イノベーションの達人:ハードル選手
今日は、
『イノベーションの達人! 発想する会社をつくる10の人材』
トム・ケリー&ジョナサン・リットマン著、早川書房
に紹介されている10の人材のうち、第4番めのキャラクター、
「ハードル選手」です。
「ハードル選手」は、土台をつくる人の一人。
彼は、有望なアイディアをつぶしにかかる様々なハードルを
なんとかして乗り越えようとします。並外れた回復力があって、
ノーと言われても決してあきらめません。
ハードル選手は、かならずしも課題を正面から取り組む必要は
なく、障害をうまく回避すればよいと考えています。
しかし、状況を見極めた上でリスクを取り、しばしば規則を
破ってでもアイディアを推進することをいといません。
本書では、「ポストイット」をはじめとする独創的な製品で
知られるスリーエム社の事例などが紹介されています。
例えば、スリーエム社のマスキングテープ
(塗装作業で色を塗り分ける時などに貼る粘着テープ)
の開発を担当した同社のハードル選手は、リチャード・ドルー。
彼は、自動車車体工場に行った時、
自動車の塗装に失敗した工員が悪態をついているのをみて、
粘着テープを開発することに決めます。
しかし、当時のスリーエム社は経営不振に苦しむ紙やすり
のメーカーで、テープの製造経験はありませんでした。
ただ、リチャードは、同社の技術でテープが開発できる
可能性があることに気づいており、勝手に実験を始めます。
やがて社長に実験のことがばれると、
元の紙やすりの仕事に戻るように言われますが、
戻ったのは1日だけ。
またすぐに、テープの開発のための実験を再開しました。
(今度は、なぜだか社長は見て見ぬふりをします)
次に、リチャードは、
テープを作るための製紙機械の購入を会社に申請します。
しかし、これも却下されました。
でも、やはりリチャードはあきらめません。
研究員として与えられていた100ドルの購入権限を利用して
99ドルの申請書を何枚も書いて、こっそり機械を購入して
しまうのです。(不正行為ですよね・・・)
しかし1925年、リチャードは世界初のマスキング・テープ
の製造に成功を収めます。
最初の顧客はデトロイトの自動車メーカーでした。
スリーエム社は、研究時間の一定時間を自分の好きな研究に
使っていいという制度や、秘密裡に勝手に行う研究、
「スカンクワーク」に寛容なカルチャーを持っていますが、
その原点はこのマスキング・テープにあるんでしょうね。
とかく、企業は革新的なアイディアに対しては、
拒否反応を示しやすいし、リスクを恐れて十分な時間やお金、
人を配してはくれないものです。
そんな時、ハードル選手は、それこそどんな手を使ってでも
アイディアを進める、ある意味偏屈なまでの強い粘りを
発揮するんですよね。
日本で言えば、ノーベル賞級の発明といわれた「青色ダイオード」
の開発者、中村修二氏もまた、代表的な「ハードル選手」と言える
でしょう。
投稿者 松尾 順 : 2006年08月04日 09:35
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