ケガの功名広告

「ナショナルでは古い年式のFF式石油暖房機を探しています。
万一の場合、死亡事故に至る恐れがあります。」

年末に放映されたコマーシャル、おぼえてらっしゃいますよね。

動きのない画面、感情を抑えた女性のナレーターの声が、
大変に‘印象的’でした。


普通のコマーシャルでは絶対に使わない「死亡事故」という言葉。
ちょっとおどろおどろしいナレーションは、
意図せざるものとはいえ、「怖い」という声も上がっていました。

他のコマーシャルとあまりにも異質な存在なので、
思わず、耳をそばだててしまいましたよね。


この告知広告、合計で1万6500回以上繰り返し流されました。
ひたすら低姿勢にお詫びと協力をお願いする姿勢を伝えることが
狙いです。

FF式石油暖房機による死亡事件発生に対する初動の対応がまずく、
松下電器さんに対する批判が高まったための緊急措置でした。


ところが、CM総合研究所の調査によると、
昨年12月では、上記告知広告の到達度(どれだけ見られたか)は
1位、好感度で2位という結果。

消費者の声としては「企業姿勢にウソがない」というコメントが
圧倒的に多かったそうです。

お詫びと協力を依頼する本来はマイナスの広告が、
企業ブランドイメージの中核をなす「信頼性」や「誠実さ」を
高めることに寄与したわけです。


おかげで、松下さんの2005年10~12月の業績は
増収増益。営業利益にいたっては、前年同期比47%の伸びです。

このところ、プラズマテレビなどの競争力のある商品が
相次いで発売されていたことも業績好調の背景にあるでしょう。

しかし、個別製品のプロモーションを一切ストップ、
事故対応の告知コマーシャルに切り替えるいさぎよい姿勢が、
消費者の支持を得ることにつながりました。

まさに、「ケガの功名」ですね。


昔、ジョンソン&ジョンソンが、
頭痛薬の「タイレノール」への毒物混入事件への対応として、
一斉に在庫を回収したというケースがあります。
かかった費用は1億ドルと言われています。

これは、企業の真摯な姿勢を見せることに成功した
企業危機管理の典型的事例としてよく取り上げられますが、
今回の松下さんの対応も、今後、
成功事例として語り継がれていくことになるでしょうね。


*日経ビジネス(2006年2月13日号)の記事を
 参考にしました。

投稿者 松尾 順 : 2006年02月14日 05:31

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mindreading.jp/mt/mt-tb.cgi/130

コメント

こんにちは
難しい文が苦手になっている私にもとってもわかりやすいですね。
ブログ大賞に投票してきました。

私も応援しているブログがあります。
ライフ部門の「日本女性が変わると日本が変わる」です。
こちらにも投票してくださったらうれしいな!
そしたら、雅代さんのブログにリンクも貼れるし。

またよろしく!

投稿者 yoko : 2006年02月14日 13:57

先日はいきなりの書込み失礼しました。
おかげさまで応援ブログは1位になりました。
お礼まで。

航空会社の対応について私も経験した事があります。
なんでも選ばなきゃダメだなと思いました。
日本のですけどね。

投稿者 kikiyo-yoko1847 : 2006年02月16日 19:17

yokoさん、コメントありがとうございました。
応援ブログ、1位になってよかったですね!

航空会社については、私も絶対に乗らないと
決めているところがあります。サービスに大きな差が
ありますよね。

投稿者 松尾順 : 2006年02月17日 09:08

コメントしてください




保存しますか?