シンプルマーケティング(8)プロダクトコーン理論

シンプルマーケティングの内容紹介、まだまだ続けます。
まだたくさん面白い話が山積み状態で残ってますから。


さて、今回取り上げる「プロダクトコーン理論」は、
シンプルマーケティングのハイライトとも言える理論です。

実にシンプルで、わかりやすい「総合的な商品定義」です。


プロダクトコーンは、次の3つの要素で構成されています。

・規格=企業側の商品定義(ハードな定義)
・ベネフィット=生活者の得するコト、モノ(ソフトな定義)
・エッセンス=商品が持つ性格(擬人化)


「規格」とは、商品の大きさ、薄さ、重さ、機能、性能など、
いわゆる測定可能な特徴のことです。

しかし、規格だけでは、
その商品を購入すべき理由が明確にはなりません。

昔からよく知られた言葉ですが、
人は、「ドリル」自体が欲しいのではなく、
ドリルを使うことで得られる「穴」が必要だからですね。


したがって、その商品を買うとどんないいことがあるのか、
すなわち「ベネフィット」を潜在顧客に伝える必要があります。


また、商品をあたかも「人」であるかのように形容し、
性格づくりを行うことは、当該商品を他社商品と差異化し、
記憶を強化するとても効果的な方法です。

これが「エッセンス」です。


具体例だと、たとえば、
花王の「ヘルシア緑茶」のプロダクトコーンは、

規格=厚生労働省の特定保健用食品の認可を受けた、
   急須で入れたお茶の約2倍のカテキンを含むお茶

ベネフィット=飲むだけで楽に、体脂肪を低減する

エッセンス=権威

となります。

ここで、エッセンスが「権威」となっているのは、
当時、緑茶飲料では初めてという「特定保健用食品」認可
という「お上のお墨付き」が、ヘルシアの性格づけに、
高い差別優位性を与えていたからです。


ヘルシアは出始めのころ、私もずいぶん飲んでましたが、
カテキンが多いという規格は、むしろ「苦い」という
マイナス要素であったにもかかわらず、
「やせる」というベネフィットに加えて、
特定保健用食品という「権威」のエッセンスがあったことが、
購入していた最大の理由だと思います。


ところで、プロダクトコーンを適用すると面白い
最新の事例としては、キーコーヒーのレギュラーコーヒー

「ご褒美コーヒー」(2006年9月発売)

があります。

ターゲットは20-30代の女性。

当商品は、

「和風スウィーツと愉しみたい」
「洋風スウィーツと愉しみたい」

の2種類。

キーコーヒーの女性社員の意見に基づき、
和風、洋風のそれぞれに合う味になるように
ブレンドしてあるそうです。

また、なぜ「ご褒美コーヒー」かというと、
日々がんばっている女性が、
自分にプレゼントする「スウィーツ」に合うコーヒーは、
「ご褒美」にふさわしい洗練された香りと深い味わいが
求められているという考えのもとに開発された商品だからです。


この商品のプロダクトコーンで見ると、


規格:和風・・・上品でやさしい甘みに調和する、豊かなコクを
        持った苦み系の味わい
   洋風・・・濃厚でまろやかな甘みに調和する、豊かな香りを
        持った酸味系の味わい

ベネフィット:スウィーツのおいしさがより引き立つ

エッセンス:ちょっとした贅沢


となるでしょうか。


レギュラーコーヒーは、
豆の種類とブレンド、煎り方以上の加工ができない素材型商品
ですから、なかなか性格づけの難しい商品です。

しかし、スウィーツとうまくカップリングすることによって、
「エッセンス」を上手に訴求することに成功していますよね。


「ご褒美コーヒー」の売れ行き、好調のようです。


◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 2006年11月09日 15:41

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コメント

ご褒美コーヒーの例、おもしろいですね。
コーヒーを単独で主役として位置づけることが多い中、従属商品としての位置づけは珍しい。
なかなかの目の付け所です。

さて、プロダクトコーン理論はメイン理論となっただけあって、エピソードには事欠かないのですが、最初に公開したときの話を^^
以前、所属していたコンサルティング会社のセミナーが、プロダクトコーン理論の初舞台でした。20年前です。それまでも、報告書には登場していましたが、あくまでもクローズドな場です。300人を越すクライアントや企業担当者を前に発表したのは初めて。

今では仲の良い同僚のコンサルタントが「あんなもの、机上の空論だよ」と、面と向かって批判していたものです。それは、セミナー当日までそうでした。
ところが、セミナーのアンケートで、プロダクトコーンが圧倒的に評価が高いのが分かった途端、彼は一気にファンになり、いまでは「●●式(彼の名前)バリエーション・プロダクトコーン」まで作ってしまう始末^^

彼とは22~23年のつきあいですが、そういった、素直というか柔軟というか、クライアント指向(消費者指向)なところが彼の好きなところです^^

ちなみに、そのときの事例がライオンのルック^^
今では押しも押されぬ大きなブランドですが、当時は紆余曲折があってようやくヒットした商品でした^^
事前に相談も了解も取っていなかったので、セミナーを見て一番びっくりしたのはライオンの担当者だったそうです^^

投稿者 森@シストラット : 2006年11月24日 16:27

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