マーケターは「星の王子さま」を読め!

「読め!」とは、ちょっと高圧的ですね。すいません。


さて、このメルマガ(ブログ)は、
マーケティングや消費者心理に関心のある方を対象に書いてますが、
マーケティングだからといって、いつも「ビジネス」にだけ
視野を狭める必要はないと思うのです。

しばしば、ぜんぜん関係なさそうなものに、
意外なヒントがあったりします。

そのひとつが、サン=テグジュペリの「星の王子さま」です。

これは童話風の物語ですが、純粋な童話として書かれたもの
ではなく、当時の唯物論的考え方や科学重視・実証主義に
偏向した社会を揶揄した内容になっていますよね。

そしてまた、見方を変えれば、
「ブランドの本質」について書かれた本とも言えるのです。


大胆に言い切ってしまうと、「星の王子さま」が
伝えようとしたことは、

「物事の価値は人の心の中にある」

ということでしょう。


たとえば、物事についての目に見える尺度、
つまり、形状や機能や性能などが必ずしもその価値を
自動的に決めるわけではない。

物事の価値の有り無しを決めるのは、物事自体ではなくて、
むしろ、人の心であるということです。


「かんじんなことは目には見えない」

これは、星の王子さまにきつねが教える「秘密」のひとつですが、
しばしば、人は、目には見えない(可視化・数値化しにくい)こと
に価値を見出すという点を示唆してると見ることができます。

例えば、品質的には全く同じ生地で作られた、
同じようなデザインの服でありながら、高級ブランドと無名製品で
価格が天と地ほども違うのは、そのブランドの背景にある歴史とか
伝統とか「目に見えない大切なもの」に対して高い価値を与えられ
ているからです。


もうひとつ、きつねが王子さまに教える秘密も、
実に意味深長です。


「あんたがね、あんたのバラの花をとてもたいせつに
 思ってるのはね、そのバラの花のために、“ひまつぶし”
 したからだよ」


バラの花は、どれも見かけは同じにみえます。
違いはほとんどわかりません。

なのに、一本のバラが、王子さまにとってかけがえのない存在と
感じられたのは、バラに水をあげたり、ついたてを立てて
風から守ったり、いろいろと時間をかけて面倒を見たから。

つまり、物事の価値は、自分がその物事に対して投じた
(無駄にした)時間によって上がるものなのです。


これで思い出すのが、
最近注目されている「ユーザー参画型」の商品開発です。

企画段階からユーザーの意見を積極的に取り入れたり、
あるいは、あえてソフトのベータ版のように未熟な子供の段階で
市場に出して、バグのない立派な完成品(大人)ユーザーに
育て上げてもらう。

企業側が勝手に企画して作られた商品をポンと
あてがわれるのではなく、
商品開発プロセスにユーザー自身が首を突っ込み、
手間と時間をかけた商品が登場したなら、
それは、ユーザーにとって「特別な」価値のある商品ですよね。


まあ、星の王子さまの強引な解釈とおっしゃる方もいる
でしょうけど、私が、マーケターとして「星の王子さま」
に見出した価値は、「ブランド本」としてのものであると
お考えいただけますでしょうか?


余談ですが、これまでの話は、
ブロードウェイミュージカル「Rent」のテーマ曲、
『Seasons of Love』の歌詞にも通じるところがあると
思います。

------------------------------

How do you measure a year in the life?

「あなたの人生の一年一年をどんな尺度で図る?」

How about ‘LOVE’?

「‘愛’ではどう?」

------------------------------


「今年どれだけ儲かったか」

なんていう尺度で一年を測るのもわかりやすいですけど、
「愛」という尺度で測るのも悪くないですよね。

投稿者 松尾 順 : 2006年06月16日 11:00

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コメント

偶然にも金森の事務所のデスクにも座右の書として置いてあります。
結構奥深いですよね。

投稿者 金森努 : 2006年06月16日 20:03

金森さん、まいど!

さすが、筋金入りマーケター!
わかってたんですね!

投稿者 松尾順 : 2006年06月17日 05:53

こんにちは。楽天、わくわく映画感の、るりでございます。(^.^)

対象に投じた時間、という考え、よくわかります。
子育てにしても、現在の趣味の一つ、花という物を通しても。

とくに花という生き物は、手をかけると同時に、
手をかけないで目をかける事が大事なのは、
子供と同じだと思いますし、ともに時間はかけるもの。

RENT は映画化されましたので是非みたいと思っています。(^.^)

投稿者 るり : 2006年06月20日 07:41

るりさん、こんにちは。
コメントありがとうございました。

花は手をかけるだけじゃなくて、「目」をかけることが
大事なんですね。これは、子供じゃなくて、私の場合、
うちのカミさんに対しても必要じゃないかと気づかされ
ました。(笑)

Rentの映画、良かったですよ。

投稿者 松尾順 : 2006年06月20日 09:09

以外ですが、「星の王子さま」の書評はほとんど見当たりません。GoogleでNo.80ページ位まで探しましたが、まともなのは松尾さんのものだけでした。たいへんユニークで面白い、大人の書評だと思いました。最近私も「星の王子さま」のエッセイを書きました。もし興味がおありましたら、是非ご一読ください。

投稿者 野崎雄隆 : 2007年06月11日 21:37

野崎様、コメントありがとうございました。

そうなんですね、「星の王子さま」のレビューはほとんどないんですね。確かに意外でした。

野崎様のエッセイも早速拝見させていただきます。

投稿者 松尾 : 2007年06月12日 12:13

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