安すぎるから買わないよ!
米国では、2006年度の自動車部門サービス顧客満足度調査で
第1位を獲得、英国では同調査で6年連続1位と、
海外で大成功している、トヨタの高級車ブランド「レクサス」。
「レクサス」が日本に逆輸入され、本格展開を始めてほぼ1年が
経過しました。メインのターゲットは、もちろん「富裕層」です。
2005年の販売台数は、目標の半分の1万台にとどまったそうです。
(日経産業新聞、2006/08/30)
初年度は基盤づくりの時期であり、目標台数も元々大きめだった
と言われていましたが、営業の現場では、従来の「待ちの営業」
の方針を修正。
リッツカールトンホテルなどの優れたサービスに学んだ、
丁重なおもてなしを基盤とする店舗での顧客対応に加えて、
外回りの営業にもチカラを入れています。
さて過去1年、あとひとつレクサスがふるわなかった最大の理由は、
輸入高級車からの乗り換えがあまり進まなかったからです。
ベンツやBMWなど強敵輸入車の強みは、なんといっても
「ブランドイメージ」ですよね。
海外ではすでに互角に近いところで戦えているとは言え、
日本ではまだこれからのレクサスとしては、
「ブランドイメージ」の向上を最優先課題とすべきです。
ですが現実にはそうしなかった(できなかった?)のが
販売の足を引っ張ったようです。
レクサスの「ブランドイメージ」向上には、
まず、高いブランドイメージを形成するパワーを持つ強力な
基幹商品を投入すべきですよね。
ところが、お値段700-1000万円の基幹車種「LS」の投入は、
ついこの間、今年の7月でした。
(「LS」の出足は好調のようです。)
しかし、最初に投入した「IS」(旧アルテッツア)は、
最もレクサスらしいデザインではあったものの、
値段が安すぎました。
安すぎたといっても300万円台、私には手がでませんが(笑)、
それでも、この価格帯は「(富裕層向けの)高級車」
とみなすことはできないですよね。
マーケターの方ならほぼ常識のことだと思いますが、
高級ブランドは値段が高ければ高いほど、ある意味
ありがたがられますよね。
数千万の高級車を買う、乗り回すということは、
それだけの経済力がある、社会的成功を収めたということを
回りに暗示する「シグナル効果」を持つからです。
つまり、高級車では、性能が良い、燃費が良い、安いといった
「実用価値」ではなく、「象徴的価値」が重視されるわけです。
ところが、「IS」の場合、若年層も視野に入れるため、
価格をあえて300万円台に抑えた。つい色気を出してしまい、
ブランドづくりだけに注力せず、ターゲット層を拡大して
販売台数増加を狙ったことが問題でした。
結果を見る限りでは、この色気が逆効果になってしまった
ようです。本来のターゲットであった富裕層が、
「IS」に対して「象徴的価値」を認めなかったからです。
おそらく、
「300万円じゃ、安すぎるから買わないよ!」
(成功者の自分にふさわしくないからね)
と判断されてしまったんでしょうね。
しかし、ようやく「象徴的価値」を認めることのできる「LS」を
手にしたレクサスブランドの2年目の展開が楽しみです。
投稿者 松尾 順 : 2006年09月01日 13:47
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