オンライン・ローボール・テクニック
Skype、使ってます?
(知らない方のためにちょっとだけ)
Skypeは、無料の通話ソフトです。いわゆるインターネット電話。
SkypeがインストールされているPC同士なら、
世界中の誰とでも無料で何時間でも話せます。
Skyepは音質がクリアですし、使いやすいこともあって
あっという間にユーザーが拡大しましたよね。
私もたまに使っています。
さて、Skypeのビジネスモデル。
Skype同士の通話は無料とすることで登録ユーザーを増やし、
次に、登録ユーザーが、Skypeから普通の電話にかける場合の
通話料を有料にすることで収益を得ています。
このSkypeから普通の電話にかけることのできるサービスは、
「Skype Out」
といいますが、この利用が進まないことには、
Skypeは儲からない・・・
とうわけで、日本では先月(6月)に
Skype Outのトライアル(お試し)キャンペーン
をやっていましたね。
言うまでもなく、キャンペーンの目的は「新規ユーザーの獲得」。
Skypeユーザーの方は、次のような件名のキャンペーン告知メールが
届いたのを覚えてませんか。
「60分間無料通話クレジットを今すぐゲット!」
本文のキャッチコピーは、
“普通の電話へ1時間タダでかけられる”
となっていて、続く本文の説明は次のようなものでした。
------------------------------------------------------------
普通の電話への通話ができるクレジット、なんと1時間分を差し上げます。
Skypeから普通の電話への通話発信はSkypeOutと言います。
何の裏も難しいこともありません。2006年6月30日までにSkypeから
普通の電話・携帯電話へ1回以上通話を発信するだけで、
その後電話をかけるときに使える1時間分のSkypeクレジットが自動的に
無料でアカウントへ追加されます。
------------------------------------------------------------
「おっ、これはいいじゃん、早速ゲットしなきゃもったいない!」
なんて喜びいさんでSkypeを立ち上げた方がどの程度いらっしゃるか
わかりませんが、その人たちは結構がっかりしたんじゃないでしょうか。
Skype Outをともかく6月中に1回利用すればいいんだね!
と思って、Skypeの画面をクリックしていくと、
「skypeクレジットの購入画面」
につきあたります。
どうやら、通話料金を前払いしなければならないようです。
最低料金は10ユーロ(日本円で1500円程度)です。
つまり、キャンペーンの無料通話1時間分をゲットするためには、
1500円分の支払いがこちらに発生するということになります。
「なあんだ・・・(ガッカリ)
やっぱり‘裏’があるじゃないか!!」
もちろん、Skype Outをフルに活用するのであればいいのでが、
Skypeクレジットには有効期限がありますので、
こちらが払った1500円分と無料通話分を使い切るだけの時間分
とても利用しそうにないなと感じた方が多いんじゃないでしょうか。
(1分当たりの通話料金が安いだけに、使いでがありそうですし)
さて、このキャンペーンで問題なのは、
無料通話1時間分をゲットするためには、
ユーザー側に10ユーロの支払いが発生することを
明記していなかったことです。
キャンペーンメールにも、Skypeの手続き画面にも
そうした説明は一切ありませんでした。
このため、期待を持って手続きしようとしたユーザーを
ある意味、「あざむく」ようなコミュニケーションになっています。
このような、最初に魅力的な条件だけを提示して相手をその気に
させた後で、相手にとってあまりうれしくない条件をおもむろに
提示する説得技法を
「ローボール・テクニック」
と呼びますが、
Skypeの今回のキャンペーンは、
意識的にこのテクニックを使ったのかどうかはともかく、
「ローボール・テクニック」的コミュニケーション
になっていますね。
ローボール・テクニックは、
営業マンのリアルなコミュニケーションでよく利用されて
きました。
ローボール・テクニックは、上述したように
相手の裏をかくようなところがあり、
冷静に考えてみるとおかしいことがわかるはずなんですが、
言葉だけのコミュニケーションの場合には、
結構営業マンのペースにはまってしまいがちです。
しかし、オンラインの場合、文字情報ベースですので、
読み手がじっくり検討する時間がある。
このため、そうそう簡単には裏をかけないわけです。
また、裏をかけないどころか、怒りや落胆といったネガティブな
感情を与えてしまいますので、ブランドイメージ低下につながる
可能性を持っています。
どうやら、
「オンライン・ローボール・テクニック」
はあまり通用しないと考えたほうがよさそうです。
糸井重里氏ではないですが、
「正直が最大の戦略」
だと思います。
なお、上記のSkypeのキャンペーンは
あまり成果を上げなかったのかわかりませんが、
今月は、
「普通の電話への通話10分を無料プレゼント」
のキャンペーン・メールが来ました。
でも、どうやって手続きすればいいのかよくわかりませんでした。
説明が不十分でした。
余計なお世話ですが、Skypeのマーケティング、大丈夫?
投稿者 松尾 順 : 2006年07月26日 12:43
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