デジタル化する感性
先日、コンガのレッスンを受けているプロのパーカッショニストの
先生との雑談で、最近の音楽業界事情が話題に上りました。
このところCDが売れない状況が続いているので、
相応の販売が見込めるトップアーティストでもない限り、
レコード会社も簡単にはCDを出してくれない。
したがって、仕方なくCDを自主制作するアーティストが
増えているのが現状。また、あえてCD化せずに、Podcasting
のような仕組みを使って、MP3化した音源をオンラインで
バラ売りすることも増えている。
ただ、オンラインでの音楽販売をやる場合に気になったのが、
MP3(あるいは他の圧縮方式)化することによる
「音質」の低下です。
特に、パーカッションを初めとするアコースティックな楽器は
音の厚み・深みが失われてしまいますので、
音質の悪さを理由にMP3プレーヤーを使わない人もいますから。
しかし、コンガの先生によれば、
最近は、MDやMP3プレーヤーからしか音楽を聴かない人が
多くなってきたので、高品質な音、本物の音を知らない。
だから、そもそも「音質の良し悪し」を聞き分けることが
できないので、「音質」はあまり問題とはならなくなってきた、
とのことでした。
デジタルな音に慣らされた耳は、アナログ的な微妙な音の違いを
聞き分ける能力を失いつつあると言えるでしょうね。
同じことは、「目」についても言えるようです。
パソコンモニターやテレビゲームのコントラストの強い、
派手な画面に慣れた目は、階調が豊富で自然に近い写真は、
「地味」に映るため好まれなくなってきたのだそうです。
このため、こうしたユーザー側の感性の変化に合わせて、
印刷媒体の写真は単調になってきている。
つまり、プロに言わせると、
写真の「品質」は、意識的に低下させられているわけです。
とても残念なことですが、自然な音や画像に近づけようとする努力
が徒労に終わるだけでなく、逆にユーザーの受けが悪くなること
さえある。
デジタル化社会が生んだ功罪といえるのでしょうけど、
こうした「デジタル化する感性」に対して、
様々な表現形式を駆使するマーケターも十分な注意を払う必要が
ありますね。
投稿者 松尾 順 : 2006年05月09日 07:39
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コメント
最近、自宅のステレオで、MP3との音の違いに愕然としたことがあります。
投稿者 Taizo16 : 2006年05月09日 17:33
Taizoさん、コメントどもです。
調べてみないとわからないのですが、
最近、本格的なコンポーネントステレオって
売れてないんじゃないですかね。
iPod用のミニアンプ、スピーカーががんがん売れてる
影響を受けてるはずです。
もしちゃんとしたステレオが売れなくなっているとすると、
ますます音の違いがわからない人が増えてるはずですよね。
投稿者 松尾 順 : 2006年05月09日 17:47
すぱいらる。
デジタル技術が自然の深みの表現に追いついて
さらに人間の完成を深めるようになることに
期待しましょう。
投稿者 しょうすけ : 2006年05月09日 21:59
しょうちゃん、ども。
お元気ですか。
すばらしいポジティブシンキング。
テクノロジーの進化が自然の深みに追いつけるのは
ずいぶん先かもしれませんが、期待しましょう。
投稿者 松尾 順 : 2006年05月09日 22:12
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