マーケターの環境モニタリング
ずいぶん前から気になってることなんですが・・・
私が講師を務めているマーケティング系の講座の受講生の方に、
以前、話の流れの中で、
“「R25」は読みますか?”
と質問した時に、手が一人くらいしか挙がらなくて愕然としたこと
があります。
受講生のほとんどは、30歳前後の男性でしたのに・・・
また、キャラクターの効果について話してる時に、
“「ぴちょんくん」、ご存知ですよね?”
と聞いた時も、やはり一人くらいしかうなずいてくれず、
やはり愕然としました。
マーケターは、移ろいやすくきまぐれな消費者の心理を
的確に読むことが最大の役割。
私はそう思っています。
ですから、少なくとも、最近消費者の心を掴んでるモノゴトに
ついてはもう少し敏感になっておくべきじゃないんですかね。
・話題になってる社会の出来事
・注目すべきビジネス上の出来事
・話題になってるネット上の出来事
・人気の雑誌・本、テレビ番組
・人気の映画・演劇・音楽、ファッション
・時の人(タレント、有名人、ビジネスパーソン)
最低限、上記のことについては、
個人的な興味の有り無しに関わらず、
変化をウオッチしておくという意味での
「環境モニタリング」
をマーケターの責務として実行しておくべきでは?
「マーケターの責務」と言うのは、
プロフェッショナルとしてのクオリティを高める・維持する
ための必須事項だという意味合いでも申し上げています。
「環境モニタリング」のやり方も、できれば自分で実体験し、
「一次情報」
として脳みその中に入れた方がいいのですが、
時間は有限ですよね。
だから、他の人の経験などがデータ化(文字、音声、画像など)
された「二次情報」を摂取するのでもいいと思います。
何も知らないよりは・・・
最近は、新聞・雑誌はほとんど読まない。
ネットで十分という方が多いですね。
そのこと自体は否定しません。
しかし、ネットを利用する時って、
以前のようなきままなネットサーフィンはあまりやらず、
自分の関心のあることを中心に検索して、直接見に行く
傾向が高まってますよね。
つまり、どうしても個人的な関心のあることだけに
情報が偏ってしまいがちです。
そうすると、マーケターに求められる深い洞察力や、
斬新な発想力が弱体化してしまうんじゃないでしょうか。
ちなみに、私は、新聞や雑誌をあえて隅々まで読むように
しています。シニア向けだろうが、女性向けだろうが、
子供向けだろうが、何であろうととにかく目を通します。
個人的には興味のない内容を読むのは苦痛で、
正直なところ、飛ばし読みしてしまうこともありますが、
たまに面白いことを発見するんですよね。
一見、無駄で非効率な行動を取るからこそ、たまに
財宝のありかが書かれた地図が発見できると思います。
だから、私はいつも時間が足りないとわめいているんですが!
投稿者 松尾 順 : 12:21 | コメント (0) | トラックバック
じぶんユビキタス化
私は、ブランディング、すなわち
「ブランドを構築すること」
はどういうことかを説明する場合、次の3点をお話します。
・そのブランドを知っている人を増やす
→ブランド認知向上
・そのブランドに固有のイメージを結びつける
→固有のブランド連想形成
・そのブランドに対する信頼・好意を高める
→ブランド信頼、ブランド好意向上
要するに、あるブランドが、多くの人に知られていて、
そのブランドの名称やロゴなどが特定のイメージを喚起し、
さらに、ブランドに対して人が信頼や好意持っている場合、
そのブランドはブランド構築に成功している状態だと言えます。
ただ、商品によってはすべての人に知られる必要はなく、
その商品を買ってくれそうなターゲットユーザーに知られて
いるかどうかがポイントですね。
まいどベタな例ですが、
「吉野家」
はブランド構築に成功していますよね。
ターゲットユーザーの男性なら誰でも知っている名称であり、
吉野家といえば、「牛丼」という固有のイメージを喚起し、
品質に対する信頼や好意度は非常に高い。
米国産牛肉が手に入らない時期、あえて固有のイメージで
あった「牛丼」の販売を中止したのは、ブランドに対する
信頼、好意を失わないためだったことはご存知でしょう。
さて、このブランディング、基本的に
「広告・広報」
といったマーケティング・コミュニケーションによって実施
されてきたわけですが、近年はインターネットの活用が
ますます重要になってきていることは、いまさら言うまでも
ないことですよね。
特に新興企業が、新たにブランドを構築しようと思ったら、
ネットの活用が不可欠です。
以前、
「検索されないものは存在しない」*
というテーマで拙文を書いたことがありますが、
ユーザーのほとんどが「検索」によって情報を見つけ出す時代、
ネットでの存在(プレゼンス)が低いのは致命的です。
ですから、ネット上に自社に関連したさまざまな情報をアップ
しておくことによって、できるだけユーザーの目に見える機会を
増加させる努力が必要になってきます。
まあ、一番効果的なのは
「毎日ブログ書きましょう」
ということなんですが・・・
こうすることで、自社の認知度を向上させていくことができます。
特に、ネットの場合、一度アップされた情報は半永久的に
露出され続けること。これは、一瞬目の前を通過するだけで、
ほぼ2度と見られることのない従来のマスメディア広告と決定的に
違うメリットです。
また、自社に対して固有のイメージを結びつけることも、
ネットでは比較的容易です。
有効なのは、いろいろ検索してみてまだ手垢のついていない
独自の言葉を探し出して、それを自社のイメージの核
(コンセプト)に据える方法。
要するに、他社があまり使っていない言葉を自社でガンガン
使っていけば、最小の努力で、固有のブランド連想が強化
できるというわけです。
私が、メルマガ&ブログのコンセプトとして
「マインドリーディング」
という言葉を選んだのも上記の理由からです。
(まだまだブランド構築途上ですけど・・・)
ちなみに、ベストセラー「ウェブ進化論」という名称を採用したのは、
著者の梅田望夫さんによれば、当時検索で何も引っかかって
こない言葉だったからなんですよね。
そして、ネット上に自社や商品に関わる情報がたくさんあれば
あるほど、「量」が「質」に転化して信頼が形成される。
そうなんです。情報そのものの信頼性以上に、
情報量が多ければ多いほど、信頼は自然に高まるんですよ。
さらに、頻繁に情報が更新されれば、親近効果によって
「好意」も深まります。
ですから、繰り返しますが、今、ブランディングに
取り組むなら、あらゆるところでネットで検索されるように
さまざまな機会をとらえて情報をばらまくことが必須だと
思います。
私の場合、法人化してはいるものの、実質個人事業ですので
この方法を
「じぶんユビキタス化」
と呼んでおります。(笑)
先の梅田さんは、同じことを
「分身の術」
とたとえてらっしゃいますが。
そうそう、梅田さんが指摘されていることで、さすが鋭いと
思うのが次の点。
自分(自社・商品)の情報をネットにあふれさせることによって、
検索結果の上位は、ほとんど自分が書いた情報で占められること
になる。
すると、他社が書いた自分(自社・商品)に対する非難や中傷
など、ブランドにとってネガティブなイメージとなる情報を
排除できるのです!
なぜなら、検索結果の2ページ目以降はあまり見ないですからね。
まあ、それなりに価値のある情報を大量に生み出し、
ネットにアップし続けることは、決して楽なことじゃありません。
でも、最小の費用でブランド構築に成功したかったら、
「じぶんユビキタス化」
に取り組むことをオススメします。
投稿者 松尾 順 : 11:20 | コメント (2) | トラックバック
消費者に接近していくビジネス
小売業などの流通業者の戦略は、
「集客型」
から、
「接客型」
にシフトしつつある。
と指摘するのは、明治大学大学院、
グローバルビジネス研究科教授、上原征彦氏です。
(月刊アイ・エム・プレス、2007-4)
従来の「集客型」というのは、大きな店舗を作って消費者を
集めることを基本としてきたビジネス。
「百貨店」は、その最高峰に位置していると言えます。
一方、「接客型」というのは、
‘消費者に接近していくビジネス’
という意味です。
上原先生によれば、
百貨店(都市部に立地)
↓
GMS(ダイエーなどの量販店、住宅地に進出)
↓
SM(マルエツなどのスーパーマーケット、さらに接近)
↓
CVS(コンビニ、500m商圏、さらにさらに接近)
↓
インターネット(オンライン店舗、ついに店が家庭に入り込んだ)
というように業態が変化してきている。
つまり、店舗がどんどんと消費者に接近していって
いるというわけです。
なるほど、確かにそうですね。
流通業者は、消費者との「物理的な距離」を
短縮する方向で進化してきたと言えます。
そして、「インターネット」に到達してしまうと、
店舗繁盛のための最大の要因のひとつであった「立地」が、
あまり意味を持たなくなってしまいました。
そしてさらに、インターネットにおける消費者との物理的距離を
短縮したかったら、検索エンジンでの上位表示を行うための
SEO(サーチエンジン最適化)対策であったり、
リスティング広告への出稿を行うということになりますか。
(これを物理的距離と呼ぶのはちょっと変ですが・・・)
さて、問題はこの後です。
物理的距離が近いだけで消費者が買ってくれるほど
ビジネスは甘くないですよね。
大事なのは、消費者との「心理的な距離」です。
心理的距離が遠かったら、モノは売れません。
「物理的な距離」は、上記のように極限まで売り手側から
短くしていくことができます。
しかし、「心理的な距離」はそう簡単ではないですね。
こちらがいくら「好き」だと言っても、相手も自分のことを
「好き」と思ってくれないのいと恋が実らないのと同じで、
消費者の方が、「売り手に心理的に近づきたい」と思って
くれないと取引は始まらない。
売り手は、当然ながら自分たちの思いを消費者に伝えることが必要。
でも、同時に消費者が、売り手に好意を寄せてくれるためにやるべきことが
何かも、わかっていなければなりませんよね。
それがわかっていないと、おそらくその売り手は選れない。
消費者に求愛している気の利いたライバルは、
他にも山ほどいますから。
つまり、いつの時代でも大事なことは、
消費者との「心理的距離」をいかにしてつめるか
(つめてもらうか)
じゃないでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 14:28 | コメント (2) | トラックバック
コカ・コーラの「CBL」:消費者調査の新手法
米コカコーラが2004年に開発した独自の消費者調査の新手法は
なかなか興味深いので、ポイントをご紹介します。
この新手法は、既に世界40カ国で実施されています。
日本のコカコーラグループでの採用は06年8月でした。
(日経MJ、2007/03/21、日経情報ストラテジー、MAY 2007)
さて、
「CBL」(Consumer Beverage Landscape)
と呼ばれるこの手法は、
市場を「商品カテゴリー」ではなく、
「消費者の動機や欲求の種類」
でセグメントするものです。
「商品カテゴリー」は、例えば「炭酸飲料」、
「スポーツ飲料」、「果汁飲料」などのカテゴリーがありますが、
・これらの商品はどんな成分で構成されているか
・どんな特徴があるか、
といったことが基準になっています。
いわゆる「規格」に基づく分類です。
通常、市場規模はこの商品カテゴリー毎に集計しますよね。
しかし、「CBL」では、消費者調査に基づいて
・食事との相性
・気分一新
・栄養補給
・自分らしさ
など、19個の消費者側の動機、欲求を抽出しています。
これらは、
「ニードステーツ」(「欲求の状態」とでも訳せますか)
と呼ばれていますが、「CBL」では、19個の
ニードステーツ毎の市場規模が算出できるようになっている
そうです。
つまり、「商品カテゴリー」による市場規模は、
「何を飲んだか」
という統計データ、
一方、「ニードステーツ」による市場規模は、
「なぜ飲んだのか」
の統計データになると言えます。
では、この「CBL」を活用することで、
どんなことがわかるんでしょうか?
例えば、スポーツ飲料の「アクエリアス」
の派生ブランドである機能性飲料「アクティブダイエット」
は、基幹商品の「アクエリアス」の販売数量を落とすことなく、
ヒットしました。
つまり、両ブランドは、規格面では似た存在なのに
食い合い(カニバリ)が発生しなかったのですが、
従来の調査では、なぜ食い合いが起きなかったのかの理由が
わかりませんでした。
しかし、「CBL」によれば、
・アクエリアス→「積極的な補充」
・アクティブダイエット→「体重管理」
とそれぞれ、異なるニードステートが大きいことが判明。
要するに、両ブランドの場合、消費者の飲む動機、欲求が
異なっていたので食い合わなかったということですね。
その他にも、「ニードステーツ」に基づく、競合他社商品
とのポジショニング分析を行い、弱いカテゴリーを
補強するためのマーケティング施策立案等に役立てることが
可能です。
「CBL」のような、市場規模を消費者の動機や欲求で区分する
方法は、ありそうであまりなかったアプローチですよね。
現時点ではまだ、「CBL」について詳細な資料を手に入れること
は難しいようですが、追加情報が手に入ったらまたご紹介します。
*なお、「CBL」のための調査方法について以下、
簡単に付記します。
--------------------------------------------------
調査時期・実施回数:年に複数回
調査規模:数千人
調査方法:インターネット調査
調査内容:1週間、1日24時間当たりに飲んだ飲料をすべて把握。
それぞれの飲料について、飲用場所、購入場所、
購入動機、飲用時の気分など、約百項目の質問に回答
してもらう
分析方法:社会心理学の考え方である「コモン・モチベーショナル
・フレームワーク」に基づき、19のニードステーツに
アンケートデータを振り分ける
--------------------------------------------------
投稿者 松尾 順 : 09:41 | コメント (6) | トラックバック
オンライン・コミュニティの効果検証:イーベイ
オンライン・コミュニティは、既存顧客との関係性強化に
効果が高い。結果として、リピートアクセス数の向上や
取引金額の増加につながる。
理屈では、この考え方(仮説)は限りなく正しいはずです。
でも、なかなか数値的に実証されたことはありません。
私自身も、オンライン・コミュニティの構築を提案する際に、
「実際、どの程度効果あるの?」
というクライアントからの質問に対して、
説得力のある事例をなかなか提示することができませんでした。
しかし、世界最大のネットオークション「イーベイ」で、
05年5月から1年間にわたって行われたフィールド実験の結果は
結構使えそうですよ。(PRESIDENT、2007.04.16)
イーベイは、日本からはさっさと撤退してしまいましたので、
その仕組みを理解されている方はあまり多くないと思いますが、
オークションだけでなく、会員掲示板やクラブ、チャットルーム
など、コミュニティ機能が充実しています。
ハーバード大学の研究者は、イーベイ・ドイツの協力を得て、
フィールド実験を行い、オンラインコミュニティの効果を
検証することにしました。
調査対象者は、3ヶ月以内にイーベイのオークションサイトで
品物を販売、または購入したことのあるユーザー約14万人。
ただし、彼らは、これまでコミュニティに参加したことの
なかった人たちです。
実験では、この14万の中から無作為抽出された約8万人の人に、
コミュニティへの参加を促すeメールを送信。
残り6万人はいわゆる「コントロールグループ」です。
eメールを送ったグループと比較できるよう、
イーベイからは何もアクションしません。
実験開始後3ヶ月。
eメール送信者8万人のうち、約1万4千人がコミュニティに
参加しました。
そして、この1万4千人の新規コミュニティ参加者を
・能動的参加者(掲示板に書き込んだり、議論に参加)
・受動的参加者(読むだけ、つまりROM)
に分けると、
・能動的参加者:約3千人
・受動的参加者:約1万1千人
となりました。
さて、それから1年間、このコミュニティ参加者と、
コントロールグループの6万人の行動を追跡、比較した
ところ、次のような結果が得られています。
◎能動的、受動的参加者の行動(入札面)
・入札回数: コントロールグループの2倍多い
・落札回数: 同25%高い
・落札金額: 同14%高い
・合計金額: 同54%高い
◎能動的参加者の行動(出品面)
・出品点数: コントロールグループの4倍多い
・月次売上: 同6倍
◎初めて出品した人の割合
・能動的参加者の場合:54.1%
・受動的参加者の場合:56.1%
*この数字は、コントロールグループの10倍近く。
(つまり、コミュニティに参加していない人が、
出品する割合は10%にも満たないということでしょう)
個人間のオークションの場合、
「入札・落札」(つまり購入)だけでなく、
さらに一歩進んで「出品」(つまり販売)をするようになると
さらに関与度が高まるわけですが、コミュニティが、
ユーザーをさらにアクティブにするということがわかりますね。
以上の数値は、あくまでネットオークションというビジネスに
おけるコミュニティ効果ですから、他のビジネスモデルに
そのまま当てはめるというわけには行きませんが、やはり
コミュニティは有効な仕組みであることをクライアントに
理解してもらうにはいい事例じゃないでしょうか。
ちなみに、この実験を行った年、イーベイ・ドイツでの
売上総額は前年度比58%増となりました。
そして、この実験結果からのイーベイの粗利益を計算すると、
およそ数百万ドルの利益を得たことになるそうです。
投稿者 松尾 順 : 07:25 | コメント (0) | トラックバック
変わらぬ上層部の体質
先日、ネット革命を理解する努力を放棄した情けない経営者の
”なんだか離れ小島でWeb2.0が行われていて、
やっている人たちが鎖国しているように感じる”
という「言いわけ」を紹介しました。
ネット革命は、さまざまな業界に大きな影響を及ぼしています。
ですから、こうした経営者も、
「自分の会社も、他人事では済まされない」
と薄々わかっているはずです。
なのに、新たな情報を取り入れ、
学ぼうとしないのは不思議でなりません。
さて、このことについて友人のChrosawaさんは、
次のようなコメントを残してくれています。
「こういった日本(日本人の権力者)の体質というか傾向は、
第二次世界大戦当時の大本営や軍部と本質的に変わらない
のでは。と感じます。」
なるほど、確かにそうかも知れません。
第二次世界大戦で日本軍が負けた原因については、
「失敗の本質」(戸部良一他著、ダイヤモンド社 )などで
徹底した分析が行われていますが、私が考えるに、
当時の日本軍上層部の一番の問題は、
「学習が、既存の枠組みの中での強化という方向でしか
行われなかったこと」
です。
たとえば、海軍においては、日露戦争での成功をもたらした
「艦船主義」という枠組みを大前提としていました。
戦艦大和、武蔵といった巨艦が建造されたのも、
その枠組みの中での当然の選択ではありました。
しかし、第二次世界大戦では、
すでに「航空機による攻撃」を主体とした戦いへと
枠組み自体が変化していました。
ですから、大和や武蔵があっけなく撃沈されてしまったのは
新しい枠組みでは当然の帰結だったわけです。
つまり、当時の日本軍上層部には、最新の情報をきちんと
収集・分析し、「枠組み自体」を組み替えることのできる
柔軟な学習能力がなかったことということなんです。
今の一部の企業の上層部にも、
そんな学習能力の欠如した幹部がゴロゴロいるんでしょうねぇ!
投稿者 松尾 順 : 00:22 | コメント (0) | トラックバック
あなたの話がつまらない理由
あなたの話がつまらない理由。
それは、自分のことを主題にした「自分語り」ばかりだから。
人に話を聞いてほしければ、自分が知っている「変わった他人」
のことを話せばいい。
このように指摘するのは、イッセー尾形の一人芝居の演出を
手がけてきた森田雄三氏です。
実のところ、私たちは、「自分自身」にしか興味がない。
だから、誰もが自分のことを語りたい。
でも、他人がする「自分語り」は興味が持てない。退屈だ。
矛盾してますよね。
要するに、私たちのコミュニケーションは、
大きな矛盾を抱えたまま行われているんです。
*森田雄三氏の話は、
「イッセー尾形の人生コーチング」
(森田雄三/監修、朝山実/文、日経BP社)
から。なかなか面白い本です。
投稿者 松尾 順 : 14:45 | コメント (2) | トラックバック
人はなぜ「情報」を集めるのか?
今日は(いつもかな・・・)、ちょっと抽象的な内容です。
すいません。
私たちが日々直面する問題の中には、
仕事であれプライベートであれ、しばしば経験したことのない
「未知の問題」
がありますよね。
ここでの「問題」というのは、なんらか取り組むべき事柄という
意味で、ネガティブな意味合いはありません。
プライベートで言えば、
初めての就職、結婚、出産、住居探し
などは、基本的に未知の問題です。
仕事でも、見込客への企画提案などは未知の問題ですね。
「未知の問題」の場合、問題解決の手がかりがほとんどない状況
からスタートすることになります。
そこで、私たちは、まず「情報」を集めるのです。
その問題の本質や背景を理解する上で、
今の私たちに欠けている「知識」を補うために情報を集める。
こうして新たに獲得した情報は、これまで持っていた知識に
統合され、新たな知識が生み出されます。
そうして、その新たな知識を元に問題解決に向かう。
要するに、私たちは、情報を収集することによって、
自分の知識を変化させているということになるわけです。
これは「学習活動」とも言えます。
学習の意義は、それによって日々の中でより適切な判断や行動が
できるようになる(つまりは、生き延びる)ために役立つ知識や
スキルを獲得することです。
ですから、情報収集とは、人間(人間だけでなく生物全て)
にとって、生きることそのものと言えるのかもしれません。
逆に言えば、情報収集を怠れば、オオゲサですが
生存の危機に陥る可能性だってあるわけです。
さて、情報収集活動には次の3種類があります。
・環境モニタリング
・情報との遭遇
・情報問題解決
「環境モニタリング」とは、
危機や好機到来の兆候を現す異変を読み取るために、
常に周囲の状況に関心を払い、継続的に情報を集める行為。
人だけでなく、生物全てに備わっている本能とも言える
情報収集活動です。(草食動物の群れでは、外敵の存在を
見張る役割がいますが、あれも環境モニタリング)
これは、自分が好きとか嫌いとかということではなくて、
自分に対して、ポジティブであれネガティブであれ、
影響を与えそうな事項に対して、注意を向けることです。
実は、人間の環境モニタリング本能を満たすために発達
してきたのが、新聞やテレビなどのマスコミなんですね。
現在はインターネットの役割が大きくなりつつあるますが、
周囲の環境変化を継続的にモニタリングしておくことは、
自分の生存のためにとても重要なことなんです。
次の「情報との遭遇」とは、
特に何か情報を探すという意識はなかったのに、
なんらかのきっかけで偶然、有益な情報に出会って
しまうことです。
目的なき情報探しですから、
明確な成果を最初から期待することはできません。
しかし、思いもしない情報との出会いが、行き詰まっていた
仕事の突破口になったり、人生を変えてしまうきっかけになる
こともありますから、意識的に仕掛けていくといいですよね。
例えば、放送作家の小山薫堂氏の言う
「偶然力」
のアプローチがオススメ。
神様も予期しない行動をとることで偶然の出会いの機会を
増やすやり方です。要するに、行き当たりばったり、
気まぐれなことをやってみる・・・
無駄打ちが多くなることは、覚悟しなければなりませんけど!
最後の「情報問題解決」は、
明確な解決すべき問題、つまりはっきりした目的のための
情報収集活動です。
冒頭に述べたように、日々の生活では、
「未知の問題」として、この情報問題解決が数多くやってきます。
情報問題解決のためには、効率的に答えや関連した情報を見つける
「情報検索スキル」が求められるのですが、ネットのサーチエンジン
やQ&Aサイトの登場は、この「情報問題解決」をずいぶん楽に
してくれました。
情報収集活動は、誰もが日常的にやっていることなので、
あまり意識したことがないかも知れません。
でも、目先の「情報問題解決」だけにとらわれていると、
環境モニタリングがおそろになり、時代に取り残される可能性が
ありますし、斬新な発想を生むためには、「情報との遭遇」が
有効です。
ですから、多少意識して、
・環境モニタリング
・情報との遭遇
・情報問題解決
の3つの情報収集活動スタイルを使い分けたらどうでしょうか?
*参考文献
「情報検索のスキル-未知の問題をどう解くか」
(三輪眞木子著、中公新書)
投稿者 松尾 順 : 11:13 | コメント (0) | トラックバック
「自分語り」なプロフ
「プロフ」
とは、自己紹介するためのホームページのこと。
この「プロフ」が女子高生の間で大流行しているんだそうです。
(日経産業新聞、2007/03/22)
女子高生に強いマーケティング会社、(株)ブームプランニング
によれば、
全国の女子高生の50%以上、首都圏に限れば70%
が「プロフ」を所有しています。
プロフには、PC用もありますが、
女子高生の利用は圧倒的に携帯電話用です。
携帯からプロフ用のサイトにアクセスすると、
そこには氏名、年齢から始まって、趣味や好きなタレントなど、
40-100項目におよぶ多種多様な質問が用意されています。
彼女たちがそれらに答え、また自分の顔写真を貼り付ければ
「自己紹介ページ」
が完成するというわけ。
さて、私が気になったのは、
ブームプランニングの代表取締役、中村泰子氏が、
「プロフ」を活用する女子高生たちの一般的な傾向として、
「自己表現には腐心する反面、相手には関心を示さない」
という点を指摘されていたことです。
さらに、中村氏は次のような分析を行っています。
「女子高生の会話を聞くと、自己中心的で自意識過剰という
気がする。こんな傾向が強まる中でプロフが登場し、
受け入れられたのではないだろうか」
なるほど。
もっと自分のことを知ってほしい、語りたいという
「自分語り」のために
「プロフ」
は、格好のツールなんでしょうね。
ただ、自己中心的で自意識過剰という傾向が
強まっているのは、女子高生だけではないように思います。
たとえば、mixiなどのSNSで話題になっている「読み逃げ」。
これは、マイミクでつながっている友人・知人のページに
アクセスして日記などを読んだのに、コメントを残さない
のはずるい、よくない、「読み逃げ」だという批判です。
あなたは、「読み逃げ」はずるいと思いますか?
私はずるいと思いません。
コメントを書き手が強要するのは変です。
コメントを残す・残さないは読み手の自由でしょう?
そもそも、特に「自分語り」の強い日記などの場合、
コメントを残すのが難しいことが多いですしねぇ・・・
ですから、「読み逃げ」のような考え方が生まれるのは、
一般の人々においても、自己中心性、自意識過剰性が
強まっているということを示しているんじゃないでしょうか。
ちなみに、個人が自分のホームページを持つ理由についての
先行研究(国際比較)によれば、他国と比較して日本人の場合、
自分自身の性格や意見などをホームページに呈示している傾向が
高いことがわかっています。
つまり、以前から、特に
「自己開示」「自己表出」
の手段としてホームページを利用することが多かったのが
日本人です。
「プロフ」もまた、この日本人の基本的な志向にぴったり
はまったということでしょう。
「SNSの使われ方」についての国際比較研究は、
まだあまり行われていないと思いますが、おそらく、
日本人と他国の人ではずいぶん違うんじゃないでしょうか。
*以下参考文献です。
「ウェブログの心理学」
(山下清美、川浦康至、川上善郎、三浦麻子著、NTT出版)
投稿者 松尾 順 : 11:49 | コメント (4) | トラックバック
大企業のウェブはなぜつまらないのか
”なんだか離れ小島でWeb2.0が行われていて、
やっている人たちが鎖国しているように感じる”
ネット革命に戸惑っている、ある経営者の弁だそうです。
「鎖国しているのは、あなたの会社のほうじゃないんですか?」
と思わず皮肉りたくなりますが、
企業という船の舵取り役であるべき経営者なのに、
外部の環境変化にあまりに鈍感すぎます。
というか、
「Web2.0が理解できないのは、自分の勉強不足」
だという事実から目をそむけ、相手を悪者化し、
自己正当化を図っていますね。
10年前じゃあるまいし、こんな経営者は少数派だといいんですが!
さて、冒頭に紹介した言葉は、
「大企業のウェブはなぜつまらないのか」
(本荘修二著、ダイヤモンド社)
から。
この本は、著者自身が言っていますが、
ハウツー本ではなく、経営書として書かれたものです。
ネットの現場にいる方には、それほど得るものはありません。
ネットにうとい上司や経営陣のデスクに、
さりげなく置いておきましょう・・・!
投稿者 松尾 順 : 14:13 | コメント (4) | トラックバック
企業とブロガーの関係
今年2月頭にPRマーケティング会社、ビルコム(株)が実施した
ブロガーに関する調査結果が、「宣伝会議」最新号(2007.3.15)
に掲載されていました。
ネット上ではいち早く公表されてましたが、宣伝会議で見て、
あらためて「なるほどねぇ・・・」と考えさせられるところが
ありました。
ポイントを拾っておきますね。
--------------------------------------
<調査概要>
実 施 期 間:2007年2月5日~7日
調 査 対 象:日本全国の20代以上の男女
回収サンプル数:400人(男女それぞれ200人)
Q.1 企業がブロガーに、宣伝のためにお金を渡すことについて
どう思いますか?
☆賛成:55.5% ★反対:44.5%
~~~~~~~
Q.2 自社商品のオススメを書いてもらうため、企業がブロガーに
お金を払う場合があります。そのことを知っていましたか?
☆はい:41.3% ★いいえ:58.8%
~~~~~~~~
Q.3 企業からお金をもらって書いている友人・知人のオススメ
商品を信用しますか?
☆はい:37.0% ★いいえ:63.0%
~~~~~~~~
Q.4 企業からお金をもらって書いている知らない人のオススメ
商品を信用しますか?
☆はい:13.3% ★いいえ:86.7%
~~~~~~~~
--------------------------------------
宣伝のために企業がブロガーにお金を渡す点について、
「広告であればいいだろう」と考える消費者が半数以上
いました。
私も、「広告」であることが明示されているブログ記事なら、
なんら(倫理上の)問題はないと考えています。
オススメ記事を書いてもらうために、企業がブロガーに
お金を渡す場合があるということを知らない人が、
6割近くいたというのはちょっと驚きですね。
一般消費者の多くは、やはり無知というか純粋です。
企業からお金をもらって書いているオススメ商品を
知らないブロガーなら、8割近くの人が信用しないのは
当然として、友人・知人なら4割近くの人が信用すると
いうのは意外でした。人のつながりの強さを感じます。
さて、こう書いて、似たようなことがあるなと思い出したのが
「パーティ商法」です。
友人・知人を自宅に招き、各種商品(調理器具など)の
実演販売を行う「パーティ商法」は、人間関係を
うまくビジネスに取り込んでいますよね。
同様に、ネット上の口コミは、仮にそれが「広告」と
認識されていたとしても、友人・知人間なら、
それなりに効果があると言えるとうことことでしょう。
もちろん、友人・知人を失うリスクをはらんでますけど。
ちなみに上記の調査結果の数字をどう解釈するかは、
人それぞれです。ネット上の記事では正反対の解釈が
なされているものがあります。
数字というのは、自分の読みたいように読める場合があるのが
怖いですね。
また、このことは、アルファブロガー、徳力さんの
「ネットコミュニケーションの視点 tokuriki.com」
でも既に指摘されています。
→記事のタイトルのつけ方一つで、印象が大きく変わるということ
投稿者 松尾 順 : 10:54 | コメント (0) | トラックバック
百姓になった高橋がなりの『農家の台所』
先日、国立にある自然食レストラン、
に行きました。
この店は、ソフト・オン・デマンド(SOD)の創業者、
高橋がなり氏が数年前に立ち上げた「国立ファーム」の運営。
店自体は、まだ開店して2ヶ月弱です。
「国立ファーム」は、日本の農業を改革するというビジョン
を掲げ、農業の生産から流通までを一貫して行う事業を
行っています。
そして、『農家の食卓』では、国立ファームを通じて仕入れた
新鮮な野菜をふんだんにつかったメニューが提供されています。
店の目玉は、「サラダバー」です。
ファミレスの変わり映えのしないサラダバーと違い、
この店では、地元国立で取れた「東京うど」など、
普段はあまり食べる機会のない珍しい野菜が食べ放題。
目の前でお姉さんが野菜を切っていて、新鮮そのものです。
3種類ほどの天然塩をつけて食べる、
野菜のしゃきしゃきした食感が最高でした。
この店で初めて知ったんですが、
「ソルトリーフ」
という野菜があるんですね。
見ると葉っぱの表面に白く塩が浮いています。
文字通り「塩吹き葉」。
なにもつけなくてもそのまま塩味で食べられます。
サボテンの仲間だそうです。
また、この店では「ボトルキープ」ならぬ、
「農場キープ制」
というのをやってます。
通路の棚に、野菜が育っているプランターがたくさん
置いてありまして、それぞれ名札がついています。
年間1万円払うと、プランター2個分(長さ1メートルちょっと)
の野菜をお店で育ててくれます。
自分だけのプチ農場がキープできるというわけです。
さてメインディッシュとして、私たちは、
「和風御前」、「中華御前」(どちらもサラダバー付)
を注文しました。
素材が吟味されているせいか、
味わい深く、とてもおいしかったです。
量はそれほど多くなくていいから、
健康的でおいしいものを食べたいという現代人のニーズに
マッチしてますね。
野菜中心ですから、カロリーも低めでしょう。
その分、酒をがぶがぶ飲みましたが。(笑)
国立はちょっと遠いので、
ぜひ都内にも出店して欲しいなあと思いました。
農家の台所を紹介してくれた知人に感謝です!
投稿者 松尾 順 : 09:54 | コメント (0) | トラックバック
最も簡単な企業機密の盗み方
最も簡単な企業機密の盗み方は・・・?
基幹情報システムへのハッキング?
いいえ違います。
犯罪歴のない若者を狙った会社に短期社員として送り込む。
そして重要情報や、アクセス権のある社員の個人情報を盗む。
実に簡単だそうです。(日経ビジネス、2007年3月5日号)
これ、昔ながらの「スパイ工作」ですね。
または、金融機関の口座番号やパスワードを知る立場にある
コールセンターのオペレーターから、電話を通じて言葉巧みに
聞き出す。
強固なファイアウォールで守られた情報システムよりも、
「人」をハッキングした方が、手軽で簡単。
高度なITの知識不要。
情報システムのセキュリティばかり気にしてたら
とんでもない別の抜け穴を見落としそうじゃないですか・・・?
投稿者 松尾 順 : 08:46 | コメント (1) | トラックバック
紙おむつ・ビール
ウォルマートでは、ベビー用紙おむつと缶ビール6Pパックが、
なぜだか一緒に買われている。
調べてみたら、奥さんに「紙おむつ買ってきて」と言われた夫が、
ついでに自分用のビールを同じショッピングカートに入れていた
ことがわかった!
そこで、紙おむつの隣に缶ビールを並べたところ、
売り上げが伸びた。
(考えてみれば、奇妙な陳列です・・・)
どうやらこれは作り話(捏造!?)らしいのですが、
データマイニングの有名な事例ですね。
「紙おむつ・ビール」のような分析方法は、
同時に購入された商品アイテム間の相関関係を見るものです。
ひとつの買い物カゴの中に入れられた商品の分析なので、
「ショッピングバスケット分析」
と呼ばれます。
日本語で説明するときには、
「併買(へいばい)状況の分析ですよ」
と話すんですが、こうしてPCで文章を作成する際に
「へいばい」
と入力しても、不思議なことに
「併売」
としか変換されないんですよね。
考えてみれば、売り手側から見た「併せて売る」という発想は
昔からありました。
でも、買い手側から見た「併せて買う」という発想は、
データマイニングが登場したこの10数年のことなんですよね。
それにしても、そろそろ「へいばい→併買」の変換に対応して
ほしいです。マイクロソフトさん、お願いします。
投稿者 松尾 順 : 11:02 | コメント (0) | トラックバック
リアル社会での孤独、でもヴァーチャルでも孤独か
という調査報告書(経済協力開発機構:OECD)によれば、
OECD加盟の21カ国の中で、日本人男性が最も
「孤独」
だという結果が出たそうです。
調査報告書を見ると、「孤独」(Social Isolation)
の度合いを聞く設問は、
「友人・知人や同僚と、業務外のスポーツやサークル活動などで
外出したりすることがほどんど、あるいはまったくない」
です。
この設問にYESと答えた人は、日本人男性が21か国中最高でした。
最高といっても、全体の16.7%ですが。
(なお、日本人女性も、メキシコに次いで2位です。)
要するに先進国の中で、日本人男性が最もリアルな交友活動を
していない、だから「孤独だ」ということになるわけです。
しかし、この結果の解釈にはちょっと引っかかりませんか。
そう、ネット上の交流。そしてまた、携帯電話での交流。
携帯電話(PHS含む)の契約台数は約1億台。
ミクシィの登録者は800万人を突破。
男性、女性とも、日本人のネットやケータイを通じた
コミュニケーションは、先進国の中でおそらく最も活発でしょう。
たいていのことは、直接会わなくてもネット、携帯で
用が済んでしまう。
しかも、オンラインでの交流にのめりこみすぎて、
家から出なくなることも多くなった。
結果的に、リアルな交友活動は減ってしまっている。
でも、だからといって私たちが「孤独」を感じているとは
限らないわけです。
ヴァーチャルでのつながり感があるから、
あえて、リアルで直接会って「つながりあい」を確認する
頻度が低下しただけじゃないのか。
こんな仮説が立てられそうです。
この仮説が正しいかどうかはさておき・・・
そもそも、OECDのこの調査自体が、
「セカンドライフ」のようなもうひとつの社会生活、
多様な人生が、ネット上でヴァーチャルに繰り広げられている
現状をきちんと反映した調査設計になっていないように思います。
投稿者 松尾 順 : 10:41 | コメント (1) | トラックバック
グーグルを凌駕するかもしれない検索サービス
世界最強のネット企業、「グーグル」
もはや、その地位は揺らぐことはないように思えますが、
今年、強力なライバルが登場しますね。
2005年設立、サンフランシスコの「パワーセット」です。
実は、まだサービス開始してませんが・・・
試作版(英語版)のサービス開始は、今年末を予定。
日本版も準備中です。
(日経新聞、2007/03/14)
パワーセットの検索サービスの特徴は「自然文検索」です。
Googleも含め、従来の検索サービスでは、
調べたい内容に関連した単語(キーワード)を入力しなければ
なりません。
しかし、パワーセットは、例えば、
“1996年にIBMが買収した会社はどこだったのか?”
と文章をそのまま打ち込むことができます。
すると、高度な自然文解析機能を使って、
調べたい内容を的確に把握し、適切な検索結果を返してくる。
検索結果の精度はグーグルを上回るようで、
将来、検索サービスの分野ではグーグルをしのぐのではないかと
期待されています。
なるほど、面白いことになってきました。
昔の巨人軍(たとえが古い・・・)ではありませんが、
一人勝ちほど見てて面白くないものはありません。
グーグルが焦るような新興サービスが
どんどん登場してほしいものです。
さて、パワーセットのサービスの行方ですが、
英語版での成功の確率はかなり高いんじゃないかと思います。
グーグルに追いつくのは当然ながらそう簡単ではありませんけど。
しかし、日本版ではかなり苦労するでしょう。
アンケートの自由回答(つまり自然文)や、コールセンターへの
問い合わせなどを分析する「テキストマイニング」の仕組みを
ご存知の方は特によくおわかりになると思いますが、
日本語の自然文の解析は、英語よりもはるかに難しいんですよね。
なぜ日本語の解析が難しいかの説明は、
その説明自体が難しくなりますので止めておきますが、
ともかく、日本語版では、検索精度を上げるのに苦労することに
なると思います。
ところで、検索サービスについては、そもそも、
「検索サービスの精度は、高ければ高いほどいいのか」
という疑問を投げかけておきたいと思います。
確かに、調べたいことにドンピシャの結果が得られた方がいい。
でも、一方で、適度に精度が甘いほうが、
思いもしなかった検索結果が現れ、それをクリックすることで
新たな発見や気づき、学びを得ることができます。
こうした、偶然的な未知との出会いを脳は大好きです。
脳科学者、茂木健一郎氏は、ネット上においては、
「偶有性」
が重要だと言っています。
「偶有性」とは、ある程度は何が起こるか予測できるが、
100%完全には予測できないことです。
現在の検索サービスは、ノイズが多すぎる面もありますが、
たまに「こんな情報があったのか」という発見の喜びがある。
まさに「偶有性」の世界。
茂木氏によれば、「偶有性」は脳を活性化させます。
以前も書きましたが、次に何が起こるか全くわからない状態は
人を不安にさせます。
しかし、ある程度起こる範囲が分かっている中で、
予想もしなかった展開があるかもしれないという偶有性的状況
は、人をワクワク、ドキドキさせてくれるんです。
実際、完全な予定調和の世界は、面白くもなんともありませんよね。
投稿者 松尾 順 : 11:50 | コメント (0) | トラックバック
アイディアの源泉かけ流し
行列のできるスイーツ屋さん、自由が丘の「モンサンクレール」
のオーナーシェフ、辻口博啓氏は次々と斬新なスイーツを
生み出し続けていることで知られていますね。
モンサンクレールのお菓子、一度でいいから食べてみたい。
残念ながら、まだその機会がありません・・・
なので、とりあえず普段はプッチンプリンで我慢しています。(^_^;
さて、世界のトップパティシェ、辻口さんが豊かなアイディアを
生み出すことのできる秘密、つまり「アイディアの鍵」のひとつは、
「他の業界の道具を使う」
ことです。
(「アイディアの鍵貸します」、フジテレビ)
たとえば、チョコレートを薄く広げるために、
通常は金属のコテのようなものを使いますが、辻口さんは、
ペンキ塗り用のやわらかいローラーを使うことがあります。
そうすると、ヘラで拡げた時の滑らかな表面と違って、
ちょっとザラっとした感じの柔らかな風合いのチョコレート生地
になるんですね。
また梱包用に使われる「プチプチ」の上に溶かしたチョコレートを
伸ばすと、丸いくぼみがたくさんある不思議な形の生地ができる。
辻口さんはこうして普通は考えもしない道具を使って、
独特の形や風合いを持つスイーツを生み出しています。
よく、アイディアは他の業界の中にあると言いますが、
辻口さんの場合は、実際に他の業界の道具を使うことで
新たなアイディアを得ているわけです。
でも、私がもっとも印象に残った辻口さんの「アイディアの鍵」は、
「過去の自分のレシピをどんどん公開してしまう」
ということでした。
自分が考えたオリジナルなレシピ、私だったらもったいなくて
公開しないんですけど、辻口さんは違います。
あえて公開することで、過去のヒット商品に頼れない状況に
自分を追い込む。そのプレッシャーによって次々と新しい
アイディアを出しているんですね。
これは、まさに
「アイディアの源泉かけ流し」
と言えますよね!
「アイディアの源泉たれ流し」というのは、
番組の案内役、平明太(ひらめいた)氏が言ってたことですが。
見習いたい。
投稿者 松尾 順 : 11:09 | コメント (5) | トラックバック
銀座ユビキタス実験
1月から実施されていた「銀座ユビキタス実験」のこと、
ご存知でしたか。3月10日でいったん実験は終了したようです。
(日経新聞2007/03/10)
実験参加者は、専用の携帯情報端末を持って銀ブラ。
そして、たとえば銀座四丁目交差点の三越前を通ると、
「三越は、1930年に誕生しました・・・」
などとガイド音声や画像が自動的に端末に流れます。
これは、銀座の要所要所に設置したICタグや赤外線発信装置から
流れている情報を、近くにある端末がキャッチできる仕組みに
なっているからなんですね。
この仕組み、ぱっと聞いた印象ではとても便利そう。
特に、観光客には喜ばれそうなサービスです。
歌舞伎や美術館などで、音声の説明が聞ける小型の機器を
貸し出しているところがありますよね。
あれと同様、このユビキタスサービスは、その場所に不案内な人
にとってはありがたいサービスに違いありません。
と思ったら、実はそうではなかったんですね。
実験参加者の評判はあまり好ましいものではなかったようです。
また、申し込んだものの、実際には参加しなかった人が9割も
いました。
この端末、首から下げるスタイルですが重さが300グラム。
ちょっと重いですね。
また、屋外で使用するため、液晶画面が見づらいという
ハード設計上の問題もあったようです。
しかし、実験参加者が評価しなかった主な理由は、
「音声などに気をとられ、気楽に銀ブラできない」
ということでした。
また、
「知りたくない情報まですべて受信してしまう」
という声も・・・
つまり、この端末の最大の問題は、
情報受信の「選択権」が利用者側になかったことでしょう。
「ユビキタス」のコンセプトは、もしそれが完全に実現したら
さまざまな情報が、まるで「空気」のように世界を満たしている
状態と言えます。
ですから、こうした情報を人がすべて摂取していたら、
それこそ情報過多で頭がおかしくなりそうです。
ユビキタスに限らず、新しいコミュニケーションテクノロジーは、
どうしても情報発信側寄りの発想が強くなってしまうものですが、
情報受信側の心理理解も大切ですよね。
「情報は自分で取捨選択したい」
現代の消費者の、最も切実な願いはこれじゃないでしょうか。
投稿者 松尾 順 : 13:57 | コメント (2) | トラックバック
ログ分析で売れる商品開発:カカクコムの事例
私が講師を務めているシナプス・マーケティング・カレッジの
「Webマーケティング」(全3回)は、先週土曜日に3回目が
終わったばかりです。
実は、前期までは全2回だったのですが、
今期から、「Webサイトの効果検証ノウハウ」を
お伝えする回を加えて全3回としました。
この3回目の講義では、
・アクセスログ分析
・ユーザビリティ調査
・顧客満足度調査
などのポイントを3時間でお話しています。
まあ、本来、上記それぞれの項目について各3時間くらい時間が
欲しいところです。でも、あまり講義内容を細分化してしまうと、
受講したい潜在受講者がどうしても減りますから、
開講できるだけの人数を集めるのが難しくなります。
悩ましいところです。
おっと、前振りはこのくらいにして、
商品開発にアクセスログ分析を活かした事例をご紹介します。
(日経情報ストラテジー、April 2007)
実は、こうした事例はなかなか表に出ることがありませんから
貴重ですよ。
薄型テレビの企画・開発を手がけるバイ・デザインは、
32型の薄型テレビ(商品名:dxk:32.com)300台を
カカクコムと共同で開発、ほとんど宣伝費をかけず、
カカクコムだけで売り出した結果、2週間で完売したそうです。
この商品を開発するに当たって、両社は、
カカクコムユーザーのサイト上の行動履歴と言える
「アクセスログ」を細かく分析しました。
カカクコムの場合、とりわけ有益なアクセスログが取れるのは、
「スペック検索」
のところ。
潜在顧客が、検索画面で、メーカー名、画面サイズ、機能
などの条件を指定して検索をかけた記録が残っていますから、
潜在顧客の求めているスペックが手に取るようにわかるんですね。
実際、分析をかけてみると、潜在顧客の8割が「画面サイズ」を
指定して検索していたことがわかりました。
こう聞くと、「なるほどやっぱりなあ」と思うかもしれませんが、
数字の裏づけが取れることに意義があります。
さて、潜在顧客は、「画面サイズ」をまず優先しますが、
画面サイズが大きくなると価格も高くなりますから、
「画面サイズ」と「価格」の適切なバランスを検討しているはず。
そこで、ログ分析でも、「画面サイズと価格の組み合わせ」を
深く見ていったところ、「高価格」か「低価格か」の2極分化の
傾向があることがわかったそうです。
こうした分析を経て、新商品、dxk:32.comのサイズは、
32インチ、値段は、11万4800円(税込み)と決定。
これを前提としてバイデザインでは商品設計を進めていきました。
実は、この商品には地上デジタル放送を受信できる
「デジタルチューナー」の搭載も検討していたそうですが、
今回は見送ったそうです。
というのも、スペック検索のログ分析の結果、
デジタルチューナーが必要だとした人の平均検索価格が
18万6266円に対し、指定しない人のそれは15万4894円。
この価格差3万円強は、潜在顧客がデジタルチューナーに
払ってもよいと考えている金額だといえます。
しかし、当時の製造コストを考慮すると、
3万円程度ではデジタルチューナーを搭載する分のコスト増を
吸収できないため、搭載しなかったというわけです。
また、カカクコムのようなオンライン販売では、
アクセスログからかなり正確な需要予測ができます。
上記製品の販売当時、
・バナー広告の平均クリック率は、0.4%程度
・販売ページで購入に至るコンバージョン率は、0.2%程度
だったため、新商品の告知のためにバナー広告を何回表示させるか
によって、最終的に売れる商品数が読めるというわけです。
実際、dxk:32.comはほぼ想定どおりの売れ行きを示したそうです。
アクセスログ分析は、ツールを使うと、基本的な分析結果は
クリックだけで簡単にできてしまうものです。
しかし、今回ご紹介したような分析は、結構手作業で
シコシコやらなければいけない部分が多かったんだろうなと
思います。
膨大なデータの山の中から宝を掘り出すには、
やはり、それなりに手間をかけないとだめだなんでしょうね。
投稿者 松尾 順 : 12:18 | コメント (0) | トラックバック
ポイントの大移動
「顧客囲い込み施策」
として多くの企業が導入している「ポイントシステム」ですが、
その発行総額は、現在4500億円以上と推定されているんですね。
(野村総合研究所調べ)
「ポイントシステム」は、
実質的には「金銭」に換算できるメリットをユーザーに
提供しているので、私は、この施策のことを
「金銭的報酬」を与えるロイヤルティプログラム
と呼んでいます。
(ちなみに、ユーザーの自己重要感や名誉欲をくすぐるのは
「精神的報酬」を与えるロイヤルティプログラム)
問題は、ポイントシステムは、要するに金銭でユーザーの歓心を
買おうというわけですから、ユーザー側も打算的に動くこと。
できるだけ得になるポイントにどんどん移ってしまうんですね。
最近は、ポイント間で交換できるサービスが普及しつつありますが、
「ポイントの大移動」の行き先の3割以上は、全日空、日本航空
などのマイレージプログラムだそうです。
一般的なポイントの金額換算価値はおおむね1ポイント=1円ですが、
航空会社のそれは4円以上ですから。
実際、私の場合もポイント集めは、
全日空のマイルになるべく集約しようとしています。(^_^)
投稿者 松尾 順 : 13:26 | コメント (0) | トラックバック
「R25」デジタル版
あいかわらず、「R25」は面白い!
私は、ターゲット層(M1層:20-34歳の男性)ではありませんが、
「へぇー」と驚かされることが多いんですよね。
「R25」の面白さの秘密は、編集のコンセプトが「そもそも論」
にあるんでしょう。あまりに日常的過ぎて深く考えないことを
あえてテーマに取り上げているからこそ、意外な気づきが
あります。
ただ、以前も書きましたが、通勤ルート上に置いてないので
よく取り忘れてしまい、読めない週も結構多かったんです。
ところが、いつからなのか知りませんが、
「R25」がデジタルマガジンで読めるようになっていました。
‘今なら「0円」’と書いてありますが、ひょっとして
「R25」のデジタル版は有料化を考えているんでしょうか?
また、ちょっと理解しにくいのは、
「R25」本誌でも、また「R25]公式サイトでも、
デジタル版の告知を一切していない点です。
なぜでしょうね?
ともあれ、今はデジタルもタダ。
「R25」を読みたくても読めなかった地方の人にも朗報ですよね!
さて、「R25」がデジタルマガジン版を積極的に告知しない理由、
それはおそらく、「R25」の紙版が、M1層の行動パターンに
沿ったページ構成になっているからでしょう。
でご紹介したように、誌面構成は、20-34歳の男性が
都心の職場を夜8時頃に出て、駅に向かう途中で「R25」を
ピックアップし、帰りの電車で読むことを想定してます。
ところが、デジタル版は、そんな状況設定を
無意味なものにしてしまいますからね!
では、それでもデジタル版を出さなければならない必然性は?
地方在住者からの「俺も読みたいよ!」という声が
たくさん寄せられたのかもしれません。
あるいは、現在の60万部という発行部数をこれ以上増やすことは、
リアルワールドでは限界があるからでしょうか?
藤井編集長によれば、
地方版の発行も考えてはいるとのことでしたが。
なお、「R25」は、公式サイトで自由に閲覧できず、
を通じて申し込まないと、無料購読ができません。
これはきっちりとデジタル版の購読部数を把握して、
トータルでの発行部数を伸ばし、広告単価を引き上げたいから
なんでしょうね・・・
投稿者 松尾 順 : 07:14 | コメント (0) | トラックバック
せつな的SPはやりません
ここしばらく、田坂広志氏の
「これから何が起こるのか」
をレビューしてきて痛感したのは、これからは
「企業本位な考え方」
はますます通用しなくなるということです。
「企業本位な考え方」とは、要するに
「自社の商品・サービスが売れること」
を中心に物事を考え、行動すること。
いまさら言うまでもないことかも知れませんが、この考え方には、
「顧客が求めているものを提供する」
という考えが欠落しています。
ご存知のとおり、現在の多くの企業は、
「顧客満足度ナンバーワン」
だとか
「お客様のために」
といったスローガンを前面に出しています。
ところが、販売現場を見てみると、
売り上げ目標に追われていてそれどころではありません。
上記のスローガンが、単なるきれいごと、口先だけのお題目に
終わっているケースがほとんどです。
こうなるのはなぜでしょうね・・・?
企業の上層部が、企業本位でもモノが売れた時代の成功体験から
抜け出せていないためというのもあるでしょう。
ただ、私が考えるに、企業本位になってしまう最大の問題は、
「企業のサイクルが、1年周期である」
ということにあるんじゃないかと思います。
企業は、1年ごとに会計処理をして損益計算を行います。
つまり、企業の成績を出します。
生活のサイクル自体も1年単位で回っていますし、
企業も同じサイクルで回すのは自然なことではあります。
しかし、
「顧客との関係づくり」
は1年を超える長期的な取り組みです。
3ヶ月、半年、1年といった短い期間では、
顧客の「信頼」を勝ち得ることはできません。
ブランド構築も同様です。
なぜなら、ブランドとは、顧客の頭の中にある
「企業・商品に対する理解や認識、イメージ」
(思い出の小箱)
ですから、「ブランド」は、
そもそも顧客との関係づくりの結果として形成されるもの。
顧客との関係づくりがなければ「ブランド」もないのです。
でも、企業の発想が1年単位という枠で縛られると、
どうしても、「顧客の関係づくり」が短期的なものにならざるを
得ないですよね。
というより、1年単位で評価してしまうと、
顧客との関係づくりのための活動が、良い成績を取れない
(目に見える成果として現れてこない)ため、
「この施策は効果がない」
という短絡的判断がなされ、途中で打ち切られてしまうと
いうことがしばしば起こってきました。
そして、毎年毎年、せつな的なSP(販売促進施策)で
購買意欲をあおり、無理やり数字を作ることの繰り返し。
つまり、
「顧客の創造」
ではなく
「商品の販売」
をずっと続けてきた。
でも、これからの「顧客中心市場」の時代においては、
上記のやり方はますます通用しなくなります。
ですから、企業としては、財務的な成績は1年ごとに出すという
基本の仕組みには従うとしても、顧客との関係づくりについては、
もっと長いサイクルで考えるようにすべきです。
私は、そのサイクルは最低「3年」だと思います。
もちろん、3ヶ月、半年、1年毎などの中間レビューは必要です。
しかし、最低3年というスパンで、顧客との関係づくりを考えるのが、
企業を永続させる鍵ではないでしょうか。
実際、パワーブランドを擁している企業や、
長期的に高い業績を継続している企業を研究してみると、
決して1年という短期サイクルでは顧客との関係を見ていないこと
がわかります。
「息の長い企業にしたければ、息の長い視点を持つ」
当たり前のことですが、これを実行できるかどうかです。
ところで、私は、
企業のマーケティング支援をメインの業務としております。
CRM(Customer Relationship Management)が専門です。
つまり、顧客との関係づくりをお手伝いしています。
とは言え、
「モノを売る」ための短期的なSP施策をお手伝いすることも
ありました。
しかし、これからは、「モノを売る」ことを最優先にした
せつな的SPの仕事はお受けしないことにします。
そもそも、せつな的SPは苦手ですし。(笑)
せつな的SPを得意とされる方は他にたくさんいらっしゃいます。
「モノを売る」ことが大事だよ、「顧客との関係づくり」は
後回しとお考えの企業さまは、ぜひ他の方をあたってください。
私は、せつな的SPはやりません。
投稿者 松尾 順 : 09:05 | コメント (1) | トラックバック
これから何が起こるのか(14)「集合知」のマネジメントへ
市場における顧客サービスは、
コスト・サービス
↓
ナレッジ・サービス
↓
マインド・サービス
と進化していきますが、この進化と同時に、
企業のマネジメントも、「コインの裏表」のように進化します。
すなわち、企業のマネジメントは、
単に情報やデータを扱っていた段階から、より高度な
「ナレッジ・マネジメント」
へ向かい、さらに深い智慧を扱う「ノウハウ・マネジメント」
「マインド・マネジメント」へと向かうのです。
ただ、田坂氏は、
ひところブームになった「ナレッジマネジメント」でさえ
あまり成功していないことを指摘します。
その理由は、「企業文化」が変わっていないからです。
いくら「情報システム」を導入し「業務プロセス」を
変えたところで、その背景にある「企業の文化」が変わらない限り、
本当に重要な「知識」や「智慧」は共有されないんですね。
ですから、企業のマネジメントがより深い
「ノウハウ・マネジメント」や「マインド・マネジメント」
に向かうとき、この「企業文化」がさらに大きな壁として
立ちはだかってくると田坂氏は考えています。
さて、企業の「ナレッジ」マネジメント」の進化は、
企業内部から始まりますが、第二段階は外へ向かいます。
それは、
「異業種のナレッジ・マネジメント」
です。
顧客の特定のニーズに関連したさまざまな商品やサービスが
「商品生態系」を形成し、市場競争が「商品生態系同士」で
行われる時、生き残るために必要なことは、
同じ商品生態系に生きる異業種企業との提携・連合を通じて
いかにうまく、お互いの知識、智慧をいかに結集して、
より優れた商品生態系を生み出すか
です。
そして、さらに、企業のマネジメントの対象は外に広がり
第三の段階に到達します。
「顧客のナレッジ・マネジメント」
です。
つまり、「企業の智慧」だけでなく、
「顧客の智慧」
を借りることへと進化を遂げるわけです。
実は、その具体的な方法こそ、
既にご紹介した「顧客コミュニティ」や「ブログウオッチング」
を通じて、生の「顧客の声」を集めることなのでした。
では、この「顧客のマネジメント」の行き着く先は
なんでしょうか?
田坂氏によれば、それは
「集合知」のマネジメント
です。
個々の顧客の智慧をマネジメントする世界を超え、
無数の人々の持つ「智慧」が集まった
「場の叡智」
とも呼ぶべきもののマネジメントを行うことを
企業は求められるというわけです。
ふう・・・
というわけで、「これから何が起こるか」のロングレビューは
今回で終了いたします。お付き合いくださいましてありがとう
ございました。
投稿者 松尾 順 : 06:45 | コメント (0) | トラックバック
サブリミナルなスロットマシン
「サブリミナル効果」ってご存知ですか?
よく知られている話は、
映画フィルムの中にポップコーンやコーラの画像を
数コマだけまぎれこませる実験です。数コマだけですから、
映画を見ている人は、これらの存在を認知することはできません。
でも、その映画を見た人は、なぜだかポップコーンやコーラが
やたらと欲しくなったそうです。
その理由は、ポップコーンやコーラの存在を「無意識」では
認知することができていて、見た人の食欲中枢を刺激したためと
考えられています。
これが「サブリミナル効果」です。
「サブリミナル効果」は、人の「無意識」に働きかけることで、
本人が気づかないように操作できることになりますから、
映画やテレビなどで使用することは禁止されています。
さて、このサブリミナル効果を使用していたとして、
公営カジノに置かれていた「スロットマシン」が撤去されるという
事件が最近、カナダ・オンタリオ州で起きました。
このスロットマシンは、回転中に同じマークがそろう場面が
毎回、一瞬だけ現れるという現象が起きていました。
そして、この表示方法はスロットで遊ぶ人を
意図的に夢中にさせようとしたものだと判断されたわけです。
実は、このスロットは「コナミ」の米子会社、
「コナミ・ゲーミング」が製造したもの。同社によれば、
単なるプログラムのミスだったと説明しています。
現在、オンタリオ州の監督機関が調査に乗り出していますが、
どのような調査結果が報告されるか気になりますね。
なお、冒頭に紹介した映画フィルムの実験は「捏造」では
ないかとも言われています。また、「サブリミナル効果」の存在を
明確に示した信頼性の高い実験はまだ行われていないようですね。
投稿者 松尾 順 : 06:42 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(13)顧客サービスの深まり
ネット上の安売りで知られたPCサクセス。
先日、あっけなく倒産してしまいました。
同社はカカクコムで比較すると、
ほぼあらゆる商品で常に「最安値」でした。
実は、あれはプログラムで自動化されていたんですね。
他社が安い価格を出してきたら、すぐに追随して
さらに安い価格に書き換えるようになっていたそうです。
最初は手作業だったけれど、取り扱いアイテムが増えて
作業が追いつかなくなったのが自動化した理由。
しかし、この自動化のために、
利幅の薄い商品では、仕入値よりも売値が安くなる、
要するに赤字で売ることも多くなりました。
まあ、倒産するのは当然の結末でしたね。
このように、ネット革命の影響で「価格競争」は
極端なところまでいっちゃってるわけですが、
振り子が一方に振り切ったら、もう一方に戻り始めるように、
これからはリバウンドが起こります。
田坂氏は、価格だけで勝負するサービスを
「コスト・サービス」
の競争と呼んでいます。
そして、この「コスト・サービス」がリバウンドする方向は、
「高付加価値化」
をめぐる競争になります。
具体的には、
「ナレッジ・サービス」
です。
例えば、ネット証券では、当初「手数料の安さ」、すなわち
「コスト・サービス」での競争を繰り広げてきたわけですが、
近年は、証券アナリストによる株価分析や市場予測など、
最先端の知識を顧客に提供することで、
「ナレッジ・サービス」
への転換を図るところが出てきていますよね。
ただ、「ナレッジ・サービス」が終着点ではありません。
その先にあるのは
「マインド・サービス」
です。
これは、田坂氏の挙げる例では、
将来に不安を感じている高齢者向けに、
安心感と信頼感を持てる細やかな心配りのサービスを提供する、
「シニア・コンシェルジュ」
のサービスがあります。
では、このような「顧客サービスの深まり」において
重要なのは何でしょうか?
マインド・サービスは、人が登場して動画で商品を説明する
といったことでもある程度実現できます。
しかし、最終的には、顧客接点(コールセンターなど)のスタッフ
として、ホスピタリティ(気配り力とでも訳しますか)の高い人材
をどれだけ多く採用でき、また、育成できるかということに
なるんじゃないでしょうか?
いくらネット時代とはいえ、なにもかも
「バーチャル化」や「セルフサービス化」
(この発想には、ユーザーに自分でやってもらって、
こちらは楽して儲けようという甘い考えが隠れています)
では済まないのです。
ちなみに、ネット証券の雄、「松井証券」でも、
すでに「マインド・サービス」への取り組みを始めていますね。
昨年書いた下記の記事を参考になさってください。
投稿者 松尾 順 : 06:50 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(12)ブログウォッチング
「顧客の声」が集まる顧客コミュニティは、今後、
従来の「見えるコミュニティ」から「見えないコミュニティ」、
すなわち、
「ブロゴスフィア」
に進化していく。
だとするなら、この「ブロゴスフィア」において「顧客の声」に
耳を傾ける方法は、
「ブログウォッチング」
です。
田坂氏は、
・自社の商品に関する評価と評判
・自社の商品に関する顧客ニーズ
・自社の商品が含まれる商品生態系
・自社の商品を使う顧客のライフスタイル
などに関連するメッセージに
深く耳を傾けるべきだと主張しています。
ブログは検索に引っかかりやすいこともありますし、
もし、企業が社内に「ブログ・ウォッチャー」のような
専任担当者を置けば、収集された情報は、極めて高い価値を
持つものになると考えられます。
なぜなら、ブログウオッチングには、従来の「アンケート」や
「インタビュー」などにない優れた点があるからです。
ひとつには、バイアスがかからない声が聴けること。
アンケートやインタビューは、
どうしても聴かれる側が構えてしまって素直な意見を聞くこと
が難しいのですが、ブログは自発的に書かれるメッセージです。
ですから、正直で率直な意見が書かれていることが多く、
製品改良などに役立つより価値の高い情報だというわけです。
ただし、お金をもらって企業の新商品を紹介するような、
「やらせブログ」の増加は、このメリットを台無しにしてしまい
ますけどね・・・
もうひとつは、ライフスタイルやワークスタイルなどを
含めた背景情報や文脈情報が得られることです。
ブログには、その書き手の日々の生活の仕方や、
価値観などが自然に現れてきます。
そうした背景情報や文脈情報がわかっていると、
彼らのブログ上の発言の意図や真意が、より明確に見えてきます。
しかし、アンケートやインタビューでは、設問数や時間が
限られているために、調査対象者の背景情報を十分に集めることが
できないのです。
表面的な言葉からはわからない本当の気持ちは、
背景情報、文脈(コンテキスト)情報があってこそ、
的確に把握することができるんですよね。
さて、このようにして、無数の
「目に見えない顧客コミュニティ」
を分析することは、無数の
「商品生態系」
を細やかに分析することだと、田坂氏は指摘しています。
顧客(一般消費者)の同士がやりとりする情報の関係性の中に、
実は、商品同士の関係性も隠れているということでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 01:00 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(11)顧客コミュニティの進化
田坂氏は、すべてのコマースサイトは自然にポータル化していく
(逆に言えば、そうしなければ生き残れない!)、つまりは
「商品生態系」
が自然に増えていくと考えています。
なぜなら、ポータルサイトがなんらかの形で備えている
「顧客コミュニティ」を通じて、「顧客の声」が集まるからです。
そして、ポータルサイトの運営者が「顧客の声」に応えようと
すると、いつのまにか関連商品・サービスへと取り扱いやリンクが
広がり、ひとつの「商品生態系」を形成するようになってしまうと
いうわけです。
さて、この「顧客の声」が、「商品生態系」の進化を促すプロセス
は「Web2.0革命」の時代においてはさらに強まっていきます。
それは、「顧客コミュニティ」そのものが進化するからです。
田坂氏が言う、
「目に見えるコミュニティ」
から
「目に見えないコミュニティ」
への進化です。
「目に見えるサイト」とは、主催者が明確で、
ネット空間の中でも、その場所が明確なコミュニティです。
ポータルサイトや、さまざまなブランドが主催する
ユーザーコミュニティ、また「2ちゃんねる」に代表される
掲示板サイトは、すべて「目に見えるコミュニティ」ですね。
一方、「目に見えないコミュニティ」とは、
ブログを運営するブロガーたちと、彼らのブログに訪れる
ビジターたちが生み出すもの。
ブロガーのある商品についての記事に対して、
ビジターがコメントする。それにブロガーがコメントを返す。
あるいは、他のブロガーが、同じ商品についての記事を書き
トラックバックを張る。さらに、時に、アフィリエイターや
メールマガジン発行者も、同商品についての情報を通じて
つながりあう。
こうしたブログを中心とする「目に見えないコミュニティ」を
田坂氏は、
「ブログスフィア」
と呼んでいます。
ブログスフィアには、明確な境界がありません。
それだけに、お互いに自由につながりやすく、
無限に広がっていく可能性を秘めています。
したがって、境界が明確で広がりに限界を持つ
従来のコミュニティよりも、今後、より大きな影響力を
持つようになると思います。
ところで、私はこの話を読んで、社会学の分野で言われる、
「強い絆」と「弱い絆」
との関連性を感じました。
「強い絆」とは、親兄弟や近い親戚などとのつながり。
「弱い絆」とは、年に1回しか会わない遠い知人や、
知人を介して出会う「友達の友達」のような関係。
「強い絆」は、つながりが強いだけに同質性が高く、
その絆から、新奇で有益な情報がもたらされることは少ない。
一方、「弱い絆」は、普段はまったく別の世界で生きている人
同士だからこそ、異質で価値ある情報が得られる可能性が高い。
従来の「目に見えるコミュニティ」は「強い絆」で結ばれており、
「ブログスフィア」のような「目に見えないコミュニティ」は
「弱い絆」で結ばれた関係であると言えるのではないでしょうか。
さらに、もう一歩踏み込んで、この考え方から
マーケティング的な仮説を提示させていただくなら、
「目に見えるコミュニティ」は、
既存商品の改善のための情報を得ることに有効であり、
「目に見えないコミュニティ」は、
全く新しい商品を生み出すための情報を得るために有効である
と言えるんじゃないでしょうか?
いかがでしょう?
投稿者 松尾 順 : 10:00 | コメント (0) | トラックバック
日本一苦情の多いタクシー会社
MKタクシー、乗ったことありますか?
運転手さんの真っ白な手袋がまぶしい!って感じです。(笑)
同社は、サービスの高さで定評のある京都発祥のタクシー会社
ですよね。東京でも数年前から走ってます。
さて、運転手の質の高さが自慢のMKタクシーですが、
実は結構な数の苦情が寄せられます。
同社によれば、おそらく
「日本一苦情が多いタクシー会社」
ではないかということ。
お客さんからは、
「挨拶がなかった」「無愛想だった」
といった苦情が来るそうですが、よく考えると、
こうした問題は、他のタクシー会社には
「はなから期待していないこと」
ですし、
「苦情を言うだけ無駄」
だと考えてしまうことです。
ですから、逆に言えば、このような苦情が来るというのは、
MKタクシーに対する期待の高さや愛着を示すものだと言えます。
お客さんの愛のムチに磨かれ、MKタクシーのサービスは
さらにが向上し、結果として乗車率がさらに伸び、
会社も儲かるという構造です。
変な話ですが、MKタクシーの場合、他の会社と逆で、
苦情が来なくなったら「やばい徴候」と考えるべきなんでしょう。
投稿者 松尾 順 : 07:38 | コメント (11) | トラックバック
マックとルノワール
最近、マクドナルドに行く頻度が有意に多くなっています。
理由は、
・どこにでもあって
・快適に無線LANが使えて
・気兼ねなく長居ができる
ので、外出時の時間を有意義に使えるからです。
「無線LAN」が使えるお店はまだまだ少ないんですが、
その原因を考えてみると、長居するお客さんが増えて
回転率が悪化し、売上減少につながりかねないからでしょうね。
その点、マックはテイクアウト比率が高いので、
あまり店内の回転率低下が問題にならないわけです。
逆に、サラリーマンのオアシス、「ルノワール」は、
「いくらでも、ゆっくりしてらしてください!」
という、回転率を重視しない喫茶店だからでしょうか、
やはり無線LAN導入に積極的です。
投稿者 松尾 順 : 03:18 | コメント (0) | トラックバック
顧客が刺客に変わる時
先日の
の話の続きです。
顧客満足度調査の専門会社、J.D.パワーズの調査によれば、
顧客が「推奨客」に変わる、あるいは逆に「刺客」に変わるのは
どんな時に起こるのかがわかっています。
それは、企業が、次のような二者択一を迫られたときです。
(1)顧客との長期的関係を築くためにコストを負担する。
(または収入の機会を放棄する)
(2)顧客満足を犠牲にして、ある取引の短期的な潜在的利益を
最大化する
上記は難しい言い回しになってますね、要するに、
「企業が目先の利益を取るか、取らないか」
ということです。
たとえば、「返品を受け付ける」ことは、
「目先の利益を取らない」という判断を下しているわけです。
でもこの方針があるおかげで、顧客は安心して買い物ができる。
結果として、繰り返し買ってくれる優良顧客が増え、
長期的には元が取れるという考え方です。
逆に、目先の利益ばかりを追いかける企業には、
優良顧客はつかず、短命で終わるビジネスとなります。
これは、強引なプッシュ型セールスを売りに急成長した企業に
多いですよね。ほとんどの場合、急失速して突然死を迎えます。
さて、現代は、お客さんが企業・商品を選ぶ時代ですから、
基本的に、目先の利益よりも顧客満足を優先することが重要。
ただ、このことをお客さんと直接コミュニケーションを持つ
顧客接点にまで、きちんと浸透させることは簡単ではありません。
口先でいくら「顧客満足」を唱和したところで、
顧客接点の社員に対して短期的な売上ノルマを課していたら、
社員としては、顧客満足よりも自分の業績を優先するに
決まってます。
「J.D.パワー 顧客満足のすべて」には、
そうした社員の短期的利益を追求する行動をした結果、
ある顧客が「刺客」に変わったエピソードが紹介されています。
アメリカン航空を長年ひいきにしていたある顧客。
寒い冬のボストンを脱出し、西海岸で休暇をすごすため、
マイレージを利用してチケットを購入することにしました。
アメリカンのWebサイトは複雑で使いにくいものでしたが、
なんとか予約を完了したつもりでした。
ところが、旅行日が近づいたのに、
アメリカンから予約確認メールが届きません。
そこで、電話をしたところ、オンラインの申し込みが
完了しておらず、予約が取り消されていたことがわかりました。
電話で対応していた予約係は、
「ご心配いりません、同じフライトで予約を取り直すことが
できます」
と伝えてくれました。ただし、
「フライト日が近くなっているため、50ドルの割増料金が
かかります。」
顧客としては、期限前に予約しようとしたのだから、
50ドルの割増料金には納得できません。
この顧客は
「25年もアメリカンを利用しているし、
サイトが使いにくいせいで、こちらがとばっちりを食うのは
おかしいんじゃないか」
と主張しました。
そして電話にでた係の上の役職の主任、さらにその上の管理者にも
取り次いでもらいましたが、彼らの答えは「ノー」。
アメリカンは、IT部門にも電話を回しましたが、
IT部門の主任もまた、サイトの利用履歴を調べた上で、
今回の問題は、明らかな「顧客の操作ミス」であることを証明し、
アメリカン側には非がないことをほのめかしたのです。
顧客は、
「期限前にチケットを買おうとしていた記録もあったのに、
私が長年アメリカンをひいきにしてきたのも関係ないとでも?
50ドルで大事なお客を失おうとしていることがわからないのかね?」
と最後のあがきをしてみましたがやはり駄目。
彼は50ドルを払ってアメリカンに乗らざるを得ませんでした。
その後、彼は旅行会社に電話して、
「これからは、アメリカンには二度と乗らない」
と告げ、またWebサイトから、同社カスタマーサービスに
事の一部始終を説明するメールを送付したそうです。
すると、2、3日もしないうちに、アメリカンから
謝罪の手紙と50ドル分の旅行券が送られてきました。
しかし、もう手遅れだったんですね。
彼は、2度とアメリカンに乗らなかっただけでなく、
周囲の人間にアメリカンがいかにひどいかを話して回る刺客に
変わってしまったのです。
アメリカンは、最終的には顧客に返すことになった50ドルを
稼ごうとしたためにこんな事態を招いたわけです。
実は、この事件とそっくりな話を以前、
「ぴあの蹉跌・・・勝負に勝って、ビジネスに負けてどうするの?」
でご紹介したんですが、
この時のぴあのカスタマーセンターの責任者の対応はさすがでした。
オンライン予約で不愉快な思いをした友人をすんでのところで
「刺客」に変えずにすんだのでした。
彼のことはよく知っておりますが、もし刺客に変えていたら
その影響力は甚大だったに違いありません。(笑)
出典:J.D.パワー 顧客満足のすべて
J.D.パワー4世+クリス・ディノーヴィ著、ダイヤモンド社
投稿者 松尾 順 : 11:23 | コメント (2) | トラックバック
常識を疑い、あきらめない
唐突ですが、あれこれ思い悩まないでハッピーに生きるためには、
「ありのまま」
を受け入れるようにした方がいいですよね。
「まあ、こんなものだ、世の中は・・・」
と思えば、気が楽になる。
いい意味でのあきらめ、「諦観」ってやつです。
ただ、面白いアイディアを発想したい時には、
この「諦観」的態度が障害になるのが悩ましいところ。
「思考停止」しちゃってるわけですから。
ですから、発想力を高めたかったら、
「なんで、こうなんだ?」
「どうにかならないのか?」
と常に問題意識を持つことです。
常識を疑い、現状にあきらめないという態度を
とらなければなりません。
もちろん、いつも問題意識だけで世の中を見てると
結構疲れちゃいますから、
「あきらめ」と「あきらめない」
の両方の態度をうまく使い分けられたらいいですよね。
ところで、あきらめなかった人が生み出した驚きの商品って
ホントたくさんあるものです。
たとえば、炊飯器から出る蒸気。
ご飯を沸騰させて炊いてるんだから蒸気が出るのは当然だ。
この蒸気でやけどする人が結構いるらしいが、
それは、本人が注意すればよいことだ。
と思ってしまったら、何も生まれないわけです。
しかし、大阪のおばちゃん、福田尚志さんは、
どうにかして、「やけど防止」の機器が作れないかと考えた。
(日経MJ、2007年2月28日)
そこで早速、炊飯器の蒸気口の上に取り付けて熱気を
分散させる装置を試作してみた。そして、冷却用に、
たまたまそばにあったの卵を置いてみたら、
ご飯が炊き上がる頃には「ゆで卵」もできていた。
というわけで、ゆで卵スチーマー
「タマゴッコー」
が完成。97年に発売して累計販売数は50万セットです。
このアイディア商品、「王様のアイディア」なんかで
売ってそうですが、思わずひとつ欲しくなりますよね。
そういえば、米国の大手スーパー「アルバートソン」では、
「ゆで卵」
を売ってるってご存知ですか?
「生卵」と違ってゆでる手間なく、
買ってすぐにサンドイッチの具材などに使えます。
つまり、「時間が節約できる」という付加価値を
つけて売っている。「コロンブスの卵」的発想ですよね。
たぶん、日本で「ゆで卵」を販売しているスーパーって
ないですよね?(コンビニで1個売りはしてましたっけ・・・)
また、同様に米国のウォルマートで普通に置いてあるそうですが、
「スプレー式のバター」
「マヨネーズ状のバター」
といった商品もあります。
料理に使う時は問題ありませんが、
パンなどに塗りたい時には固いバターは使いにくいですよね。
そこをなんとか解決しようとして生まれたのが、
バターを吹き付けることのできるスプレー式や、
やわらかいマヨネーズのようにくねくね押し出せるバター。
「バターは固い」という常識を疑い、「昔からそういうものだ」
あきらめず、「なんとかしようと考えた人がいたということです。
たまには常識を疑ってみましょうかね。