2種類の感想・・・ペプシ・チャレンジの教訓
マーケターの方であれば、「ニューコーク」の失敗事例は
よくご存知ですよね。
1985年4月、コカ・コーラ社は、
従来よりも甘い味付けをしたニューコークを市場に投入。
しかし、発売直後から旧コーラに愛着を感じていた消費者の
大反発を受け、わずか3ヵ月後の7月には、
従来製品を「コカ・コーラクラシック」として復活せざるを
得なくなりました。
ニューコークは、翌86年の春に生産を打ち切られています。
この失敗の理由はさまざま言われていますが、今回は、
ニューコーク開発の引き金を引くことになった
「ペプシ・チャレンジ」
のキャンペーンについて触れてみたいと思います。
「ペプシ・チャレンジ」は、一言でいえば「公開比較調査」です。
消費者に、二つのグラスにいれた飲み物を飲み比べてもらう
会場調査を全米各地で行いました。
この二つのグラスの片方にはコーク(コカ・コーラ)、
もう一方にはペプシ・コーラが入っていましたが、
もちろん、どちらがどちらなのかは事前に教えません。
そして、試飲した消費者にどちらが美味しいかを聞いたところ、
半数以上が「ペプシ」を選んだのです。
このキャンペーンは全米の話題をさらい、ペプシのシェア拡大に
貢献しました。
(ただし、コーク愛飲者の、ペプシへのブランドスイッチではなく、
コーラ飲料の非飲用者、つま新規カテゴリーユーザーの取り込みに
成功したのがシェア拡大の要因のようです。)
コカ・コーラ社が、ペプシ・チャレンジの結果に慌てたのは
言うまでもありません。
自社で行った試飲調査でも、やはりペプシの味が好きだという
消費者の数がコークのそれを上回りました。
そこで、「ニューコーク」の開発に着手したというわけです。
しかし、実は、この「ペプシ・チャレンジ」には、
昨日指摘した、会場での試飲調査の限界がありました。
ペプシの新製品開発部門に長年勤めていたキャロル・ダラードは、
「試飲では甘みの強い製品が好まれる傾向がある。
でも、一本飲み切ると、甘すぎて飽きてしまう」
と言っています。
ペプシは、コークよりも甘みが強い。
ですから、少量しか飲まない試飲では、コークよりも
ペプシが有利だったわけです。
また、コークにはレーズンとバニラの風味があるのに対して、
ペプシは柑橘系の風味が広がります。さわやかな風味ですね。
この点も、試飲調査でペプシが好まれる理由だったそうです。
しかし、この風味は1本飲む間に消えてしまいます。
したがって、もし自宅で継続的飲んでもらう
「ホームユーステスト」
を実施していたなら、ペプシ・コーラとコークの評価が
異なっていた可能性があります。やはり、消費者は同じ製品に
対して「2種類の感想」を持っていたかも知れないわけです。
当時、コカ・コーラ社では、
この試飲調査の限界をあまり認識していなかったようですね。
それが「ニューコーク」の盛大な失敗、
しかしまあ、彼らにとっては大きな教訓ともなった失敗に
つながったのです。
以上は、『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』
(マルコム・グラッドウェル著、光文社)
の内容を元にしました。
この本は、マーケター必読です!
投稿者 松尾 順 : 2006年07月28日 11:50
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