顧客志向への発想転換

「お客様を差別する気か。百貨店の売り場はすべてのお客様に
 対応するものだ」


大丸の現会長、奥田務氏は、
1980年当時、大阪・梅田店の企画課長に任命されました。
同店開設に当たって、「売り場作り」を担当することに
なったのです。

奥田氏は、70年代に米国留学し、米国の大手百貨店、
ブルーミングデールでの実習経験もありましたので、
当時、米国では当たり前だった売場作りを大丸にも導入しようと
したそうです。

それは、

「世代別」「ライフスタイル別」

の品揃えでした。

すなわち、従来の商品の分類による売場ではない、
顧客の属性に基づいたマーケットセグメンテーションです。

どうやら、こうしたマーケットセグメンテーションを
百貨店に導入したのは、日本では大丸梅田店が初めてのこと
だったようですね。

冒頭の「お客様を差別する気か・・・」

という言葉は、奥田氏が取締役会にこの新たな売場作りを
提案した際に投げつけられた言葉です。

そして、当初はなんと!この提案は却下されたそうです。


しかし、奥田氏はなんとか粘り腰で上層部を説得し、
ほぼ構想どおりの売場を実現、開設2年目から成長軌道に
乗せることに成功します。


80年代前半といえば、松田聖子、河合奈保子、あるいは
3年B組金八先生から田原俊彦、近藤正彦などがデビューして
アイドルブームが巻き起こった時代。

そんなに遠い昔でもないのに、日本では、

「マーケットセグメンテーション」

の考え方は、まだまだ受け入れられる土壌には
なかったんですね。


なお、

「顧客は平等ではない」
(Customers are not created equal)

という考え方、これは

CRM(Customer Relationship Management)


の根本思想とも言えるものですが、
この考え方が日本に紹介されたのは、さらに10年以上後の
90年代半ばでした。


近年、百貨店業界では、

「売り場」

ではなく、

「買い場」

という言い方をするところもあります。

「商品を売る場」ではなく、お客様が「買っていただく場」と
いう発想の転換を促すためです。


大丸の例などを見ると、
商品(生産者・販売者)志向から顧客志向への発想の転換は
意外にも、つい最近のことであったことが改めてわかります。

もちろん、いまだ顧客志向に転換できていな企業も多数
存在していますけど・・・

投稿者 松尾 順 : 2006年07月14日 11:12

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