新規顧客獲得は、こそこそやってくださいませ

つい昨日聞いたばかりの話です。

京都の老舗の某和菓子屋が、
ある時「ぴあ」に掲載されたそうです。

とてもおいしい和菓子が買えるとか、
そんな紹介が載ったんだと思います。
(店が取材を受けたわけではありません)


ところが、「ぴあ」をみた客が早速行ってみたら、
なぜかお店は閉まっていました。

いつ行っても閉まっていました。
結局、この店が再び店を開けたのは3ヶ月後。


なぜか?

既存顧客を守るためでした。

ぴあをみた一見の客が殺到して商品が売切れてしまったら、
常連さんが買えなくなる。

だから、ほとぼりがさめて一見さんがこなくなるまで
あえて店を閉めたのだそうです。


これは、事業を継続するもの(ゴーイング・コンサーン)と
考える視点から見れば、大変すばらしい判断ですよね。


客が押し寄せる時期に店を開けたら一時的に大繁盛するでしょう。
でも、手作り中心の和菓子の生産量には限界があります。
売上げの増加度はたいしたことない。

しかも、一見さんは文字通り一見さん。
リピート顧客になる確率は限りなく低いでしょう。

むしろ、これまで長年買い続けてきたロイヤル顧客が、
一時的なブームのために離れてしまったら、
ブームが去った後が大変です。

大きく売上げが落ち込こむこと必至。
ブランド(のれん)もガタガタになってしまっていたかも
知れません。

この和菓子屋は、既存顧客を守ることによって、
自店の伝統あるのれんを守ったのだと言えるでしょうね。


ところで、同様に昨日、
月刊誌「宣伝会議」のメルマガ登録者である私に、

「新規定期購読キャンペーン」

の告知メールが届きました。


いまなら、定期購読申し込み先着30名に、
広告コピーのコンテスト「宣伝会議賞」の応募作品を収録した
最新本を無料進呈とあります。


はて、長年定期購読している私はどうなるんでしょう?

もちろん、「新規の」定期購読者にはもはやなれません。
ですから、残念ながらこの本はもらう資格がないわけです。


ただ、宣伝会議賞の本は過去4冊出版されており、
これまですべてお金を出して買っていただけに、
なんだか、今回はとても損した気分です。

最新本を買う意欲が減退したように思います・・・


基本的に、どんなビジネスも、
既存顧客を維持するだけでなく、新規顧客の獲得も
継続的にしなければやっていけませんよね。
(先に紹介した和菓子屋は例外的なケースでしょう)


しかし、既存顧客を不愉快な思いをさせないような配慮は
必要です。


卑近な喩えを許してもらえるなら、

「二股かけたいのなら、こっそりやって頂戴!」

といったところです。(笑)


先の告知メールで言えば、メルマガ購読者の中から、
定期購読者を除外した上でメール配信すべきでした。


新規顧客も欲しいけれど、既存顧客も大切にする、
そんな気持ちがあれば、その程度の作業をやるのは
常識です。

投稿者 松尾 順 : 2006年09月12日 23:27

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