シンプルマーケティング(6) 「クープマンの目標値」の意外な適用例

マーケットシェアの持つ「意味」を説明した

「クープマンの目標値」

の考え方は非常に面白いものですが、実は、
ランチェスター戦略の中ではちょっとしか触れられて
いないそうです。
(だから、ランチェスター戦略の「基本理論」の
 ひとつとは言えない)


また、「クープマンの目標値」について詳細な解説が
あるのは「シンプルマーケティング」だけなんだそうです。

以上、シンプルマーケティングの著者、
森さんから教えていただきました。

ありがとうございました。


さて、「クープマンの目標値」は具体的には次のとおりでした。

(1)独占的市場シェア ・・・73.9%
(2)相対的安定シェア ・・・41.7%
(3)市場影響シェア  ・・・26.1%
(4)並列的上位シェア ・・・19.3%
(5)市場的認知シェア ・・・10.9%
(6)市場的存在シェア ・・・ 6.8%


このクープマン、マーケットシェアの解読だけでなく、
ほかにも意外な方面への適用が可能なことが
シンプルマーケティングに紹介されています。


たとえば、チラシやポスター。

チラシの中にさまざまな商品(情報)を掲載しようとする時、
各商品に割り当てるスペースをほぼ同じ大きさにレイアウト
してしまうデザイナーがいますよね。

具体的には、5つの商品にそれぞれ5分の1ずつのスペース
を割り当てるといったやり方です。

これは、クープマンに照らせば間違い。

なぜなら、チラシの全面積に占める各商品のスペースが
小さすぎて、閲覧者の十分な注目を獲得できないからです。

5分の1のスペースということは、紙面シェアで20%。
クープマンで言う

「市場的認知シェア(10.9%)」

の水準は超えていますが、「市場影響シェア(26.1%)」
までは達しておらず、注目度が不十分です。


そこで、クープマンをポスターのレイアウトに適用すると、

・「最も言いたいこと(売りたい商品)」に紙面の約半分を割く
  →相対的安定シェア(41.7%)の水準

・「次に言いたいこと」に、紙面の約4分の1を割く
  →市場影響シェア(26.1%)水準

・「最後に言いたいこと」を残り10%に当てる
  →市場的認知シェア(10.9%)の水準

というのが理想的な紙面シェアの配分となります。


端的に言えば、レイアウトにメリハリをつけるということです。

ただ、クープマンの目標値というガイドラインを
使ってデザインすれば、仮に素人がやったとしても
ある程度効果のあるチラシが作成できるというわけです。

クープマンはチラシのような平面だけでなく、店頭ディスプレイ
などの立体のデザイン適用可能だそうです。


ただ、クープマンをデザインに適用する場合の留意事項があります。

それは、面積だけでなく、消費者が目に止める印象度を加味しないと
正確なシェアを算出できないという点です。

たとえば、同じ面積であったとしても色の使い方、組み合わせ方で
それを見た人に与える印象度が違ってくるからです。


◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 2006年10月31日 13:15

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コメント

 問題意識の違いが前提になっているので、多少..揚げ足取り的コメントになっていことは許して下さい(→私はセールスパースンとしての“売りたい魂”をベースに考えています)。

 まず「5つの商品にそれぞれ5分の1ずつのスペースを割り当ててしまうデザイナーが駄目」というのは、その通りと思うのですが“①ポスターや店頭ディスプレイ”の話と“②チラシや売場”の話を一緒に語ってしまうと誤解が生まれると思います。

 例えばポスターであれば、紙面における各要素の面積シェアと紙面全体がターゲットに与える印象に対する影響力、マーケットにおける各ブランドシェアと各ブランドがマーケット全体に与える影響力は、どちらも“印象”の話でしょうから、クープマンで説明できると思います(→店頭ディスプレイも多分同様でしょう)。

 一方、チラシや売場のレイアウトは“印象”に対する影響力ではなく“売上げ利益”に対する貢献力で評価されるので、より多くの売上げ利益に貢献する商品により多く割り振られるというのがセオリです(→単純に言うと、1万円の商品には千円の商品の10倍のスペース、同じ値段でも数が10倍売れる商品には10倍のスペースを..ということになります)。

 ただ、スペースの割り振りにも限界効用のようなものが発生し、これは「全面積に占める各商品のスペースが小さすぎて、閲覧者の十分な注目を獲得できないから」といったスペースを小さくした場合だけでなく、大きくし過ぎた場合にも発生します。これをスペース当たりの効率、該当スペースが生み出す売上げ利益を該当スペースのコスト(印刷コストや家賃)で割ったグラフに表すと、y=ax (→コストが10倍になれば、売上げ利益も10倍求められる)といった直線にはならず、右斜めに傾いたS字曲線を描き、このS字曲線がy=ax のグラフを上回ったスペースが、その商品にとっての適性スペースということになります(→蛇足と思いますが、このS字曲線は商品毎、それもタイミングにより異なり、永久にy=axのグラフを越えない商品もあります)。

 とは言うものの、あまり効率だけでスペースの割り振りをやっていると、無味乾燥で詰まらないチラシや売場になってしまうので、ターゲットの気持ちを高揚させ、ショッピングの楽しさを演出するために、あるいは売り手としての提案“言いたいや売りたい”を主張するために、前述のセオリを多少崩し、松尾さんの説明にあったような、売場やチラシの“印象”がターゲットの購買行動に与えるに影響についても加味する..といったことになります。

 どうも..売るということをベースに考えると、理論ですっきり説明の付かない、曖昧な部分や矛盾、極端であるだけでなく中庸である必要とかもあり、コメントも..揚げ足取りとか言いながら、批判なのか同調なのか、纏まりの無い結論になってしまい申し訳ないです。

 “売りたい魂”を標榜する私としては、チラシと聞いて、つい黙っていられなくなり、コメントしたのですが、もしかしたら松尾さんの言っているチラシというのは、スーパーのチラシとかではなく、メーカーの製品パンフレットとか(直接的に売るためのチラシではなく、製品の機能やイメージを印象付けるためのチラシ)のことだったのかも知れませんね。

投稿者 ガズーダ : 2006年10月31日 15:57

> 消費者が目に止める印象度を加味
これが実は結構大きくて、例えば、たばこ屋さんの店頭で調べると、販売台と下の陳列ケースの間の細いサッシのスペース(縦2-3センチ、横1.5メートルくらい)に貼られたステッカーの印象率が40%にまで達したりしたこともありました。
店頭の面積比でいえば5-8%程度しかないのに、です。

だから

●原則は面積で考え
●それに加えてデザインを工夫すると、もっと印象度(クープマンの目標値での)が上がる

ということなんです。

そう考えていくと、デザイナーの力量とは本当に大事で、「デザイナーなんて、たくさんいるから、使い捨てだよ」なんていう今の企業の風潮は大きな間違いだということを、身体の随から思い知らされます。

逆に言えば、「力のあるデザイナーがいないときは面積で考える方が正確で効果がある」ということです。

投稿者 森@シストラット : 2006年11月01日 18:35

> 逆に言えば、「力のあるデザイナーがいないときは面積で考える方が正確で効果がある」ということです。

 それは、デザイナーだけでなく、販売者側にどうしたら売れるかということに関する知恵やアイデアが全く無かった場合と書き加えるべきで、もし本当にそうであれば(笑)面積で考えるのが正確ということになるかも知れませんね。

 ただ、それは机上の理論であり、そんな馬鹿な話が、少なくとも販売の現場に実際にあるとは到底想像し難いのです。

 地球上に水や空気、重力があるのと同様に、販売者は売りたいという欲望、そのための知恵やアイデアを持っているもので、それが正しく伝わればクリエーティブだって応えないはずはありません(→もちろんそれらが成功するとは限りませんが)。だから、それらが無いと言う前提の話はナンセンスというか..議論にならない気がします。

 だって、販売の立場からすれば、売るための知恵やアイデアが本当に全く無く、頼りになるクリエータも居ないのであれば、面積による割付だなんで、馬鹿でアホなことと一緒に、制作も販売も中止にすると思いまから(笑)。

投稿者 ガズーダ : 2008年06月03日 00:10

ガズーダさん、

一概に机上の空論とも言えないんじゃないですかね・・・

それなりの知識を持ったクリエーターに頼むお金がない
中小企業の場合、素養のない現場担当者が、自らチラシ
とかを作るらざるを得ないわけです。

そんな時には、上記のような基本ルールに忠実に従った
ほうが、勝手な個人の好みや思い込みで作るよりも効果が
高くなるでしょうから!

投稿者 松尾順 : 2008年06月03日 08:41

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