人間臭いネット証券

ネット証券の最大のウリは手数料の安さでしたよね・・・

オンライン上でのヴァーチャルな展開を図ることで、
店舗運営費や人件費といいった固定費を削減、同時にギリギリ
まで利益を削ることで、手数料を大幅に引き下げる。

こうして、既存のリアル証券会社に「価格競争」を
仕掛けていった。つまり、「価格の安さ」という、
見える次元の中でも、最もわかりやすい購入の判断軸で
一気にリアル証券の顧客を奪い取りました。


しかし、やはり限界が見えてきています。
価格も下がるところまで下がった。
これ以上下げても、顧客にとっては瑣末な差異に過ぎない。

もっと別の新たなニーズを求め始める段階に入っています。


では、新たなニーズとはどんなものでしょうか?


ネット証券の雄、松井証券社長、松井道夫氏によれば、

「安定性」

そして、

「人間らしさ」

と言っていますね。(日経ビジネス2006年7月10日号)


「安定性」については、1分1秒の売買タイミングのズレが
大きな利益、あるいは損失につながる世界であれば、
現実には、常に重要とされてきていたはずのことです。

ただ、インターネット自体がベストエフォートの性質を
持っていましたから、「安定性」については、
「ある程度ご容赦ください」的甘えがあったのかも
知れません。

ですが、ともあれ「安定性」は、
二重化するなどのシステム強化で対応できる「見える次元」
の話です。


しかし、「人間らしさ」は、
要するに、人間臭い(人間味のある)アナログ的サービスを
付加することですよね。

これは「見えない次元」での競争に踏み込むことであり、
優れた人材の確保、あるいは教育が最重要課題になってきます。


実は、こうした人材面、サービス面は、
既存のリアル証券会社が強みとしてきたところ。

すでに、ネットの世界で先行した米国証券業界では、
既存のリアル証券会社に新興ネット証券会社が逆襲を
受けて苦しんでいるということを4月に書いています。

「消えてしまったものを探せ」


日本の証券業界でもやはり、
見えないところでの競争、言い換えると

あいまいで微妙な領域での差異化

が始まったわけです。


なお、松井証券の場合、
「人間臭いネット証券」を目指すための具体施策として、
札幌のコールセンターを今秋、300人体制に拡充する計画を
持っています。

投稿者 松尾 順 : 2006年07月19日 07:00

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