シンプルマーケティング(4)ロングセラー商品の秘密

シンプルマーケティングの中から、
ライフスタイル論と密接に関連している、

「ロングセラー商品の秘密」

が明かされている箇所もご紹介しときます!


まず、答えからズバリ。

森さんによれば、ロングセラー商品は、

「ニーズ」と「ウォンツ」

のバランスが取れている商品です。


なお、森さんによる「ニーズ」と「ウォンツ」の定義は
一般のマーケティングテキストに書かれているものとは
若干違います。

「ニーズ」とは、商品に対する基本欲求のこと。
たとえば自動車に対するニーズは、走る、曲がる、止まる
といった基本機能です。

「ウォンツ」とは、基本的機能以外に対する欲求。
デザイン性の高さや、希少価値などのことです。


一通りの基本機能が備わっていて、消費者の「ニーズ」が
満たされるなら、いちおう「商品」としては成立します。

しかし、「ウォンツ」が欠けていれば魅力の乏しい商品に
なってしまいますね。


さて、「ニーズ」と「ウォンツ」によって、
時代の変遷の中で生まれては消えるブーム現象を
説明することができます。


「ニーズ」は、時代が変わってもほとんど変化しません。
横軸に時間、縦軸に変化の度合いをとったグラフを描くと、
まっすぐな横棒になります。

「ニーズ」は、昨日ご紹介した、
ヤンケロビッチ博士の「価値観ヒエラルキー」では、
「ソース」や「ヴァリュー」と近い関係にある欲求です。

潜在的で変化しにくい部分というわけです。

一方、「ウォンツ」は、グラフに描くと、
心電図のように波打つ起伏の激しい変化を見せます。

時代によって大きく変化するのが「ウォンツ」。
価値観ヒエラルキーでは、「マニフェステーション」(行動)や
「テイスト」に近い関係にあります。

顕在的で変化しやすい部分ですね。


ブーム商品、つまり一過性の人気を集めるだけで終わって
しまう商品は、要するに「ウォンツ」しかとらえていない
商品なのです。

味はたいしたことはないけれど、
ファッション性だけで人気を集める飲み物は、
ブーム商品です。

あるいは、人気絶頂のタレントがデザインをしたことが
売り、でも、よく見るとたいしたことのない商品も
そうでしょう。

タレントの賞味期限が尽きると同時に、関連商品の寿命も
終わりますからね。


森さんは、
ここ二十年ほどで一挙に注目を集めた「環境問題」も
まさにウォンツ商品だと考えているそうです。

「LOHAS」のような環境志向は、一見ニーズのようですが、
実は、一種の表層的なライフスタイルということでしょうか。


これについては議論が分かれるところかも知れません。
というか、私は反対の意見を持っています。

2000年くらいまでは、
環境問題も単なるウォンツだったと思います。

しかし、最近の行き過ぎた拝金主義や
全世界規模で起きている環境破壊の問題を見聞きするにつれ、
これまでのように、人類が好き勝手に地球をもてあそんでいると、
地球滅亡は間違いないと、私個人としては思っています。

実際のところ、本当の意味での「自然に帰る」ことは
できないにしろ、「ニーズ」のレベルで環境問題に取り組む
という風潮が高まっているのではないでしょうか。


おっと、話がそれましたが、冒頭に書いたように

「ロングセラー商品」

は、ウォンツしか満たしていないブーム商品と違って、
ニーズとウォンツの両方をバランスよく満たしている商品です。

シャネル、ルイ・ヴィトンなど、
一流のブランドは、おおむねロングセラー商品ですよね。


ルイ・ヴィトンの品質の高さやアフターサービスの充実ぶりは
皆さんご存知かと思います。

でも同時に、画家の村上隆氏とコラボして
アニメチックなモノグラムデザインを発表するなど、
時代の要請にも応えていますよね。


また、ロングセラーの食品もいつも変わらぬ味と思わせながら、
実は、時代によって変化していく人々の嗜好にあわせて微妙に
配合を変えていますよね。


逆に、変化を続けるウォンツに応えることができていないために、
かげりの見えるロングセラー商品も出てきます。

「コカ・コーラ」がそうですね。

微炭酸・非炭酸を求める時代の流れ、甘み離れに対応できて
いません。(もちろん、爽健美茶などの別ブランドで、
ウォンツをカバーしているわけですが、肝心の本丸での対応は
成功していない・・・)


「ニーズ」と「ウォンツ」の視点で新商品を分析すれば、
それがブームに終わるのか、息の長い商品に終わるのか、
かなり高い確率で予測できるように思います。


◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 2006年10月24日 08:02

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コメント

ニーズとウォンツの(正確さは欠けますが)簡単な見分け方は
●人に言わなくても、自己満足でいいもの=ニーズ
●他人に言うとかっちょよく聞こえるもの=ウォンツ
です。

環境問題は、前者で語る人もいますが、人数から言えば後者です。
また、環境問題が「このままでは、住みにくい世の中になって、こんな社会では子どもは生みたくない」というような「身近なレベルで理解する」ようになれば前者です。実際、ゴミ問題を含めて、こういう身近なところを考え始める人が増えたので、徐々にではありますが「ウォンツ」から「ニーズ」に移っているところも認めます。

投稿者 森@シストラット : 2006年10月25日 18:38

森さん、まいどコメントありがとうございます。

ニーズとウォンツの見分け方、わかりやすいですね!
ウォンツは、社会心理学的には「承認欲求」(認められたい)
を満たしてくれるものということでしょうか。
(逆に難しくしちゃってますが・・・(^_^;)

環境問題については、アーリーアダプターがようやく取り入れ始めた段階と見ることもできますよね。まだまだフォロワーにまで到達していない・・・

投稿者 松尾順 : 2006年10月25日 22:39

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