量が質に転化する時

たまに新聞折込で入る「幸運の○○○」チラシ。

財布やお守り、ペンダント、○○○に入るのはいろいろ
ありますが、紙面には成功者のコメントがテンコ盛りですよね。

「この財布のおかげで1億円の宝くじが当たりました!」
「このリングを手に入れてから、毎日もてまくりです!」

などなど。

一応「成功者」の顔写真入りのことが多いですし、
万札がはみ出している財布を持っていたりして、
シズル感があります。(笑)


しかし、どう考えてもイカサマですよね。
全部が全部、コピーライターの作り話であることは
まず間違いありません。

それでも、不思議なことに、何十もの成功コメントを見ていると
なんとなく信じたくなる気持ちが湧いてきます。

もし、経済的に厳しい状態にある人なら、
わらをもつかみたい気持ちでしょうから、思わず注文してしまう
ことでしょう。おそらく騙されていると気づきながらも・・・


さて、普通、出所が不明の怪しい情報を簡単に信じることは
ありませんよね。ところが、そうした情報を10も20も提示
されたらどうでしょうか?

心理学の実験によれば、たとえ信頼性の低い情報であっても、
多数の情報にさらされると、その情報を受け入れやすくなることが
わかっているそうです。

「うそ」は1個でも、100個でも、1000個でも「うそ」のはずですが、
人間心理は不思議なものですねぇ。情報量が増えると、
「うそ」でさえ「真実」として捉えるようになってしまう。

すなわち、量が質に転化する時があるというわけです。

これが、「幸運の○○○」のやらせチラシが成立する背景に
あります。


インターネットでも、
例えばアマゾンなどのオンライン書店の書評には、
おそらく内部関係者(著者本人かも)によるものと思われる
自画自賛コメントが並んでいるものがありますよね。

でも、怪しいなあ、やらせ・さくらだなあ、とわかっていながら、
それなりに参考にしてしまうのが悲しい人間の性(さが)。

こうした心理傾向を自覚することで、
うかつにだまされないようにしたいものです。


一方、マーケターとしては、

口コミ、利用者の声といった類の情報は、
多ければ多いほど効果が高い

ということが言えますよね。
ですから、この知見をうまく施策に反映させるべきでしょう。

もちろんうその情報を捏造してはいけません!

投稿者 松尾 順 : 2006年08月29日 10:32

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