シンプルマーケティング(19)DCCM理論
シンプルマーケティングでは、
「プロダクトコーン理論」
と並ぶ、重要なオリジナルの理論として、
「DCCM理論」
があります。
DCCMとは、コミュニケーションを効率的、効果的に
行うために必要な要素の総称です。
具体的には次のとおり。
D:Differenciating =差別性
C:Competitive =優位性
C:Convincing =説得性
M:Marketability =市場性
DCCM理論は、
商品コンセプト開発や広告メッセージ
を開発するにあたって考慮しなければならない
「基本価値基準」
だと、森さんは述べています。
では、上記で示したDCCMのそれぞれの要素について
簡単にご説明しましょう。
●D:Differenciating =差別性
生活者が自社商品に注目してくれるためには、
まず、他製品との「違い」、すなわち「差別性」が重要。
「差別性」がなければ、膨大な商品に埋没してしまい、
そもそも注意さえ引くことができないのが現状ですよね。
なぜなら、社会心理学者のミルグラムが言うように、
商品や広告がはんらんする現代消費社会において、
生活者は固有の情報(特定ブランドの情報)を収集する時間を
できる限り短縮しようとし、そのため重要でないと思われる
情報は、極力無視する傾向があるからです。
なお、「差別性」とは、他製品との純粋な違いであって、
良し悪しや、好き嫌いといった判断は含まれていない点
ご注意ください。
良し悪し、好き嫌いに関係するのは、
次に紹介する「優位性」です。
●C:Competitive =優位性
生活者をまず振り向かせるには、「差別性」がまず必要とは
言え、それだけで終わる商品は「キワモノ」です。
息の長い、売れ続ける商品を生み出すためには、
優れた機能、性能、品質、あるいは利便性、手に入れやすさ、
ステータスシンボル性など、「優位性」を備えていなければ
なりません。
●C:Convincing =説得性
生活者を購買行動に向かわせるためには、
「説得力」
を高める必要があるということです。
私なりに解釈すれば
「買うべき理由」
を適切に示すということでしょうか。
説得力は、まず、商品の素材や製法高めることができます。
たとえば、「カシミヤ100%」と言われれば、
それが真実であると信頼できる限りは、説得力ありますよね。
デザインも、説得性を高める要素になりえます。
優れたデザインは、それだけで高い価格設定が可能に
なったりしますよね。
また、すでに確立されたブランドは、
そのブランドが冠されているだけで「買うべき理由が明確」です。
すなわち「説得性」が高い。
だからこそ、「ブランド」には高い価値があるわけです。
さらに、「説得性」を別の視点で高める例として、
シンプルマーケティングでは、
「片面提示」「両面提示」
が紹介されています。
「片面提示」とは、商品のプラス面だけを伝えること。
「両面提示」は、商品のプラス面と同時に、マイナス面も
伝えることです。
「片面提示」は、比較的低学歴で他人に判断を依存する傾向が
ある人に効果的だと言われています。
一方、「両面提示」は、高学歴で自立心の高いタイプに効果が
あります。
ただ、現代の生活者の大半は、ネットの普及もあって
情報をしっかり集め、じっくり検討する購買行動を取るように
なってきてますから、自社の都合のいいことだけしか言わない
「片面提示」は、説得力が低く、また信頼を損ないかねない
やり方だと言えます。
基本は、良いことも悪いことも正直にありのままに伝えることで
かえって「説得性」が高まると考えるべきでしょうね。
●M:Marketability =市場性
「差別性」「優位性」「説得性」は、
商品や広告のメッセージが個人に効率的に到達するように
編み出された手法です。
しかし、商品も広告も同一のメッセージで大量の生活者に
訴求しなければならない以上、ターゲットとなる生活者が
十分な数存在しているかをチェックする必要があります。
すなわち「市場性」を見極めるということです。
どんなに「差別性」「優位性」「説得性」を兼ね備えた
すばらしい商品であっても、ユーザーがごく一握りに限定されて
しまうようなものなら、継続的な売り上げ確保ができない
ですからね。
このDCCM理論は、
企業や商品のチェック(評価)に応用できますし、
プロダクトコーン理論やプロダクトライフサイクルと
組み合わせながら、効果的なマーケティング戦略の立案に
活用できるツールです。
詳細はぜひ、シンプルマーケティングで!(^_^)
◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)
投稿者 松尾 順 : 2006年12月28日 11:32
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