マーケティング・コミュニケーションは「教育」である!
‘マーケティング・コミュニケーションは「教育」である!’
なんて言い切ってしまうと、
“神聖なる教育とビジネスをごっちゃにするとは何事か!”
とお怒りになる方もいらっしゃるでしょうから、
‘マーケティング・コミュニケーションは「教育」に似ている
ところがある’
と、やや後退した表現に改めたいと思いますが。(笑)
でも、実際のところ、
・商品名を記憶・再生できるようになってもらう
・商品の使い方を覚えてもらう
・この商品は優れているといった考えを身につけてもらう
といった、
マーケティング・コミュニケーションの主な狙いを列記すると、
教える対象は異なるものの教育にそっくりです。
ユーザー視点で言い換えると、マーケティングコミュニケーション
は「学習」の働きかけに他ならないですよね。
となれば、畑の違う教育・学習分野の理論の中に、
マーケティング・コミュニケーション分野に応用できるものが
ありそうですが、あります、あります!
例えば、有名な学習心理学者、アメリカのロバート・M・ガニェら
が提唱する学習課題の分類というものがあります。
それは、次の4つです。
・言語情報
名前や公式、文章などを覚える
・・・例えば、掛け算の九九、英単語
・知的技能
ある約束ごと(枠組みなど)を新しい例に応用する
・・・例えば、マーケティングの4Pに基づく競合動向の整理
・運動技能
筋肉を使って体の一部を動かす
・・・例えば、パソコンのタッチタイピング、機器の操作方法
・態度
個人的な選択の機会があった時にあることがらを
選ぼう、避けようとする気持ち
・・・例えば、環境に配慮したライフスタイルの標榜
そして、上記4つの分類は、大きくは、
・アタマ、すなわち認知領域の課題(言語情報、知的技能)
・カラダ、すなわち運動領域の課題(運動技能)
・ココロ、すなわち情意(心理)領域の課題(態度)
の3つの領域における学習課題と言えます。
難しい専門用語が出てきてすいませんが、
要するに、この4つの学習課題という視点は、
マーケティング・コミュニケーションのプランニングに
大変有益な示唆を与えてくれるのです。
例えば、あなたが、自社の新製品発売に当たって、
マーケティングのプランニングに頭を悩ませているとします。
そこでまず、「言語情報」の学習課題をターゲットユーザーに
与えるというのはどういうことか考えて見てください。
・どうやったらブランド名を覚えてもらえるか
・どうやったらブランド名をすぐに思い出してもらえるように
なるか(他のブランドより先に)
といった問いを立てることができますね。
この問いの答えとしての学習方法、つまり
コミュニケーション方法はどんなものがありそうでしょうか?
次に、「知的技能」。
これは、
・どうやったら、自社製品を購入対象としてくれるか
・どうやったら、自社製品の購入を決定してくれるか
ということが重要で、そのためには、
「購入判断のよりどころ、目安を示す」
という教育的コミュニケーションが有効になります。
例えば、
「これからパソコン買うなら、メインメモリは最低512Mないと
厳しいですよ」
という目安を示せば、この目安に合わない競合製品は、
自動的に購入対象から外れ、512Mを搭載した自社製品は
当然のことながら購入対象としてくれるようになるという
わけです。
「運動技能」については、
・どうやったら操作方法(手順)に慣れてもらえるか
という点が大事ですね。
これは、そもそも機器のユーザビリティを改善する必要が
あるかも知れませんし、マニュアルをわかりやすくしたり、
使い方のデモやアフターサービスを充実させるなどの、
さまざまな打ち手を考えることが必要になります。
もし、新商品が、既存商品の姉妹品のようなものであった
場合、逆にうかつに操作方法などを変えてはいけません。
ユーザーがとまどってしまい、次回から購入を忌避されて
しまうかも知れないからです。
実際、日清食品の新商品「スープヌードル」は、
カップヌードルの姉妹品と呼べるものですが、
ネーミング、デザインを踏襲して、「言語情報的に」
覚えやすく認知しやすい工夫をしているだけでなく、
「操作手順」も同じにして、ユーザーがなじみやすいように
してあります。
最後の「態度」は、
好意や価値観といった心理状態の変化(形成)が
学習の課題になります。
端的には、
・どうやったら、自社製品を買うのが私にとってもっとも
適切であるという考えをもってもらえるか
ということです。
このためには、
「自社の製品は環境に配慮しているからいいんですよ」
といった価値観の押し付けではなく、
「あなたの身近な環境が破壊されています。
そんな環境破壊にあなた自身、手を貸していていいのですか?」
といった、個人的、具体的な問いかけを通じたコミュニケーション
が有効のようです。
マーケティング・コミュニケーションの領域では、
従来から
・「行動変容」(行動を変化させる)
・「態度変容」(心理、気持ちを変化させる)
という2つの大きな枠組みで目標を分類してますし、
よりマーケティング・コミュニケーションに即した目標設定の
やり方があるんですが、こうした異分野の理論も応用してみれば、
いろいろと新たなヒントや発想が得られますよね。
投稿者 松尾 順 : 2006年08月31日 11:19
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