップル・コンピュータの一連の製品を
 思い浮かべてもらえばおわかりいただけるでしょう。

投稿者 松尾 順 : 07:52 | コメント (0) | トラックバック

[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(2)活用の具体手順

「BRQ」(Brand Relationship Quality)

は、ブランド(商品・サービス)を「人」に見立てて、
消費者(顧客)が、そのブランドに対して持っている

「感情的なつながり」

をアンケート調査などを通じて測定するものです。


そしてこの「感情的なつながり」は、
具体的には次の7つの軸で測定します。

1 親密さ(Intimacy)
2 こだわり(Commitment)
3 パートナー品質(Partner Quality)
4 今の自分とのつながり(Self-connection)
5 愛着(nostalgic feeling)
6 相互依存(Interdependence)
7 愛情(Love/Passion)


従来良く行われてきた

「ブランドイメージ調査」

では、消費者がブランドに対して持っているブランドの

「性格」(パーソナリティ)

を主に次のようなキーワードを選択させること
によって測定します。

・先進的
・都会的
・野暮ったい
・暖かい


したがって、「BRQ」は、
従来のブランドイメージ調査とは全く異なる視点で、
ブランドを評価するものということがおわかりかと思います。


では、BRQは実際にはどのように実施・活用するか、
ということを簡単に説明します。

基本的には以下の手順になります。

-----------------------------------------

1.BRQの測定対象とする競合ブランドを決定

2.競合ブランドと自社ブランドについて、
  所定のBRQ調査票を利用してアンケート調査実施

3.調査結果から、上記7つの軸それぞれについて
  各ブランドのスコア(評点)を比較分析し、
  自社ブランドの強い軸、弱い軸を把握

4.特に弱い軸について、スコアを向上させるための
  具体施策を立案、実施

5.定期的にBRQを実施して、各軸の改善度合いをチェック

------------------------------------------

たとえば、調査の結果、
自社ブランドが競合ブランドより劣っている軸は、

・親密さ

であることがわかったとします。


これが、仮に「ショップブランド」の場合だとすると、
「親密さ」が低いというのは、顧客と店・店員との

「心理的な距離感」

が、競合より遠いことが問題となっています。


ですから、いままで印刷で済ませていた

「お誕生日カード」

を手書きのものに変えてみるとか、
従来は、「気取りすぎ」の接客を
多少フレンドリーなスタイルに変更する
といったことが、改善案として考えられます。


私が「BRQ」をとても面白いと思ったのは、
このように、調査結果に基づいて、
具体的な企業の行動施策に落とし込める点でした。


以前、テスト的に小サンプルでBRQの考え方を
踏襲したアンケートをやったことがあります。

調査対象ブランドは、

「ドトール」と「スターバックス」

でした。


どちらも、頻繁に利用するので、
生活の一部になりやすいですよね。このため、

・相互依存性

の軸はほぼ同じでした。


しかし、スターバックスがドトールを上回った軸が
ありました。

・今の自分とのつながり
・愛情

の2つです。


これらは、やはりシアトル系カフェと呼ばれる
スターバックスのブランド力の反映でしょう。


スタバ(特に郊外の店)で、本でも読みながら
ゆったりと過ごすライフスタイルを好む人がいます。

また、スタバには熱烈なファンがいるのも周知の通り。


残念ながら、駅近辺にあって便利、
安いからという理由で選択されることの多いドトールでは、
スタバのような

「感情的なつながり」

は弱いですよね。


では、ドトールとしては、
どう対抗すべきかということです。

もちろん「ドトール」ブランドでは勝負にならないので、

「エクセルシオール・カフェ」

という新ブランドを立ち上げていますが。

まあ、スタバと戦うのはなかなか大変でしょうね。


あなたの会社のブランドも、BRQに基づいて
自社ブランドの強み・弱みを把握した上で、
弱い軸の強化に効果のある

マーケティング施策、サービス施策

を立てたらどうでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 11:45 | コメント (0) | トラックバック

[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(1)感情的なつながり

「BRQ」(Brand Relationship Quality)

を一言で説明するなら、

“消費者が、ブランドに対して持っている「感情的なつながり」”

を評価(測定)するものです。

これは、いわば「ブランド」を「人」に見立てることです。

そして、

“そのブランドが、「人」だとしたら、
 あなたは、その人に対してどんな気持ちを抱いていますか?”

ということをアンケート調査等によって聞く。

これが、「BRQ」によるブランド評価の方法です。


なお、以上も含め、BRQについての私の説明は、
フォルニエ先生の話・資料を元にした私なりの解釈であることを
あらかじめお断りしておきます。(なるべくわかりやすく
お伝えしたいので、正確に伝えることを多少犠牲にしています。)


では、具体的にどんな種類の

「感情的なつながり」

を聞くのかということですが、大きくは次の7つの軸です。


1 親密さ(Intimacy)
2 こだわり(Commitment)
3 パートナー品質(Partner Quality)
4 今の自分とのつながり(Self-connection)
5 愛着(nostalgic feeling)
6 相互依存(Interdependence)
7 愛情(Love/Passion)


それぞれについて、実際のアンケート調査では
どのような設問が並ぶのか、例として各2設問ずつ
ご紹介しましょう。

ちなみに、アンケート調査票全体としては100項目程度に
なるようですが、調査自体の詳細は私も教えてもらって
いません。


*この調査対象は、高級ブランドショップ等の

「店舗ブランド」

だと想定してくただい。

-------------------------------------------------

1 親密さ(Intimacy)

・このお店に関する情報に敏感である。
・改善に役立つなら、私の利用習慣を教えてもいい。


2 こだわり(Commitment)

・このお店を利用することにこだわりを持っている。
・遠くてもこの店を選びたい。


3 パートナー品質(Partner Quality)

・このお店は、私を上客の気分にさせてくれる。
・このお店は、客の意見を良く聞いてくれる。


4 今の自分とのつながり(Self-connection)

・このお店は私がなりたい自分を表現している。
・この店は、今の私のライフステージにふさわしい。


5 愛着(nostalgic feeling)

・このお店には、なんらかの思い出がある。
・このお店だととても心が落ち着く。


6 相互依存(Interdependence)

・このお店の存在は不可欠だと感じている。
・しばらく行かないと何かが欠けているように感じる。


7 愛情(Love/Passion)

・このお店が好きだ。
・とてもいいお店なので他の人にも勧めたい。

-------------------------------------------------

上記のような設問それぞれについて、
調査に協力してくれる消費者が、

「どの程度当てはまるか」

を回答してもらうことによって、
ブランドと消費者(顧客)の「感情的なつながり」を
評価することができるというわけです。

投稿者 松尾 順 : 10:48 | コメント (0) | トラックバック

[BRQ]ブランド関係性の質を評価する(0)イントロダクション

えー、またまた

「ちょっと難しいテーマだよん!」

シリーズを開始したいと思います。(笑)


「BRQ」とは、

“Brand Relationship Quality”

の略です。文字通り訳せば、

“ブランド関係性の質”

となります。


この「BRQ」の研究を行っているのは、
現ボストン大学のビジネススクール准教授、

スーザン・フォルニエ(Susan Fournier)氏

です。


フォルニエ氏の専門は、ブランド論。

教職に就かれる前は、米国の大手広告会社、
ヤング&ルビカム社に在籍されていたこともあります。

これまで長年にわたって、
さまざまな製品・サービスのブランドについての
コンサルティングを行ってきている方です。


実は、この「BRQ」については、
以前、フォルニエ氏から直接概要を教えてもらう機会が
ありました。


今から約10年ほど前のことです。

私が外資系広告会社に所属していた時、
某企業向けの大規模な企画作成の準備のため、
ニューヨーク本社に出張したんですね。

NY出張の目的は、米国の先進事例や、
新しいマーケティング理論を収集することでしたが、
その一環として、フォルニエ氏の話も聞くことに
なったのです。


当時、フォルニエ氏は、
ハーバード・ビジネススクールの准教授でした。

そこで、NYから飛行機で約1時間のボストンに飛び、
ハーバードビジネススクールの美しいキャンパスを訪ねて、
共に出張した仲間と一緒に、フォルニエ氏の特別講義を
ありがたく頂戴しました。


「BRQ」の研究は、他にあまり類のない斬新なものです。
10年後の今でも類似の研究はみかけません。

ところが、日本ではこれまでほとんど紹介されたことがなく、
知っている方も少ないようです。


そこで、当時、Webから自由にダウンロードできた
フォルニエ氏の学会等での発表資料などを基に、

「BRQ」

の概要をご紹介しておこうと思います。


次回から本格的に内容に入っていきますので
お楽しみに!


蛇足ながら、
ハーバードビジネススクールへの訪問には
後日談があります。

フォルニエ氏から、
たっぷり2時間ほども懇切丁寧な説明を
してもらった私たちは、彼女に別れを告げてから、

「親切な先生でしたね。
 日本からおみやげのひとつでも
 もっていけば良かったですねぇ・・・」

と話していたのです。


ところが、出張から帰ってしばらくして、
フォルニエ氏から私宛に

「2,000ドル」!

の請求書が届いたのでした。


そうなんです、やっぱり無料ではなかったんです。

最初からそういう話だったらしいのですが、
手配してくれた人が、うっかりお金のことを
伝えるのを忘れていたようです。


もちろん、ちゃんとお支払いしましたよ。

しかし、いい値段ですよね・・・

最初に請求書の金額を見たときは、
目玉が飛び出ました。(笑)

投稿者 松尾 順 : 10:09 | コメント (2) | トラックバック