シンプルマーケティング(1)イノベータ理論
森行生氏著の名作、「シンプルマーケティング」から
まずは「イノベータ理論」をご紹介します。
森さんの考え方には、常に、
消費者(森さんは「生活者」と表現)を理解すること、愛すること
が根底に流れているように感じると前回書きました。
実際、この本の第1章はこんな書き出しです。
“マーケティングでは、「生活者」を把握することが非常に
重要だ。もちろん、関係者をそれを身にしみてわかっている”
ほんと、私も身にしみてわかっています!
だからこそ、生活者(消費者)理解を極めるための方法論を
「マインドリーディング」という言葉をキーワードに
ぐぐっと深めていこうとしてるわけなんですが。
では、「生活者」を把握するというのは、
マーケティング的にはどういうことでしょうか。
それは、生活者の特性を元に様々な角度から市場を細分化し、
自社商品を「誰に向けてつくるのか」というセグメントを
明確にすることです。
「マーケットセグメンテーション」
ですね。
マーケットセグメンテーションのやり方は、
いまだ、性・年齢といったデモグラフィック(人口統計学的)
要因が基本です。
最近は個人情報保護法の施行によって、こうしたデータでさえ
入手が難しくなってきましたが、それでも、いわゆる
「基本属性データ」として使いやすい要因です。
ただ、マーケターの方ならすでにわかっているように、
例えば「20代の女性」といったセグメントはもはやあまり有効で
はありませんよね。
性別・年齢が同じでも、趣味嗜好、購買行動は
天と地ほども違う場合がありますから。
そこで、ライフスタイルやパーソナリティなどの
サイコグラフィック(性格特性図)要因をセグメンテーションに
活用する必要があります。
森さんは、サイコグラフィック要因の中でも特に、
「価値観分析」
の手法を使う必要があると述べています。
(価値観分析については別途ご紹介します)
さて、サイコグラフィック要因は、
基本的に時代に応じて変化するものですが
時代を超えてセグメントに有効な切り口が、
「生活者の3タイプ」
具体的には、
・イノベータ
・アーリアダプター
・フォロワー
です。
これ、ロジャースの「イノベーター理論」に基づく3分類です。
イノベーター理論はもっと細かいタイプ分けがされていますが、
実務的にはこの3タイプで十分ですね。
「イノベーター」は、いつの世でも、ヒット商品をまっさきに
発掘する「革新人間」です。
したがって、「売れる商品」を生み出すためには、まず
イノベーターの目に留まる必要性があります。
しかし、イノベーターに受け入れさえすれば、
成功が約束されるわけではありません。
なぜなら、イノベーターは、
自分が優れた商品を発見する能力を持っていることに
自己満足してしまい、他人に話すことをしないからです。
要するに、口コミしてくれない人なんですね。
そこで、一過性のブームに終わらせず、息の長いヒット商品と
するためには、「アーリーアダプター」に受け入れられる必要が
あります。
森さんに言わせると「アーリーアダプター」は、
「ウケねらいの人々」
です。彼らがものを買う基準は、圧倒的多数のフォロワーに
「これ、知ってる?」
と自慢できるかどうかなんですね。
そして、フォロワーは、ある程度商品が定着してから、
ようやく自分も買う人たち。真っ先に買って馬鹿にされるのが
怖いからです。
したがって、アーリーアダプター層に自社商品が広がれば、
それがフォロワーへと広がり、「ヒット万歳!」という
わけです。
しかし、もしアーリーアダプターに受け入れられず、
イノベーターどまりになってしまったら・・・
それは
「一過性のブームに終わった商品」
ということになります。
ですから、ヒット商品を育てるという観点からは、
アーリーアダプターの目をひきつけること
が最重要課題と言えるわけです。
ところで、森さんの本には記述がありませんが、
イノベーター、アーリーアダプターと、
フォロワーとの間には大きな断層がある
という考え方がありますよね。
ジェフリームーアの「キャズム理論」です。
この考え方では、
アーリーアダプターからフォロワーへの伝播(ユーザー層拡大)
は簡単ではないよ
ということを主張しています。
キャズム理論は、
森さんの考え方と対立しているわけではありませんが、
強引にまとめてしまうと、
イノベーター、アーリーアダプター、フォロワー
の各セグメントの心をつかむためには、
それぞれ個別の工夫が必要であるということでしょうね。
(森さんに怒られたらどうしましょ・・・)
◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)
投稿者 松尾 順 : 2006年10月17日 22:57
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