サントリーの桜缶事件
「おたくがやってることは詐欺じゃねえのか!」
サントリーお客様センター(コールセンター)に
すごい剣幕で消費者から電話がかってきました。
この消費者が激怒していた理由は次のようなものでした。
(この消費者を仮に「遠藤さん」としましょう)
春先のことです。
遠藤さんは、桜の花びらを缶の表面にあしらったサントリーの
発泡酒「純生」をコンビニで買いました。
季節限定デザインの「桜缶」です。
遠藤さんは、
「これはお花見にぴったりだ!!」
と思ったんでしょうね。
今度は量販店で24缶入り箱を花見用に購入。
もちろん、箱の表面にはピンク色の鮮やかな桜の花が
咲いていました。
さて、花見の日、遠藤さんがいざ飲もうと楽しみに
ケースを開けたところ、中味は普通のデザインの純生!
「なんだよう、普通の缶じゃねえか!」
期待を持たせた花見仲間のひんしゅくも買ってしまい、
頭にきて、サントリーに電話をかけてきたというわけです。
サントリーとしては、
「桜缶」はコンビニ向けなどの単品販売向け。
一方、量販店などに流す24本入りは、
外装だけが桜のデザインで中味の缶は通常のデザインにする
というのは、別に消費者をだますつもりはなく、おそらく
生産ラインの都合でそう決めていただけのことでしょう。
しかし、まさか、遠藤さんのようなクレームが来るとは
思ってもいなかったんですね。
これは、要するに「顧客視点」に欠けていたということです。
サントリー内部では、これを
「桜缶事件」
と呼び、「顧客視点」の重要性をサントリーの社員に
認識してもらうための「CS(顧客満足度)研修」で
取り上げているそうです。
同様に、顧客視点の大切さを社員に気づかせるための
失敗事例として上記研修で取り上げているものに、
伊右衛門の不適切なラベル表示があります。
伊右衛門では、以前、
暖めて飲める345mlのペットボトルに赤字で
「ホット専用」
と表示していました。
サントリーとしては、
これでなんの問題もないと思っていたわけです。
ところが、お客様センターにはこんな電話が次々と
かかってきました。
「ホット専用とあるけど、冷やしても大丈夫なの?」
「もうさめてしまったんだけど、飲んでも大丈夫ですか?」
サントリーは、
消費者からこんな問い合わせを受けて初めて
「ホット専用」
というラベル表現の不適切さに気づかされたのです。
今は、こうした消費者の声を受け、ラベル表示を
「温めてもおいしい・・・」
といった表現に改めています。
いやあ、お客様の立場になって考えることって
本当に難しいものですよねぇ・・・
サントリーではこうした失敗を重ねながら、
お客様センターで受けた消費者からの問い合わせや
ご指摘(クレームとは言いません)を
できるだけ迅速に商品改良に結びつけることに
尽力しているそうです。
*以上は
I.M. Press 第6回ビジネスセミナー
“顧客を巻き込む”マーケティング戦略
における
サントリー(株)お客様コミュニケーション部
東京お客様センター長 松尾正二郎氏
の講演よりご紹介しました。
投稿者 松尾 順 : 2006年11月28日 17:55
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