レモンイエローの消防車

先日お会いした広告会社の方とも意見が一致したことが
あります。

それは、クライアントが以前ほど、マーケティング理論的な話を
ありがたがらなくなってきているということです。

特に大手企業に顕著ですが、

「マーケティングの考え方とかは、こっちもよくわかってるよ」

というわけで、広告会社やコンサルタントが、
偉そうに理論をまくしたててもあまり喜ばれないんですよ。


それよりもクライアントが欲しいのは、

「ビッグアイディア」

「刺さるデザイン」

なんですね。


というわけで、いけてるマーケーターの方々は、
きっと「ビッグアイディア」を生み出す発想力を伸ばしたいと
もろもろ努力されているんじゃないでしょうか。

そんな方にぜひ見ていただきたいと思う本をひとつご紹介。
(すでにご存知の方はすいません)

「スウェーデン式アイディアブック」
(フレドリック・へーレン著、中妻美奈子監訳、鍋野和美訳、
 ダイヤモンド社)


90ページの薄い本ですが、
意外なアイディアの切り口がけっこう発見できますよ。


さてさて、斬新なアイディアを妨げているのは、
多くの場合、「固定観念」や「先入観」といった、
すでにできあがっている思考の枠組みです。

このことを気づかせてくれるエピソードがこの本に書かれています。
次のような話です。

ヨーロッパの救急車や消防車、パトカーなど、緊急出動車は
たいてい青いライトを使っています。それはなぜでしょうか?

第二次世界大戦中、ゲシュタポは連合軍の爆撃機を避けるため、
灯火管制されたドイツの街で目立たないよう、青いライトを
使い始めました。青い光は、暗闇で一番見えにくいからです。

それを、他国の警察機関が真似て採用し、
終戦後もそのまま残っているのだそうです。

つまり、本来目立たせるべき緊急出動車に、
最も目立たない青いライトを使っているのは、
単なる慣習によるものだったんですね。


消防車の色も同じです。なぜ車体は「赤」なのか。
昼間はともかく、夜間は「赤」はあまり目立ちません。

スウェーデンの消防車も赤色をしてました。
でも現在は、スウェーデンのいくつかの街では、
目の覚めるような「レモンイエロー」の消防車が走っている
そうです。

「レモンイエロー」なら、暗闇でもはっきり認識できますから、
赤よりも適した色であることは明らかですね。
でも、赤からレモンイエローに切り替えるまでに
何十年もかかったそうです。

おそらく、日本では切り替える気もないでしょうね。


何事も、

「それってほんとに意味があるのかな?」

といい意味で疑ってかかることが、
思考の枠を外す第一歩になりますよ。

投稿者 松尾 順 : 2006年02月27日 12:36

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