新型プレステ(PS3)は、キャズム(断層)を超えられない?
ソニーが昨日(19日)、今期の業績下方修正を発表しました。
例のパソコン用リチウム電池のトラブルや、
来月発売される新型プレイステーション(PS3)の戦略変更
(値下げ)が影響しているようですが、
発売中プレイステーションポータブル(PSP)の
このところの販売不振も見逃すことはできませんね。
(日経産業新聞、20006/10/20)
PSP不振の理由は、魅力あるソフトが揃わなかったこと。
PSPのソフトで100万本超を売り上げるミリオンセラーが1本も
出ていないのに対して、任天堂の「ニンテンドーDS」は、
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」
を始めとして、10本がミリオンセラーを達成しています。
11月発売のPS3はPSPとの連携ができ、
過去のPSのソフトがPSPでも遊べるようになるそうですので、
ソニーでは、これまでの劣勢も挽回できるだろうと期待している
そうです。
しかし現実には、そもそも「PS3」がヒットする可能性自体が
かなり低いかも知れません。
大前研一氏も指摘しているように、
「ソニーのゲーム機は突き抜けすぎてしまった」
ためです。
つまり、技術志向が行き過ぎて
ゲーム機としては品質過剰、機能過剰なのです。
このため、PS3を購入するのは、いわゆる
「イノベーター層」
に限定されてしまい、アーリーアダプターにさえ
受け入れられないかも知れないわけです。
当然、大ヒットにつながる「フォロワー」への波及も
ありません。
すなわち、PS3はイノベーター、アーリーアダプターと、
フォロワーとの間にある大きな断層、すなわち
「キャズム」
を超えることはできず、結果として
深刻な業績不振を招く可能性が非常に高いように思います。
ゲームが好きな方に聞いてみましょう。
あなたは、
ゲームを楽しみたいのですか?
それとも、
高機能なゲーム機を持ちたいのですか?
どちらがより重要ですか?
エレキ屋らしく、とことん技術を追求するソニーと
花札から始まった元祖エンタテイメント屋の任天堂の
「ゲーム機戦略」の違いは、昔からかなり明確でしたね。
これまでは勝ったり負けたりのいい勝負をしてきました。
でも、今度のPS3の発売は、どちらの戦略が正しいのか、
はっきりとした決着がつくことになる契機になるかも
しれません・・・
ソニー内には友人が多いので、
こうしたことを書くのは気が引けましたが・・・(^_^;
実際、ソニー関係の人たちはどう感じているのかなあ?
投稿者 松尾 順 : 2006年10月20日 17:57
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コメント
松尾さんが追われている仕事の内容が何となく判るので、のんきにコメントを書くのは気が引けるのですが・・・。
私もちょうどPS3に動きには注目してまして、来月1日発売の「月刊販促会議」の連載に書きました。
同じく、「突き抜けてしまったゲーム機」という観点ですが、私は「発売前の値下げ」に注目しました。
これは、松尾さんがご指摘の「キャズムを超えられなかった場合」を想定してのことでしょう。
つまり、マニアしか買わない高価なゲーム機=普及しない(シェアが取れない)。となると、一番問題なのは、そんなゲーム機向けにソフトを作ってくれるソフトハウスはいないということです。
セガのサターンがPSに敗れ去ったのは、スクエアなどのビッグタイトルを持ったソフトハウスをソニーに押さえ込まれたからでしょう。
もう一つの側面では、マニアしか買わない高価なゲーム機なんて、流通は扱いたくないと言うことですね。どうせ売れない商品に展示スペースすら割きたくないのが本音でしょう。
M.ポーターの5F分析をしてみればすぐ判りますよね。
「売り手の交渉力」=ソフトの供給元→強い
「買い手の競争力」=流通(量販店)→強い
「業界内の競争」=Wii、廉価版X-BOXとどちらも当初の価格の半分ぐらい→強い
「新規参入の脅威」=これはちょっと判らない??
「代替品の脅威」=ハンディータイプのゲーム機(効果で複雑なものよりも消費者はお手軽なもので十分)→強い
・・・うーん、何とも辛い業界構造ですね。
そもそも、ソニーは肝心要の「業界定義」を「ゲーム機市場」ではなく、PS3を「情報家電の中核」と位置づけて、パソコンのだいたいのような存在として捉えていたと思われます。なので、パソコンまでは高くなくても、ゲーム機としては異常に高い価格設定になっていたのですね。
きちんと「ゲーム機市場で戦う」という業界定義の認識があれば、ハイスペック・ハイコストという選択にはならなかったでしょう。かくして、「低価格でシェアを取る」という「ペネトレーション・プライシング」に価格戦略を切り替えたわけですが、それでもどうなるのか・・・。
ソニー辛そうですね。
でも、私も高値で買って塩漬けにしてあるソニー株が・・・。
投稿者 金森努 : 2006年10月20日 18:34
金森さん、まいど!
詳細なコメント、ありがとうございます!
すごく参考になります。
情報家電というコンセプト、
私にはもうひとつピンと来ないんですよね。
どんな製品もおおむね、単機能から機能が複合化、高度化
して行くところまでいくと、再び機能分化が始まって単機能
の製品が売れるようになるものですが、ゲーム機もそんな
時期ではないでしょうか。
投稿者 松尾順 : 2006年10月22日 06:38
>どんな製品もおおむね、単機能から機能が複合化、高度化
>して行くところまでいくと、再び機能分化が始まって単機能
>の製品が売れるようになるものですが
そうなんです。わたしは、(ユーザーの方は怒るかもしれませんが)W-ZERO3を見たとき、その複合度合いと図体のでかさから、バブル時代のシステム手帳を思い出し、Blogに書いたものでした。
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2006/04/wzero3_c2d6.html
まぁ、最近は新機種「es」が出て随分スマートになりましたが・・・。
で、「情報家電」・・・。私にも正直判りません。
でも、各メーカともそんな話をしていますね。
たぶん、研究者オリエンテッドというか、多分にプロダクトアウトな発想なのではないでしょうか。
投稿者 金森努 : 2006年10月24日 13:52
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