マーケティングコミュニケーションの冗長率
メシ、
ハイ
フロ、
ハイ
ネル。
・・・。
枯れた夫婦の会話です。(笑)
余分な言葉が一切そぎ落とされたムダのない言葉だけ。
こういうコミュニケーションを「冗長率」が低いと
言うそうです。
長年連れ添ってお互い十分わかりあっている
(またはわかりあえないとあきらめた?)ような関係では、
伝えたいことだけを言葉に出すだけで相手に通じるから、
冗長な尾ひれはいらないんですね。
一方、お互い知らないもの同士がコミュニケーションを
行う時、相手の考え方や反応がわからないので、まずは
「最近雨ばかりですね」などと、当たり障りのない話から
始めて、少しずつ距離感をつめていきますね。
そして、ある程度わかりあえたと感じた段階から、
もっとシリアスな話題、例えば商談に入っていく。
つまり、親密な間柄よりも、お互い知らないもの同士の方が、
冗長率の高いコミュニケーションが必要なんですね。
(中身のないどうでもよい話をヒマにまかせて
友人とだらだら続けるというのとは、次元の違う話ですよ)
劇作家・演出家の平田オリザさんによると、
夫婦のような親しい関係で行われるコミュニケーションを「会話」、
あまり親しくない関係でのそれを「対話」と呼んで
区別しているそうです。
(英語では、前者は「Conversation」、後者は「Dialogue」です)
「会話」は、基本的に同じ土壌に立つ者同士が、
相手にしてほしいこと、伝えたいことをストレートに言うことが
目的になります。
一方、「対話」は、価値や情報の交換が主な目的になります。
つまり、異なる人格・価値観を持つ同士が、
お互いの考え方をすり合わせることです。
したがって、それぞれが伝えたいことだけを伝えようとして
ガチンコ勝負してしまうと摩擦が生じやすくなります。
そこで、無駄な言葉を挟むことによって、
摩擦を和らげる必要がある。だから、
「対話」では、冗長率が高くならざるを得ないわけです。
この「会話」と「対話」の区別や、冗長率の高低は、
マーケティング・コミュニケーションにおいても十分意識
する必要がありますよね。
よく聴く話ですが、優秀な営業マンは雑談が得意です。
営業とはお客さんとの対話です。
少なくとも最初は親密でもない関係のお客さんに対して
「自社商品はこんなにいいんですよ、買ってください」
という価値観や意思を最終的には伝えなければいけない。
もちろん、このことをストレートに言ってしまったら
拒否されるだけ。
まずは冗長率の高いコミュニケーションを通じて、
相手の考え方や感情、反応パターンを十分に読みきってから
本題に入る必要がある。
営業マンは雑談ができないと基本、うまくいかないわけです。
広告やWebサイト、メルマガでも同じでしょう。
限られたスペース、時間、文字数などの中で、
お客さんとの関係を十分に測った上で、適切な冗長率の
コミュニケーションを図る必要がありますよね。
自社の商品情報満載のメルマガが、読み手からみたら
まるでつまらない理由もこのあたりにありそうです。
投稿者 松尾 順 : 2006年05月17日 07:00
コメント
シゼイクスピアが
雄弁が役に立たない時は、純で無邪気な沈黙が、かえって相手を説得することがある。
と「冬の夜話」で記していますね。
「会話」「対話」と沿うようにその「間」である「沈黙」も重要ですね。
若い頃、私はとにかく客先でしゃべり続けていないと不安で仕方なかったですが、10年選手ぐらいになってから、やっと「黙る」という技を身につけました。
投稿者 金森努 : 2006年05月17日 18:20
金森さん、コメントありがとうございました。
「沈黙」の持つ意味はなんでしょうね。
相手の考えを聞く姿勢があるということを「沈黙」は
示しているのかもしれませんね。
投稿者 松尾 順 : 2006年05月18日 07:39
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