シンプルマーケティング(7)ソフトウエア的市場細分化

マーケットシェアを考えるとき、

市場全体(100%)をどこまでとみなすか

という点が重要になってきますよね。


たとえば、現在、ビール風アルコール飲料は、

・ビール(従来の)
・発泡酒
・第三のビール

と3つのサブカテゴリー(市場)に分けられていますね。


でも、おそらく消費者はこの3つのカテゴリーを
明確には区別していません。

もちろん、原材料が違うことくらいは理解してますが、
価格が安いか高いかだけで、要するにみんなひとくくりに
「ビール」です。

実際、平日は安いビール(第三のビール)を飲み、
週末は、ゆったりと高いビール(ビール、特にプレミアムタイプ)
を飲む、といったように飲み分けてたりします。


ですから、たとえ発泡酒のサブカテゴリーでトップシェアを
持っているからといって、油断することはできませんよね。

実際には、発泡酒カテゴリーだけではなく、
従来のビール、第三のビールカテゴリーの他のブランドとも
競合関係にあるからです。

つまり、こうした市場の切り方を間違ってしまうと、
「クープマンの目標値」を適用することも無効となりますし、
誤った市場分析に基づくマーケティング戦略は失敗に終わる
ことになります。


さて、市場をとらえる上で重要な市場の切り方、
いわゆる「市場細分化」は、
従来はハードウェア的なものが主流でした。

たとえば、「地域」や「規格」などで分けるやり方です。

上記ビール風飲料も、まさに

「原材料の種類や配合比率」

で分けたハードウェア的な市場細分化です。


しかし、消費者は、

発泡酒が飲みたい、
第三のビールが飲みたい

というハードウェア的な理由でブランドを選択しませんよね。


むしろ、

「喉の渇きを潤したい」

「手ごろに酔いたい」

といった、森さんによれば

「ソフトウェア的」

発想がまず先にあり、次にそのソフトウェアに最適な

「ハードウェア」(ブランドの種類)

を選択するという流れで購買行動が起きるのです。


したがって、市場細分化は、ハードウェア(規格)に
こだわりすぎず、もっとソフトウェア的なアプローチを
取り入れていく必要があります。

具体的に例示すると、清涼飲料カテゴリーでの
ハードウェア的市場細分化は、

炭酸飲料、果汁飲料、無果汁飲料、コーヒー系飲料、
新分野飲料(スポーツ飲料、ミネラルウォーターなど)

といったものです。


一方、ソフトウェア的市場細分化だと、

・「身体にいい市場」(機能性飲料や、100%野菜飲料など)
・「体に悪くない市場」(ミネラルウォーターなど)
・「適度に甘い市場」(カルピスウォーターなど)
・「甘くない市場」(ウーロン茶、お茶など)

となります。


ソフトウェア的市場細分化の方が、
より消費者のヴァリュー(価値観)やクライテリア(生活基準)
を反映したものになることがわかりますね。


◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 2006年11月01日 12:42

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コメント

本には明確に書いていませんが、この「ソフトウェア的細分化」は、プロダクトコーンで言うところの「ベネフィットによる細分化」「エッセンス(イメージ)による細分化」のことなんです。
だから「ハードウェア的細分化」は当然「規格による細分化」です^^

投稿者 森@シストラット : 2006年11月01日 18:45

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