シンプルマーケティング(18)始めちょろちょろ、なかぱっぱ

シンプルマーケティングのレビューは、
今回も含めてあと3回で終了の予定です。

当初全10回の予定でしたが、思わずはまってしまいました。
結局倍の全20回シリーズとなりました。長引かせてすいません!


ひょっとして、本は買わなくてもいいんじゃないかと
感じてらっしゃるかもしれませんが、そんなことありませんよ。

肝心なことはあえて、隠してあります。(^^ゞ
ぜひ、元本「シンプルマーケティング」を読みましょう。


では本論。


まずは、前回ご紹介した2つの「売り方」の戦略、

・スキミング戦略
・ペネトレーション戦略

の簡単な復習です。


スキミング戦略は上澄みのイノベータに訴え、
次にアーリアダプタへ浸透させ、最後にターゲットにシフトする
アプローチ。

一方、ペネトレーション戦略は、
最初から、多数派のフォロワーを狙っていく売り方でした。

ペネトレーション戦略は莫大な資金力を必要とするため、
限られたごく一部の企業にしか採用できないアプローチです。

実質的には、各カテゴリーのトップ企業だけに許された戦略と
言えます。


しかし、森さんによれば、
日本の上場企業の大半はペネトレーション戦略を行っています。

トップ企業に太刀打ちできる流通力、資金がないのに
無理な物量戦略を推し進め、結果として低迷している企業が
実に多くなっています。


森さんはこうした企業を「ミニ大企業」と呼んでいます。

「ミニ大企業」の問題は、長期的な戦略にのっとって
ペネトレーション戦略を実施しているわけではない点です。

ただ単に「他社がやっているから遅れてはまずい」と
いたちごっこを繰り返した結果、
たまたま擬似ペネトレーション戦略になっている企業が大半。


では、トップ企業以外の下位企業は何をするべきなのか。
森さんの処方箋は次の3つです。

・商品開発力を高めて付加価値の高い商品を出すべきである。
・商品の数とターゲットを絞り込むべきである。
・流通の効率を上げるべきである。

*「商品開発力」は、技術力だけでなく、
 ブランドマネジメント力を含みます。


したがって、基本的には大半の企業では、
イノベーターからフォロワーへと落とし込むスキミング戦略を
取るしかないということになります。


さて、森さんは、スキミング戦略の適切な方法を
日本伝統のごはん炊きにたとえています。

●始めちょろちょろ ・・・深く静かに

イノベータに対しては、テレビ広告などの派手な活動はせずに、
クチコミ誘発などの仕掛けを着々と進めておく。
この段階で派手にしかけると、イノベータがひそかに楽しむ
期間が短くなり、短命商品になる可能性あり


●中ぱっぱ じゅうじゅうふいたら ・・・派手に

商品がアーリアダプタに到達する直前直後から派手に
販売やマーケティング活動を実施します。

イノベータに受けた商品を「内輪受け」で失速させないために、
半ば強引にアーリアダプタにつなげていく時期です。


●火を引いて 赤子が泣いてもふたとるな ・・・おとなしく

この段階では、当該商品をキャッシュカウ(利潤を収穫する商品)
として扱います。

商品がすでにプロダクト・ライフサイクルの成熟期に入ったと
考えて、ここで得た利益を新製品の開発や他商品の
成長期マーケティング投資の原資にあてます。

したがって、広告投資の目的は、「知名度を上げる」
のではなく、「知名度が下がらないように維持する」
に変化します。

戦略も、「競合に勝つ」のではなく、
「競合に負けない」ようにし、この延長として、
ブランド拡張、既存ラインナップの統廃合を進めます。

投稿者 松尾 順 : 2006年12月27日 03:42

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コメント

「小さく生んで大きく育てる。」
安産祈願のおまじないですね。^^;
Web2.0で言う“永遠のベータ版”なんてコンセプトは、旧来から“フィジビリティスタディ”や“テストマーケ”と称して実施されてきたでしょうし、それもイノベーター達を商品開発に巻き込むスキミングのケースといえるのでしょうか。

投稿者 課長007 : 2006年12月27日 12:54

課長007さん、まいど。

そもそも、すべての商品、サービスは、本質的に「ベータ版」と考えるのが健全じゃないかと思いますね。

というのも、ロングセラーは時代の変化に合わせて、微妙にパッケージや味や品質を変えてきているわけです。

逆に言えば、ベータ版とみなさない商品は、まさにキワモノ。今売れたらそれでよしというやつでしょう。

投稿者 松尾 順 : 2006年12月28日 16:28

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