目利きと死に神の研究

消費者行動論を専門とされ、ユニークな研究に取り組まれている
明治学院大学経済学部教授、清水聰氏。

最近は、「目利き」と「死神」が研究テーマのようです。


清水先生とアサヒビールとの共同研究では、
「この人が言えば売れる」という「目利き」を利用して、
発売前に売れ行きを予測できるようになってきたそうです。

(宣伝会議、2007.9.15)

詳しい予測方法はわかりませんが、
目利きの人に新商品のプレスリリースを読んでもらい、
どの程度売れそうかを判定してもらうようです。


また、「死に神の研究」は、
ブランド評価の手法で、読売広告社との共同研究。

「自分がいいと思って買い始めるとなくなってしまう」

と言う人がいますが、この人が「死に神」です。

この「死に神」が購入者に占める割合で、
ブランド(の凋落の兆し?)を評価しようという試み。

なかなか面白い研究ですよね。


ちなみに、「目利きと死に神」に似たものとしては、

「オピニオンリーダーとディスオピニオンリーダー」

という概念がありますね。


「オピニオンリーダー」は、新商品を初期に試し、
周囲に利用を推奨する口コミ影響力のある人、
逆に、「ディスオピニオンリーダー」は、
そのユーザーが商品を利用を始めると、
これまでのユーザーが離れてしまうような人のことです。

たとえば、ルイ・ヴィトンのバッグを女子高生が
持っているのを見て、女子高生と一緒にされたくないと
ルイ・ヴィトンを買わなくなる人がいました。

この場合、女子高生が

「ディスオピニオンリーダー」

というわけです。


ともあれ、清水先生の「目利きと死に神」の研究成果が
発表されるのを楽しみに待ちたいと思います。

投稿者 松尾 順 : 09:16 | コメント (0) | トラックバック

‘病める’米国医療制度・・・『シッコ』

「米国なんかにゃ、死んでも絶対住みたくないな・・・」

と心から思いました。

「米国で病気になったら、終わりだ・・・」
(金持ちでない限り・・・)

マイケルムーア監督の新作映画、

『シッコ』

を見た後の率直な感想です。

『シッコ』は、米国医療制度の病巣を赤裸々に描いた傑作。

米国では医療保険に加入できず、高額の治療費が払えないため、
大きな傷口でさえ自分で縫わなければならないような人が
5千万人もいます。


でも、

医療保険に入っているから安心というわけではない

のがあきれてしまう点です。
本当に米国の医療制度は病んでいます。

というのも、保険会社が保険金の支払いを拒否したたために、
必要な手術や投薬が受けられず、死んでいく人が多数いるのです。
(受けていれば助かったのに・・・)

保険会社に雇われているドクターは、
保険加入者の申請(○○手術の費用を補償してほしい等)の
否認(拒否)率が高いほど、報酬が高い仕組みになっています。

つまり、保険会社の利益を上げるために保険金の支払いを拒み、
病人を見殺しにすればするほど、ドクターも儲かる仕組みなのです。

(全ての保険会社がそうだというわけじゃないでしょうけど)

また、入院患者が治療費を払えなくなると、
病院は、冷貧困層が住むエリアの医療センター前の路上に
その患者を寝巻姿のまま捨てます。
(この医療センターはとりあえずお金がなくても面倒はみます)

病院側が、一方的に患者をタクシーにのせて、
 そこで強引に降ろすように頼むのです。

病院もまた、お金がない病人は見殺しにするのが米国の実態。
病人ですから、必要な治療が受けられず、文字通り死に至る人も
いるでしょう。


一方、シッコで紹介されていましたが、
米国と川を隔てただけのカナダや、英国、フランス、
そして米国の仮想敵国のキューバでさえ、

「国民皆保険制度」

が確立しています。したがって、これらの国では、
医療はすべて無料で受けられます。
(もちろん、税金負担は大きいのですが!)

フランスでは、赤ちゃんのいる家庭には、
週2日ほどベビーシッターサービスが「無料」で
受けられるほどです。


シッコの中で特に印象に残っているのは、
911の救援活動に従事し、その後遺症に苦しんでいるに
もかかわらず、必要な治療が受けられないでいた米国人を
ムーア監督がキューバの病院に連れて行ったところ、
笑顔で受け入れられ、無料で必要な治療を受けることが
できたというシーン。

キューバの平均寿命は、米国より長いのだそうです。


近年問題になっている日本の保険会社の保険金不払いも、
米国保険会社の「人の命より利益優先」という姿勢に
比べると、まだましに感じられましたね。

また、無料ではないにせよ、
比較的軽い負担で相応の治療が受けられる日本の医療制度も、
断固として守らなければならないと思いました。
(改善の余地は多々あるにせよ・・・)

なお、米国では、

『シッコ』

は、ドキュメンタリー映画として史上2位の動員を上げています。

ところが、日本では不入りのためか、
封切り1ヶ月もたたずに公開を打ち切る映画館が
相次いでいますね。

まあ、固い内容ですし、しょせん他国の問題ですから、
平和ボケしてる日本人の関心があまり向かなかったのでしょう。


マイケル・ムーア監督の一連の作品は、
テーマの描き方が一面的で客観性に欠ける点があるという指摘が
これまでありました。

「シッコ」もそうした批判を受けているようですが、
とにかく見て損はない映画だと思いますよ。

楽しいというより、びっくり・唖然とさせられることの連続で、
最後まで目が離せません。

投稿者 松尾 順 : 10:09 | コメント (2) | トラックバック

サイコグラフィック分析最前線

これまで、ターゲットユーザーの購買行動の予測や
セグメンテーションには、主に、

性別、年齢、居住地、職業などの
「基本属性」(デモグラフィック属性)

と呼ばれるものが主に使われてきました。


でも、たとえば、「28歳、都心に住む独身OL」と言っても、
好きなファッションも音楽も遊ぶ場所も人それぞれですよね。

したがって、ターゲットユーザーの行動行動の予測や
セグメンテーションの軸としてはさほど有効ではないのが現実!

それでも、他に有効なセグメント軸がなかったので
最善の策として採用していただけです。


しかしながら、最近の消費者は、
ますます理解しがたい存在になってきてます。

情報化の進展によって、
口コミによるブームが起きやすくなっている一方で、
いわゆる、「オタク」的な細分化されたマーケットも
次々と生まれているような状況です。


このため、以前から主張されてきた

「サイコグラフィック属性」(心理学的属性)

の活用がますます必要になってきていると思います。


すなわち、ターゲットユーザーの

価値観や動機、性格等、

を把握して、ユーザーの購買行動予測や
セグメンテーションの精度を高めていく動きが、
今後活発になってくるでしょう。


その最新事例のひとつが、
リンクアンドモチベーション社(以下、リ社)が提供する

「ライフスタイルデータ分析」

に基づく各種サービスです。


この分析では、調査協力者の性格や価値観の違いに基づき、

・消費に積極的な・・・「浪費快楽型」
・政治・社会参加に前向きな・・・「良識社会型」
・知識教養に関心の高い・・・「自立達成型」

など、消費者をライフスタイル別に
8つに分類(セグメント)しています。


そして、市場調査においてこの分類を活用します。
(日経産業新聞、07/09/26)

たとえば、30-40歳代の女性を対象にしたヨーロッパツアー
を企画する旅行会社からの依頼を受け、
上記8つの分類に属するそれぞれのターゲットユーザーに

「参加意欲があるか」

といった質問を投げかけます。


その結果、「良識社会型」の参加率が高そうであれば、
現地での観光内容を美術館や歴史的建造物めぐりなど、
ちょっと固めのものにします。

あるいは、「浪費快楽型」の参加が多いようであれば、
有名ブランド店でのショッピングの時間をたっぷり取る
旅程とします。

このように、ターゲットユーザーの価値観や消費スタイルに
沿った商品企画を行うことで、参加者の満足度を高め、
リピート率を向上させることが可能になるというわけです。


*リ社の上記内容についてのニュースリリース

また、豊田通商でも、
リ社の上記「ライフスタイルデータ分析」を使って、
顧客の価値観や心理を分析できるシステム、

「CLAS」
(カスタマー・ライフスタイル・アナリシス・システム)

を開発しています。
(日経ストラテジー、NOVEMBER 2007)


たとえば、同社の自動車資材部では、
シートやカーペットの内装の企画や調達を
てがける際のヒントとしたそうです。

同システムを利用することで、
ターゲット層の価値観や好きなブランドを
より深く理解できるため、内装の素材等の選定が
容易になるとのこと。


*豊田通商の記事は、ITproのWebサイトにもアップされてます。


サイコグラフィック分析をやるには、
その元データの収集を対象者に対するアンケート調査に
頼らなければならないという問題が依然として残りますが、
今後実用レベルで使える方法がさまざま開発されていくことが
期待できますね。


なお、リ社の「ライフスタイルデータ分析」は、
ODS社の「ライフスタイルインディケータ」を継承したもの。

これについては、関連記事を以前書きました。

*シンプルマーケティング(2)ライフスタイル-1

投稿者 松尾 順 : 13:11 | コメント (3) | トラックバック

AMNブログマーケティングポリシー(β)について

現時点で35個のブログをネットワーク化し、バナー広告や、
ブログ・オン・ブログ広告(最新RSSフィードとロゴを掲載)
等を配信している、

「アジャイルメディア・ネットワーク」
(Agile Media Network、以下、AMN)

が先日、

ブログマーケティングポリシー(β)

を公開しています。


ブログを活用したマーケティングは、
現在最もホットなテーマでもありますので、
当ポリシーについてちょっと考えてみたいと思います。


さて、AMNは、

“ブロガーによるブロガーのためのネットワーク”

であり、

「ブロガーと読者と企業の会話を促進することで、
 三社を共感で結ぶカンバセーショナルマーケティングを推進する」

ことを目指しています。


この枠組みにおいて、企業側がエンドユーザー直接ではなく、
人気ブロガーとの会話を行う意味・価値があるのは、
ブロガーは、多数のエンドユーザー(読者)に対して、

・専門影響力(専門的な知識が源となる影響力)
・情報影響力(コンテンツ自体の質の高さが源となる影響力)

を駆使して、強力な影響を与えることができるからです。


ただし、

『影響力を解剖する(6)影響力の源-2』

で書いたように、
ブロガーが自らの利益誘導だけを目的として、
企業からお金をもらって「やらせ記事」を書いたりすると、
読者の反感を買い、影響力を失ってしまいます。

そうなると、企業としては、
ブロガーと会話する意味・価値がありません。


また、ブロガー自身も、
記事を書き続けるために最も重要な動機付けとなっていた

「読者の支持」(ブロガーに対する共感や理解、信用、愛情など)

が失われます。

読者としては、信頼していたブロガーが、
実は企業の提灯持ちだとわかってがっかりです。

もはやこのブロガーは信用できないと、離れていくでしょう。


この結果、ブロガーの「承認欲求」が
満たされなくなりますから、記事を書く意欲が
低下してしまいます。

もちろん、そもそも目的としていなかったのですが、
「金銭的報酬」も得られなくなります。


これは、企業、ブロガー、そして読者の3者にとって
不幸な結末ですよね。


ですから、ブログマーケティングにおいて
厳守しなければならない基本原則は、

「読者をあざむかない」

ということだと私は思っています。


さて、この基本原則に照らして、

「AMNブログマーケティングポリシー(β)」

を見てみます。


同ポリシーの大項目は次の3つです。

・報酬の有無を開示します。
・広告と編集は分離されています。
・率直で正直な意見を尊重しています。


これらは、「読者をあざむかない」ために
最低限必要なポリシーでしょう。

これらのうち、とりわけ重要なのは

「報酬の有無の開示」

です。

これがなければ、
読者をあざむく「やらせ記事」がどんどん生まれて
しまいますからね。


なお、この項目の詳細説明の中には、

AMNは、記事の内容を問わず、
ブロガーが記事を投稿するだけで報酬を支払う、
いわゆる「Pay Per Post(ペイパーポスト)」
にも関与しない

とも書かれています。


「ペイパーポスト」については、
広告であることが明示されていれば問題ないと
私は考えています。

ただ、ブロガーにとっては、
金銭的報酬による動機付けが強くなりすぎて、
広告ばかりの記事が続くことになる可能性が高いですね。

そうなると、やはり読者の支持が弱まり、
ブロガーの影響力が低下することになるでしょうから、

「ペイパーポスト」

を手がけないというのは賢明な判断でしょう。


そして、続く2項目、

・広告と編集は分離されています。
・率直で正直な意見を尊重しています。

は、要するに、ブロガーの記事内容について
AMNは一切影響力を行使しないということを明確にしたものです。

これによって、ブロガーの公正さ、信頼性が維持できるように
意図しているわけですね。

結果として、少なくとも企業やAMNの操作によって、
読者をあざむくような行為の発生を防止することはできます。


残るのは、ブロガー自身の倫理観ということになります。

これについては、AMNができることは限られていますけど。


ただ、同ポリシーの中に、端的に書けば、

「倫理観に欠けるブロガーは、ネットワークに加入させません」

といった項目を追加してもいいかもしれません。

投稿者 松尾 順 : 09:20 | コメント (4) | トラックバック

高層階の部屋ほど不人気な国

近年、首都圏では「高層マンション」が
ガンガン建設されてますよね。

当然ながら、日当たりがよく、
眺望の良い「高層階」ほどお値段は高い。


最近は、花火大会で打ち上げられる花火を
自宅で居ながらにして鑑賞できる部屋もあるそうです。

なにしろ、花火の上がる高さと同じくらいの部屋も
あるでしょうから、相当な迫力でしょう。

やはり当然ながら、こうした部屋は希少価値が高いせいか、
人気も高く、さらにお高くなりますね。


さて、日本や欧米では、おおむね

「マンションは高層階ほど人気」

というのが常識ですから、

「当然ながら・・・」

というまくら言葉をつけてしまいます。


しかし、世界を見渡してみると、

「高層階の部屋ほど不人気」
というところもあるのです。


経済発展著しいベトナムのハノイ。

ここでは、ある賃貸アパートを見に来た夫婦が、

「このアパートには5階以上の部屋しか
 空いていなかったから他のところを探す」

とコメントするほど。その理由は、

「怖いから」

だそうです。


地元の不動産屋の話によると、
ある新築アパート最上階の家賃は、
日本円にして月額約2万3千円。

一方、同じアパートの1階、
間取りはほぼ同じで、同3万円強。

高層階の方が7千円/月も安い価格設定です。
日本などと逆ですね。

それでも5階以上の部屋の借り手は
見つからないのだそう。


国内が戦場となった激しい戦争を経験し、
まだその記憶が生々しいベトナム人にとって、

「高層階の部屋は、
 いざという時にすぐに逃げ出せない」

という点が、精神的な壁になっているようです。


上記のベトナムの話は、日経夕刊に
たまに掲載されるコラム

「ところ変われば・・・」

がネタ元です。

このコラムでは、
海外のさまざまな生活習慣や風習が紹介されているので、
毎回興味深く読んでいます。

こうしたコラムを読み、自分たちの基準からは大きく
異なる考え方や暮らしをしている人々のことを知るのは、
固定観念に縛られがちな頭脳を柔らかくするのに効果が
あるように思います。


蛇足ながら、確かに高層階の部屋は、
何事もなければ快適な暮らしが送れると思います。

窓を開ければ涼しい風が吹き抜け、
猛暑の夏でも冷房不要だったとも聞きますし。


でも、いざなんらかの災害が発生し、
エレベータが停止してしまったら本当に大変です。

たとえば、地上38階に買った部屋に行き来するのに、
毎回階段を上り下りしなければならないとしたら、
気が遠くなりそうですよね。

食料の調達とかもままなりません。


実際、災害時における

「高層マンション難民」

の発生が首都圏では危惧されていますね。

投稿者 松尾 順 : 10:37 | コメント (2) | トラックバック

ホームページのユーザーテスト結果をどう解釈するか?

星野リゾート代表取締役、星野佳路氏は、

「個人旅行の予約ツールはほとんどがネットになる」

と感じているそうです。
(「IT経営への提言[日経コンピュータ他特別編集版])」
収録の特別講演より)


同社が運営するリゾート、宿泊施設でも、
それぞれ独自のホームページを立ち上げ集客を図っています。

問題は、各ホームページのアクセス数には大きな差が
あったことです。また、ホームページ来訪後の予約件数にも
ばらつきがありました。

そこで、ホームページの「ユーザビリティ」を検証するため、
ホームページ上の消費者の行動調査に取り組んできています。


星野氏の言う「行動調査」とは、
消費者がホームページに期待していることを口頭で聞くだけでなく、
旅館やリゾートのホームページを見るときに行動の裏に潜む
原因、理由、心理を分析しながら行動を分析すること。


そして、具体的な調査方法としては、
アイトラッキング(視線追跡)システムを活用した
ユーザーテストを行っています。

ホームページ上をどのようにユーザーの視線が動いているのか
を記録し分析することによって、さまざまなことが見えてきます。


星野氏によれば、次のようなことがわかったそうです。

・想像以上に、写真のインパクトが大きいこと
・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと
・アクセスマップも非常に重要だということ
・デザイン的に素晴らしいホームページが予約獲得に直接
 結びつかないケースがあるということ


さて、こうした結果をあなたはどのように「解釈」しますか?


星野氏の講演で話された内容に基づく限られた情報ですので、
あくまで推測に頼った解釈しかできませんが、
自分なりにいろいろと考えてみるのが「解釈力」を
高めるために有効だと思います。


私の場合、

・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと

という結果が気になりました。

これを短絡的に解釈すると、

「くだくだと長い文章は効果がない。短い簡潔な文章にすべし」

ということになりそうです。


私はそうは思いません。

やはり、伝えたい情報や思いは、
たとえ長くなってもたっぷりと掲載すべきだと思います。

(もちろん、専門用語を多用しないわかりやすい文章や、
 適切な見出しなど、読みやすさへの配慮は必要です)

というのも、人は最終的にどのホームページで
購入をするかの判断材料の一つとして、

「情報の豊富さ」

を重視していると考えられるからです。


では、なぜ

・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと

という結果が出てしまうのでしょうか。

これはおそらく

「ユーザーテスト」

という特殊な環境だからだと私は考えています。


ユーザーテストの被験者(調査協力者)は、
「初見」としてホームページを見るという意識で
調査に臨むでしょう。

この場合、ユーザーが気になるのは、
全体的な漠然とした印象です。

つまりざっと見た第一印象で、
このページに有効な情報がありそうか、
使いやすそうかを判断しようとするでしょう。

この場合、どうしても視線は画像に行きやすく、
逆に、文章をじっくり見ることはしません。


おそらく、テストではなくリアルな状況で、
複数のホームページを見比べるとき、
あなたもこうするのではないでしょうか。

比較対象のホームページ全てを隅から隅まで、
なめるように見るのではなく、ざっとあたりをつけて

「このホームページがよさそうだ」

と1-2個に絞りこんでから、
じっくりと文章を読み込んでいきますよね。


ですから、初見の「ざっと見」の段階で、
情報量の多いホームページと少ないサイトがあった時、
多くの場合、情報量の少ないサイトは捨てられるでしょう。
(使いやすさは同じ水準だとしたら)

なぜなら、

「このホームページでは十分な情報が得られそうもない」

と最初の段階で判断されてしまうからです。

したがって、最初の時点で、
文章をちゃんと読んでもらえないことは、
けっして問題ではないのです。


以上は、あくまで私の「仮説」の域を出ませんが、
ユーザーテストの結果を安直に判断せず、
リアルなユーザー環境も考慮しながら、
さまざまな「解釈」の可能性を探ることが必要だと思います。


あなたの「解釈」もぜひ教えてくださいね!

投稿者 松尾 順 : 10:22 | コメント (8) | トラックバック

かっぱ寿司食い逃げ事件とラクーア開業時の話

先日、久しぶりに「かっぱ寿司」に寄りました。

そこでなんと、「食い逃げ事件」に遭遇!

隣に座っていた若い男性が、精算せずに姿を消したようで、
気づいた店員さんたちが慌ててました。


「かっぱ寿司」に行かれる方はおわかりだと思いますが、
入り口正面にレジがあり、その右奥がトイレになってます。

ですから、食後トイレに行き、レジ周辺に店員さんがいなければ、
そのまま何食わぬ顔をして外に出てしまうことが可能です。


「かっぱ寿司」ほどの巨大店舗になると、
混雑時は店員さんたちの目も行き届きませんし、
結構食い逃げが多いんじゃないでしょうか・・・


まあ、その食い逃げ野郎が食べた皿は6枚ほど。

支払い金額でも600円、原価だと200円そこらでしょうから、

「節度のある食い逃げ」

と言えないこともない・・・かな?


さて、「かっぱ寿司食い逃げ事件」に遭遇して、
ふと東京ドームにある温浴施設

「ラクーア」

開業時の話を思い出しました。


ラクーアを利用されるとわかりますが、
最初に入場料を払い、帰りに中で利用した飲食代や
マッサージ代などを精算することになっています。

そして、精算が終わると、カードが渡され、
それを1枚1枚出入口のゲートに入れて出る仕組みです。


このゲートですが、実は開業当時はなかったんですね。

でも、おかげで運営者側が思いもしない、
困ったことが起きたのでした。

精算しないまま帰ってしまう客が続出したのです。


それはうっかりなのか、
意図的だったのかはわかりませんが、
ともかくも、現象としては「無銭飲食者」の大量発生です。


というわけで、精算していない客は出られない仕組みを
慌てて設置したというわけです。

投稿者 松尾 順 : 13:36 | コメント (4) | トラックバック

自己破綻してるメッセージ

弊社の問い合わせ用アドレスに届いた
自己啓発系スパムメール。

なんとなく気になったので本文を見てみたら、

「一週間であなたの人生が変わるメッセージ」を
392日分用意しております。

とありました。

1週間で変われるのなら、

「392日分」

も必要ないですよね・・・


無理のあるメッセージは、
多くの場合「自己破綻」しています。

投稿者 松尾 順 : 22:31 | コメント (0) | トラックバック

データの行間を読む力

大手スーパーも恐れをなす山梨県の地場スーパー、オギノ。

過去10年間も着実に売り上げを伸ばし、
直近総売上高ベースでの県内シェアは[25%]に達しています。


同スーパーの最大の強みは、
県内全世帯の9割に行き渡っているポイントカード、
約42万枚(人)を通じて得られる

「購買データ」

の徹底活用です。

先日の「ガイアの夜明け」では、
同スーパーのデータ分析について
かなり突っ込んだ内容が放送されていました。

ポイントをご紹介したいと思います。


まず「併売分析」です。

これは一般に

「バスケット(買い物カゴ)分析」

と呼ばれ、一度にどんな商品が同時に買われたかを
分析するものです。


オギノの分析担当者は、併売分析の結果から、

・ジャワカレー辛口(250G)
・バーモンドカレー甘口(125G)

が同時に買われているケースが多いことを発見。

このことから、

消費者が、お好みで異なる辛さのカレールーを
2:1の割合で混ぜ合わせて使っているのだろう

という仮説(推測)を立てました。

そこで、カレールーが置いてある棚の陳列を変更。

レギュラーサイズ(250G)のそばに、
辛さの異なるハーフサイズ(125G)の商品を増やして
置いたところ、売り上げが

「5倍」

に伸びたそうです。


同様に併売分析の結果に基づき、
トンカツのそばに、千切りキャベツのパックを
並べて置いた結果は、売り上げ3倍アップ。

これは、わかりやすい「関連陳列」の例ですね。


あるいは、パスタ製品と乳製品(牛乳やバター類)が
そばに置いてあると、34倍売り上げが伸びることから、

パスタ、乳製品に加えて、
サーモン、きのこといった食材も同時に並べ、

「鮭ときのこのクリームパスタ」

というメニューの提案と合わせた売り場作りを行い、
来店客の人気を集めることに成功しています。


さて、以上は、商品についての分析でしたが、
顧客のライフスタイルや購買傾向を浮き彫りにする分析
も行っています。


オギノでは購買パターンを基に、
購買層をさまざまな切り口(軸)でセグメント化。

・お酒もタバコもやめられない、健康も気になる中高年
・朝はパン食、ベーカリーのパン好き固定客
・健康維持は飲料から。惣菜好きな単身者

などといった表現で顧客が分類されているのです。


オギノでは、こうしたセグメントに基づき、
レシートに印刷される販促クーポンの内容を
カスタマイズしています。

ある客には「ウーロン茶」、別の客には「豆乳」を
お勧めするといった具合です。

顧客全員一律ではなく、あくまで顧客一人ひとりの
購買傾向に基づいた「お勧め」のため高い反応率を
得られているようです。


オギノの分析担当者のコメントが印象的でした。


“データそのものではなく、データとデータの間、
 つまり「行間を読む力」が必要なのです。
 データの間にある顧客の本当のニーズを想像する力が
 なければなりません。”

“いわば、「現代版御用聞き」ですね。”


私も常日頃から、
リサーチやデータ分析においては、

「データをどう読むか、すなわちどう解釈するか」

が、リサーチ、およびデータ活用のカギだと
強調してきています。


データそのものには答えは書いてありません。

データから

「価値のある知見」

を取り出せるかどうかは、
あくまで分析者の力次第なのです。

投稿者 松尾 順 : 15:02 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(13)受け手の反応レベル

いつものように長々と続けてしまった

『影響力を解剖する』

ロングレビューですが、今回が最終回です。


内容は、影響の受け手の反応についてです。


受け手が、どの程度深く影響を受けているのかという

「反応の深さ」

は、3つのレベルに分類できます。
(米国の社会心理学者、ケルマンの説)


・表面的服従
・与え手に対する同一視
・価値観の内面化


[表面的服従]

いわゆる「面従腹背」です。

表面的には相手に従っているけれども、
心から従っているわけではない。

態度や信念まで変えるまでに至っていないレベル。


単に「賞」が欲しい、または「罰」を回避したいから
仕方なく従っているだけというケースが多いでしょう。

ですから、もし賞や罰影響力がなくなれば、
影響の与え手に従わなくなる可能性が高いでしょうね。


[与え手に対する同一視]

これは、与え手との満足な人間関係を確立したり、
維持するために与え手の影響を受け入れる場合です。

そして、受け手が自ら進んで
意識的に与え手の考え方や行動を模倣したり、
与え手が期待するような役割を果たそうとします。


たとえば、武道や芸事の世界で、
憧れの師への弟子入りが許された人は、
師匠の指示があろうがなかろうが、おそらく、
師匠が期待する行動を進んで取ろうとするはずですよね。

ただ、これはあくまで師匠と弟子という人間関係に
基づくものです。


[価値観の内面化]

これは、受け手自身の態度や価値観が、
与え手のそれと合致するがゆえに、与え手からの働きかけに
応じるもの。

また、十分納得した上で、
与え手から言われた通りに考えを変えたり、
行動したりする場合です。

そして、影響を受ける前にまでに持っていた
態度や価値観は、受け手が納得した上で修正されます。


このため、影響を受けたことの持続力が高く、
与え手が受け手を監視しなくても、新しい考え方や行動を
自発的に取り続けます。

すなわち、「価値観の内面化」は、
もっとも深いレベルで影響を受けた場合ということです。


さて、企業などの組織運営においては、
成員が、目先の報酬(昇給、昇進)や罰(減給、降格)で
表面的に動くのではなく、会社の考える価値観に沿い、
自主的・自律的に動ける組織のほうが当然ながら強いですよね。

だからこそ、経営理念やビジョン、行動指針を明確に掲げ、
常日頃から繰り返し成員に伝え続けることによって、
企業の価値観を成員に内面化させることに最大限の努力を
注ぐ必要があります。

この超有名な事例としては、
ザ・リッツ・カールトン・ホテルの

「クレド(信条)カード」

がありますね。

リッツカールトンの全スタッフは、
常にクレドカードを携帯して、時間があれば何度も読み返す。

そしてまた、朝礼では、本社から毎日送られてくる課題
(例えば、無理な注文をしてきた顧客にはどう対処すべきかなど)

をクレドに書かれた内容をベースに考えるという方法を通じて、

「価値観の内面化」

を徹底しているというわけです。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 09:28 | コメント (2) | トラックバック

オネストカード・・・「正直さ」がCRM戦略の核

私が生まれ育った福岡の片田舎に、
小さな個人商店がありました。

まだろくにスーパーもなかった頃からの店で、
地元のいわゆる「よろずや」的存在。


近隣の主婦たちが買い物カゴを下げて毎日買い物をし、
同時に何時間も油を売りに行く場所。(笑)

コンビニ並みの広さでしたが、
生鮮三品(肉、魚、野菜)から日用雑貨まで
一通りなんでも置いてありました。


店を切り盛りしていたおばさんは、なかなかの目利き。
質のよい生鮮品を仕入れてくると常連客から評価されてました。

ただ、良くも悪くも昔ながらの商売人でした。

古くなって明らかに味が落ちている肉や魚を
まだ経験の浅い、若い主婦に言葉巧みに売りつけていたのです。


傍で見ていたベテランの主婦(私の母など)は、

「そんなことはしないほうがいいよ」

と忠告していたそうですが。


その結果がどうなったかは知りません。

おそらく、実際料理したらおいしくないことがわかった客は、
わざわざ車を使ってでも、他の店に行くようになった可能性が
高いですよね。

さて、この店も今は代替わり。

スーパーの攻勢にもさらされていますから、
以前のような商売はやってないでしょう。


さて、個人商店だけでなく、大手のスーパーでも、
賞味期限切れの商品に、新しい賞味期限のシールに貼り替える
ということを平気でやっているところがあると聞きます。


店舗型ビジネスは、
商圏内の顧客からそっぽを向かれたら終わりです。
立地を簡単に移すことはできませんから。

でも、「見つからなければいい」という考えなのでしょうか、
平気で顧客に対して不誠実な行為をやっているのです。


しかし、中堅スーパーの「OKストア」だけは別格です。

OKストアの店頭に行くと、

「オネスト(正直)カード」

というものを目にすることがあります。


このカードには、まさに正直に事実が記入されています。


“この商品は来週24日からセールで安くなりますので、
 それまでお待ちになったほうがお得です。”

“このグレープフルーツ(南ア産)は、フロリダ産の
 食味を100点とすると70点です。蜂蜜をおかけになって
 お食べください。”


こんな文章を読まされた顧客は、
購買意欲が確実に低下しそうですよね・・・

でも、実際にはそれほど売り上げが下がるわけでは
ないそうです。


他の店では、こうしたネガティブな事実を
わざわざ顧客に伝えようとはしません。

短期的な売り上げ低下が怖いからです。


しかし、あなたも経験があると思いますが、
先週買ったばかりの商品が、今週安く売られていると
知ったときのくやしさ。

また、見た目おいしそうだったけれど、
おいしくなくてがっかりした果物や野菜。

こうした不愉快な体験が積み重なると、最終的には

「あの店は良くない」

という評価になり、客が離れていく。

長期的には、売り上げ低下につながってしまうわけです。


OKストアの場合、
短期的な売り上げを犠牲にしても、
顧客に正直であることによって、

「信頼」

を勝ち得ています。

オネストカードで問題のある商品と知りつつも、
顧客が自ら「納得」した上で購入していますから、
後日の不満につながることはありません。


実は、OKストアのオネストカードについては、
別の切り口で昨年も取り上げました。

*正直は最強の戦略


改めて思うのですが、商品を売ることではなく、
顧客の獲得、育成、維持に焦点を当てた

CRM戦略」

の成功のためには、顧客に対する

「正直さ」(誠実さ)

が絶対的に必要です。


だって、ごまかしたり、うそをついたりする会社と
付き合いたいとは思わないですよね。


売上確保のためになんだってする会社が多い中、
顧客の利益を最優先にしているという姿勢を示している
OKストアが顧客の熱い支持を受けるのは当然でしょう。

投稿者 松尾 順 : 07:35 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(12)コントロール感-2

前回書きましたが、

「自分の周囲の世界を主としてコントロールしているものは何か」

ということについての私たちの見方(認識)には、
大きくは、次の2つの傾向があるのでした。

・外的コントロール型
・内的コントロール型


「外的コントロール型」とは、
自分の行動や能力よりも、外的な要因、
すなわち運命や他者の存在によって、
自分にもたらされる結果が大きく異なってしまうものだと
考える見方。

一方、「内的コントロール型」は、
外的な要因よりも、自分の行動や能力、性格によって、
自分にもたらされる結果が大きく影響を受けると
考える見方です。


そして、自分にとって良い結果をもたらすのは、

「内的コントロール型」

の見方であるとも書きました。

「内的コントロール型」の人は、
自分の人生は自分の考え方や行動次第なのだという
いわばポジティブな思考が、「運」をも呼び寄せるからです。


逆に「外的コントロール型」の思考を持っていると、

「どうせ努力しても無駄だ」

という投げやりな態度に陥りがちで、
その自然な結末として、ますます不幸になっていきます。


なんだか、ちょっと自己啓発的な話になってますが、
今回取り上げたいのは、

「過去の経験の結果が、
 こうしたネガティブな見方を形成してしまう」

という点です。


それは、

「学習性無力感」

と呼ばれるもの。

これは、「コントロール感」を
剥奪された状態を意味します。


この存在を検証するために行われた、
犬に電気ショックを与えるちょっと可哀想な実験が

『影響力を解剖する』

で紹介されています。


実験1日目、電気ショックを与えられた犬のうち、
ある犬は目の前の板を鼻で押すとショックを止めることが
できました。

別の犬は、電気ショックを止めるための仕掛けはなく、
ただひたすらショックに耐えるしかない状況に
置かれました。

また別の犬は、
いっさい電気ショックを与えられませんでした。


実験2日目、今度は柵で2つに区切られた部屋に犬が
入れられました。この部屋は、天井にある電灯が消えたら
10秒後に電気ショックが与えられる仕組みになっています。

ですから、電灯が消えたらすぐに柵を飛び越え、
隣の部屋に移れば電気ショックを回避することができました。


さて、前日、電気ショックを鼻で止めることのできた犬と、
最初から電気ショックを与えられなかった犬は、
すぐにこの仕掛けを理解し、電気ショックを回避することを
学習しました。

ところが、前日電気ショックを耐えるしかなかった犬は、
自分が動きさえすれば電気ショックから逃げられたのに、
動こうとせず、電気ショックを受け続けたのです。


この実験が示唆するところは、深いものがありますよね。

動物は、自分がコントロールのできない不快な状況を
体験させられ続けると

「無気力」

となり、後に不快さを自分で解決する力を与えられても
自ら動こうとしなくなってしまうのです。


「学習性無力感」の実験が与える示唆が「深い」と
思うのは、現代社会が、何か自分とは関係のないところで
大きく発展(進化)し続けていて、その複雑で高度な変化に
私たちは翻弄されているという感覚を持たざるを
得なくなってきたからです。

こうした変化に対し、なんとか適応しようとがんばり、
自分の人生のグリップを握り続けている人はいいのです。


問題は、さまざまな理由で
人生のグリップを手放してしまった人たちです。

彼らは、社会への適応に失敗し続けるうちに、文字通り

「学習性無力感」

に陥ってしまい、現状にただ流されるだけとなり、
自暴自棄の生活を送る可能性が高くなります。


最近の若者たちの動向を見ていると、

「ひょっとして、若年層にこんな人々が増えているのではないか?」

という危惧を感じざるを得ませんよね。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 12:55 | コメント (0) | トラックバック

「御社の提案書の説得力が10倍増します!」

「御社の提案書の説得力が10倍増します!」


先日送られてきたeメールの件名です。

内容は、提案書の説得力が確かに「増す」と思えたサービス
の案内でした。


しかし、この件名はいかがなものか。

この件名、単なるキャッチコピーだということはわかりますけど、

「あまりにオオゲサだよなあ」

と感じませんか。


ちょっといじわるな問い合わせですが、

「説得力が‘10倍’増すという根拠を示してください」

というeメールを送りたくなりました。


「文章に、具体的な数字を盛り込むと説得力が増す」

というのは文章術の定石ですが、
この文章は逆効果になっている例だと思います。

説得力の話だけに皮肉ですね。

(なお、実際のサービス内容や運営会社を揶揄している
 わけではありません。)

投稿者 松尾 順 : 00:52 | コメント (2) | トラックバック

ノコギリ演奏家

日本のものと異なり、幅広でペニョペニョの

「西洋ノコギリ」

をバイオリンで利用する「弓」で奏でると、
実に繊細な音が出るんですね。

その柔らかな高い音色は、目を閉じて耳を傾けると、

「天使の歌声」

に聴こえないこともありません。


世界には、「ノコギリ」を楽器として演奏する人が
相当数いるということを先日知って驚きました。

日本のノコギリ演奏家の第一人者は、サキタハヂメ氏です。
米国などで開催されてきた

「ノコギリ音楽祭」

で何度も優勝してます。


サキタ氏によると、

「演奏専用のノコギリ」

というのがあり、いちおう歯はついているものの、
目を立ててないので、木を切ることは難しいとのこと。


つまり、楽器としての演奏のためには、

「ノコギリの歯」

は本来不要なのです。

でも、「歯」は、ノコギリがノコギリであるための
大事なアイデンティティ。

歯を取ってしまったら、ただの「鉄板」に成り下がる。
確かに、ただの鉄板を弾いても面白くありませんね・・・!


それにしても、いろんな変なことをやってしまう、
人間という種は、本当に面白い存在だと思います。

投稿者 松尾 順 : 10:33 | コメント (0) | トラックバック

ミニブログ、そんなに伸びてない

先週木曜夜、台風が関東にひたひたとやってきている最中、

「国内ミニブログサービス5社によるトークバトル」
(比較勉強会)

に出席しました。


ミニブログは、米国の「Twitter」が注目されましたが、
1行(100文字程度)程度のショートメッセージが並んで
表示されるWebサイト。

独り言やつぶやきのような内容がほとんどで、
コメントができたり、SNS機能がついているものもあります。


さて、上記トークバトルに参加していた
ミニブログのサービス名称は次のとおりです。

・フィークル
・もごもご
・gumi
・モバツイッター
・タイムログ


5社の中で最後発の「Gumi」の9月時点のユーザーは約1700人。

残りの4社のユーザー数は、どこも、

ほぼ6千人前後(推定含む)

と横並びであることがわかって興味深かったです。

また、ユーザー数は、
春先にメディアで盛んに取り上げられた際に一気に増加した
そうですが、どのサービスも、ここ数ヶ月は月数百人程度と、
期待ほどは伸びてはいないようです。


「ミニブログ」は、既存のブログやSNSよりも
気楽に書けるサービスとして今後成長間違いないとは思います。

でも今のところは、

ちょっと足踏み状態に陥っている

という印象を持ちました。

投稿者 松尾 順 : 12:48 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(11)コントロール感-1

なぜ、そもそも人は

影響力を持ちたい、与えたい

と思うのでしょうか?

それは、

「コントロール感」

を持ちたいという人間の欲求が根底にあるからです。


「コントロール感」とは、

自分の判断で行った行動が予期した結果を生み、
自分に取って望ましい状況を自分で作り出せた

という認識のこと。

わかりやすく言い換えると、

「自分が世界の中心にいて、世界を思いのままに動かしている」

と思いたいという「自己チュー的感覚」のことです。


ただし、私たちは、この世に誕生して以来、
社会に揉まれながら育っていく過程において、

「自分の周囲の世界を主としてコントロールしているものは何か」

という問いに対する答え(見方)を形成していきます。


この見方には大きく次の2つの傾向があります。

・外的コントロール型
・内的コントロール型


「外的コントロール型」とは、
自分の行動や能力よりも、外的な要因、
すなわち運命や他者の存在によって、自分にもたらされる結果が
大きく異なってしまうものだと考える見方。

なにかがうまくいかない時、常に「周りが悪い、運が悪い」
と考える人は、

「外的コントロール型」

の見方をする傾向が強いと言えますね。


一方、「内的コントロール型」は、
外的な要因よりも、自分の行動や能力、性格によって、
自分にもたらされる結果が大きく影響を受けると考える見方です。

失敗した時、「自分の努力が足りなかった」
と考える人は、

「内的コントロール型」

の見方が強いです。


もちろん、人はそれぞれ、この2つの見方のどちらか
一方しか持たないというわけでなく、両方を使い分けることが
ありますし、時代や状況によっても変化していきます。


たとえば、2001年の米国の同時多発テロ事件、
いわゆる「9・11」が発生した時、あっけなく崩壊した
ワールドトレードセンターを目撃した人の多くは、

「この世には自分ではどうしようもできないことがある」

という「悲観的外的コントロール型」の思考に大きく傾きましたよね。


一方、たまたまバブル期だったから、
どの株を買ったところでほぼ確実に儲かったにすぎないのに、
株式投資で大金を稼いだ人の中には、

「自分は株の天才だ」

などと、「妄想系内的コントロール型」に陥った人がいました。


さて、基本的には、
人生においてよい結果につながりやすいのは、

「内的コントロール型」

です。

要するに、自分に対して影響力を行使し、
怠けがちな自分を叱咤激励して行動を起こさせる。

自分の能動的な行動こそが、
外的要因である「幸運」をも呼び寄せるというのは
成功した人はよくわかっています。


「外的コントロール型」は、

「自分でどうしようもならないことをうじうじ考えても仕方がない」

という「健全な諦念感」につながるのならいいのですが、

どうせ自分がどんなにがんばっても、どうせ浮かばれない」

という「逃げ」(行動しないことの言い訳)に陥ってしまうと、
まさに、自分の思うとおりますます事態は悪化していきます。


ちなみに、私はキャリア・アドバイザーとして、

「キャリアデザイン研修」

も業務のひとつとして行っています。


その研修の中で、私は、
キャリアづくりにおける基本的な心構えとして
次の3点を強調しています。

・健全な自己中心主義
・健全な危機意識
・健全な諦念感


「健全な自己中心主義」とは、
人様に迷惑をかけない限り、周囲がなんと言おうが、
自分のやりたいことを貫こうとする意識。

「健全な危機意識」とは、
現状のままでいいはずがない、という現状に安住しない意識。
(うぬぼれを防ぎ、謙虚さをもたらします)

「健全な諦念感」とは、
前述したように、自分がコントロールできないことについては、
考えない。「人事を尽くして天命を待つ」という意識のことです。


ちょっと話が飛びましたが、

「外的コントロール型」と「内的コントロール型」の
適切な組み合わせ(バランス)

が、この大変な世の中を渡っていく上で有効なのです。


*キャリアの心構えについては下記サイト参照

『キャリアデザイン基礎講座』(第4章)
(A・ヒューマンキャリア塾)


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 12:47 | コメント (2) | トラックバック

成約率9割のロー・プレッシャー営業

約1900人の顧客を抱える、
ソニー生命保険のファイナンシャルプランナー、松岡博巳氏。

「顧客に信頼される営業マン」
「愛され続けるサービス」

をモットーにする松岡さんは、
多くの場合、「紹介」を通じて新規見込客に会います。

その成約率はなんと9割!


しかし、この驚異的な成果は、私たちが思わずイメージする、

「能弁で押しの強い営業スタイル」

がもたらしたものではありません。


紹介を受けると松岡さんは事前に、

「○○様から紹介で、
 保険の相談や心配事をお聞きできればと思います」

といった内容のハガキを送ります。

次いで、顔写真と簡単な自己紹介文を封書で送っておく。

こうして、事前に松岡さんの情報を見込客に渡しておくことで、
初めて会った時に、すぐに打ち解けて話ができるのです。

もちろん、会った後の紹介者へのお礼も怠りません。


そして、見込客との会話の中では、なによりも、

「お客様の喜怒哀楽」

を感じ取ることを重視。

その感性を磨くために、松岡さんは、
年50回のセミナー参加や読書を行っているそうです。
また、人間関係を良くする

「選択理論心理学」

の勉強会の幹事をしています。


松岡氏は、自分の営業方法について次のように述べています。

“気持ちの理解・共感があって初めて、お客様とのあいだに
 信頼関係が芽生え始めるんです。十分な時間を必要としますが、
 私が保険の提案に入るのはその段階を経てから。最初は、
 イエス・ノーの簡単な質問をし、信頼の度合いが上がってきてから
 難しい質問に切り替えていきます。”

あくまで顧客主導で話を進め、
決して加入を強要しないのが松岡さんなのです。


松岡さんのこの営業スタイルは、

「ロー・プレッシャー営業」

と呼ぶことができます。


「ロー・プレッシャー営業」とは、端的に説明すれば、

顧客ににじり寄り、購入に追い込むのではなく、
顧客自身に自由に買うか買わないかを自由に判断させること

です。

ちなみに、この対極にある営業スタイルは、

「ハイ・プレッシャー営業」

これは文字通り、あの手この手を弄して
見込客を「買う」という意思決定に追い込みます。

日本語では、

「押し売り」

と言えば理解が早いでしょうね。


さて、商品の選択肢が豊富にあり、
情報収集能力が高い現代の「賢い顧客」に対しては、
もはや、「ハイ・プレッシャー営業」は効果が薄く、
むしろ、一見弱腰に思える

「ロー・プレッシャー営業」

の方が効果が高いケースが多いと思われます。


「ロー・プレッシャー営業」においては、
2つの原則があります。

ひとつは「誠実でなければならない」こと。

購入を強要しないのは、
あくまで見せかけの誠実さや親切さであって、
結局のところ、「なんとかして買わせたい」
というセールスパーソンの

「下心」(本心)

がわかった瞬間、見込客は離れていきます。

ですから、なかなか実践は難しいことですが、
商品のメリットも弱点も率直に説明し、
見込客が本当に必要、また欲しいと感じなければ
購入してくれなくてもかまわない、という気持ちを
もって営業に臨むことがロー・プレッシャー営業の
成功の鍵を握っています。


そしてもうひとつの原則は、

「顧客が抱えている問題を解決する」

ということ。


そもそも、商品は、
買い手の何らかのニーズを充足するように
設計・開発されているはずです。

ニーズとは、たとえば保険の場合、

「事故や病気時の生活の不安をなくしたい」

といった問題として表現できます。

そこで、セールスパーソンは、
商品の特徴ではなく、顧客の抱える問題に焦点を当てる。
そして、その問題を商品がどのように解決するかを説明する。


これは、要するに商品の

「便益」(ベネフィット)

を語ることですが、この時、セールスパーソンは、
売り手ではなく、「買い手」の立場で考えることができています。

こうした顧客の立場に立つという基本的な姿勢が、
見込客をして自ら購入を判断してもらうために必要なのです。


そもそも、人は、相手に自分の考えや行動を
強引にコントロールされるのが嫌いです。

説得が強引であればあるほど反発したくなる。
(これを心理学では、「心理的リアクタンス」と呼びます)


ですから、実は「強い説得」よりも
「弱い説得」のほうが効果的。

「ロー・プレッシャー営業」は、
人間心理の点からも、実に理にかなったスタイルだと言えます。


(参考文献)

『サービスを超える瞬間 実例・実践編』
(高野昇著・監修、かんき出版)

「ロー・プレッシャー営業」
(Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー October 2007)

投稿者 松尾 順 : 08:36 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(10)影響方略-3

相手に影響を与えるための具体的な「働きかけ方」のことを

「影響方略」
(Influence tactics、Influence strategy)

と呼びます。


この「影響方略」においては、
これまで紹介した6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

を有効に活用することにより、
相手に影響を与えることに成功しやすくなります。


『影響力を解剖する』

では、18種類の「影響方略」が挙げられていますが、
これら18種類を

・賞影響力に関連する影響方略
・罰影響力に関連する影響方略
・賞罰に関連しない影響方略

の3つに分類して説明が行われています。


今回は、

「賞罰に関連しない影響方略」

の9項目をご紹介します。


[単に頼み込む]

影響の受け手にとって依頼に応諾することに
たいしてコストがかからない場合、シンプルに依頼
するだけで十分な場合があります。


まあ、わざわざ説明するまでもないことのようですが、
「断られたらいやだな」とか、「頼むのが恥ずかしい」
といった理由で頼めないことってありますよね。

ところが、実際頼んでみたら、
拍子抜けするほど簡単に承諾してくれることが
多いものです。

その結果、頼まなかった場合より、
ずいぶん得することもあります。

なにか頼みごとがあったら、
あまり深く考えずに、ダメモトで頼んでみるのが
いいんじゃないでしょうか。
(相手との間合いとか図りつつ)


[受け手が応じるまで依頼を繰り返す]

ようするにしつこく頼み続ける。
昔の押し一手の営業マンのやり方でした。

熱意が伝わるという意味で相応の効果が
ありますが、いまは大変いやがられますね。


でも、あなたが、落語家に弟子入りしたかったら、
これしかありません。あなたの熱意と決意が
試されているからです。


[理由をつけて頼み込む]

これもわざわざ説明しなくても良さそうですが、
そうでもありません。

依頼の理由が必ずしも正当なものでなくても、
効果があるのです。


「影響力の武器」でも紹介されていますが、

「コピーを取らなくてはならないので、
 割り込ませてくれませんか」

といった、全く理由になっていない理由をつけても
割り込ませてくれる可能性が高いのです。

このあたりは人の心理をうまく突いているんですね。
(詳細説明は、「影響力の武器」をご参照ください)


[与え手と受け手の役割関係を指摘する]

お互いの役割関係を強調、つまり思い出させて
影響力を行使しようとするもの。

上司・部下の関係などにおいて存在する

「正当影響力」

を背景に、

“上役である私の命令には逆らえないはずだが・・・”

などと言う。
セクハラ、パワハラの現場を思わず連想してしまいます。


しかし、こうして自ら役割を強調しなければならないのは、
受け手がその人を認めていないことの裏返しでもあります。

尊敬に値する上司なら、

「私が上司なんだから・・・」

などとわざわざ言われなくても、素直に従うものですよね。


[第三者から支援してもらう]

自分よりも正当影響力や専門影響力が大きい人の
パワーを借りる方法。

恩師などに「推薦状」を書いてもらうといったことが
これに該当するでしょうね。

この方法は常日頃の人脈づくりが鍵になります。


[社会的な規範の存在を指摘する]

「困っている人がいたら、助けてあげるというのが
 人の道というものではないでしょうか」

などと、社会的に共有されている考え方や常識を
持ち出して相手を説得しようとするもの。

このテクニックは、代議士先生が多用しますね。


[頼みたいことを暗にほのめかす]

影響の受け手に対して、
頼みたいことを直接言わず、相手が察してくれるような
表現をする方法。


たとえば、窓を開けてほしい時、

「この部屋ちょっと暑いね」

と相手に言うのはこれです。

直接依頼事項を伝えてしまうと
角が立ってしまったりする場合によく使いますね。


逆に言えば、これがうまく使えないと、

「きつい人」(ストレートすぎて)

という印象を周囲に与えてしまう可能性がありますね。


[受け手をだます]

にせの依頼事項を伝えたり、嘘の理由を述べたりするもの。

明らかなにせもの、嘘だとわかる真性ブラックな話なら、
受け手もだまされることは少ないでしょう。


しかし、霊感商法的なもので、

“この「壷」を床の間に置いておくと
 幸運がやってきますよ”

などといった話は、その効果の検証が不可能です。

つまり、受け手がこの話を信じるかどうかにかかっているため、
周囲から見ると、明らかにだまされているとしか思えませんが、
本人はだまされているとは感じていないという点が厄介ですね。

ビジネスのシビアな交渉でも、
自分たちにとって有利な条件を引き出すため、
結構平気で嘘をつきあってますね。


[受け手と話し合い、妥協点を見つける]

お互いに歩み寄るやり方。

ピアノの音がうるさいと文句を言いにきた隣人と話し合い、
夕方6時以降は練習をしないと取り決めるといったことです。

民主的な方法ですよね。


ただ、駆け引きが発生しますから、
人間心理をよくわかっている交渉上手が相手だと、
自分にとって不利な依頼を飲まされてしまうということが
多々あります。

『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

『影響力の武器-なぜ、人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、誠信書房)

投稿者 松尾 順 : 10:46 | コメント (0) | トラックバック

従業員満足>顧客満足

「あ、この店員さん、仕事を楽しんでるな、
 職場や、共に働く仲間たちが大好きなんだろうな!」

こんな印象を持つ店員さんに出会えたら、
その店でのショッピングや食事はとても楽しい経験になりますよね。

その店員さんの幸福な気持ちが、お客さんにも伝染するのです。


近年、従業員が生き生きと働けることを重視する企業が
少しずつ増えてきています。

そうした企業の中で最も有名なのは、

「サウスウエスト航空」

でしょう。


同社では、

「顧客第二主義」(従業員第一)

を掲げ、

「従業員満足度(Employee Satisfaction)」

の向上を最も重要な経営指標としています。


もちろん、「顧客」はどうでもいいという意味ではありません。

「満足した従業員だけが、顧客に最高の満足を提供できる」

という信念を持っているのです。


この信念は、とても妥当な考えだと思います。
しかし、これまでも、また現在でも、

「顧客満足」

は重視するけれど、

「従業員満足」

にはあまり関心を持たない経営者が
あいかわらず多いのではないでしょうか?


しかし、上記のような本質が見えていない経営者も、
次のような調査結果を知れば気が変わるかもしれません。


63社、合計4700人の顧客と従業員を対象に行われた
イメージ調査があります。

これは、自分が働く企業(従業員の場合)、
また、自分が取引する企業(顧客の場合)に対する

「好感度」

を測定することが目的でした。


ここで、「好感度」は、

「その企業を一人の人間だとみなした場合に、
 どんな性格だろうか?」

という直感的な評価で答えてもらっています。

そして、これに対する具体的な回答としては、

「親しみやすい」「明るい」
「率直である」「面倒見がよい」

といったものが用意されていました。


この調査でわかったことが2つあります。

ひとつは、

従業員と顧客の見解(評価)には強い相関関係があること

です。

もうひとつは、

従業員と顧客の見解(評価)には大きなギャップがあり、
従業員が、顧客よりも当該企業に対して

「よいイメージ」

を抱いていた企業の売上伸び率が高いということです。


このことから、自分が働く企業に

「好意的な感情」

を持っている従業員は、顧客に対して強い好感度を与える

ということが言えます。


これは、冒頭に書いたように、

「感情の伝染」

とでも呼べるものです。

自分が好きな仕事や職場であれば、
自然と動きも軽やかになるでしょう。

サービスの質が向上します。

また、すばらしい笑顔で顧客に接することができる。
人間味のある会話も交わせるでしょう。

その結果、その企業は顧客の支持が高まり、
売上の伸びにつながるというわけです。


サウスウエスト航空のトップはもちろん、
こんな調査結果を見せる必要はありませんね。


しかし、こうした「道理」がわかっていない企業は
ばかげたミスを犯してしまいます。

たとえば、某百貨店チェーンでは、
巨費を投じて店舗をリニューアルしました。

ところが期待通りの売上が上がりませんでした。


リニューアルといっても、
それはあくまで顧客が見える部分のみでした。

販売スタッフ用の施設は手つかず。
休憩室は粗末なまま。
商品管理室は以前よりも狭くなっていました。

その結果、販売スタッフの士気は上がらず、
そのぱっとしないスタッフの感情が顧客にも
伝わっていたのです。


この百貨店の問題点を探るための調査の対象となった
顧客の一人のコメントが印象的です。

“リニューアルといっても、単なる化粧直しだったようね。
 肝心の意識は何も変わっていないもの”


ハードをいくらいじろうが、
やはり顧客満足を大きく左右するのは人的サービスです。

「従業員満足なくして、顧客満足なし」

ということを企業は深く認識すべきでしょう。


なお、従業員の自社に対するイメージを上げる、
つまり、従業員に愛される企業となるために重要なポイント
は次の3点だそうです。

・研修制度
・マネジメントシステム
・権限委譲の度合い

抽象的な表現ですが、ひらたく言えば、

・従業員の成長の機会を与えること
・明確なビジョンに基づく優れた企業経営が行われていること
・現場での裁量の余地が大きいこと

と解釈できるでしょうね。


以上は、次の記事を元にしました。

「従業員に愛される企業は業績が高い」
(Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー October 2007)

投稿者 松尾 順 : 10:54 | コメント (4) | トラックバック

影響力を解剖する(9)影響方略-2

相手に影響を与えるための具体的な「働きかけ方」のことを

「影響方略」
(Influence tactics、Influence strategy)

と呼びます。


この「影響方略」においては、
これまで紹介した6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

を有効に活用することにより、
相手に影響を与えることに成功しやすくなります。


『影響力を解剖する』

では、18種類の「影響方略」が挙げられていますが、
これら18種類を

・賞影響力に関連する影響方略
・罰影響力に関連する影響方略
・賞罰に関連しない影響方略

の3つに分類して説明が行われています。


前回は、

「賞影響力に関連する影響方略」

に分類されている5項目をご紹介しました。

*影響力を解剖する(8)影響方略-1

今回は、

「罰影響力に関連する影響方略」

に4項目をご紹介します。


[罰を与えると警告する]

罰の基本的な使い方。

親が子供に対して、

「宿題をやらなければ、今日のおやつはなしよ!」

はこれですね。


罰を与えてまでも影響の「受け手」にやらせたいことは、
多くの場合、受け手があまりやりたがらないこと。

このため、影響の「与え手」の指示・命令などに対して、
受け手は表面的に従っているだけに過ぎない、

という点が問題ですね。


これについて、具体例を思い出しました。

在籍した中学の陸上部から、何人もの日本一を輩出したことで
有名なカリスマ体育教師、原田隆史氏は、若いころは
大変なスパルタ先生だったそうです。

「学校では、生徒は先生に従わなければならない」

という正当影響力を背景に、

「ヒットラー」

と影で呼ばれるほど生徒に恐れられました。

ですから、原田先生がいるところでは生徒たちは従順。
まじめに部活動に精を出す。

ところが、原田先生が出張でいなかったりすると、
さぼりまくり。まさに「鬼の居ぬ間に洗濯」。


原田先生は、一度出張したふりをして、
グラウンドが見えるマンションからこっそり
生徒たちを観察して、この現実を知ったそうです。

以来、たとえつらい練習であっても、
生徒たちが自発的に取り組むための工夫を始めた
ということでした。

罰影響力の「持続力のなさ」を原田先生は
身をもって知ったということですね。


[受け手が応じるまで罰を与える]

罰を警告したり、脅かすだけでは、
相手はそう簡単に応諾しないこともあります。

そこで、相手が応じるまで「罰」を与え続ける

「継続的な罰の付与」

が使われることがあります。

これの極端な例は、「拷問」です。

人気テレビドラマの「24」を
好きな方はおわかりになると思いますが、
容疑者の事情聴取の場面が頻繁に登場しますね。


そして、容疑者が筋金入りのワルの場合、

「さっさと吐かないと痛い目にあうよ」

といった単なる脅かしでは通用しないことが
わかっているジャック・バウワーは、
周囲の制止を振り切り、強引な体罰を与え続けますね。
相手が自白するまで。


[第三者から罰が与えられることを指摘する]

母親が、電車内で騒ぐ子供に対し、

「ほかの人に怒られるよ」

というのはこれ。


会社であれば、

「この仕事に失敗したら、社長がどんなに怒ると思う?」

などと、より権威のある、立場の強い存在からの罰を
ほのめかすものです。


自分に罰を与えるだけのパワーがない場合に
有効な影響方略ですが、なんとも陰険なやり方ですね。


[受け手が与え手にかけた迷惑を思い出させる]

過去において、
受け手が与え手に与えた迷惑を思い出させ、

「罪の意識」

を感じさせることによって、従わせようとするもの。

これは、受け手に「負い目」を感じさせることが、

「罰」

を与えていることに等しいと考えられます。


ただ、相手によっては、

「過去のことなんか持ち出して・・・」

と逆に反発を招く可能性があります。


また、

「過去は過去、今は今でしょ」

と開き直る人には効果が減少します。


以上ご紹介した「罰影響力」を使った4つの影響方略は、
基本的に、人のネガティブな感情を突くものですから、
他に方法はない時以外は、利用しないほうがよさそうです。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 11:07 | コメント (0) | トラックバック

佃煮の量り売り

あなたは、デパ地下の食料品売り場で、
佃煮を100グラム注文したとします。

ここで、売り子さんの対応は次の2パターンに分かれます。

A:はかりの上に、佃煮をガバッと載せて、
 100グラムになるまで減らしていく。

B:はかりの上に、佃煮をやや少なめに載せて、
 100グラムになるまで足していく。

どちらの売り子さんから買おうと、あなたが手にするのは

「100グラムの佃煮」

ですね。同じものです。


しかし、AとBのどちらのサービスの方が、

「気分がいい」

でしょうか?


買い手の微妙な心理をわかっている一流の売り子さんは、
Bの方法をいつも意識してやります。

佃煮という商品に

「心地よい感情」

という付加価値をプラスするために。


サービスの本質は、
相手を心地よくさせるということなんでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 17:59 | コメント (0) | トラックバック

「イミダス」「知恵蔵」休刊

このニュースはすでにご存知ですよね?


86年に創刊された「イミダス」。
創刊号は113万8千部、07年版は14万5千部。

89年創刊の「知恵蔵」。
当初は95万部、07年版は13万部。

どちらも約20年のうちに、
ほぼ10分の1に発行部数が縮小していたんですね・・・


用語の定義・説明のような、固定化された情報だけが載っている
辞書・辞典系書籍は、今後インターネットにますます
駆逐されていくんでしょうねぇ。

投稿者 松尾 順 : 09:15 | コメント (4) | トラックバック

「ユーザビリティ」から「デザイアビリティ」へ

昨年(2006年)11月1日、
「日本で始めて」という触れ込みで、

「ペルソナデザインセミナー」

が開催されました。


私も、「これは見逃せないぞ!」と
満を持して当セミナーに参加したのですが、

「ペルソナ」

をデザイン(作成)するための基本的な知識と、
最新の動向を知ることのできたすばらしい内容でした。


さて、当セミナーの講演者、
フォレスターリサーチ社のハーレー・マニング氏が詳述した

「ペルソナデザインの基本的な手順」

については、

「Personadesign.net」

にも紹介されていますので省略します。


ここでは、

「導入企業は、どのようにペルソナを使用しているのか」

について、マニング氏の話などを元に再度確認し、
さらに最近の新たな視点も併せてご紹介します。


マニング氏は、ペルソナを導入している欧米企業として
次のような著名企業を示しています。(講演当時)

--------------------------------

・Chrysler
・Ford
・Mini Cooper

・Bank of America
・Discoverer
・Fidelity

・Amazon
・Best Buy
・Staples

・FedEx
・UPS

・Adobe
・Microsoft
・SAP

---------------------------------

そして、こうした企業がペルソナを利用する目的としては、
次の4点を挙げています。

・ユーザーに対する間違った認識を改める
・デザインについての議論を短縮できる
・機能要件の優先順位づけ(削除)
・品質の改善


架空の存在ながら、
最も重要で象徴的な顧客像をリアルに描いた

「ペルソナ」

は、企業の担当者にとって異なる
ユーザーに対する認識の違いを埋めてくれます。

そして、

デザインの方向性や要件の絞込み、製品改良

を行うにあたっての

「統一された判断基準」

となるというわけです。


さて、最近はさらに別の視点が提示されています。

それは、Webサイトのデザインについてです。

フォレスターリサーチ社のアナリスト、
ケリー・ボーディン氏によれば、
従来の企業サイトは、

・役に立つ(useful)
・使いやすい(Usable)

という概念が中心にありました。


ここで、

「役に立つ」

というのは、

「価値の提供」

であり、

「使いやすい」

というのは、

「提供供する価値への簡単なアクセス」

を意味します。

というのも、これまでは企業サイトの目的が、
企業や製品の紹介、あるいは
買い物、各種予約といった取引機能を提供するものであり、
とりわけ

「利便性」

が重視されたためです。


しかし、近年は単に使いやすい、つまり
ユーザビリティが高いだけではだめで、

「望ましい」(Desiable)

なものでなければならなくなってきたと、
ボーディン氏は主張しています。


「望ましい」とは、端的には

「感情へのアピール」

ができていることです。
たとえば、ダンスビデオなどの動画が
ふんだんに使われている

「ナイキ」

のサイトは、単なる商品紹介やeコーマスに止まらず、
ユーザーの気持ちをかきたてることを意識した

「望ましいサイト」

のひとつです。


すなわち、「望ましいサイト」とは、

「理想的な顧客体験」(カスタマーエクスペリエンス)

を提供できるサイトです。


ただ、従来の

「粗いターゲットセグメント」

では、「理想的な顧客体験」を
設計することが困難でした。

そこで、「ペルソナ」の登場となります。


まるで実在の人物であるかのように詳細なプロフィールを
生き生きと描く「ペルソナ」を中心に置くことによって、

「理想的な顧客体験が提供できるWebサイト」

の設計が可能になるというわけです。


ちょっと気取った言い方をさせてもらえば、
サイト構築のトレンドは、

「ユーザビリティ」から「デザイアビリティ」

へと移りつつあるということでしょうか。


*ケリー・ボーディング氏の話は以下の記事から

ウェブサイト構築に「ペルソナ」を導入せよ

投稿者 松尾 順 : 11:06 | コメント (2) | トラックバック

「ペルソナ」マーケティング(BtoB事例)

マーケティングの世界で「ペルソナ」とは、

「企業が提供する製品・サービスにとって
 最も重要で象徴的な顧客モデル」

のことを意味するのでした。


ここで、「顧客モデル」とは、

「ターゲットユーザー像」

を具体的、詳細に説明(記述)したもの。


この「顧客モデル」ですが、「一般消費者」だけでなく、

「法人ユーザー」

についても応用可能です。


すなわち、「ペルソナ」は、

[BtoB](対法人ビジネス)

にも使えるというわけですね。


日経情報ストラテジー最新号(OCTOBER 2007)の特集

「ペルソナ」マーケティング

には、大和ハウス工業の「BtoC事例」だけでなく、
なかなか興味深い「BtoB事例」も掲載されていますので、
こちらも簡単にご紹介しておきます。


業務用エアコン市場でシェア3位の

「日立アプライアンス」

は、直接の販売対象ではない

「設備店の経営者」(要するに、設備工事のオヤジさん)

のペルソナを作成しました。


同社の直接の販売対象は、

「特約店」

です。

いわゆる「卸」的存在の「特約店」が、
中小規模の「設備店」に商品を流し、「設備店」が
事務所や店舗などのエンドユーザーに、
業務用エアコンを販売・設置するという

「多段階の流通構造」

になっているというわけです。

図的に示すとこうです。↓

[日立アプライアンス→特約店→設備店→エンドユーザー]


このため、日立アプライアンスでは、
直接接点のない設備店向けに、新製品情報を中心とした
情報提供を行うにあたり、次のような点をなかなか把握
できずに困っていました。

・設備店は、日々どのような課題を抱えているのか

・特約店や設備店にどのような情報を提供すれば、
 同社製品のシェアアップにつながるのか


そこで、

「旭立(あさひだち)信彦」さん

というペルソナが生まれたのです。


このペルソナ作成を主導したのは、同社の

「リニューアル促進プロジェクト」

を担当した、

空調営業本部営業企画部空調宣伝グループ

の中畑真次氏です。


作成手順は次の通りです。

-----------------------------------------------

1.設備店1806社対象のアンケート調査を実施
  回答率は6割程度。規模や取引内容など、
  定量的な実態把握を行った

2.回答者の8割を占めた10人以下の設備店を
  営業担当者とともに回り、インタビューを実施
  「どういった人たちが、どのようなことを
   考えて自分たちの製品を売ってくれているのか」
  を詳細に聴き取ることを目的とした

3.インタビューで取得した定性的な情報を元に
  「旭立(あさひだち)信彦」という顧客モデルを作成

-----------------------------------------------


そして、同社では、

「旭立さんはどういう情報が必要なのか」

という視点で、あらゆる販促ツールを見直しました。

04年5月には、旭立さんが登場するパンフレット、

「活動のてびき」

を特約店に配布。


また、05年11月には、
それまで発行してきた機関誌『ゆーとぴあ』を

『販促通信』

と名称を変えて刷新。

従来の新製品情報だけでなく、
旭立さんに似たプロフィールの設備店経営者が
誌面に登場し、日々の奮闘を熱く語る内容と
なっています。

こうした、設備店のペルソナに対象を絞り込んだ

「輪郭のはっきりしたコミュニケーション」

が功を奏したのか、同社の事務所、店舗向けの
シングルパッケージ型のエアコン市場のシェアは、

9.8%(2002年)→11.1%

と増加しています。


BtoBも、結局のところ、最後に意思決定するのは

「生身の人間」

であり、実体のない「法人」ではありません。

組織内のキーパーソンのペルソナを作成することを
通じて顧客の理解を深めていくことは非常に有効です。


<過去関連記事リンク一覧>

*できるだけリアルな「顧客の仮面」をかぶる方法

*タオルなケーキ

*ペルソナデザインの専門サイトオープン

*知識の呪縛

*その商品は、どんな奴だ

*ペルソナマーケティング(BtoC事例)


<関連書籍>

『ペルソナ戦略-マーケティング戦略、製品開発、デザインを
 顧客志向にする』
(ジョン・s・ブルーイット著、秋本芳伸訳、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 10:21 | コメント (0) | トラックバック

「ペルソナ」マーケティング(BtoC事例)

「ペルソナ」とは、
文字通りの意味は「仮面」です。


マーケティングの世界では、

「企業が提供する製品・サービスにとって
 最も重要で象徴的な顧客モデル」

のことを意味します。


ここで、

「顧客モデル」

とは、わかりやすく言えば、

「ターゲットユーザー像」

を具体的、詳細に説明(記述)したものです。


一般に、ある製品・サービスのターゲットユーザーを
設定する場合、その説明は、

「都心に住む女性F1層(20-24歳)」

といった、粗い漠然としたものにならざるを得ません。
(実際は、もう少し詳細ですが)


一方、「ペルソナ」は、架空の存在ではありますが、

・氏名
・年齢
・自宅住所
・職業
・勤務先
・年収
・家族構成
・趣味嗜好
・ライフスタイル
・身体的特徴
・性格的特徴

などが具体的に決められています。


私なりの理解を申し上げると、「ペルソナ」とは、
製品・サービス、Webサイト等の開発・改良のための
思考ツールです。


詳細に記述されたターゲットユーザー像を
用いることによって、ユーザーに対する理解が深まり、
結果的に、ユーザーニーズを的確に押さえた、
エッジの効いた魅力的な製品やサービス、Webサイトが
開発可能になります。


私自身、「ペルソナ」には10年ほど前から注目し、
実際の「Webサイト設計」において「ペルソナ」的な
アプローチを採用したことがありますし、また、
当メルマガ&ブログでも、さまざまな形で取り上げてきました。
(記事へのリンクは、末尾にまとめてご紹介してます)


とはいえ、最近まで「ペルソナ」は、
まだまだ「マイナーな手法」にとどまっていました。


しかし、今年(2007年)は
ペルソナの設計法についての本が初めて発売されましたし、
日経情報ストラテジー最新号(OCTOBER 2007)では、

「ペルソナ」マーケティング

というタイトルで特集が組まれています。

「ペルソナ」も、ようやくメジャーになる兆しがあります。


では、上記日経ストラテジーの特集から、
BtoCの具体事例をひとつご紹介しておきましょう。


大和ハウス工業が、2002年10月から発売している

「EDDI's House」

はデザイン性と材質にこだわった住宅です。

この「EDDI's House」の商品企画・マーケティング施策展開に
活躍しているのが、

「田崎ファミリー」

というペルソナ。同住宅商品のプロジェクトメンバーに
よって作成された架空の家族です。


「EDDI's House」のマーケティング担当者は、
常に「田崎ファミリー」の存在を念頭に置き、

「田崎夫妻ならこうしたものを喜ぶのではないか」

というコミュニケーション手段を模索しています。


すなわち、「EDDI's House」のWebサイト、メールマガジン、
雑誌広告、雑誌記事、展示会、専用のコールセンター、
さらに、「スタイルブック」と呼ばれるムック本まで、
あらゆる顧客接点でのコミュニケーションが、いわば

「田崎ファミリー仕様」

で組み立てられているというわけです。


ところで、

「田崎ファミリー」

を作り上げる手順は次のようなものでした。

-----------------------------------------------

1.「EDDI's House」の予告サイトに
  プロフィルを登録していた106人にアンケートを実施

2.アンケートの設問で、購入検討中の住宅商品のうち、
  「EDDI's House」が1番または2、3番目に好きと
  答えた家族(65人)の中から、地域や年齢など
  バランスを考慮して6家族を選定

3.上記6家族の自宅に、プロジェクトメンバーが
  出向いて、2時間以上のインタビューを実施

4.インタビュー結果を分析しつつ、
  6家族に共通する性格や嗜好を探り、
  プロジェクトメンバー全員で協議しながら
  「ペルソナファミリー」(=田崎家)を作成

-----------------------------------------------


こうして、最終的には、
詳細なプロフィールが記述された田崎ファミリーの

「EDDI's Houseペルソナシート」

が完成したというわけです。


日経情報ストラテジーには、
このペルソナシートの一部が掲載されています。

興味のある方は、同誌をご覧になってみてくださいね。


<過去関連記事リンク一覧>

*できるだけリアルな「顧客の仮面」をかぶる方法

*タオルなケーキ

*ペルソナデザインの専門サイトオープン

*知識の呪縛

*その商品は、どんな奴だ


<関連書籍>

『ペルソナ戦略-マーケティング戦略、製品開発、デザインを
 顧客志向にする』
(ジョン・s・ブルーイット著、秋本芳伸訳、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 10:31 | コメント (1) | トラックバック

「会話を最大化」するブロガー会議

企業とブロガーをつなぐ立場で、
さまざまなイベントを開催されている『百式』の田口元氏。


田口氏が主催するイベントは、

・セキュリティ会議
・ユーザビリティ会議
・ワイヤレスピクチャー会議

など、

「○○会議」

という名称で統一されているのをご存知の方も多いでしょう。


これは、企業とブロガーが

「共に解決策を探る全体会議」

という意味合いがあるようです。

記者会見のように、企業がブロガーに対して
一方的にメッセージを伝えるだけの場ではない
ということですね。


実は、私も1年ほど前、
電動シェーバーの「ブラウン」さんの新製品発売に
合わせて開催された

「ブラウン会議」

に参加させていただきました。


ただ、20代半ばからひげを伸ばし始め、
以来20年近く、ヒゲソリには縁のない私は、
本来、この会議への参加資格はなかったのでした・・・

大変申しわけないことです。
いまさらながらですが、懺悔しつつお詫び申し上げます。


さて、田口氏によれば、
企業とブロガーをつなぐ会議で目指しているのは、

“トータルで見た時に「会話が最大化すること」”

です。

“企業とブロガー間で見れば、
 2者の会話を最大化するためにやっているのが
 「会議」というわけです”(田口氏)


そして、イベントを準備するにあたって、田口氏は

・メッセージ
・ストラクチャー

の2つの視点から企業の担当者と打ち合わせを重ね、
組み立てていきます。


「メッセージ」は、次の4段階で詰めていきます。

・Value(目指すところ)
・Data/Problem(調査/事実)
・Our solution(製品の特性)
・Yours(全体会議)

なお、メッセージを作る際に
田口氏が注意しているのは、いきなり

「製品を売りたい」

というメッセージではなく、

「なぜその商品が必要なのか、開発に当たっては
 どの部分で苦労したのかをまず伝えるようにしている」

という点です。


また「ストラクチャー」を考える上では、
次の「5つの立場」からそれぞれの関係性で何を
仕掛けていくかを押さえていくのだそうです。

・企業
・参加ブロガー
・読者ブロガー
・消費者
・マスコミ


繰り返しになりますが、
これらの関係者間の「会話」を最大化することが
田口氏の狙いです。


田口氏主催の○○会議シリーズは、
実に緻密に組み立てられたものであることが
うかがえますね。


ところで、田口氏は、ブログは

「雑誌」

であり、ブロガーは

「雑誌の編集長」

と考えると分かりやすいと述べています。


そして、ブロガーがこうしたイベントに興味を持つのは、

「ネット上にはまだ掲載されていない情報」

が得られるかも知れないから。


ブロガーは常に検索できない情報を求めている。
だから、イベントには

「開発担当者」

のような立場を呼ぶのが良いと、
田口氏は考えています。


また、田口氏は、ブロガーは、

「単に言われたことを書く」

というより、

「表現」や「クリエイト」する人たち

だと捉えています。


だから、もし企業側で許されるのなら、

「イベントはブロガーを企画の主体に持ってくるといい」

とまで言い切っています。


たとえば、企画段階から参画できるなら、
ブロガーとしてはとてもうれしいわけです。

私もブロガーの一人として、
この気持ちが実によくわかります。


さて、企業の立場に立つと、
ついつい既存媒体と同様に、「ブロガー」のことを単なる

「効果の高い、使える新媒体」

といった見方をしてしまいがちです。


しかし、田口氏の卓見を聴くと、
そのような見方では、

ブロガーとの良好な関係づくり

はうまくいかないことがわかりますね。


(当記事の出典)
『宣伝会議』(2007.9.1)
特集:企業とブロガー マッチポンプはあるか
田口氏の取材記事(P.034-036)

投稿者 松尾 順 : 13:00 | コメント (8) | トラックバック

ターザン養成所 - ターザニア

07年7月21日にオープンしたばかりの新コンセプトのテーマパーク、

「ターザニア」(TARZANIA)


に先日行ってきました。

というわけで、今回は1ユーザーとしての体験ルポです。


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★どんなところ?
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森の木をそのまま活かした運動施設です。

簡単に説明すると、まず、はしごなどを使って、
樹上3-5メートル以上の高さに登ります。そして、
グラグラする不安定な木の板や、
1本のロープなどの上を渡って向こう側の木に移るというもの。

<こんな感じ>
tarzania_rope.JPG


もちろん、ターザンのように
ロープにぶらさがって移るコースもあります。

「ターザンスイング」

と言います。

また、木から降りるときは、
地上まで斜めに渡されたロープを使って
シュルルルーと滑り降ります。

これは、

「ジップスライド」

と呼ばれています。


こうしたさまざまなコースが2コース、全9種類あります。

・ディスカバリーコース(3種類)
・アドベンチャーコース(6種類)

*コースマップ


ディスカバリーコースは比較的やさしく、
練習のためのコースという感じ。

アドベンチャーコースは、
木に登る高さも一段と高くなり難易度も上がります。
それだけ面白くなるというわけですが。


なお、全種類クリアまでの所要時間は、
ゆっくりやっても3時間弱です。


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★で、結局どうだったの?
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なかなか楽しいですよ!

自然の森の中ですから、
空気もおいしくて気持ちがいい!

フィールドアスレチックと違って、
筋力・体力があまり必要ありませんので、
女性や子供でも無理なく遊べますね。
(はしごさえ登ることができればOKです!)

<女性(知らない人です)も、がんばってますね>
tarzania_rope2.JPG


樹上の高いところから見下ろす風景は新鮮。
祖先(サル)の血が騒ぎました。(笑)

地上は暑くても、
樹上には涼しい風が吹いているんですね。

まあ、さすがにちょっと怖いといえば怖いのですが、
安全器具で「命綱」(セーフティライン)に常に
つないでいる状態ですので転落する心配はありません。


利用料金は大人3,500円、18歳未満は2,000-2,500円。

3時間ゆっくり遊んでの値段としてはまあ納得です。

「リピート割引」とかあるといいんですけどね。


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★誰に勧める?
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小学生高学年以上なら男女問わず。
お年寄りでも大丈夫ですね。

小学生高学年以上というのは、
身長制限があるからです。

身長110cm以下だと

ディスカバリーコース(3種類)

しかできないので、ものたりないでしょう。


ターザニアは、

「家族連れ」

がメインターゲットだと思いますが、私は、

「カップル」(恋愛初期)

に、特にお勧めします。


フィールドアスレチックや各種スポーツは、
お互い、体力・筋力、そしてある程度のスキルが
ないと一緒に楽しめないですよね。

でも、ターザニアだったら、
誰でも簡単にできますし、それほど力もいらない。

全コースクリアしても、それほどヘトヘトに
なるわけでもない。

一方で、高いところでドキドキする時間を共有できる。
2人の仲が急接近するに違いありません!

心理学の実験で

「吊り橋効果」

というのがありますが、アレです。(笑)

<愚息が短い吊り橋の上でわざと足を踏み外しているところ>
tarzania_ashihazushi2.JPG


「吊り橋効果」というのは、
ドキドキするのは高いところにいるからなのに、
それを相手に対する(好きだという)気持ちから
来ると勘違いしてしまうことです。

まあ、倦怠期のカップルにも多少の効果があるかも!


あ、もちろん

「高所恐怖症」

の方は無理ですね。


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★どこにあるの?
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千葉県房総半島のちょうど真ん中あたり。

「生命の森リゾート」

内にあります。

東京からは車で1時間程度です。

我が家は、千葉・松戸の自宅から車で行きましたが、
やはり1時間程度かかりました。

写真付の詳しいアクセスマップがあって助かりました。

電車だと、東京駅からJR外房線の誉田駅まで
やはり1時間程度。そこから無料送迎バスで20分。


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★着いたらまずどうするの?
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生命の森リゾートにある

「日本エアロビクスセンター」

のフロントで受付をします。

受付では代金の支払いを行い、また、

「確認書」

にサインをします。

確認書は、要するに、

ターザニア内での事故などは自己責任だということ

を確認(承認)するものです。

なお、混んでいると待たなければならないので、
開始時間を事前に予約しておいたほうがいいようです。


ところで、「日本エアロビクスセンター」は、
テニス、エアロビクスなど各種スポーツが
楽しめる運動&宿泊施設です。


<フィールドあたりから眺めた風景>
tarzania_resort.JPG


目の前にトラック&フィールドがありました。

プロスポーツ選手や、
オリンピック選手などの合宿先としても
利用されているようですね。

ロビーには、巨人時代の松井、清原や、
水泳の北島康介選手など、様々な分野のアスリートの
サイン色紙が飾られてました。


さて、フロントでの受付を済ませたら、
5分ほど歩いてターザニアの門を抜け、

「ターザニア・シャレー」

に行きます。


<ターザニアの門>
tarzania_entrance.JPG


ターザニア・シャレーはバンガロー風の施設です。

<ターザニアシャレーの入り口あたり>
tarzania_chalet.JPG


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★ターザニアでまずやることは?
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ターザニア・シャレーでは、
担当のインストラクターと会い、
安全器具(「ハーネス」)をつけてもらいます。

<シャレーにあった今日のインストラクターたちの紹介>
tarzania_instructor.JPG


そして、インストラクターから

「安全講習」

を受けます。

ハーネスの腰あたりについている金属のワッカや、
プーリー(滑車)を使って、常に木や木の間に
渡してある命綱(「セーフティライン」)に
自分の体がつながっている状態で移動するやり方を
教わります。


<お腹についているワッカ(上から見下ろしたところ)>
tarzania_anzen.JPG


当日の私たちのインストラクターは

サブさん

でした。この人は、すごいロン毛です。

腰まで届く髪をなびかせて滑り降りる姿は、
まさに本物のターザンのようでした!


<安全器具の使い方を説明するサブさん>
(ロン毛は普段は帽子で隠されている)
tarzania_sabu1.JPG

tarzania_sabu2.JPG


さて、10分ほどの安全講習を受けたら、
インストラクターから離れて、早速

「ディスカバリーコース」

から挑戦開始です。

ずっとインストラクターが付き添ってくれるかと
思ったらそうじゃなかったので、ちょっと不安を
感じました。

でも、実際やってみたら、
自分たちだけで大丈夫でしたね。


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★本当に安全?
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インストラクターの教えを忠実に
守ればよっぽどのことがない限り大丈夫でしょう。

手順を間違えて、命綱につながっていない状態に
してしまうと事故につながりますから、
あまり甘くみないようにしたほうがいいですが。

<木の赤いロープに安全器具をつなげます>
tarzania_anzen2.JPG


<木と木の間を移動する時は、頭上にある命綱(セーフティライン)に
プーリーを取り付けることで安全に移動>
tarzania_anzen3.JPG


また、特に危険と思われる箇所には
安全ネットも下に張ってあります。

<安全ネット>
tarzania_tree.JPG


------------------------------------------------
★面白いのは?
------------------------------------------------

やはり、

「ジップスライド」

ですね。

樹上から地面まで、
プーリー(滑車)を使ってかなりのスピードで
滑り降ります。

「一人ロープウェイ」

という感じでしょうか。

ジップスライドは、全コース9種類のすべてに
ついていますが、最長のものは90メートルもあります。


なお、滑り降りている間に後ろ向きになってしまい、
地上にクッションとして置いてある柔らかい木片に
背中から激突することがあります。

<ジップスライドで滑り降りる私。後ろ向きにならないように必死で耐えている>
tarzania_zipslide.JPG

でも大丈夫、痛くはありません。
首は起こしてないとちょっと痛いかな。(笑)


あと、やはり

「ターザンスウィング」


ターザンになりたければ、
ロープ1本で木を渡れなければね・・・

ということでバンジージャンプに似て、
結構勇気が入りますよ。

「怖(こわ)楽しい」

というところでしょう。
(どうしてもできないという人には迂回路あり)

*ターザンスイングがどんなものかは、
 写真で伝えるのは難しい・・・ぜひ実体験してみて!


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★また行きたい?
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まあ、頻繁に行きたいというほどではないですが、
1-2年に1回くらいは行きたくなりそう。

まだオープンしたばかりなので
リピート施策は何も考えていないようですが、
前述したように、リピート割引とかあるといいですね。


また、

木に登って別の木に移る

という動きは比較的単調なので、
もっと別の

「遊び的要素」

が加わるといいなあと思いました。


かといって、どれだけ短時間で全コース回れるか
といったコンテストは、危険が増しそうですけどね。


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★こうしたテーマパークの起源は?
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97年にフランス・アヌシー郊外で誕生した

「La foret de L'avanture」(冒険の森)

が第1号だそうです。
(日経MJ、2007/08/31)

日本では、ターザニア以外にも、

・フォレストアドベンチャー・フジ(山梨県)

があります。


以上、

「ターザン養成所」(私が勝手につけたキャッチ)

の体験ルポでした。

投稿者 松尾 順 : 15:12 | コメント (0) | トラックバック

バルサン氷殺ジェット

嫌な虫を一瞬にして凍らせて退治する新殺虫剤、

「バルサン氷殺ジェット」


従来の殺虫剤は、「殺虫成分」が体に悪そうで
使ってませんでした。


でも、凍死させるための冷却成分が入っているだけの

「氷殺ジェット」

なら安心と早速購入していたのですが・・・


ところが、この殺虫剤、肝心の

「○キ○リ」

には、効かないんですよね。

「這う虫用」と「飛ぶ虫用」の2種類があり、
てっきり「這う虫用」で「○キ○リ」が
退治できるかと思っていたのに、
実際ヤツに吹き付けても、風圧であっちに飛んでいくだけ。


缶の説明書きをよく読むと、
確かに「○キ○リ」は対象になってません。

説明不足だと思いました。

私の田舎などでは、いろんな這う虫が出没しますけど、
都会暮らしの最大の敵は「○キ○リ」ですからね。

あいつらを退治できなければ、役立たずもいいところです。


缶の表面に大きく、

「○キ○リ」には効きません!

という注意書きが欲しいところでした。

実際、

「○キ○リ」に効く

と勘違いして購入した人が私以外にもいますし・・・


ただ、幸いというか、
氷殺ジェットの自主回収が始まりました。

噴射剤として利用していた「可燃性ガス」が原因の
引火事故が起きたためです。

おかげで、使えない氷殺ジェットが返品できます。


とはいえ、画期的な製品でしたから、

「○キ○リ」に効く、火災の危険性の少ない
安全な「氷殺ジェット」の再販売を期待してます。

投稿者 松尾 順 : 07:36 | コメント (1) | トラックバック

PASMO君は「トランスフォーマー」

関東の鉄道、バスなどで使えるICカード乗車券、

「PASMO」

で登場してるキャラクター、どう思いますか?
(首都圏の方じゃないとあまりピンとこないと思いますが)

*PASMOのキャラクターの紹介


なんともパッとしない、気弱そうなロボットですよねぇ・・・
彼はたぶん男子でしょうね。名前はないので、勝手に

「PASMO君」

と呼ばせていただきます。


上記紹介ページを見るとわかりますが、
実は、PASMO君はただものじゃない。

普段は、おなかにある
ドラえもんのポケットのようなところから、
PASMOを取り出して使用。

ところが、急いでいるときは、
自ら「バス」や「電車」に変身して移動するのです。


つまり、PASMO君は「トランスフォーマー」だったわけです。
戦闘には向いていない、軟弱な体つきですけど。

投稿者 松尾 順 : 05:42 | コメント (0) | トラックバック