シンプルマーケティング(5)市場をとらえる・・・クープマンの目標値
市場を把握する上で重要な指標のひとつは、
「マーケットシェア」(市場占有率)
ですよね。
でも、自社と競合他社の数値を並べて、
単純にうちが大きいとか、小さいとか言ってるだけじゃ、
マーケティングの意思決定の役には立ちません。
シンプルマーケティングでは、マーケットシェアの持つ「意味」
を「クープマンの目標値」で説明してあります。
米国の数学者、クープマンは、シェアと市場推移の関連性を
分析し、シェアをみきわめるポイントとして6つの数字を
上げています。これが「クープマンの目標値」です。
具体的には次のとおり。
(1)独占的市場シェア ・・・73.9%
(2)相対的安定シェア ・・・41.7%
(3)市場影響シェア ・・・26.1%
(4)並列的上位シェア ・・・19.3%
(5)市場的認知シェア ・・・10.9%
(6)市場的存在シェア ・・・ 6.8%
次に、それぞれのシェアの持つ意味を簡単に示します。
----------------------------------------------
(1)独占的市場シェア(73.9%)
要するに独占シェア、短期的にシェアがひっくり返る
可能性はほとんどない。
たとえば、ハンバーガー市場の日本マクドナルド。
(2)相対的安定シェア(41.7%)
市場で首位のブランドがこのシェアを占めている場合、
そのトップの地位は安定。不測の事態が生じない限り、
逆転されることはない。森さんは、このシェアを持つ
企業を「ガリバー」と呼ぶ。
たとえば、自動車市場の、トヨタ。
(3)市場影響シェア(26.1%)
この程度の数値で市場トップの企業は多いが、
逆転される可能性がある不安定なシェア。
ただ、このシェアを持っていると、競合他社が追随
せざるを得ないため、市場の主導権を握ることができる。
たとえば、広告市場の電通。
(4)並列的上位シェア(19.3%)
一位、あるいは二位に複数ブランドや企業が
ほぼ横並びに拮抗しているときに表れやすいシェア。
この位置にあるブランドや企業は互いにけん制しあって
混沌状態を抜け出し、市場影響シェア(261%)を目指す。
たとえば、テニスラケット市場のヨネックス、ダイワ精工。
(5)市場的認知シェア(10.9%)
市場において、ようやく存在が確認される水準。
生活者が、「こういうブランド(企業)もある」と
思い出してくれるレベル。
たとえば、デジタルカメラ市場の松下電器。
(6)市場的存在シェア(6.8%)
市場において、ようやく存在が許される水準。
これ以下のシェアなら、今後よほどの成長が見込めない限り
市場から撤退するのが賢明。
たとえば、ハンバーガー市場のロッテリア。
----------------------------------------------
ちなみに化粧品市場における花王は、
長年がんばってきたものの、「市場的存在シェア」を
わずかにクリアする程度でした。
カネボウ化粧品をなんとしても買収して。
シェアを上げる必要があったわけです。
現在、花王とカネボウのシェア合計は20%を超えますから、
「並列的上位シェア」のポジションにありますね。
このクープマンの目標値は、
ランチェスター戦略における基本理論なんですが、
不思議なことに、「ランチェスター戦略」は、
マーケティングの世界ではあまり知られていませんよね。
(営業の世界では結構知られていますが)
なぜでしょうねぇ・・・
さて、クープマンの目標値は市場をとらえる以外にも、
いろいろと適用可能な分野があります。
次回はそのあたりをご紹介します。
◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)
投稿者 松尾 順 : 2006年10月26日 13:11
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コメント
> このクープマンの目標値は、
> ランチェスター戦略における基本理論なんですが、
おもしろい(?)ことに、クープマンの目標値は田岡さんのランチェスター販売戦略(全5巻)には収録されていないんです。
つまり、彼はクープマンの目標値を主流理論とは捉えていないんですね。
この理論が載っているのは「ランチェスター・マーケティング参謀学(全3巻)」の第2巻「マーケティング予測的中学」で、2~3ページしか記述がないものをヒントに、私がメーカー時代から様々な検証を重ねていったものです(田岡さんの直接の弟子の方々はどうか知りませんが)。
なので、実はクープマンの目標値が最も詳しく解説されているのはシンプルマーケティングだけなんです。ネット検索をしても、シンプルマーケティングからの引用がほとんどです(引用元が書いてなくても文章で分かります)。
もちろん、松尾さんが次に書くだろう(笑)、応用例も私の検証から来ているものです。
> 不思議なことに、「ランチェスター戦略」は、
> マーケティングの世界ではあまり知られていませんよね。
> (営業の世界では結構知られていますが)
私も不思議なんですが、多分、
●当時(昭和50年代)はマーケティングという概念がクライアント企業自体にあまりなかったので、営業企画などの営業部門が受け入れ先として長く続いたので、営業戦略として根付いてしまった
●ランチェスターの田岡一門が、営業部門への応用としてセールスし続けたために、営業戦略となってしまった
が考えられます。
二つの組み合わせかも。
投稿者 森@シストラット : 2006年10月26日 18:10
クープマンがランチェスターの基本理論のひとつでは
なかったとは、大変失礼しました。
実は、田岡氏の原典は持っていないんですよね。
裏づけが不足していたことが、恥ずかしながらあらわに
なってしまいました。
よく考えてみると、いわゆる一般のマーケター
(という言い方は語弊があるかも)が語るマーケティングは、
主に広告・販売促進のことを意味するので、ランチェスター
戦略の理論はそれほど使えないですよね。
(クープマンを除いては!)
あまりマーケティングの枠組みではあまり広がらない理由の
ひとつがここにあるかもしれません。
投稿者 松尾 : 2006年10月26日 22:40
> 主に広告・販売促進のことを意味するので、ランチェスター
> 戦略の理論はそれほど使えないですよね。
そうとも言えないです。
射程距離の概念やスキミング戦略(ランチェスターではスキミング価格)などなど、かなり使えるものがたくさんあります(^^)v
投稿者 森@シストラット : 2006年10月27日 16:31
なるほど!
しかし、ランチェスターについて私は付け焼刃の知識
しかないことがさらに露呈しました・・・(・_・;
原典にもあたってちゃんと学びます。
投稿者 松尾 : 2006年10月28日 22:22
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