「分析力」より「解釈力」
先週は、あるサービスについての「ユーザーアンケート調査」の
報告書づくりにかなりの時間を費やしていました。
調査内容の詳細を公開することはできませんので、
抽象的な書き方になって恐縮ですが、
アンケート調査で聞けることは、現状や行動など、
現時点での「結果」についてが多くを占めます。
一方、「なぜそのような行動を取ったのか?」という、
理由や原因についてについてもある程度聞きますが、
アンケートでは聞けることに限界があります。
(だからこそ、対面でのグループインタビューや
個別インタビューを併用する意義があるんですが・・・)
つまり、アンケート調査の場合、
「結果についてのデータ」
は豊富に取れるが、
「原因についてのデータ」
は限られています。
ところが、調査報告書に求められるのは、
「結果がどうだった」とういうことだけでなく、
「原因がこうだから結果がこうなった」
という、原因と結果の結びつけなんですね。
ただ、前述したように原因についてのデータは限られていますから、
データをオモテ・ウラ・タテ・ヨコ・ナナメ、
あらゆる側面から眺め、設問同士の関係性をあれやこれや
見ながら、因果関係を発見しなければなりません。
もちろん、そうして発見した因果関係は、多くが「仮説」
(たぶんそうだろうという考え)です。
したがって、今後の調査や、具体的なマーケティング施策の実行に
よって、本当にそんな因果関係が存在しているのかを「検証」
する必要があります。
さて、こうした調査結果からの因果関係の発見は、
「分析力」というよりは、「解釈力」と呼べるものです。
(ビジネス一般でいえば、「洞察力」とほぼ同じ意味です。)
マーケティングリサーチの世界では、意外にも
「解釈力」の重要性があまり語られませんが、
調査結果が本当の意味で、実務に役立つためには
この「解釈力」による因果関係の発見が欠かせないと
私は思っています。
では、解釈力はどうやったら身につくのでしょうか?
基本は、調査テーマに対する深い知識と豊富な業務経験でしょう。
データを読みなれるという意味では、
リサーチ経験があったほうがいいのですが、
それはリサーチのテクニカルな面というよりは、
むしろ、データの組み合わせから大局を俯瞰できたり、
人間心理の機微の理解に基づく、「直感」や「洞察」を
働かせることのできる能力が重要です。
この「解釈力」の向上は、私も日々精進しているところですが、
本当に難しいですね。先週のレポート作成でも、
時につらくて床の上をゴロゴロ転げ回りたい気持ちになりながら、
必至の形相でデータに立ち向かっていました。
ただ、この「解釈力」こそが、
コンピュータがそうそう追いつけない人間固有の能力だと
思います。
ハードルは高いけれども、磨くだけの価値があります。
投稿者 松尾 順 : 2006年09月11日 10:52
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