学習意欲を高める作戦
知恵市場にアップしたものをこちらにも転載します。
テーマがちょっと外れますが、週末番外編ということで・・・!
変化の激しい昨今、私たちビジネスパーソンは、
あっというまに陳腐化する知識やスキルに拘泥することなく、貪欲に
新たな知識、スキルを獲得しつづけることが必要!
とはいえ、諸般の事情で日常に流されてしまいがちな中、
学習意欲を喚起し、また維持するのは大変なものです。
というわけで、「学習意欲を高める作戦」。
現在履修中の「熊本大学大学院(修士課程)社会文化科学研究科 教授システム学専攻」
の前期で学んだ「eラーニング概論」のテキストから、学習者のためのヒント集を
ご紹介します。
なお、このヒント集は、学習の動機づけモデルのひとつ、
「ARCSモデル」
に沿っています。
「ARCSモデル」とは次の4つの側面で学習意欲を捉えるものです。
Attention(注意):面白そうだなあ!
Relevance(関連性):やりがいがありそうだな!
Confidence(自信):やればできそうだな!
Satisfaction(満足):やってよかったな!
それぞれの英語の頭文字をとって「ARCSモデル」と命名されているわけです。
以下、ほとんど丸ごと転載となりますが、著者の鈴木克明先生(上記大学院の
専攻長)によれば、版権表示付きで配布自由とのことですので遠慮なく
掲載させていただきます。お読みいただいた方も、プリントアウトしたりして
利用する際は、この点にご留意くださいね。
ここに書かれていることは、言葉にしてしまえばごく当たり前のことに感じるかも
知れませんね。ただ、大事なのは実行しているかどうかです。
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[学習意欲を高める作戦(学習者編) ~ARCSモデルに基づくヒント集]
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■注意(Attention):面白そうだなあ!
●目をパッチリ開ける:A-1:知覚的喚起(Perceptual Arousal)
・勉強の環境をそれらしく整え、勉強に対する「構え」ができるように工夫する
・眠気防止の策をあみだす(ガム、メンソレータム、音楽、冷房、コーヒー、体操)
・眠い時は眠い。十分に睡眠をとって学習にのぞむ
●好奇心を大切にする:A-2:探究心の喚起(Inquiry Arousal)
・なぜだろう、どうしてそうなるのという素朴な疑問や驚きを大切にし、追及する
・今までに自分が習ったこと、思っていたことと矛盾がないかどうかを考えてみる
・自分のアイディアを積極的に試して確かめてみる
・自分で応用問題をつくって、それを解いてみる
・不思議に思ったことをとことん、芋づる式に、調べてみる
・自分とはちがったとらえかたをしてる仲間の意見を聞いてみる
●マンネリを避ける:A-3:変化性(Variability)
・ときおり勉強のやり方や環境を変えて気分転換をはかる
・飽きる前に別のことをやって、少し時間をおいてからまた取り組むようにする
・自分で勉強のやり方を工夫すること自体を楽しむ
・ダラダラやらずに時間を区切って始める
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■関連性(Relevance):やりがいがありそうだなあ!
●自分の味付けにする:R-1:親しみやすさ(Familiarity)
・自分に関心がある得意な分野にあてはめて、わかりやすい例を考えてみる
・説明を自分なりの言葉で(つまりどういうことか)言いかえてみる
・今までに勉強したことや知っていることとどうつながるかをチェックする
・新しく習うことに対して、それは○○のようなものという比喩やたとえ話を考えてみる
●目標を目指す:R-2:目的指向性(Goal Orientation)
・与えられた課題を受け身にこなすのでなく、自分のものとして積極的に取り組む
・自分が努力することでどんなメリットがあるかを考え、自分自身を説得する
・自分にとってやりがいのあるゴールを設定し、それを目指す
・課題自体のやりがいが見つからない場合、それをやりとげることの効用を考える
(例えば、評判があがる、報酬がもらえる、肩の荷がおりる、感謝される、
苦痛から解放されるなど)
●プロセスを楽しむ:R-3:動機との一致(Motive Matching)
・自分の得意な、やりやすい方法でやるようにする
・自分のペースで勉強を楽しみながら進める
・勉強すること自体を楽しめる方便を考える
(例えば、友達<彼氏、彼女>と一緒に勉強する、好きな先生に質問する、
秘密にしておいてあとで親などを驚かせる、友達と競争する、ゲーム感覚で取り組む、
後輩に教えるなど)
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■自信(Confidence):やればできそうだなあ!
●ゴールインテープをはる:C-1:学習要求(Learning Requirement)
・努力する前にあらかじめゴールを決め、どこに向かって努力するのかを意識する
・何ができたらゴールインとするかをはっきり具体的に決める
・現在の自分ができることできないことを区別し、ゴールとのギャップを確かめる
・当面の目標を「高すぎないけど低すぎない」「頑張ればできそうな」ものに決める
・自分の現在の力にあった目標がうまく立てられるようになるのを目指す
●一歩ずつ確かめて進む:C-2:成功の機会(Success Opportunities)
・他人との比較ではなく、過去の自分との比較で進歩を認めるようにする
・失敗は成功の母:失敗しても大丈夫な、恥をかかない練習の機会をつくる
・千里の道も一歩から:可能性を見極めながら、着実に、小さい成功を重ねていく
・最初はやさしいゴールを決めて、徐々に自信をつけていくようにする
・中間目標をたくさんつくり、どこまでできたかを頻繁にチェックして見通しを持つ
・ある程度自信がついたら、少し背伸びをした、易しすぎない目標にチャレンジする
●自分で制御する:C-3:コントロールの個人化(Personal Control)
・やり方を自分で決めて、「幸運のためでなく自分が努力したから成功した」と考える
・失敗しても、自分自身を責めたり「能力がない」「どうせだめだ」などと考えない
・失敗したら、自分のやり方のどこが悪かったかを考え、転んでもただでは起きない
・うまくいった仲間のやり方を参考にして、自分のやり方を点検する
・自分の得意なことや苦手だったが克服したことを思い起こして、やり方を工夫する
・何をやってもだめという無力感を避けるため、苦手なことより得意なことを考える
・自分の人生の主人公は自分:自分の道を自分で切り開くたくましさと勇気を持つ
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■満足感(Satisfaction):やってよかったなあ!
●無駄に終わらせない:S-1:自然な結果(Natural Consequences)
・努力の結果を自分の立てた目標に基づいてすぐにチェックするようにする
・一度身に付けたことは、それを使う/生かすチャンスを自分でつくる
・応用問題などに挑戦し、努力の成果を確かめ、それを味わう
・本当に身に付いたかどうかを確かめるため、だれかに教えてみる
●ほめて認めてもらう:S-2:肯定的な結果(Positive Consequences)
・困難を克服してできるようになった自分に何かプレゼントを考える
・喜びをわかちあえる人に励ましてもらったり、ほめてもらう機会をつくる
・共に戦う仲間を持ち、苦しさを半分に、喜びを2倍にする
●自分を大切にする:S-3:公平さ(Equity)
・自分自身に嘘をつかないように、終始一貫性を保つ
・一度決めたゴールはやってみる前にあれこれいじらない
・できて当たり前と思わず、できた自分に誇りをもち、素直に喜ぶことにする
・ゴールインを喜べない場合、自分の立てた目標が低すぎなかったかチェックする
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出展:鈴木克明(1995a)『放送利用からの授業デザイナー入門』日本放送協会、
102-105頁。版権表示付きで配布自由・1995鈴木克明
投稿者 松尾 順 : 2006年09月02日 19:08
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