人は無意識にウソをつく

R25、面白いですよね。

メディアの空白地帯だった、25-35歳の男性が
メインターゲットです。
(「日経アソシエ」もほぼ同じターゲットでがんばってますね)


発行部数60万部という巨大メディアですが、
発行されるとあっという間になくなりますよね。

事務所近くの文房具店前にR25のラックが置いてあるんですが、
ちょっと気を抜いているとすでに空になっていて、
読めない週も度々あります。
わざわざ別のラックまで探しに行くことはさすがにしない。(笑)


さて、昨日の日経夕刊(2006.04.18)では、
R25の編集長、藤井大輔さんのインタビュー記事が掲載
されていましたが、マーケティング的に示唆に富む内容でした。

R25の企画段階、
まずグループインタビューで200人以上のビジネスパーソンに
話を聞いたそうです。

ただ、藤井編集長さんが違和感を感じたのが、誰に聞いても、

「新聞をちゃんと読んでいる」

と答え、しかも、例外なく「日経新聞」だったこと。

また、好きなテレビ番組は「ニュース番組」だと、
優等生的な答えばかり。


こうした回答に納得できない藤井編集長は、

「なりたい自分像」を念頭に少し見栄を張っているのでは?

という仮説を立てました。


まあ、仮説というか、
調査業界では、このような回答が見られることは、
調査データの信頼性を左右する問題として認識されてきたことです。

真実の自分の行動や気持ちをさらすのは恥ずかしい、
情けないという気持ちから、
「理想の自分」の立場でウソの答えを無意識(悪気なく)に
してしまうんですよね。

女性が、年齢を聞く設問にサバを読んだ回答をするのも同じ。

特に、対面での調査において、
こうした無意識のウソをつく可能性が高くなります。


藤井編集長が偉かったのは、上記の仮説を検証したこと。

事前調査で「新聞を読んでいない」と答えた人だけ集めて、
同じことを聞いたら、

「新聞?もちろん読んでいます!」

と答えた。やっぱりウソをついていたのだ!(笑)


というわけで、R25は、

「なりたい自分像」になれる手助けをする雑誌

を作ろうという方向で企画をつめていったそうです。


藤井編集長は次のようなことを言っています。


“言葉にしても数字にしても、裏側の事情や心理をあれこれ
 想像して、自分なりに仮説を立てることが大事だと思います。
 いわば、言葉にならない皆の気持ちを浮き彫りにする作業。
 マーケティングとはそういうことではないでしょうか”


そうそう、そういうことですよね、マーケティングとは。

投稿者 松尾 順 : 2006年04月19日 06:00

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コメント

私がグルインのモデレーターをやっていたときは、
できるだけ具体的な話を聞くようにしています。

「皆さんがはまっていることをお聞きしていきますね」
「海外旅行が好きです。」
「前回旅行に行ったのはいつごろですか」
「...2-3年ぐらい前かな」

この手のことは結構、よくあります。

新聞であれば、いつ読んだとか、どこを常にチェックしているとか、読んでどう思うかとか、いつからそういう習慣なのかとか、役に立った場面の具体例とか、聞いていきますかね。

うまい方向に転がれば、その人の造詣やこだわりの深さもわかるし、やりとりを繰り返すことで、ラポールも形成されるし、なかなか役立つテクニックだと思います。(時間を食いますが)

インタビューするにあたって、真実の自分と、なりたい自分を聞いておくことは大事かなと思います。

人は、真実の自分のために物を買ったりするよりも、なりたい自分のために物を買ったり、サービスを利用すると思うからです。

投稿者 菅原 : 2006年04月19日 18:51

こんにちは。
昨日、こっちに来てなんだか缶詰状態なのですが・・・。

> 「なりたい自分像」になれる手助けをする

というフレーズ、僕も共感を覚えます。
今回こちらに来ている用件とはまったく別件で、雑誌がらみの話をある方と少ししていたのですが、やはり、即効性のあるもの、数字に出てきやすい疑問への回答らしきこと、などなどに話がいきがちで、ちょっと自分としては困ってしまいました。

勿論、上述のような記事も必要だとは思うのですが、僕としてはマーケティングではなかなか数字に表れないといいますか、し難いといいますか、「何かをするにあたって、即効性で得られた知識をアイデアとして発展させるには、どのような考え方、もしくは学習方法があるのか」、という方向のをやりたいなあと思っているのです。

が、なかなか伝える相手(雑誌の場合では出版社側)には理解してもらえない面などもあり、うーん、どこかに接点をもってこなければなあ、なんてちょっと思っていたところなので、このエントリー、興味深く拝読させていただきました。

数字がない仮説を、如何にしたら、相手方に絵を浮かべてもらえるだろうか? という辺りなのですが・・・。
前例、それもその分野での前例がない場合は、なかなか難儀な問題なのでした。
有名人がそれを語ればまた違う、というのは分かっているのですが、こればっかりは何ともし難い事実でもありますし。

コメント、ちょっと長めになってしまいました。また遊びにきます。

投稿者 Jules : 2006年04月20日 14:20

Julesさん、こんにちは。
今日本にいらっしゃるんですね。

>勿論、上述のような記事も必要だとは思うのですが、僕としてはマーケティングではなかなか数字に表れないといいますか、し難いといいますか、「何かをするにあたって、即効性で得られた知識をアイデアとして発展させるには、どのような考え方、もしくは学習方法があるのか」、という方向のをやりたいなあと思っているのです。

ということを書いてらっしゃいますが、
これは端的にいえば「発想法」ですかね。
「発想法」という言葉も最近はずいぶんチープな感じがして
あまり使いたくないですけど。

アイディアとして発展させるということは、要するに連想の
ネットワークを広げて、異質なものと組み併せたりすること
だと思います。ま、そのための方法はいろいろあるわけですが、体系的に学べるのが松岡正剛の「編集術」だと
思いますよ。


また、

>数字がない仮説を、如何にしたら、相手方に絵を浮かべてもらえるだろうか? という辺りなのですが・・・。

という点については、その答えは「物語法」でしょう。
リアルなストーリー仕立てで仮説を語るのです。
ストーリーは、相手にいかにも事実であるかのように
思い込ませるだけのパワーがあると思います。

また、コメントお待ちしてます!!

投稿者 松尾順 : 2006年04月21日 22:16

菅原さん、まいど!!

菅原流グルインの術、開陳ありがとうございました!(^-^)

なるほどね、突っ込んで事実を聞いてみると、なりたい自分
と真実の自分の乖離を把握することができるわけですね。

アンケートなんかでも、このあたり設問を工夫する必要が
ありますよね!

投稿者 松尾順 : 2006年04月21日 22:19

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