推奨者、無関心者、刺客
顧客満足度調査を専門に行っているJ.D.パワー社では、
顧客を次の3タイプに分けています。
--------------------------------------------------
1.推奨者
企業、サービス、商品の熱狂的な信者となった顧客
他者に対して積極的に、商品・サービスの使用を勧めます。
2.無関心者
最低限の期待しか満たされなかった、満足しているだけの顧客
ちょっとした刺激でブランドスイッチしてしまいます。
3.刺客
不快な体験をした商品・サービスをけなして
ダメージを与える顧客
--------------------------------------------------
さて、顧客満足度調査の結果を見る時、以前は、
「とても満足」(20%)+「まあ満足」(60%)
で、「うちは顧客満足度80%だ!」と自己満足していました。
以前も書きましたが、こういうのを「自己満足度調査」と
私は呼んでいます。
でも、今では、
「とても満足している」
だけの数字を特に重視します。
なぜなら、顧客満足度調査の主な目的が、
顧客維持、つまりリピート購入率の向上であることを考えると、
「まあ満足している」と回答した顧客は、「無関心者」に
他ならず、彼らがリピートする可能性は決して高くないからです。
要するに、リピートしてくれる可能性の高い「推奨者」
(彼らは「とても満足」と答えることが多い)の数をどれだけ
増やすかが大事なんですよね。
一方、「刺客」をどうやって減らすかもきわめて重要。
自社商品・サービスの「悪口」をいいふらしてるわけですから。
J.D.パワーズの調査では、推奨者や刺客となるきっかけとなった
消費体験が明らかになっています。
--------------------------------------------------
●推奨者の体験談トップ5
・期待を超えるサービス 47%
・長期的判断による対応 27%
(短期的損失)
・親切/親身 18%
・製品品質の高さ 11%
・価格の安さ 9%
*「長期的判断による対応」とは、購入商品の無条件の
返品受付のように、企業側に短期的な損失をもたらしてでも
顧客の利益を優先する対応のことです。
●刺客の体験談トップ5
・製品品質の悪さ 20%
・修理拒否 19%
・無愛想なサービス 17%
・失礼な対応 16%
・短期的な考え方 11%
*「短期的な考え方」とは、顧客の利益よりも、
企業の短期的な利益を優先する対応のことです。
--------------------------------------------------
企業としては、ぜひ自社の宣伝をしてほしいし、
逆に、悪口を吹聴して回って欲しくはないですよね。
つまり、近年関心を集めている顧客の「口コミ」には、
好ましいものと好ましくないもの
があるわけで、上記の体験談は「口コミ」活用
(CGMマーケティング)にも、とても参考になります。
出典:J.D.パワー 顧客満足のすべて
J.D.パワー4世+クリス・ディノーヴィ著、ダイヤモンド社
投稿者 松尾 順 : 11:19 | コメント (0) | トラックバック
知識の呪縛
「知識の呪縛」と呼ばれる現象があります。
これは、
自分はよく知っていることを誰かに伝えようとする時、
自分にとっては既知のことだからこそ、
逆に相手にうまく意図が伝えられない現象のことです。
(President 2007.03.19)
その原因は、自分の持つ知識に囚われていて、
相手の心理状態を読みにくくなっているからです。
特に、
「顧客の喜びを実現」とか、「効率ナンバーワン企業に」
といった抽象的な短い表現が多い
企業スローガンやキャッコピーなどの場合に、
「知識の呪縛」は顕著になります。
上記のような言葉には、本来深い意味や思いが込められている
はずです。もちろん、創業社長などの当事者は十分に理解して
います。
しかし、ここで社員や顧客も、自分と同じように、
「理解してくれている」
という間違った思い込みをしてしまう傾向があるというわけです。
この心理的傾向は、次のような実験で検証されています。
スタンフォード大学心理学部の大学院生、
エリザベス・ニュートンは、まず被験者を
「タッパー(叩き手)」と「リスナー(聴き手)」
に分けました。
そして、一人ひとりのタッパーに対しては、
「ハッピーバースディ」のような有名な曲を選び、
テーブルを叩いてその曲のリズムを刻むように依頼しました。
一方、リスナーには、そのテーブルをタップする音を聴いて、
どんな曲なのかを当ててもらうという単純な実験です。
しかし、120曲のタップを聴かせる実験の結果、
正しく曲名を言い当てられたのはわずか3曲だけ。
正答率は2.5%でした。
実は、エリザベスは、この実験に先立ち、
タッパーたちに、リスナーはどのくらい曲を当てられるかを
予測してもらっていました。
その予測は、なんと50%。
2曲に1曲は当てられるだろうとタッパーたちは楽観視
していました。
これは明らかに「知識の呪縛」の存在を証明するものでした。
タッパーの頭の中では曲のメロディやリズムが
流れていて、それを忠実にタップで再現しているつもり。
だから、リスナーにしてみれば、
実際のところタップだけで曲名を当てるのは難しい
ということにまで、タッパーの考えが及ばなかったわけです。
さて、こうした「知識の呪縛」が起こるのは、端的には、
送り手と受け手の間に情報の大きな不均衡があるからです。
では、どうしたらこの情報の不均衡を補正できるのでしょうか。
ひとつは、抽象的な言葉を具体的な言葉に「翻訳」すること
「ターゲット顧客」の規定を例に取ると、
「40代の中年男性」という抽象的なものではなく、
「ずいぶん年季の入ったボルボに乗っている失業中の大学教授」
といったイメージがぱっと浮かぶようなものに落とし込む。
(「ペルソナ」のアプローチです・・・)
もうひとつは、「物語」、つまり
言葉の背景にある深い思いや意味を投影させたストーリーで、
相手に伝えることです。
たとえば、フェデックスには、
「絶対に、確実に、翌日にはお届けします」
というブランドプロミスがありますが、
これを次のような物語(逸話)で具体的に示しています。
舞台はニューヨーク。
フェデックスの配送トラックが故障。
代わりのトラックもなかなか到着しない。
ドライバーは最初、徒歩で荷物を届けた。
しかし、それでは今日中に届けられないと判断し、
ライバル会社のドライバーに頼み込んで荷物を配り終えた。
フェデックスでは、この物語を通じて、
同社が何を大切にしているのか
を対外的にも、また同社社員・関係者の胸にも
深く刻みこませているというわけです。
経営理念やビジョン、ブランドプロミスが
社員や顧客にきちんと浸透している企業には、
ほぼ間違いなく、お題目やきれいごとではなく、
具体的な現場の言葉で語れるトップが存在し、また
さまざまな感動的なストーリーがあふれているものですよね。
投稿者 松尾 順 : 14:17 | コメント (2) | トラックバック
これから何が起こるのか(10)商品生態系と顧客コミュニティ
ネット革命は、顧客中心市場の中で、
無数の「商品生態系」を生み出していきます。
「商品生態系」とは、
「顧客の特定のニーズを中心に互いに結びついた
様々な商品やサービス」
のことでした。
そして、この「商品生態系」が目に見える形で
姿を表している場が
「ポータルサイト」
だと、田坂氏は指摘しています。
顧客中心市場では、多くの顧客が、
自分のニーズに関連した商品とサービスが一箇所に集まっていて、
ワンストップで購入できる場所を求めるからです。
だから、すべての「コーマスサイト(商取引サイト」は、
自然に「ポータルサイト」になっていくと田坂氏は考えています。
それは、Webの持つ最大の特徴ともいえるリンク機能によって、
特定のニーズに関連したさまざまな商品・サービスを容易に
取り揃える(紹介する)ことができるからでもあります。
直近の具体事例としては、旅行におけるワンストップサービスを
標榜している「フォートラベル」が挙げられるでしょう。
さて、すべてのコマースサイトが自然にポータル化していく
ということは、「商品生態系」が自然に増えていくことを
意味します。
つまりポータル化が「商品生態系」の進化、創発を促すこと
になるのですが、これはなぜなのでしょうか?
それは「顧客の声」が集まるからです。
ポータルサイトには、必ず何らかの形で、
「顧客コミュニティ」が生まれてくるからですね。
(「フォートラベル」は、コミュニティ先行型ですが)
そうした顧客コミュニティ内では、
「こんな商品・サービスもほしい」
といった顧客の声が飛び交います。
そしてポータルサイトの運営者が、
そうした要望に次々と応えていくことで、
いつのまにか関連商品・サービスへとリンクが広がり、
ひとつの「商品生態系」を形成するようになってしまう
というわけです。
考えてみれば、事業者側の勝手な思い込みだけで
最初からあれこれ品揃えを広げると失敗しがちですよね。
むしろ、まず、コアのユーザーとの密な関係を通じて
活発なコミュニティを作り上げ、維持する。
その後は、コミュニティメンバーの要望を丁寧に拾い上げ、
顧客ニーズをしっかり反映した無理のない「商品生態系」を
サイト上で育てていくというのが、
最善のEコマース戦略
ではないでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 10:51 | コメント (0) | トラックバック
「ロンドンバニー共和国」
なんで、ロンドンで、バニーで、共和国なんだ!?
東京にいらっしゃる方は、
交通広告やイベントで目にされてますよね。
水色のうさぎ耳をかぶったイギリス人たち・・・
ポスターには、
「夜はテムズで、ムズムズ」
とかの変なコピーも。
どこから、こんなアホらしいアイディアが・・・
(決して悪口ではありません)という感じです。
どうやら、ロンドン市観光局による、いわゆる
「ロンドンに行こう」(観光客誘致)
キャンペーンのようですね。
このキャンペーン、いわゆる
「CGM」(Consumer-Generated Marketing)
にも取り組んでいて、その一環でしょう、
ミクシィでもコミュニティが立ち上がっています。
そういえば、このところミクシィのヘッダースペースには、
「うさミミ」が並んだ怪しいバナー広告も掲出されてました。
あまりに怪しすぎてクリックする気にはなりませんでしたが・・・
ミクシィのコミュは現時点(2007/02/26AM9)で13637人です。
私も、取り急ぎメンバーになってみました。(笑)
コミュニティ掲示板をみると、
ロンドンまでの往復航空券が当たるキャンペーンやってますね。
キャンペーンサイトで大々的に告知せず、
コミュニティのサイトでひっそりやるというのはなかなかです。
ちなみに、この無料航空券をもらうためには、
うさミミ画像をダウンロードして自分のプロフィール写真と
合成し、うさミミ男、うさミミ女に変身しなければなりません。
あなたは応募したいと思いますか?
投稿者 松尾 順 : 10:50 | コメント (0) | トラックバック
CGMマーケティング
この3年くらい会ってなかった米国在住の知人から、
マイミク申請が届いたので早速承認ボタンを押しました。
実は、GREEではつながってたんですけど。
でも、その知人も、そして私もですが、
GREEはほとんど使ってなかったんですよね・・・
先日、「CGMマーケティング」
(伊地知晋一著、ソフトバンククリエイティブ)
という本を読んでいて「へぇー」と思ったのが、
GREEは2004年2月29日、一方のmixiは同年3月3日に
それぞれサイトを開設していて、わずか3日しか開始日が
違わないことです。
つまり、この2つのSNSは、ほぼ横一線でスタートを
切っているんですね。
ところが今、mixiのユーザー数は600万人くらい
GREEは40万人くらいと、とんでもない差がついてしまってます。
機能にたいした違いはないし、
GREEが嫌いだとか、使いたくないと明確に感じている人は
少ないと思うんですけど、こうなっちゃうのは不思議ですね。
投稿者 松尾 順 : 09:31 | コメント (1) | トラックバック
豪州人スキーヤーのメッカ
北海道ニセコ地区が、外国人、特に豪州人スキーヤーのメッカに
なりつつあること、ご存知の方多いですよね。
(日経夕刊、2007/01/11)
ニセコに拠点を置く旅行会社スキージャパンコム(03年設立)
の創立者が、豪州人をニセコに初めて連れて来たのは1998年
だったそうです。
当時、外国人スキーヤーの姿はまったくなし。
以来、豪州人スキーやの集客を図ってきました。
2000年のスキーシーズンは850人。2002年でも660人。
しかし、2003年には、2900人と一気に増えて、
今シーズンは、軽く1万人を超えるようになっています。
しかも、彼らの滞在期間は1週間~10日間。
せいぜい、2-3日しか滞在しない国内スキーヤーと比べて
とてもありがたいお客さんですね。
ニセコ人気の理由は、「パウダースノー」と呼ばれる
雪質の良さだそうです。
しかし、ただそれだけで外国人が来てくれることはなく、
現地関係者の息の長い取り組みがあってこそ、
今があるんでしょう。
投稿者 松尾 順 : 18:44 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(9)商品生態系同士の戦い
ネット革命がもたらす「顧客中心市場」において、
「商品」
はどう変わらざるを得ないのでしょうか?
「商品」と「商品」同士、つまり単体商品が戦う時代は
終わっています。
そして、「商品生態系」同士の戦いが始まっています。
田坂氏によれば、「商品生態系」とは、
「顧客の特定のニーズを中心に互いに結びついた
様々な商品やサービス」
のことです。
例えば、「Windows OS」や「Mac OS」といったオペレーティング・
システム(基本ソフト)は、パソコン本体、アプリケーション、
ディスプレイ、プリンター、周辺機器、サプライ用品などとともに、
「パソコンを使いたい」
というニーズを中心にひとつの「商品生態系」を形成していますね。
ちなみに、以前は、WindowsとMacは全く異なる生態系を形成して
いたわけですが、相互互換性が高まり、2つの生態系はある程度
重なりあうようになってきています。
ですから、Windowsが圧倒的優勢にもかかわらず、
Macの商品生態系も淘汰されずに済んでいるのでしょう。
今となっては古い事例ですが、完全に淘汰されてしまったのは、
ビデオテープの「ベータ」の商品生態系。
「VHS」の商品生態系との互換性がなかったため、
「VHS」が優勢となった時、ベータの生存が許される場所は
残されていませんでした。(プロ向けのわずかなニッチを除いて)
そして今、商品生態系同士の争いでホットな分野を挙げるなら、
「音楽や動画、学習教材などをいつでもどこでも聴きたい」
というニーズを中心に形成されている
「携帯音楽プレーヤー」の商品生態系でしょうか。
言うまでもなく、現在は「iPod」のそれが優勢ですね。
家電量販店の「iPod」のコーナーに行けばわかりますが、
「iPod」用の様々な周辺機器、アクセサリ用品など、
その商品生態系の繁栄ぶりは、
競合他社の追随を許さないように思います。
その結果、ユーザーとしては、「iPod」との相性のよい周辺機器
(卓上スピーカーや外付けバッテリーなど)を揃えてしまっている
ことが、他社へのブランドスイッチを阻む要因になっています。
私もその一人です。
これからの「売れる商品づくり」においては、
顧客ニーズを中心とする核の商品と、
それを取り巻く周辺機器群やサービスを加えた
「商品生態系」
の発想が不可欠でしょうね。
投稿者 松尾 順 : 11:23 | コメント (0) | トラックバック
庭師・北山安夫氏がデザインする日本庭園の「コンセプト」は、
「主張しない庭」
です。
「おのれを捨てることによって、おのれを生かす」
NHKプロフェッショナルに登場した当代きっての
一流庭師が語る言葉の意味は深い。
北山氏の庭園を構成する石や木々、苔、池など、
個々の要素は確かに主張しすぎず、全体に溶け込んでいて、
無理のない調和を生み出しています。
どれひとつとして前に出過ぎていない。
だからこそ、全体の関係性の中で一つひとつの個性が
生き生きと際立つ。
そんなことなんですかね?
投稿者 松尾 順 : 11:22 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(8)最強の戦略・・・利他の精神
顧客中心市場に生まれた新しいルール。
それは、
「顧客が最良の商品を買うのを手伝おう」
とする企業に顧客の支持が集まるということです。
逆に、従来の企業の考え方であった
「顧客に自社の商品を売りつけよう」
とする企業は顧客から疎まれます。
今後、ビジネスモデルが、
「販売代理(販売支援)」から「購買代理・購買支援」
へと進化していかざるを得ないのは、
そうしなければ顧客の支持を得られないから。
顧客の支持がなければ、売上にはつながらず淘汰されるしかない。
シンプルな理屈ですね。
さて、
「顧客が最良の商品を買うのを手伝う」
というのは、具体的にはどんなことでしょうか?
田坂氏の本には次のような例が示されています。
自社の店頭に顧客が来る。
しかし、その顧客のニーズを聞くと、自社の商品がベストではない。
そのとき、真摯に、誠実に、
「お客様、それがお客様のニーズであるならば、
残念ながら当社の商品よりも、この会社の商品を
お勧めいたします」
とライバル企業の商品でさえ勧めることができること
こうした態度が取れる
「器の大きな企業」
「真に顧客中心の精神を持った企業」
にこそ消費者の支持が集まると田坂氏は言います。
ただ、これは単に
「無私の精神」「利他の精神」
を求めているのではありません。
こうすることが、結果的には企業の競争優位を築き、
また最終的には収益を生み出すことになる
「最強の戦略」
であるからです。
私はこの箇所を読んでいて、思わず
「情けは人の為ならず」
ということわざを思い出してしまったのですが、
個人的な人間関係ではとりわけ、
「相手のためになることをする」(GIVE!)
の姿勢を貫くことで、回りまわって自分にも
良い形で戻ってくるというのが、
この世界の普遍的な真理だと思っています。
また、「CRMの魂」でもあります。
近年、ほとんどの企業では、
収益を上げることが最重要の目的になっていますよね。
しかし、企業において収益を上げることは
本来の目的ではありません。
企業もまた社会の構成員であり、社会になんらかの形で
貢献することで存在を許されています。
(貢献というのは、端的には、
他の人が必要としているものを提供すること)
そして、収益は、その貢献を継続するために
必要な資源を調達するための手段に過ぎません。
ですから、事業活動においても、
「利他の精神」
が単なるきれいごとやお題目ではなく、
「最強の戦略」
とせざるを得なくなったというのは、
社会全体としては、非常に喜ばしいことではないでしょうか?
それにしても、人のアナログな営みとは対極にあるとしか思えない
「ITC」(Information Technology and Communication)
の進展が、最もアナログ的な精神へと立ち戻らせることになる
というのは、なんとも不思議なことです。
投稿者 松尾 順 : 10:32 | コメント (0) | トラックバック
派遣や教育研修事業を行う「ザ・アール」の奥谷禮子社長は、
25年前に日本航空を退社し、同社を設立しました。
当時の日本航空も、天下りの元役人が経営を牛耳っており、
彼らの経営感覚のなさに、奥谷氏はほとほと辟易したそうです。
25年後の今、日本航空は経営再建の瀬戸際に立たされていますが、
上層部の甘さにあまり変化はありません。
「うちは、ツービッグ、ツーフェイル(大きすぎてつぶせない)
だからね・・・」
と開き直る同社のお偉いさんがいるそうですが、
よくもまあそんなことを公言できるものです・・・
人はだれもが、年を重ねれば相応に成長し、
円熟するものではないということがわかりますね。
現場で誠心誠意がんばっている
日本航空の社員さんたちにとっては、大層無念なことでしょう。
投稿者 松尾 順 : 10:31 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(7)ビジネスモデルの進化
「ネット革命」「Web2.0革命」によって、
市場は、次のように進化していきます。
「企業中心市場」→「顧客中心市場」→「主客融合市場」
そして、この市場の変化に伴い、
中間業者も、次のような進化を遂げます。
「(オールド)ミドルマン」→「ニューミドルマン」
→「コンシェルジュ」→「メタ・プロシューマ」
すると、ビジネスモデルもまた進化をしていく。
その最初の進化が、
「販売代理(販売支援)」→「購買代理(購買支援)」
というビジネスのパラダイムが逆転する大きな変化です。
さて、
「購買代理(購買支援)」
というビジネスモデルは具体的には、次に示した
「3つのワン・サービス」
という形態でまとめることができます。
-<3つのワン・サービス>----------------------------
1.ワンテーブルサービス
「カカクコム」「アットコスメ」のように、
特定の商品ジャンルのいろいろな競合商品を一つのテーブルに
乗せ、さまざま角度から比較し、評価をしてくれるサービス
2.ワンストップサービス
「オートバイテル」「ウィメンズパーク」のように、
特定のニーズに関連するすべての商品とサービスの情報を
ワンストップで提供してくれるサービス
3.ワンツーワンサービス
ネット上での相談にのる「ファイナンンシャル・プランナー」
のように、顧客に対して担当者がワンツーワン(1対1)で
対応し、親切丁寧なアドバイスを提供してくれるサービス
------------------------------------------------------
さて、実は、この3つの順番には大切な意味があります。
仮にあなたが、今はリアル店舗を展開して
「販売代理(販売支援)」
型のビジネスを行っているとします。
でも、今後は、顧客に対して本当に親切なサービスを
提供したいと考えたら、必ず上記の順番でサービスが
深まっていくと、田坂氏は指摘しています。
ただし、現実には、
ワンテーブル→ワンストップ→ワンツーワン
とサービスが深まるほど、コストが増加するため、
従来のリアル店舗では実行が困難でした。
しかし、ネット革命がこの「コストバリア」を打ち破った。
ネット上でこの3つのワン・サービスを提供し、
「購買代理(購買支援)」
のビジネスモデルを構築できるようになったというわけです。
ここで、ひとつ留意しなければならないことがあります。
それは、3つのワン・サービスを通じた
「購買代理(購買支援)」
のビジネスモデルは、提供できるというよりは、
「提供しなければならない」
ものであること。
あなたの会社が提供しなければ、競合他社がやってしまいます。
その結果、競争優位は競合が手にします。
あなたの会社は生き残れない・・・
厳しい時代ですね。
投稿者 松尾 順 : 10:45 | コメント (0) | トラックバック
電車に乗ってる時にうるさく感じる「ゴーッ」といった騒音を
小さくして、携帯音楽プレーヤーから流れる音楽が快適に聴ける。
こんな機能を持つヘッドホンが最近、次々と発売されてますね。
「ノイズキャンセリングヘッドホン」
と呼ばれるもので、文字通りノイズをキャンセルしてくれます。
以前は、1-2種類しかなかったんですが、
今、ビックカメラなどのヘッドホンコーナーに行くと、
このタイプだけで10種類くらいは並んでますね。
ただ、性能にはずいぶん差があります・・・
私は、30年来のいわゆる「ウォークマン(今はiPod)ユーザー」
なので、ヘッドホンもあれこれ試しています。
ノイズキャンセリング機能付ヘッドホンも、数年前から
何種類か試してきました。
正直、1万円未満の製品はやめたほうがいいです。
(全部を試したわけじゃないですが)
ノイズとともに、音質までキャンセルしちゃってくれるので、
音楽が聴けたもんじゃありません。
1万円台の製品でようやく「まあいいかな」
と思えるレベルでした。
ただ、ヘッドホンに2万、3万はとても出せない小市民な私。
ノイズキャンセリングヘッドホンの先駆者的存在の
BOSE製品は確か4万円台ですが、いまだ憧れの存在です。
ですので、そうしたハイエンドモデルが
どのくらいすばらしいのか、よくわからないんですよね・・・
投稿者 松尾 順 : 10:34 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(6)中間業者の進化:メタ・プロシューマへ
田坂氏によれば、「ネット革命」「Web2.0革命」によって、
市場は、次のように進化していくということでした。
「企業中心市場」→「顧客中心市場」→「主客融合市場」
この市場の変化によって、企業もまた進化せざるを
得なくなるのですが、まず「中間業者」の進化が最初に
起こります。
「ネット革命」創生期のころ、
ネットはメーカーとユーザーをダイレクトに結ぶことができるので、
「中間業者」(卸・小売など)は淘汰されると言われましたよね。
実際、ただ介在するだけの存在、手数料をかすめ取るだけで
なんら付加価値を創造していなかった中間業者は淘汰されました。
しかし、古いタイプの中間業者が淘汰された変わりに、
新しいタイプの中間業者、すなわち
「ニューミドルマン」
が台頭してきました。
ニューミドルマンは、オールドミドルマンと向いている方向が
違います。
オールドミドルマンは、取引先(メーカーなど)を
見て仕事をしていました。つまり「販売側の代理」でした。
ニューミドルマンは、ユーザー(買い手、消費者など)を
見て仕事をしています。つまり、「購買側の代理」です。
購買代理のビジネスモデルをインターネット以前から
実践していたのが、金型商社の「ミスミ」であることは
ご存知の方も多いでしょうね。
そして、ネット革命以降、いわゆるインターネットビジネス
として成長してきた多くの企業が、この「ニューミドルマン」
だったわけです。
たとえば、「アマゾン」は、エンド・ユーザーのために
ありとあらゆるサービスを取り揃えたニューミドルマンと
言えます。
本だけで見ても、あまり売れない本でもたいてい見つかるし、
新本だけでなく、古本も買える。しかも、読み終わった本は
アマゾンで売却できる。
アマゾンに比べると、リアル書店は、
従来の販売代理モデルをいまだ踏襲していることが明確ですね。
(むろん、リアルだからこその制約があるからですが)
さて、田坂氏は、「ニューミドルマン」は、さらに
「コンシェルジュ」に進化すると主張しています。
コンシエルジュは、顧客の「購買」というニーズのさらに奥に
ある「生活」という、より本質的なニーズに応える存在です。
そして、田坂氏がコンシェルジュの具体的な役割を説明する
事例として挙げるのは、
「銀行の窓口に、住宅ローンを借りにきた顧客のニーズ」
です。
ニューミドルマンの購買代理の考え方だと、
顧客の立場に立ち、「最適な住宅ローンを選択してあげること」
ということになります。
しかし、コンシェルジュは、より本質的なニーズに目を向けます。
この顧客の本当のニーズは、
「住み心地のよい家に住んで、幸せな家庭生活をしたい」
ということでしょう。
とすれば、単に住宅ローンを提供するだけにとどまらず、
「不動産データベースの提供」「家の設計事務所の紹介」
「家具販売店の紹介」「引越しサービスの割引」
など、「生活」の全体に関わるさまざまな商品・サービスを
ワンストップで提供してくれた方が顧客にとってはありがたい。
コンシェルジュは、そうしたユーザーの期待に応えるわけです。
コンシェルジュとは、本来、ホテルの宿泊客のあらゆるニーズに
対応する「何でも屋的」サービスです。
コンシェルジュは、基本的に高級ホテルにしかいないのですが、
それは非常にコストのかかるサービスだからです。
しかし、ネット革命は、他の業界・業種においても
コンシェルジュ的サービスを低コストで提供することを
可能としたんですね。
さて、これまでの進化は、ブロードバンド革命が
もたらすものです。
さらに、今起こりつつある「Web2.0革命」は、
「コンシェルジュ」を「メタ・プロシューマ」に進化させます。
「メタ・プロシューマ」は、
「プロシューマ」
を支援する存在です。
「プロシューマ」とは、「生産者」(プロデューサ)と
「消費者」(コンシューマ)が融合した
「生産消費者」
と呼ばれる進化した消費者のことです。
「主客融合市場」においては、無数のプロシューマが
生まれてくることになりますが、そうしたプロシューマを支援し、
プロシューマ型の商品開発を支援することをビジネスとする
「開発支援」の中間業者が必要とされてくる。
彼らが、「メタ・プロシューマ」です。
おそらく、「メタ・プロシューマ」を目指すビジネスモデルが、
これからのネットビジネスの発展を支えていくことになると
私は思います。
投稿者 松尾 順 : 11:25 | コメント (0) | トラックバック
味の素は、化粧品も作っていたんですね。
あなたはご存知でしたか。
「ジーノ」(JINO)
というブランド名です。97年に誕生した通販専用の化粧品。
アマゾンから届いた本に同梱されていたチラシで、
初めてこのブランド名を知りました。
味の素が長年培ってきた「アミノ酸研究」の成果を
生かした化粧品であり、ユーザーの評価は高いようですね。
でも、なんとなくしっくりこないと感じませんか。
「味の素」のブランドについて、
私たちが頭の中に持つ「思い出の小箱」の中にうまく入らない
んですよね。
ジーノの商品ラインアップは基礎化粧品です。
ですから、メークアップ化粧品に求められるような
「洗練されたブランドイメージ」はそれほど重要ではありません。
それにしても、「味の素」と聞いて連想する、
ほんだし、クックドゥ、クノールカップスープなどと、
化粧品のイメージは決して折り合いがよくないですよね。
日用品メーカー、花王の化粧品事業(ソフィーナ)が、
やはり、ブランドイメージの折り合いの悪さでなかなかシェアを
拡大できなかったのですが、同じ問題点をジーノに感じます。
「味の素」を前面に出さないほうが
もっとうまくいくんじゃないかと思うんですが。
ターゲットの女性層は果たしてどう感じているのでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 11:24 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(5)市場の進化
ちょっと間が空きましたが、田坂広志氏の最新刊
「これから何が起こるのか」
に書かれていることから、
マーケターに有益だと思うポイントの紹介を続けます。
さて、前回までにご説明した
「ネット革命」「Web2.0革命」
によって、
「市場」
ではどのような「進化」が起こるのでしょうか。
まず、ネット革命によって市場は、
「企業中心市場」から、「顧客中心市場」
に進化します。
「顧客中心市場」は、企業より顧客のほうが圧倒的に強い市場。
顧客が、自由に市場や商品の情報を得ることができるため、
ガラス張りの市場です。
以前は、商品を比較検討しようと思っても、
そもそも情報が十分に公開されていなかったり、そうした情報を
集める時間、手間、コストがかかりました。
しかし、現在は、十分な情報が公開されていない製品・企業は、
はなから顧客に相手にされません。
このため、経営コンサルタントの石原明氏が指摘されるように、
自社が持つ情報はどんどん「先だし」することが必要になって
います。
また、一方で、カカク・コムのようなサービスを通じて、
顧客はすばやく簡単に商品比較情報が手に入るようになりました。
このため、「顧客中心市場」では、徹底的な
「価格競争」
が起こります。
田坂氏によれば、これは鉄則であり、
どの業界にも必ず「価格競争」は起こる、だから、
まだ起こっていない業界であっても、そのための準備を
今始めるべきだと警鐘を鳴らしています。
また、田坂氏は、「顧客中心」を抽象的な「精神論」として
捉えるのではなく、具体的な「戦略論」として理解すべきだと
説いています。
「企業中心」から「顧客中心」への変化は、ビジネスモデルの
組み替えが起こっているのであって、古いビジネスの常識を
次々と覆していくものだからです。
単なる理念、企業姿勢として「顧客中心」(=顧客主義)を
唱えているだけでは生き残れませんよ、ということでしょう。
そして、この新しい「顧客中心」のビジネスモデルにおいて、
古い常識を書き換えていく変化は次のようなことです。
(括弧内は、古い常識)
●商品のすべての仕様を、好きなように選ぶ
(いくつかの商品のタイプから好きなものを選ぶ)
→世界でも一つしかない自分だけの商品、すなわち
「オンリーワン商品」の時代
●顧客が価格を決める
(企業が価格を決める)
→オークションのモデル
●消費者がマーケティングを行う
(企業がマーケティングを行う)
→田坂氏は、「ギャザリング」を例として挙げていますが、
アフィリエイトや、ブログ、SNSを活用した口コミ
マーケティングもこの変化の具体例ですね。
さらに、
「顧客中心市場」は、「主客融合市場」
へと進化していきます。
企業優位の「企業中心市場」が、いったん顧客優位の
「顧客中心市場」へと振れた後、企業と顧客は、
平等で対等な立場に立ち、両者が協力、協働することを始めます。
こうすることが両者の利益にかなっているからです。
もはや、企業と顧客は、お互いに利害が対立する存在では
ありません。
田坂氏が例として示す「プロシューマ型開発」においては、
「顧客」が自分たちの智恵を出すことによって、
企業に欲しい商品を買ってもらえる、「企業」は、そうした
商品を作ることによって必ず買ってもらえる。
このような、相互利益の関係が生まれるというわけです。
そして、「Web2.0革命」は、
この「顧客中心市場」から「主客融合市場」の進化を
加速するものとして起こっています。
------------------------------------------------
*「Web2.0革命の3つの軸は、次のとおりです。
・「衆知創発の革命」
誰でも、多くの人々の智恵を集め、新たな智恵の創発を
促すことができるようになる革命。
・「主客融合の革命」
情報の発信者、受信者、あるいいは生産者、消費者といった
これまで別々のもの、すなわち「主」と「客」が一体化し、
融合し、区別がなくなっていく革命。
・「感性共有革命」
人々が、「ナレッジ」(知識)だけでなく、
感情や感動、感覚、感性を共有できるようになる革命。
-------------------------------------------------
投稿者 松尾 順 : 12:37 | コメント (0) | トラックバック
私はJリーグのことはそれほど詳しくありませんが、
Jリーグは、欧州では一般的な地域密着型「市民クラブ」を
目指していたことくらいは知っています。
今、人気、実力とも最高の浦和レッズもまた、
地域密着型市民クラブ化に向けて、
地元企業に株を持ってもらう「第三者割当増資」を
考えていたそうです。
しかし、この計画は、親会社の三菱自動車に反対されて、
現在、頓挫しているそうですね。
親会社のトップに言わせると、
「三菱自動車グループの中で、‘浦和レッズ’は
大切な財産だ。当社の持ち株比率を減らすわけにはいかない」
ということらしいです。
確かに、浦和レッズは今でこそ売上68億円、黒字化も果たして
いますが、三菱自動車が長年にわたって損失補てんを
してきました。
ですから、しばらくは恩返しをすべきだという考え方にも
妥当性があるかもしれません。
しかし、結果的に市民クラブ化を阻むことになる今の姿勢は、
自社の目先の利益だけを追求した社会性のない考え方のように
思います。
こうした姿勢は、三菱自動車に対する社会的評価を
ますます悪化させ、長期的な収益低下につながる可能性が高い
ことがわからないのでしょうか。
ちなみに、浦和レッズが、優れた選手を獲得しようと思っても、
契約金が500万円以上を超える場合には、親会社の役員会議での
決裁を通す必要があります。
そんなのんびりしたことをやっていたら、
いい選手は他のチームにさっさと取られてしまいますよね。
しかし、親会社は、決まりを守れとうるさく言ってくるそうです。
三菱自動車は、あれこれと不祥事が続いてきましたが、
やはり、トップがダメだと、すべての行動がダメですね。
投稿者 松尾 順 : 12:20 | コメント (0) | トラックバック
猿のウォークマン
「精密音響機械なのに、
『猿のウォークマン』なんて呼ばれたらどうします。」
猿の「チョロ松」が、芦ノ湖を前にウォークマンを聞きながら
瞑想するコマーシャルは、本当に印象的でしたよね。
しかし、最初にこのアイディアをコピーライター、仲畑貴志氏らが
提案した時、ソニーの関係者の中には冒頭のような反応をする
バカなことを言う人もいたそうです。
(宣伝会議、2007.2.1)
ウォークマンも、当初は小型軽量を謳っていれば売れた。
でも、どんどん小さくしていってカセットテープサイズまでに
なってしまうと、もはや「小型軽量」を訴えても人は動かない。
もはや、これ以上軽く小さくすると、
かえて使いづらくなる「認知限界」に達してしまった。
だから、仲畑氏は
「お猿のウォークマン」
で売ろうと考えたのです。
仲畑氏には自信がありました。愛されればいい。
結果は自信通り、お猿で爆発的に売れた。
機能や装備を声高に訴求するコマーシャルよりもはるかに売れた。
チョロ松のCMは87年に放映されましたが、
その時点でウォークマンは、
機能的価値から情緒的価値の訴求への方向転換に
見事に成功したというわけですね。
なお、ご存知かと思いますが、
チョロ松は、今年1月14日に老衰で天国に召されています。
投稿者 松尾 順 : 17:09 | コメント (0) | トラックバック
迷信:3クリックルール
えーと、あなたは、ひょっとしてまだ
「3クリックルール」
を信じてますか?
「3クリックルール」
とは、
Webサイトを訪問したユーザーが、“3クリック以内”に
目的のページ(コンテンツ)にたどり着けるように
サイト構造を設計すべし
というWebユーザビリティのルールのひとつでした。
「でした・・・」と過去形で書いているのは、
もはや、以前ほど重視する必要のないルールと
考えるべきだからです。
もちろん、ユーザーとしては、できるだけ効率的に素早く
目当てのコンテンツに到達できた方が良いということには
変わりません。
以前は、その解決策のひとつとして
「3クリックルール」
が提唱されたわけです。
そして、具体的なサイトの設計方針としては、
おおむね、
・階層構造を浅くする、また、
・ショートカットをトップページに表示する
ということになりました。
これも間違っているというわけではありません。
しかし、3クリックルールを過度に重視しすぎた結果は、
テキストベースのリンクだらけの
あまり美しくないトップページ(HOME)
の氾濫でした。
いわゆる、Yahooなどのポータル風のページデザイン
に偏りすぎてしまったわけですね。
もちろん、ポータル風ページは、
使い慣れると素早く用が済ませられて便利です。
しかし、ポータル風デザインには
・ぱっと見はごちゃごちゃしていて使いにくそうに感じられる
(実際、慣れるまでは、どこになにがあるかわからず、
迷ってしまい、クリック以前に立ち往生してしまう・・・)
・あまりに機能的すぎて、愛着がわきにくい
(ブランド構築にマイナス)
といった欠点があります。
(ただ、老舗のYahooは、さすがに長年の経験を通じてデザインが
磨き上げられており、上記の欠点をほとんど感じさせませんが。)
そもそも、以前、何度もクリックさせられて面倒だと感じたのは、
クリックの「回数」が問題ではなかったように思います。
むしろ、回線スピードが遅いために、
クリックするたびに新しい画面がじんわり開くのを
待たなければならないということが、
ユーザーのいらいらの原因だったんじゃないでしょうか。
しかし、大多数のユーザーがブロードバンドでアクセスしている
現在のネット環境では、クリックを重ねても、すいすいと
目的のコンテンツにたどりつくことができます。
むしろ、重要なのは、適切な情報構造の設計と、
適切なナビゲーション、わかりやすい見出し(ラベル表示)。
これらがきちんと設計されていれば、
クリック数が多少多くなってもユーザビリティが低下することは
ないと思います。(きちんと検証したわけではないので、
あくまで私の仮説ですが)
また、もうひとつのネット利用環境の変化が、
「3クリックルール」
を無意味なものにしつつあります。
それは、Googleに代表される検索エンジンを経由して、
ダイレクトに目的のページに飛ぶユーザーが増えているという
ことです。
となると、トップページ(HOME)を起点とした考え方である
「3クリックルール」の意義が薄れていくのは
おわかりになりますよね。
もちろん、今でも機能性最優先、ポータル風サイトのデザインが
ベストと考えられるWebサイトもありますが、基本的には、
「3クリックルール」
の呪縛からは解放されましょうね。
ちなみに、「3クリックルール」の有効性については、
2003年ごろから異議を唱える人がいました。
また、Webユーザビリティのグル(先生)、
ヤコブ・ニールセン氏は、
“「3クリックルール」がサイトをだめにする”
と言い切っていますね。
(ニールセン氏のユーザビリティガイドラインには、
当初から3クリックルールは存在していません・・・)
*参考文献
「新ウェブ・ユーザビリティ -
Web2.0時代に優先すべき最重要ルール」
(ヤコブ・ニールセン+ホア・ロレンジャー共著、
エムディエヌコーポレーション
投稿者 松尾 順 : 22:45 | コメント (1) | トラックバック
「熟女ライス」(熟女米)
が出ました。すごいネーミングです。
サトウのごはんと同じで、
レンジでチンしてすぐに食べることのできる商品です。
この商品は、古米を使っている「アダルトなライス」なので、
「熟女米」
と名づけられたとか。
パッケージには「18禁」と表示されてるそうです。
また、
「熟女だけに熟れてます」
というコピーも。
販売元は、あのソフトオンデマンドの元社長、
高橋がなり氏率いる「国立ファーム」。
私がとても尊敬している高橋がなり氏は、
数年前から農業に取り組まれているんでした。
さて、果たして、このビミョーな商品が
どの程度販路を広げることができるんでしょうかね!
しばらくウオッチしたいと思います。
ともあれ、一度、熟女米の「味見」をしてみます。
(業務連絡)
*この本文に入る前の前振りでは、小ネタを書かせて
もらってますが、こちらも念のためブログにも
アップすることにしました。(全部ではないですが)
メインディッシュの前にお出しするので、
ブログの収納カテゴリーは、
「メルマガアントレ集」
です。コメントがあればぜひブログへ!
投稿者 松尾 順 : 22:44 | コメント (2) | トラックバック
「販売促進」じゃなくて「購買促進」
なんでもネットで買える(売れる)時代とはいえ、
やはり高額商品、特に「住宅」は現物を見ないことには
検討ができないですよね。
でも、住宅の場合、分譲マンションであれ、戸建てであれ、
モデルルームや住宅展示場に行くのは結構気が重い・・・
(車のディーラーもまあ一緒か・・・)
そういうところに行くと、まず担当の人が出てきて、
たいていアンケートを書かされます。
そして、連絡先を書いてしまうと、
早速営業担当者から電話攻勢です。
こちらは、まだ「情報収集段階」でじっくり比較検討したいのに
営業担当者は無理やり「購買決定段階」に連れて行こうと
しますから、いやな気分になるものです。
まあ、以前よりもこうした強引な営業は減ったのは確かです。
(私も、イベント・アトラクションに釣られて、今でもたまに
住宅展示場のフェアなどに行きます)
でも、モデルルームや住宅展示場は、
基本的に見込客情報を獲得できる貴重な場所です。
アンケートにはできるだけ応えさせたいと、
売り手は考えるのが普通です。
ところが、モデルルームでのアンケートを止めてしまった
マンション販売会社があります。(PRESIDENT、2007.3.5)
大阪市の「ピルプワーク」では、
親会社の不動産デベロッパー、日本レイトの開発物件だけでなく、
大京、オリックス・エステートなど他社物件の販売も
請け負っています。
同社が擁する「営業スタッフ」は70余名。女性が中心です。
同社取り扱いの某物件の場合、昨年8月の夏枯れの時期に
5名の営業スタッフで25件を成約させたそうですから、
なかなかのものですね。
さて、ピルプワークの販売における考え方は、
従来のマンションを売ろうとする
「販売促進」
ではなく、
客のほうからマンションを欲しいと思わせる
「購買促進」
です。
「販売促進」は売り手の立場で客にアプローチしますから、
客の方は「売りつけられた感」「買わされる恐怖感」がある。
これが、モデルルームに行くのをついためらってしまう
ことにつながるわけですね。
一方、購買促進はあくまで、客に‘自発的’に「欲しい」
と思わせる活動です。
客の自発性を尊重しますから、「売りつけられた感」
「買わされる恐怖」が生じない。
ですから、同社の販売する物件のモデルルームでは、
名前や住所を書かせるアンケートを行っていません。
また、客の対応をする営業担当者も、あくまで
「家の購入の相談に乗って欲しい」
と客に思わせる雰囲気づくりを心がけ、
客の方から連絡先を知らせたいと言われて初めて
住所などを聞くそうです。
まずなによりも、顧客との心理的距離感を縮めて、
信頼関係を作ることを優先するのが同社のやり方。
しかも、客が希望する間取りやライフスタイルなどを聞く時も、
物件のPRは積極的に行わない。
「買いたいという気持ちが強いお客様ほど、ご自身で
住宅情報誌やインターネットを通じて物件研究を重ねて
いらっしゃいます」(同社社長、石田明美氏)
今は、へたをすると客の方が詳しい。
べらべらと一方的に物件のPRをしたらかえって迷惑ですし、
営業スタッフの力量が見破られてしまうかもしれませんよね。
だから、客から尋ねられるまで、
同社営業スタッフは物件のアピールはしないのです。
また、モデルルームでの接客は、
テーマパークのアトラクションのように、
客に実際に体験してもらうことを重視しています。
お風呂なら浴槽の中にスタッフが入って見せたり、
お客さんに入ってもらって広さを実感してもらう。
ある一定以上のマンションになると、
床暖房、セキュリティーシステムなどのハード的設備は
実際とのところ大差ありません。
そこで、同社では、実体験させることによって
販売物件に「情緒的・感覚的価値」を付加しようと
してるんでしょう。
あえて積極的に売らない、買わせようとしないという
販売スタイルは、化粧品業界でも増えつつありますよね。
また、今回の事例は、金型の通信販売で成功した商社、
「ミスミ」の「販売代理」ではなく「購買代理」の思想
とも共通するものを感じました。
投稿者 松尾 順 : 09:12 | コメント (0) | トラックバック
欲望解剖:「水戸黄門」に見る偶有性
ドーパミン(脳内麻薬性物質)のドバー放出以外に、
もうひとつ脳が喜ぶ、大好きなことがあります。
それは、
「偶有性」
と呼ばれるものです。
「偶有性」は、このメルマガ&ブログでも一度取り上げました。
偶有性は、半ば規則的、半ば偶然に起こる出来事のことです。
人は、物事の展開がすべてわかっていたら退屈になりますし、
かといって、展開がまったくわからないのは不安になるだけ。
半分分かっていて、半分分からない、
そんな世界が一番ワクワクできて楽しめるということでしょう。
(人生も、「偶有性」そのものですね・・・)
さて、「欲望解剖」*の中で、茂木健一郎氏は、
「偶有性」を備えていることが人気の鍵となっている例として、
「水戸黄門」
を挙げています。
「水戸黄門」では、黄門さまが全国を旅する途中で
さまざまな事件に遭遇しますが、最後は、必ず
「この印籠が目に入らぬか!!」
「ははーっ」
で無事一件落着しますよね。
この印籠が「規則性」であり、
一話ごとに異なる事件(ストーリー)が「偶然性」です。
水戸黄門の「印籠」は、偉大なるワンパターンですが、
これが見ている人に安心感を与えると同時に、
黄門さまを移動させることでディテールに変化を与えています。
こうして、規則性と偶然性をうまく混ぜ合わせることで
面白さを作り出している。
だから、ついつい毎回見てしまう。
水戸黄門中毒になるというわけです。
考えてみれば、
「ウルトラマン」シリーズ
「仮面ライダー」シリーズ
なども、毎回、奇妙な怪物が登場してくるけれど、
最後には、決め技の光線やキックでやられて正義が勝つ
という点では、水戸黄門と同様、偶有性を備えていますね。
ある一定のパターンを維持しつつ、
ディテールを変えていくというのが、長く支持される
ロングセラー商品を生み出すポイントと考えることが
できるんじゃないでしょうか。
ちなみに、ご存知「スターウォーズ」は、
多くの神話に共通するパターンに基づいて制作されています。
それは、神話学者のジョゼフ・キャンベルが、
神話に共通するマザー(母型)として抽出した
「英雄伝説」
です。
具体的には、
「英雄は旅立ち、成し遂げ、生還する」
ということ。
つまり
・セパレーション(旅立ち)
・イニシエーション(試練)
・リターン(帰還)
という3ステップを踏むパターン。
日本のおとぎ話では、「桃太郎」が典型的ですよね。
スターウォーズが大ヒットし、長く愛される理由には、
やはり同シリーズが「偶有性」を備えていたからなのかも
しれません。
*「欲望解剖」
(茂木健一郎、田中洋、
電通ニューロマーケティング研究会編、幻冬舎)
投稿者 松尾 順 : 11:22 | コメント (0) | トラックバック
欲望解剖
今、マーケティングの最先端の研究は、
「ニューロマーケティング」
でしょうか。
「ニューロ・・・」という語感のためか、
かなり怪しい響きがしますが別に怪しいものではございません。
ニューロマーケティングは、
脳神経科学(ニューロサイエンス)分野の成果や、同分野で
使用される機器(fMRI:機能的磁気共鳴画像法など)を活用して、
消費者の心理・行動の背後で、脳がどのような反応を示すのかを
明らかにしようとするものです。
ちなみに、私も昨年10月に
という記事を書いています。
また、この研究に関連する他の分野としては、
「ニューロサイエンス」
「行動経済学」
などがありますので、
ご興味のある方はこちら方面も当たってみられると
いいかと思います。
とはいえ、ニューロマーケティングについては、
まだまだ日本語の文献は少ないのですが、
まったくの初心者の方の入門書として紹介したいのが次の本です。
「欲望解剖」
(茂木健一郎、田中洋、
電通ニューロマーケティング研究会編、幻冬舎)
本の題名はやはり怪しい(笑)ですが、
専門書ではありませんし、読みやすく書かれています。
本書で、茂木健一郎氏は、
人が「欲望」を感じている時、脳内では「ドーパミン」が出ている
ということを教えてくれています。
「ドーパミン」は、
「脳内麻薬性物質」
と呼ばれることもありますが、
脳が気持ちよくなる、つまり快楽を感じさせてくれる物質です。
そして、人が何かにはまる(=中毒になる)ということは、
ドーパミンをより多く放出する神経回路が強化されるから
なんですね。
たとえばビールが大好きな人は、
ビールを飲むとドーパミンがドバっとでる。気持ちいい。
だからもっとビールが欲しくなるわけです。
ビールの場合、もともとアルコールという習慣性のある物質が
含まれていますから、行き過ぎると、本当の意味での中毒に
なりますよね。
でも、中毒の対象は、アルコールに限りません。
高級ブランドや有名タレント、音楽、マンガ、何だろうが、
人が何かに熱中している時、脳内ではドーパミンがドバドバ
出ているというわけです。
ですから、マーケティングの課題を神経科学的に再定義すれば、
「どんな製品やコミュニケーションであれば、
人にドーパミンを放出させ、中毒にさせることができるか」
ということになるのかもしれません。
しかし、この表現はかなりヤバイですよね。
ニューロマーケティングにおける倫理についても
一緒に考えないと・・・!
投稿者 松尾 順 : 14:58 | コメント (0) | トラックバック
耳かき関連商売
最新のイヤースコープを使用して、
耳かきのプロスタッフによる丁寧な耳かきをやってくれるという
「耳かきサービス」
が最近ボチボチ広がってますよね。
料金は、クイックサービス10分で1050円から。
私も一度試してみたいと思いつつ、
なんとなく気恥ずかしくて行けていません。(^o^)
マッサージには行けるのに、耳かきを赤の他人に
やってもらうのは、なぜだかちょっと気が引けます。
さて、耳かきサービスの登場はちょっと驚きでしたが、
耳かき製品の専門店も登場してますね。
その名も「耳かき亭」では、
350円から3500円の高級品まで150種類の耳かきを揃えてます。
ファイバースコープ付の1万円の耳かきもあり。
ライトバンでの移動販売で、スーパーの駐車場などで
店開きすることが多いらしいです。
しかし、果たして商売として成り立つのでしょうか。
需要がまったく読めません。というのも耳かきは安物でも
それほど不満はないし、買えば一生ものですから。
最初はともかく、買い替え需要が一巡したら苦しくなるんじゃ
ないでしょうか。
その点、耳かきサービスの方は、
定着すれば継続的な利用が見込めますね。
サービス形態のバリエーションも増えてくるでしょう。
秋葉原では、
浴衣姿の女性が膝枕で耳かきしてくれるサービス
も昨年末に登場してます・・・
でも、これも、ちょっと気恥ずかしい。
1回行ったらヤミツキになるかもしれませんが!
投稿者 松尾 順 : 02:03 | コメント (0) | トラックバック
ジーニアスコード
ジーニアスコードとは、一言で言えば、
「イメージを使った思考法」
です。
私はまだ詳しいことは知らないのですが、あの神田昌典さんが、
この思考法の普及に力を入れられているんですね。
神田さんによれば、「ジーニアスコード」とは、
“論理や言語を重視する左脳による思考法に対して、
感性やイメージを重視する右脳による思考”
だそうです。
(『超ロジカル思考トレーニング』
シンク!、WINTER 2007 No.20)
論理的思考法では難しい、斬新なアイディアを生み出すために
有効な手法のように感じますので、私もちょっと研究・実践
してみようかなと考えています。
(相変わらず、手の広げすぎです・・・(^_^;)
ともあれ、上記「シンク!」での神田さんの寄稿に
ジーニアスコードのやり方が概説されていますので、
ポイントを押さえておきましょう。
ジーニアスコードには8つの発想法があるそうですが、
そのひとつ「ハイ・シンクタンク」と呼ばれる方法は、
次の6つのステップを踏みます。
------------------------------------------------------
【ステップ1】
質問を6つ用意し、6枚の紙に1つずつ書いて、
紙を折りたたむ
【ステップ2】
折りたたんだ紙を封筒に入れ、よく混ぜてから
1つを取り出す
【ステップ3】
リラックスした状態の中で目を閉じて、
3つのイメージを思い浮かべる
【ステップ4】
3つのイメージの共通点を見つける
【ステップ5】
質問を書いた紙を開いてみる
【ステップ6】
答えとして提示されたイメージを
言語に翻訳する
------------------------------------------------------
これだけだとちょっとわかりにくいですよね。
詳細はシンクを読んでもらうとして、
私なりの解釈でこのステップの流れを説明してみます。
まずステップ1の質問ですが、たとえば、
「どうしたら自社の業績は向上するか」
といった自分が解決したい問題や課題を書きます。
しかし、その質問を見ながらいきなり答えを
考え始めないことがポイントのようですね。
なぜなら、そうすると、
慣れ親しんだ論理的・分析的思考のやり方で
頭が回転を始めますから。
そこで、どんな質問なのかを知らないまま、
自由に3つのイメージを思い浮かべる。
そして、イメージが浮かんだ後で質問を見て、
イメージと質問を結び付けながら、
質問を解くカギをイメージの中に探してみる。
これは、かなり強引な意味づけ・解釈になるのかも
知れませんが、あえてそうすることで、
質問を直視していただけでは思いもつかない、
新たな解決法やアイディアが生まれるというわけです。
ですから、思い浮かべるイメージは、あくまで
「象徴」
なのです。
次の文は、神田さんが示してくれている具体例です。
“・・・たとえば、
「今後、会社の業績を大幅にアップする商品コンセプトは何か?」
という質問に、自動車のイメージが出てきたとすれば、
答えは
「自動車を製造せよ」
ということではない。
自動車はあくまで象徴なのだから、
自動車の「便利さ」と「スピード」が商品開発の
1つのヒントではないかと推論していくのである・・・”
このジーニアスコードの方法論は、
松岡正剛氏の編集術で言えば、まったく関係のないように
見える2つのことに「対角線」を結ぶ(関係を発見していく)
というアプローチと同じです。
編集術も、斬新な発想を生み出す体系的な方法論として
私も体感ずみ。ですので、「ジーニアスコード」も
かなり有効な発想法であることは間違いないと思います。
ただ、神田氏自身も
“この非合理的・非論理的な方法論は、
合理的・論理的であることが求められる大企業での
戦略立案には、果たして活用できるのだろうか?
本音を言えば、正直難しいと思う・・・”
と書いているように、そう簡単には浸透しないでしょうね。
投稿者 松尾 順 : 12:01 | コメント (0) | トラックバック
以前、オフィスグリコの話、
を書いたんですが、
先週、この記事に匿名さんからコメントがついていました。
「代金回収率は100%じゃないですよ。泣」
オフィスグリコの関係者でしょう。
(単なるいたずらとは思えません)
オフィスグリコは、小腹の空いたビジネスパーソンのために、
100円均一のお菓子の入った小型のボックスを事務所の片隅に
置いてもらうサービスです。
代金支払いは、田舎の道端で見かける無人野菜即売所と同じで、
本人の良心に任されています。
先ほどのコメント、
「代金回収率は100%じゃない」
というのは、販売個数より売上が少ないということですから、
職場環境にいるまっとうな大人の中には、たかが100円そこらを
払わない人もいるんですね。
まあ、たぶん、あまり悪気があるわけではなくて
「今小銭ないけど、後で払えばいいよね・・・」
なんて思いながら、代金を払わずにお菓子を取って、
そのまま忘れてしまうケースが多いんじゃないでしょうか。
ともあれ、自動販売機にした場合の電気代や、
機械のメンテナンス費用を考えると、ただのプラスチック箱に
入れ、代金は、かえるの口に購入者に投げ入れてもらう方式
がベターという判断なんでしょう。
投稿者 松尾 順 : 02:02 | コメント (0) | トラックバック
なかなか公表されない真のマーケティング成功事例
マーケティングの成功事例って、
「なるほどそうか!」と叫んじゃうような詳しい内容のものは、
実はなかなか公表されません。
まあ、極めて重要な企業秘密ですから。
企業の担当者も、サポートした広告会社や調査会社等の担当者
も、もしばらしたら大変なことになります。
でも、ちょっと古い話ではありますが、とても興味深い事例が
販促会議最新号(2007.3)の
「SPよもやま話」
(執筆者:大槻博氏、多摩大学名誉教授)
に掲載されてました。
今回は、その記事の中から「おいしいところ」をご紹介。
育児用粉ミルク(以下、「育粉」)のマーケティングの話です。
当時(おそらく数十年前)の「育粉」の業界シェアは、
A社 35%
B社 30%
Y社 20%
そして、大槻博氏は当時、
Y社のリサーチャー(市場調査課)でした。
さて、「育粉」は、母乳の代わりに、
あるいは同時に乳児に与えるものですよね。
つまり、今で言う「機能性食品」であり、
当時の広告代理店は、
「情緒型広告」ではなく「説得型広告」が有効
と説明していたそうです。
このため、
「強い子よい子(免疫要素添加)」
といったキャッチフレーズを使った新聞の全面広告が
主流となっていました。
もちろん、マーケターの議論の中心は、
こうしたコピーとしてどんなものが優れているかということ。
つまり、当時の「育粉」業界は、
マス広告主体のマーケティングが行われていたわけです。
業界下位のY社は、上位メーカーより広告予算も小さいため、
このままでは半永久的に上位に上がることはできないと、
皆あきらめムードだったそうです。
ところがある日、病産院を巡回訪問しているセールス担当者から、
次のような情報がもたらされました
「赤ん坊の母親が退院後に採用する育粉の銘柄は、どうやら
入院していたその病院が使用していた銘柄と同じらしい」
Y社市場調査課ではこの情報を検証すべく、
早速、母親たちを対象とした調査を実施。
すると、病産院で利用していた銘柄を退院後も利用していた
母親は、実質9割に達していたということがわかりました。
(9割のうち、1割は勘違いで別の銘柄を使用していた)
Y社ではこの結果を受け、それまで広告費用の60%を占めていた
マス広告を6分の1まで大幅削減。その分浮いた原資数十億円を
すべて、病産院向けのプロモーションに振り替えました。
大槻氏によれば、ここまではマーケティングにおける
「戦略決定」(戦略転換)
の話です。
次に現場での「販促戦術」ですが、
まず、病院で利用される育粉をY社に切り替えてもらうための
活動です。大病院は困難なので、中小病院に戦力を集中して
大きな成果を上げました。
次に、母親たちに対して、
「この病院ではY社の粉ミルクを使っています」
というメッセージを伝えるため、
上記の文言を刷り込んだ哺乳瓶を病院に大量に無料配布。
また、それまでは普通の白衣を着ただけだった
調乳指導の販促員の胸にY社のマークをつけるよう指示しました。
これら一連の取り組みの結果、18ヵ月後の成果は、
シェア:20%から30%へと10%アップ
売り上げ:1.5倍増
と大成功を収めます。
この事例では、
ターゲットを母親ではなく、病産院に切り替える
という「マーケティング戦略」が的を得ていた
ということになりますよね。
(現在の医薬品・健康関連のマーケティングでは、
すでに常套手段ではありますが)
当時、マス広告費用を大幅削減することにためらっていた
Y社営業トップに対して、大槻氏らは次のように説得
したそうです。
「赤ん坊のいる世帯は全戸のうちのわずか1%です。
新聞広告枚数の99%は、育粉を使ってくれる可能性が
まったくゼロの、無関係な人たちに配布されています。
これは、ドブ川に金を捨ているようなものです。」
さて、「SPよもやま話」の最後に、大槻氏は、
“この話は、マーケティングを感性中心に説くのは
誤りであり、主として論理を大切にしなければ
ならないと教える際の好い事例とされている”
と書かれていますが、これは違うと私は思います。
感性中心に説いた結果が、
「マス広告への依存」になったという意味だと思いますが、
感性というよりは、他社横並び意識や惰性でマス広告を
打っていただけじゃなんでしょうか。
また、論理を大切にすること以前に、そもそも
消費者が特定の銘柄(ブランド)を選好するプロセスやきっかけ、
つまりは「消費者心理・消費者行動」を十分に理解できて
いなかったことが問題だったのではないでしょうか。
消費者心理・行動がちゃんと把握できれば、
おのずと利用すべきメディア・ツール、
発信すべきメッセージについては、
論理的に導き出さされる部分が多いと思います。
投稿者 松尾 順 : 12:38 | コメント (3) | トラックバック
「Web3.0」・・・ティム・オライリー氏の見解
田坂氏は、「これから何が起こるのか」で、
「ユビキタス革命」が「Web2.0革命」に融合することによって、
「情報革命」は「Web 3.0革命」に進化する
と述べていました。
この「ユビキタス革命」においては、
情報端末を備えた「人間」と「商品」、「空間」の情報共有が
行われるようになります。
そして、これらの「情報端末」は「Webの世界」への出入り口と
しても働くため、すべての「リアル空間」が「ネット空間」と
融合していきます。
つまり、田坂氏は、「リアルとネットの融合」がもたらす変化が、
「Web3.0革命」
と呼ばれるものになると予測しているわけです。
さて、そもそも「Web 2.0」の概念を提唱した
ティム・オライリー氏は、「Web 2.0後」をどのように
見ているのでしょうか。
1ヶ月ほど前の日経産業新聞(2007年1月19日)に掲載された、
オライリー氏のインタビュー記事からポイントをご紹介します。
「十年後にはネットはあらゆるものの中心になっているだろう。
だが、我々は『Web3.0』とは呼ばない。なぜなら、次に来る
変化は今ある(ビジネス)のエコシステムを超えるものに
なるはずだからだ」
なるほど。
オライリー氏としては、次の変化は現在のパラダイムを変えて
しまう不連続なものになると見ているようです。
だから、現在の延長に過ぎない
「Web3.0」
とは呼ばないつもりなんですね。
そして、オライリー氏が注目している動きは次の3点です。
・ものが発信するデータを基にしたサービスの台頭
GPSやICタグ、携帯電話などがユーザーが意識しているか
いないかにかかわらず、自動的に発信する情報が価値を
持ってくる。
(これは田坂氏の言う「ユビキタス革命」ですね)
・リアルとバーチャルの融合
仮想都市を舞台にしたオンラインゲーム「セカンドライフ」や、
「グーグルアース」のようなサービスにその兆しがあると
指摘しています。
・人工知能(AI)により近づいたサービス
検索エンジンや翻訳サービス、人物認証などの分野で、
人工知能(AI)により近づいたサービスが登場する
大きな方向性としては、オライリー氏の見ている未来は
田坂氏と同じと言えそうです。
ただ、オライリー氏の次のコメントは、
また異なる視点を与えてくれます。
「コンピュータ産業の歴史を振り返ると、大きな変化は
二十年から二十五年周期で訪れている。
ネットワーク効果と広告収入に支えられたWeb2.0の
ビジネスモデルは、少なくともあと十年間は続く。」
「だがそれと並行して全く予期しない方向から新しい変化が
起きてくるだろう。個人的には、次の波はモノ作りに関係する
分野から生まれてくるのではないかと思っている」
物事の変化は、しばしば振り子のように動きますよね。
一端まで振り切ると、逆の方向に振り戻される。
20世紀は、「モノ」から「サービス」へと向かって
大きく振り子が動いたのですが、まもなく、再び
「モノ」の方向へと振り子が戻り始めるのかもしれません。
投稿者 松尾 順 : 10:28 | コメント (3) | トラックバック
不二家の「思い出の小箱」をどうする?
「ブランド」とは、消費者の頭の中にある
「思い出の小箱」
である。
私が一番好きなブランドの定義です。
端的には、この小箱の蓋には、そのブランド名称が
貼り付けられていると考えてください。
つまり、商品名称やロゴマーク、パッケージデザインなど、
他の商品と違うものとして識別できる、その商品の「特徴」と
結びついたさまざまな「思い出」が詰まった小箱がブランドです。
大事なのは、小箱の中の「思い出」なんです。
この「思い出」、言い換えると「記憶」は、
その商品を実際に使った時の手触りや、生じた気持ちといった
実体験に基づくものもありますし、新聞・雑誌広告、
TVコマーシャル、あるいは人から聞いた話など、さまざまな
出会いを通じて作られたものです。
人気ブランドの場合、その思い出の小箱には、
たくさんのすばらしい記憶が詰まっています。
一方、人気のないブランドの小箱は、
ほとんど中身が空っぽか、あるいは、
最悪の記憶でいっぱいである場合のどちらかです。
中身が空っぽなのは、まだほとんど知られていないか、
記憶に残らない程度の価値しか持っていないと消費者に
思われて無視されてしまっているからです。
でも、空っぽの場合は、これからどうやって
「すばらしい記憶」を埋めていくべきかを考える余地が
ありますから、まだ救いがありますね。
しかし、最悪の記憶がいっぱい詰まっているブランドは、
いったんそれらの記憶を小箱から出して、すばらしい
記憶と入れ替えなければならないので大変です。
「雪印」乳業も、小箱の記憶の入れ替えに
いまだ苦しんでいますよね。
今回の不二家の事件でも、
すばらしい記憶で一杯だった「不二家」の思い出の小箱は、
わずか1ヶ月ほどの間に、「最悪の記憶」であふれかえって
しまいました。
「ペコちゃん」に罪はありませんから、
ペコちゃんを見ると思い出す子供のころの楽しい記憶や、
パラソルチョコレートのおいしい記憶など、
すばらしい思い出はまだ小箱の片隅にしぶとく残っています。
でも、ますます増殖する「最悪の記憶」に覆い隠されて
ほとんど見えなくなりつつあります・・・
不二家の「思い出の小箱」、どうしましょ?
投稿者 松尾 順 : 02:54 | コメント (0) | トラックバック
両面提示広告:新生銀行のケース
「メリット」は、目立つように大きく派手に書く、声高に言う。
一方、
「デメリット」は、目立たないように小さく書く、小声で言う。
あるいは、そもそも「デメリット」を書かない、言わない)
売り手の気持ちとしては、こんなコミュニケーションを
したくなりますし、実際、どんな業界の広告宣伝でも、
こんな表現が一般的ですよね。
しかし、顧客(消費者)の立場に立てば、
「企業の都合の良いことだけ強調して、
都合の悪いことを隠そうとするのはずるい」
となるわけです。
企業の担当者も、一顧客(消費者)でもあるわけで、
この気持ちがわからないわけではない。
でも企業の立場に立つと、
なぜだか企業に都合のよい表現しかできなくなる。
「顧客中心主義」とか「CS第一」とかお題目は立派だが、
本当に顧客の立場に立ったコミュニケーションができている
企業は、まだまだ少ないのが現実でしょう。
とはいえ、最近は少しずつ変わってきましたね。
ネット革命のおかげでしょう。
田坂氏の言う、「ネット革命」によって、
「情報主権」が企業から消費者へと移行してしまったからです。
消費者は、ネットを通じて、多様なルートからさまざまな情報を
容易に収集することができる。そして、
十分に時間をかけてその情報を分析し、学習する。
しばしば、「多忙」という言い訳で勉強を怠っている
企業側担当者よりも、消費者の方が知識が豊富です。
したがって、もはや自社に都合のよい情報だけを見せる
というやり方は、通用しなくなっているといます。
さて、この「今の真実」を悟り、素直にコミュニケーションに
反映させている事例が、「新生銀行」の「仕組預金」です。
商品名は
正式名称は、
「仕組預金(デリバティブ預金)預入期間延長特約付円定期預金」
長い名前ですねぇ・・・
当金融商品の07年1月以降のチラシ、新聞広告を
目にされた方はお気づきでしょうし、Webサイトの紹介ページを
見てもわかりますが、
「メリット」と「デメリット」(注意点)
が、まったく同じ扱い、並列で記載されています。
これは、心理学で言う、
「両面提示」(メリット、デメリットの両方をきちんと伝える)
を忠実に実行している広告として、
大手企業にはきわめて珍しいことです。
従来の都合の良いことしか言わないコミュニケーションは、
「片面提示」と呼ばれていますが、「両面提示」は、
比較的学歴が高い消費者、そして、金融商品のように、
じっくり購買を検討する関与度の高い商品において
有効なコミュニケーションであることがわかっています。
ただ、これまで実践できる企業は少なかった。
新生銀行の「パワーステップアップ預金」の広告は、
賞賛に値するものだと私は思います。
新生銀行マーケティング部長、伊藤淳一氏は次のように
述べています。
「広告は、当然ながら消費者の皆さまに興味を持ってもらい、
ご購入いただくことが目的ですから、メリットを強く
打ち出したい。しかし、こうした金融商品の場合、
検討段階でリスクをしっかりと理解していただいた上で
店頭での販売などを行う方が、購入する際の納得度も
高いと考えました」
「・・・リスクをわかりやすく説明しようという姿勢を打ち出す
ことで預金者との信頼関係強化につながると考えています」
(PRIR、2007 March)
顧客の「納得度の高さ」を優先する。「信頼関係」を重視する。
これこそが、CRMであり、また顧客中心の考え方です。
投稿者 松尾 順 : 11:12 | コメント (0) | トラックバック
「これからは日本の時代だ」
「これからは日本の時代だ」
とおっしゃる有識者の方は結構多いですよね。
これまでは、グローバルスタンダード=米国という図式が
強かったわけですが、日本独自の文化や考え方が世界に
じわじわと浸透しつつあります。
その先鞭をつけているのがポップカルチャー。
端的に言えば、萌え系文化です。
ポップカルチャーの中でも、特に日本のコミック(漫画)が、
海外でもすごい人気なのはご存知ですよね。
日本の漫画本は、単行本などと同様「右開き」です。
つまり、右から左へと読んでいきます。
でも、洋書を手にとってもらえればわかりますが、
欧米では逆の「左開き」ですね。
左から右へとノンブル(頁数)が増えます。
ですから、日本のコミックが輸出される時は、
右開きから左開きに製本形態を変えるため、
左右を入れ替えて、つまり裏返して印刷されていました。
この結果、日本漫画のキャラクターの多くは、
輸出版(翻訳版)では、左利きになっていました。
ところが、これはオリジナルと違う、本物じゃないということで、
右開きで製本された日本漫画の翻訳版が増加しているです。
日本のコミックパワーが、欧米の書籍業界のスタンダードを
日本流に染めつつあるというわけです。
投稿者 松尾 順 : 02:01 | コメント (0) | トラックバック
禅問答は何のため?
禅問答は何のため?
この疑問が多少解けました。
(あくまで私の理解の範囲ですが)
芥川賞作家・僧侶の玄侑宗久さんによれば、
禅問答は、「世の中のことにはすべて原因と結果がある」
といった、硬直的な思考を壊すためのものなんですね。
実際、ものごとの変化は、因果関係だけでなく、
シンクロニシティ(共時、あるいは同期)、パラレル(並列)と
いった関係でも発生していますからね。
「拍手を打ったとき、音が鳴ったのは右手か、それとも左手か」
なんて公案は、まさに因果関係では説明できないことです。
常に、ものごとを分析的・要素還元的に見るのではなく、
全体的・包括的にあるがままを見るという思考も大切だという
ことでしょう。
投稿者 松尾 順 : 02:00 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(4)「Web3.0革命」へ
田坂氏は、「Web2.0革命」の3つの革命、すなわち、
・「衆知創発の革命」
・「主客融合の革命」
・「感性共有の革命」
に導かれ、
「企業」も「市場」も「社会」も、そして
「商品」も「サービス」も「ビジネス」も、
すべてが急激な進化を遂げていくと述べます。
さらに、田坂氏によれば、
これから始まる「ユビキタス革命」が「Web2.0革命」に
融合することによって、「情報革命」は
「Web3.0革命」
に向かっていくのだそうです。
では、「Web3.0革命」をもたらす
「ユビキタス革命」
とはどんなものでしょうか?
それは、次の3つの革命として捉えることができます。
---------------------------------------------
・「個人」のユビキタス化
すべての個人が、情報端末を身に着けるようになって
いくことです。「携帯電話」は個人のユビキタス化を
進展させる最も典型的な情報端末です。
ただ、携帯電話だけでなく、自動車や、冷蔵庫、テレビ
などの家電品もまた、情報端末として進化するため、
ますます「個人」のユビキタス化を進展させますよね。
・「商品」のユビキタス化
今後、多くの商品がICタグを内蔵し履歴情報を保持するように
なり、また、商品の表面にはQRコードなどの
「二次元バーコード」が表示され、そのコード経由で
当該商品のサイトに接続できるようになります。
こうして、すべての「商品」が、自分自身について語り、
顧客と対話するようになります。
・「空間」のユビキタス化
たとえば、ホテルのロビーに到着した客のポケットの
ICカードをフロントの情報端末が読み取り、
その客の名前と利用履歴が表示される。
そして、予約した部屋に入ると、客の好みの室温と
好みの香りやBGMが流されている。
このように、すべての空間が、顧客の気持ちを読み、
顧客が望むことを迅速に行う、顧客の「コンシエルジュ」
になっていきます。
---------------------------------------------
さて、この「ユビキタス革命」は、
「情報共有」
の意味を根本から変えてしまいます。
これまでの「情報共有」は、
あくまで人間同士の情報共有を意味していました。
しかし、「ユビキタス革命」では、「情報共有」という言葉は
「人間同士」ではなく、「人間」と「商品」、「空間」の
情報共有を意味するようになっていきます。
上記の3つのユビキタス革命で示したように、
「人間」、「商品」、「空間」のすべてが情報端末を備え、
互いに対話を行うようになるからです。
しかも、この「情報端末」は
「Webの世界」
への出入り口(ゲートウェイ)としても働くようになります。
その結果、すべての「リアル空間」が「ネット空間」と
融合していきます。
リアルとヴァーチャルを分ける考え方はもはや古い。
田坂氏によれば、
「リアル空間」が「ネット空間」と
融合した快適なライフスタイル
それが、
「Web3.0革命」
がもたらしてくれるものです。
具体的なイメージはまだまだはっきりしてませんが・・・
投稿者 松尾 順 : 10:46 | コメント (0) | トラックバック
これから何が起こるのか(3)「Web2.0革命」の深まり
田坂氏の示す「Web2.0革命」とは、
次の3つの革命が基軸となっています。
---------------------------------------------
・「衆知創発の革命」
誰でも、多くの人々の智恵を集め、新たな智恵の創発を
促すことができるようになる革命。
・「主客融合の革命」
情報の発信者、受信者、あるいいは生産者、消費者といった
これまで別々のもの、すなわち「主」と「客」が一体化し、
融合し、区別がなくなっていく革命。
・「感性共有革命」
人々が、「ナレッジ」(知識)だけでなく、
感情や感動、感覚、感性を共有できるようになる革命。
---------------------------------------------
では、上記3つの革命が、今後どのような深まりを
見せていくのでしょうか?
まず、「衆知創発」は「共感創発」の革命に向かいます。
「衆知」を集めて「創発」を促す方法は、
オープンソースとも呼びます。これは、リナックスのような
ソフトウェアのプログラム開発で採用されている手法ですね。
今後は、このオープンソースの手法がプログラムだけでなく
あらゆる分野に適用されていきます。
限られた専門家の知、すなわち「専門知」よりも、
たくさんの人の知恵を集めた「集合知」の方が正しい答えに
到達できる可能性が高いこともあるからです。
そして、電車男の例で見られたような、
一人の恋愛の行方を2ちゃんねるのコミュニティが応援し、
それぞれの思いが掲示板を通じて伝わっていくことで、
知恵だけでなく「共感」が生まれていく。
みんなの思いが深まっていく。
こんな
「共感創発」
の場があちこち生まれていくことになります。
次に「主客融合の革命」は、
アルビン・トフラーが「第三の波」で予言した
「プロシューマー(生産する消費者)」
を現実のものとしつつあります。
これまでも、消費者のアイディアが開発に
偶然のきっかけで、生かされることもありました。
しかし、今は、ネットベンチャー「エレファントデザイン」が
運営する「空想生活」のように、
消費者の要望を集めてメーカーに開発してもらう
「プロシューマ型開発」
がネット革命によって「仕組み化」されつつあるのです。
製品開発だけではありません。
マーケティングもまた、「顧客」が「企業」に替わって
マーケティングを行うようになってきています。
すでに確立された仕組みのひとつが「アフィリエイト」
ですよね。(ただし、自分が本当に良いと思える商品を
紹介しているかどうかが重要ですが)
顧客が、企業に替わって商品開発、マーケティングを
行う時代、それは
「主客融合革命」
によってもたらされているというわけです。
そして、「感性共有の革命」は、既存のマスメディアの
在り方を根底から変えていこうとしています。
なぜなら、「感性共有革命」は、
これまでマスメディアを担ってきた限られたクリエーター
だけでなく、「無数の無名の草の根の人々」が行う
「草の根メディア」
が社会に対する影響力を高めているからです。
ただ、ここで留意しておきたいのが、
既存の「マスメディア」と「草の根メディア」は
対立関係にあるわけではないということです。
むしろ、お互いをうまく結びつけようとする試みを通じて、
「相互浸透」「相互進化」
のプロセスを加速させています。