巨大な外部脳が促進する企業の進化と淘汰

昨日書いた、

ダイハツ カフェ プロジェクトの「なんだかなあ」体験、
結構な反響がありました。

やはり、ナマの事実情報は人の心を刺激する力が強いですね。

販売店訪問時のことを補足すると、
確かにスイーツ目当てで行ったしたものの、せっかくだから
ということで、展示してある車はしっかりと見ましたし、
発売されたばかりの新型車「SONICA」は、
スポーティな外観、ターボ付エンジンなのに燃費も23km/リッター
と、かなり心惹かれるものがあったんですよ。


さて、実は、営業マンの対応に納得できなかった妻は
ダイハツのコールセンターに電話をかけたそうです。

電話に出たオペレーターの方は、素直に非を認め謝罪をしつつも、

「販売店でのことは、そのディーラーの本社に言って欲しい」

という絵に描いたような脱力系典型的模範回答。

さすが、見事なフィニッシュです!
最初から最後まで一貫した「なんだかなあ」体験を味わわせて
くれました。(笑)


まあ、これ以上はもういいや、
今回の不愉快な体験は、さっさと忘れてしまおう

ということなんですが、ともあれ、

こうしたブランド体験は、
いいことであれ、悪いことであれ、
個人がどんどんブログに書くべきだと思います。

できるだけ事実を中心に。
もちろん、そのときの感情や意見、文句も書いていいと
思いますが、単なるグチや批判にならないように。


今、ブログなどでブランド体験を書き、公表するということは、
インターネットという「巨大な外部脳」に個人的記憶を移すと
いうことです。

すると、「個人的記憶」が、
多くの人が共有できる「集合的記憶」になります。

しかも、その場で忘れ去られてしまう短期記憶ではなく、
ドメインが生きている限りは「長期記憶」として止まり、
いい情報も悪い情報もどんどん蓄積されていきます。

私個人としては忘却の彼方に行ってしまう出来事が、
インターネット上では、
いつでも参照できる長期記憶として共有される。


これは、どういう事態をもたらすか明白ですよね。
すでにその徴候は見えているわけですが。


ネガティブな情報が外部脳に蓄積されていく
「ダメダメ・カンパニー」は、あっという間に顧客離れを招き、
さっさと淘汰されてしまう。

逆に、ポジティブ情報が蓄積されていく「グッド・カンパニー」
には顧客がどんどん集まる。スタッフの志気も上がり、
ますますクオリティが向上し進化していくことになるでしょう。


つまり、一般個人がネット上でどんどんブランド体験を公開
することは企業の進化と淘汰を促進し、結果的に
気持ちよいブランド体験をする機会が増えるというわけです。


さて、
ダイハツさんは本来的には堅実なまじめな会社だと思います。
今後、淘汰されてしまわないように奮起を期待します。

投稿者 松尾 順 : 10:05 | コメント (1) | トラックバック

ダイハツ カフェ プロジェクトの「なんだかなあ・・・」体験

先日、妻と一緒に、
自宅近くのダイハツの販売店に行きました。


ダイハツのお店では今、

「ダイハツ カフェ ロジェクト」

というキャンペーンをやっています。


キャンペーン中、ダイハツのお店に行くだけで、

帝国ホテル・ガルガンチュアの特製スイーツでもてなしてくれる!

しかも、

アンケートに答えると、抽選で「お取り寄せスイーツ」が当たる!

なるほど!
明らかに女性ターゲットですよね。
軽自動車が強みのメーカーさんらしいキャンペーンです。


ネットでこんな「オトク情報」(お取り寄せネット)

を見つけた妻が、一人ではいやなので付き合え!
というわけです。

正直、ディーラーに行くのはあまり気乗りがしなかったのですが、
私には断る自由はありません。(笑)

黙ってお供しました。


さて、車で店に入ると、
営業マンが出迎えてくれました。

アンケートの話を妻が切り出すと、営業マンはためらいがちに

「ええ・・・一応やっていますが」

という煮え切らない返事。


そして、店内に通されましたが、
アンケートを前に営業マンいわく、

「これは、本来、新車を見に来られたり、整備のために
 お待ちになっている方にお茶と共にスイーツをお出しして、
 アンケートにお答えいただくものです」


そうですか、つまり私たちは、

「歓迎されない客」

だとおっしゃるのですね。
(私は、心の中でそうつぶやきました)


「まあ・・・いちおうご記入ください」


いちおうですか・・・
妻も私も、なんだか情けない気持ちにさせられました。

結局、スイーツも、またお茶でさえも出されず、
私たちは店を後にしました。


こうしたキャンペーンでは、多くの場合、
店頭への集客が目的ですよね。

スイーツのようなオファー(インセンティブ)をつけるのは、
ぶっちゃけ、エサで釣るようなものですが、
集客に弾みをつけるための仕掛けです。

その結果、私たちのような「えさ」が最大の目当ての人たちも
来ますけど、それはやむを得ないことだと、企業側では普通、
割り切っています。

しかし、

「ダイハツ カフェ プロジェクト」

ではそうではないようですね。
少なくとも販売店の理解は、そうではなかったようです。


もし、仮に営業マンの言うとおりだとしたら、
ホームページなどでそのことを訴求する必要はないのでは?

新車を見に来るなどの「正当」があって来店した見込み客を
もてなすことがキャンペーンの目的なら、
別に宣伝しなくてもいいですよね・・・


ちなみに、我が家では軽自動車に乗っています。

妻も私も、あまり車にこだわらないこともあって、
経費の安い軽を選んだわけですが、
すでに平均的な買い換え期間(3-5年)をはるかに超えています。

ちょっとしたきっかけさえあれば、
いつ買い換えてもおかしくないのですよ・・・

ですから、新車を見ることが今回の来店目的ではなかったとは言え、
私たちは実は「有望見込み客」だったのです。


ダイハツの営業マンは、惜しくも
このことが見抜けなかったようですね。

使い古した軽でやってきた私たちを出迎えたにも関わらず・・・


毎日車を利用している妻は、新車を買うとしたら、
やはり運転しやすい「軽」がいいと申しております。

しかし、あのダイハツの店では絶対に買わないとも
申しております。

既にネガティブな体験をさせられてしまった以上、
ダイハツの車自体、購入検討候補からはずすかも知れません。

残念なことですよね、ダイハツさん!


私は、マーケティングプランナーとして、
様々な企業のキャンペーンを企画する立場にありますが、今回の

ダイハツ カフェ プロジェクトの「なんだかなあ」体験

は、消費者側の気持ちを実感できた大変いい勉強となりました。


キャンペーンは企画以上に、オペレーションが重要ですよね。

投稿者 松尾 順 : 06:35 | コメント (16) | トラックバック

ホテル業界の見えない次元ポジショニング

「宿泊客は将来、ホテルのロケーション(立地)より、
 ‘ブランド’を重視する」

ニューヨーク大学が今月、
ホテルの経営者を対象に実施した調査では、
回答者の多くがこう答えたそうです。
(日経産業新聞、2006.06.28)


この回答は、逆に見れば、
ホテル経営者たちが、これからは

「‘ブランディング‘に力を入れていくべきだ」

と考えているとも読むことができますね。


実際、
シェラトンやメリディアン、ウエスティンなどを傘下に抱える
スターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイドのCEO、
スティーブン・へイヤー氏は、

「我々が売るのは、ベッドのある部屋ではなく、
 ブランドが象徴する生活スタイル」

と強調しています。


では、なぜここまでホテルもブランドにこだわるようになって
きたのか。

実は、やはり昨日お話した

見える次元・見えない次元

が関係しています。


要するに、ホテル業界でも、
運営や設備といった見える次元での差異化が限界に来ているわけです。

例えば、ウエスティンホテルでは、
99年からベッドの質向上を図り、「ヘブンリーベッド」という
キャッチコピーを前面に打ち出してきました。
しかし、ハイアットなどのライバルも次々と高級化路線を追求し、
もやはベッドの質の面での優位性が失われてしまいました。
(実際体験したことないんですけどね・・・)


そこで、見えない次元での差異化、つまり独自のポジショニング
に取り組むしかなくなったのですが・・・

ホテル業界における見えない次元での独自のポジショニングを
確立するため重要な要素は何かおわかりですよね?

そう、顧客接点におけるコミュニケーション。

なかでも、とりわけ大切なのは、
ホテル内で顧客が出会うホテル・スタッフとのやりとり。

必ずしも言葉を交わすかどうかは問題ではありませんよね。

顧客とすれ違うときのスタッフの仕草や微笑み、
そんなノンバーバルなコミュニケーションを含むリアルな経験が、
ブランドイメージ形成に最も大きな影響を与えますよね。

こうした、リアルなブランド体験は、再現不可能なだけに、
競合が真似することは簡単ではない。
だからこそ、独自のポジションを確立・維持しやすい。


人材育成に最大の力を注いだリッツ・カールトンホテルが、
設立以来短期間のうちに、
極めて高いブランドイメージを構築できたのは
このブランディングのKFS(Key Factor for Sucess)を
わかっていたからでしょう。

また、一度は閉鎖の憂き目に合った
洞爺湖の「ザ・ウインザーホテル洞爺」が
不便なロケーションにも関わらず高い稼働率を達成し、
黒字化を果たすことができたのも、
ホスピタリティあふれるスタッフによる
「見えない次元のポジショニング」が成功したからであること
も間違いありません。

投稿者 松尾 順 : 15:41 | コメント (0) | トラックバック

見えない次元ポジショニング

先日書いた

「同じ土俵で勝負しないこと」

に対して、
金森マーケティング事務所の金森さんよりコメントをいただきました。

-(金森さんコメント:ここから)----------------------------

伝統的なマーケティングの考え方は、

S→T→P

(セグメンテーションをして、ターゲットを絞って、
 それに対するポジショニングを決める)。

しかし、昨今は「ポジショニングありき」が正解だと思います。

-(金森さんコメント:ここまで)----------------------------


これについて、私の考えを書いてみたいと思います。


確かに、マーケティング戦略・施策のプランニングにおいて

S:セグメンテーション
T:ターゲティング
P:ポジショニング

のうち、P:ポジショニングが最も重要ですね。

その理由は、端的には、現在の市場が「成熟市場」であり
「買い換え需要」が中心となっているからでしょう。


企業側が、いかに有効な顧客セグメントを発見し、
ターゲットを明確化したところで、
すでにほとんどの顧客は既存類似商品を消費中です。


つまり、現代の消費者は、

「買うか・買わないか」(購入する・しないの問題)

ではなく、

「どの会社のどの商品を買うか」(買い換え商品選択の問題)

が最大関心事。

市場が成熟する以前は、
それほど「ポジショニング」は重要ではありませんでしたよね。

例えばまだテレビが普及していない段階では、極端に言えば

「とにかくどの会社の製品でもいいから、テレビが買いたい」
(購入する・しないの問題)

という消費者が多数を占めており、
商品自体の違いはそれほど重視されなかったのです。


しかし、必要なものは一通り揃ってしまった現代では、
どの製品に買い換えるかというだけの選択の問題になり、

ベストのものが1種類あれば良い。
同じポジションの商品は2種類いらない。

これが消費者の基本的な態度です。

このため、多くの市場でナンバーワン企業のみが
圧倒的勝ちを収める寡占化が進んでいるわけです。


ですから、逆に顧客に選択してもらうためには、
明確な既存商品との「差異」を示さねばならない。

最近のベストセラー、「ブルー・オーシャン戦略」
で説かれているのも、大胆なポジショニングの
「差異化」でした。


ただ、ポジショニングを考えるに当たって、
忘れてはいけないのは、

現代は、

「見える次元」におけるポジションニング

ではなく、

「見えない次元」での独自のポジションニング

を考えることが必須であることです。


「見える次元」とは、機能、性能、価格など、
誰にでもわかりやすい、測定しやすい製品の特徴です。

いわゆる「機能的な価値」のことです。

「見えない次元」とは、デザインやブランドイメージなど、
その優劣が簡単には測定しにくいもの。

「情緒的価値」、あるいは「コンセプト価値」(環境対応など)
が該当します。


このあたりの話は、私も何度か書いてきたことですが、
「見える次元」のポジショニングでは、
すぐに追いつかれ、真似されます。

特に、大手企業は意図的に同じポジションにぶつけることで、
競合商品をつぶしてきます。


一方、「見えない次元」のポジショニング、例えば
デザインは意匠権の問題でおいそれとは真似できませんし、
ブランドイメージは、企業の歴史、文化、風土などが深く
結びついているため、全く同じポジションを攻めることは
実質不可能です。


したがって、ポジショニングの主戦場は「見えない次元」
であるという意識を持つ必要があります。

そして、

「見えない次元」での独自のポジショニング

を確立するための主たる活動、それは

「ブランディング」

ですよね。

「ブランディング」が近年、
ますます重視されるようになったのはごく当然のことでした。


余談ながら、フォード、GMといったアメリカ車が不振を
極めているのは、いまだに「見える次元」でのポジショニング
しか考えていないこと。

長期的な取り組みにならざるを得ない「ブランディング」に
対して、実際、腰が引けています。

しかも、消費者のニーズが低燃費、小型化、環境対応に
向かっていることを考えると、

S:セグメント、T:ターゲティング

も不十分と言わざるを得ないです。

ハリウッドのスーパースターが、トヨタのプリウスを
何台も所有することがステータスシンボルになる時代。

その空気を米自動車メーカーが読めていないのは明らかですよね。

おそらく、この背景には、行き過ぎた短期業績志向や、
見えるものしか考慮しようとしない科学主義、
ロジカルシンキングの弊害があると考えられるでしょう。


その点、BMWを初めとする欧州車は、見えない次元での
ポジショニングを以前から意識してきていますね。

機能・性能と価格との費用対効果や、
故障のしにくさ、サービスの充実度など、
見える次元では、圧倒的に日本車メーカーが上にも関わらず、
欧州車が一定の支持を得続けているのは、まさに、

見えない次元ポジショニング

の成果でしょう。

投稿者 松尾 順 : 10:50 | コメント (0) | トラックバック

本当は目だって欲しくなかった製品

出るんですよ。うちの事務所にも・・・

ゴ**リが!!
(名前だけで身の毛がよだつ方に配慮して一部伏字)

もちろん「うようよ」はいませんが、
たまに影から突然飛び出すのでびっくりさせられます。


事務所は、マンションの一室で流し台がついてます。
でも、一切料理などはしません。

食べ物らしきものは、コーヒーの出し殻と、
外食続きの体の健康のためにたまに買ってくる果物くらい。

この部屋は、彼らにとってあまり住み心地が良いとは
思えないんですけどね。


それで、仕方なく「ゴ**リ*イ*イ」みたいな捕獲器を
置いていた時期があったんですが、あれ目立つので
いやなんですよね。

だいたいパッケージは真っ赤に塗られているし、しかも、
表面には、デフォルメされている(もろ実写のもありますね)とは
言え、「ゴ**リ」がうようよ描いてあります。


事務所にいらした客人がこの捕獲器を見て、

「あれ、この事務所はゴ**リがいるんだ」

なんて思われるのがいやで、今は購入していません。

たぶん、同じようなことを感じていた消費者は
多かったんだと思います。

実際、2005年8月に実施された日経デザインの調査によると、
「ゴ**リ」を嫌いと答えた人のうち43%が、
捕獲器のパッケージに彼らの絵や写真を載せないで欲しいと
思っていることがわかっています。

ただ、「あの絵や写真をどうにかして!」とメーカーにわざわざ
文句言う人は、いままでいなかったんじゃないでしょうか。
おそらく、隠れた要望として消費者の潜在意識の中に留まっていた
んだと思います。


しかし、とうとう、上記のような消費者の隠れた要望を
反映させた新商品が登場しました!

フマキラーの「ゴ**リ激取れ」

は、箱ティッシュを思わせる落ち着いたデザイン。

日経デザインの調査結果を参考したかどうかわかりませんが、
「ゴ**リ」のいる家という印象を与えない、という
製品のネガティブ要因(購入阻害要因)を取り除いた製品です。


従来の捕獲器の派手なデザインは、捕獲器の効き目をアピールし、
購入意欲を喚起することを狙いにしていたもの。

フマキラーの新製品は、製品の「購入時」ではなく「使用時」に
に焦点を当てたという点で注目に値します。

さて、どのくらい売れるのか、しばらく様子を見てみましょう。

蛇足ながら、事務所用として、
さらに目立たない「黒一色」のデザインも出してくれないかなと
思いますね。

投稿者 松尾 順 : 10:31 | コメント (2) | トラックバック

同じ土俵で勝負しないこと

まだ1年も経っていないのですが、
本郷三丁目の駅前に昔からあった古い喫茶店が大改装を行い、
今風のモダンなカフェになりました。

といってもプレミアムカフェの「スタバ」風ではなく、
低価格カフェの「ドトール」風の設計でした。


改装費用は1千万円は超えていないと思いますが、
5百万円以上はかかっているでしょう。

オーナーについてはよく知りませんが、おそらく個人経営。
かなり思い切った投資だったんだと思います。


問題は、真正面に「ドトール」があったことです。

ドトール自体も随分前からありましたが、やはり1年ほど前に、
10mも離れていないところに新店舗を出して地域シェアを
高めています。


さて、改装したカフェについてよくわからないのが、
ドトールが最大のライバルだとわかっていたはずなのに、

「なぜ、ほぼ同じスタイルのカフェで真っ向勝負を
 挑んだのか?」

ということです。

名もない喫茶店が、同じ土俵で勝負してドトールに勝てる
はずはありません。ワールドカップで日本チームがブラジルに
勝利する以上に難しいことですよね。


このカフェは、どうやらパスタ類を提供するのを
「ウリ」にしてたようです。

確かに、ドトールではパスタは出してませんが、
レンジでチンの即席パスタでは、
ドトールとの差別化のための切り札にはなりえない。

パスタを出すなら、玄人をうならせるレベルの味にするとか、
あるいは、高さ1メートルのビッグパフェとか、
奇想天外なものでもいいので、なにかひとつ目玉商品がないと
客はドトールに流れるのになあ・・・

といつも店の前を通りながら思ってました。


そして、予想していたとおり、
とうとう先日、閉店の張り紙が・・・。


しょせん、私は傍観者であり、好き勝手に偉そうなことを
書いているとは思いますが、

「競合とは違う明確な何か」

がなければ客は来てくれないことは明白なはず。

つまり、競合と同じポジションではなく、
違うポジションを狙った新たなコンセプトのカフェに
しなかったのが、不思議でなりません。

投稿者 松尾 順 : 08:42 | コメント (1) | トラックバック

社会という実験場

経営コンサルタントの石原明さんが、
繰り返し言われてきたことのひとつに、

「社会は、自分のためにお金を出して実験してくれている」

という言葉があります。


これは、社会を見渡してみると、

・たくさんの人たちが、新しいアイディアを実現するために、
 様々なことにチャレンジしているということ

・それらは成功することも失敗することもあるけれど、
 第三者として分析することによって、自分は学べること
 (どうやったら成功しそうか、あるいは失敗を避けられるか)

・この学びを得るために自分の腹はまったく痛まないこと。
 まるで自分のために、他の人が自腹で実験してくれている
 ようなものであること

を意味しています。


例えば、居酒屋大手のワタミの場合。

同社では、昨年7月にオープンしたばかりの「てづくり厨房」
を今年5月に閉店。

1年足らずでの撤退を決めています。
(日経アソシエ、206.07.04)


「手づくり厨房」は大手居酒屋チェーンの中では、
初めての「全席禁煙」を打ち出した新業態店でした。

当初は子供連れの家族が来店してくれてにぎわいましたが・・・


「禁煙居酒屋」からの撤退の原因は、
大きな収益源である「宴会」需要を取り込めなかったこと。
また深夜の集客が弱かったことでした。

このため、「和民」と比較すると30%の売上げ減。
これでは駄目だと早々と見切ってしまったわけです。


なぜ、「宴会」が取れなかったのでしょうか?

幹事としては、参加者の中に一人でも喫煙者がいたら、
「手づくり厨房」に予約を入れにくいから。

なぜ、深夜の集客が弱かったのでしょうか?

夜に活動している人たち(いわゆるブルーカラー)は、
喫煙者が多かったから。


今、失敗の原因を振り返ってみると、

「なんだ、そんなこと事前にわかりそうなものだけど」

と思うようなシンプルな原因ですよね。


おそらく、ワタミさんとしても、
成功する、また失敗する可能性について、
いろんな「仮説」を立てていたと思います。

しかし、実際にやってみる=実験してみることで、
「仮説」を検証してみる必要があったのです。


そして、今回は残念ながら失敗したわけですが、
ワタミさんは、次の新業態開発に向けての学びを得たわけですし、
こうした失敗の理由を知ることができた私たちもまた、
タダで学ばせていただいたということになりますよね。


社会を「問題意識(WHY?)」の視点で見つめましょう!
今日も、あちこちで壮大な実験が繰り広げられています。

投稿者 松尾 順 : 10:53 | コメント (0) | トラックバック

リセット願望?

いまお使いの手帳、以前からずっと同じものですか?
それとも毎年、変えていますか?

まあ、どちらにせよ手帳を新調するのは、
年末か、年度末の3月ですよね。普通は・・・


ところが最近は、年末でも年度末でもない時期に、

「今月から始まる手帳が欲しい」

という客が増えてきてるようです。(日経MJ、2006.06.19)


そこで、渋谷ロフト店では夏場の6-8月も手帳売場を設置し、
「5月始まり」「7月始まり」の手帳も開発して販売してみたら
予想を上回る売れ行き。


面白いのは、
購入者の4人に3人が「20-30代の女性」である点です。

「1月から使い出した手帳が使いづらくて・・・」
「携帯を手帳代わりにしていたが不便なので・・・」
「手帳を変えて心機一転がんばろうと思って・・・」

など、購入動機は様々のようですが、基本的には、

「いったんリセットして、白紙状態から再スタートしたい」

という「リセット願望」を充たす儀式の道具として
買われているんでしょう。

女性の場合、失恋すると髪を切ったり、旅行したりして、
一区切りつける儀式をやりますよね。

それと同じではないかと!


男性の場合、やけ酒とか飲んでも、
それは忘れるためではなくて、うじうじと思い出すためのもの。
リセット願望は、女性と比較すると非常に低いように思います。

だから、例えば夏に転職したからといって、
気分一新のために手帳を新調したりすることはまずないでしょう。
私も夏頃の転職を何度もしましたが、手帳を買い換えたことは
ありません。

正直、男である私には、年の途中に手帳を買い換える心理は
あまり理解できません。

手帳ひとつとっても、「おんなごころ」と「おとこごころ」
の違いが読めるように思います。


余談ですが、日経MJの記事によると、
女性に人気の手帳は「ほぼ日手帳」だそうです。

糸井重里氏が主宰する「ほぼ日刊イトイ新聞」から生まれた
オリジナルの手帳。


いろいろと工夫されていて使いやすそう。
実は私も、2006年度版を購入しようかと考えたんですが、
今の手帳に慣れているせいか踏み切れませんでした。
結構いい値段しますし。(ナイロンカバー製のもので1冊3500円)

で、この手帳を担当しているのが、
東京糸井重里事務所の富田裕乃さんということで
コメントが掲載されていましたが、
彼女は、以前勤めていた広告会社の元同僚なんですよ。

ずいぶん前に糸井事務所に転職したことは聞いていましたが、
今も元気にがんばってるのを知ってちょっとうれしかったです。

投稿者 松尾 順 : 10:02 | コメント (0) | トラックバック

風で織るタオル・風で動くはてな

「風で織るタオル」

なぜか優しく暖かい響きですよね。

「風で織るってどういうこと?」

という好奇心も喚起される秀逸なネーミングだと思います。


「風で織るタオル」は、
タオルの名産地、愛媛県今治市の地場企業、
池内タオル(株)のコンセプトです。

池内タオルは、日本で最初の小電力契約企業で、
使用電力を100%、「風力発電」でまかなっています。

だから、同社のタオルは「風」で織られているというわけです。

原糸にはオーガニックコットンを使用した高品質の製品も
揃え、それらは、バスタオル1本で3-4千円します。

しかし、「風で織るタオル」のコンセプトのおかげで
際立ったブランドを確立しており、売れ行き好調。

生産コストでは、中国を初めとするアジア製には勝てず、
危機に瀕している今治のタオル産業にあって、
池内タオルは、独自の「コンセプト」を打ち出して成功した稀有
な企業といえます。


さて、風で織るタオルにヒントを得たのかどうか知りませんが、
変な会社の(株)はてなが、

「風で動くはてな」

というコンセプトを打ち出しましたね。

池内タオルと同様、同社のサーバの消費電力を風力発電で
まかなうことにしたんです。

すなわち、「はてなサーバーのグリーン電力化」です。


「はてな」さんは、ここでひとひねりを加えました。

「風車」をモチーフにしたオリジナルTシャツを販売して、
代金2500円/着のうち、1000円分をグリーン電力化に充当
するそうです。


同社では、

「ユーザーと皆さんと共に動かす風車」

を目指しているということですが、私の勘違いでなければ、
これは同社が支払う電力費用をユーザーに
肩代わりしてもらうということですよね・・・?


さすがです。

ユーザーが育てている会社というイメージのある
「風」変わりな「はてな」ならではの取り組みでしょう!

投稿者 松尾 順 : 09:58 | コメント (0) | トラックバック

文字のないキーボード

事務所のパソコンにつないでるキーボードの文字が、
あちこち消えかかってます・・・

買い換えて1年足らずですが、やはり安物だからですかね。

いちおうタッチタイピングができるので
多少文字が消えても使用には差し支えないのですが、
もし全部の文字が消えちゃったら、さすがに使いこなせないです。


しかし、プロのプログラマーは違いますよね。
キーボードが商売道具そのものですから。

「キーボード一本、さらしに巻いて・・・」(ふ、古い・・・?)

当然ながらすべてのキーを空で覚えています。


こうしたプロ開発者に人気なのが、

キーボードに文字の表示(刻印)が一切ない、

「ハッピー・ハッキング・キーボード 無刻印モデル」
(写真はホワイト、ブラックもあります)

です。

結構以前から知られたモデルですが、ご存知でしたか?


文字がないので、実にすっきりした顔つきしてますね。
でも、素人を寄せ付けない威圧感があります。(笑)

プロじゃなきゃとても手が出せない。

値段も1本、約2万5千円。
プロ仕様にふさわしい値段です。

しかし、過去7年間で10万台も売れています。


さて、「文字のないキーボード」なんて発想、
どこから生まれたんでしょう?

開発した(株)PFUの松本部長によると、

ピアノの練習をしている娘さんが、
ピアノのキーボードに「ド」、「レ」、「ミ」などと音階を
書いて貼り付けていたのを見たのがきっかけでした。

そして、松本さんは、

「コンピュータ用キーボードの文字をなくしてしまったら
 どうだろう?」

という逆転の発想をしたわけです。


ピアニストは、音階の書いてあるピアノは使いませんよね。
プロのIT開発者なら、文字がなくたって支障はないはずと
考えたんでしょう。

ただ、売れている最大の理由は、文字がないキーボードは、
そのユーザーがプロであることを示す「シグナル」の
機能を持っていることです。

つまり、文字のないキーボードは、

「私のユーザーはプロなんですよ」

という信号を発信している。

その信号を受け取った人は、

「さすがですね!」

と感心してくれ、
プロフェッショナルの自尊心が大いにくすぐられると
いうわけです。


ハッピー・ハッキング・キーボードの事例は、
やみくもに製品を便利にしようとする思想は、
ユーザーセグメントによっては逆転してもいいこと、
また、製品が発信する無言のメッセージ(=シグナル)を
意識する必要性を認識させてくれるものでしょう。

投稿者 松尾 順 : 14:43 | コメント (4) | トラックバック

マーケターは「星の王子さま」を読め!

「読め!」とは、ちょっと高圧的ですね。すいません。


さて、このメルマガ(ブログ)は、
マーケティングや消費者心理に関心のある方を対象に書いてますが、
マーケティングだからといって、いつも「ビジネス」にだけ
視野を狭める必要はないと思うのです。

しばしば、ぜんぜん関係なさそうなものに、
意外なヒントがあったりします。

そのひとつが、サン=テグジュペリの「星の王子さま」です。

これは童話風の物語ですが、純粋な童話として書かれたもの
ではなく、当時の唯物論的考え方や科学重視・実証主義に
偏向した社会を揶揄した内容になっていますよね。

そしてまた、見方を変えれば、
「ブランドの本質」について書かれた本とも言えるのです。


大胆に言い切ってしまうと、「星の王子さま」が
伝えようとしたことは、

「物事の価値は人の心の中にある」

ということでしょう。


たとえば、物事についての目に見える尺度、
つまり、形状や機能や性能などが必ずしもその価値を
自動的に決めるわけではない。

物事の価値の有り無しを決めるのは、物事自体ではなくて、
むしろ、人の心であるということです。


「かんじんなことは目には見えない」

これは、星の王子さまにきつねが教える「秘密」のひとつですが、
しばしば、人は、目には見えない(可視化・数値化しにくい)こと
に価値を見出すという点を示唆してると見ることができます。

例えば、品質的には全く同じ生地で作られた、
同じようなデザインの服でありながら、高級ブランドと無名製品で
価格が天と地ほども違うのは、そのブランドの背景にある歴史とか
伝統とか「目に見えない大切なもの」に対して高い価値を与えられ
ているからです。


もうひとつ、きつねが王子さまに教える秘密も、
実に意味深長です。


「あんたがね、あんたのバラの花をとてもたいせつに
 思ってるのはね、そのバラの花のために、“ひまつぶし”
 したからだよ」


バラの花は、どれも見かけは同じにみえます。
違いはほとんどわかりません。

なのに、一本のバラが、王子さまにとってかけがえのない存在と
感じられたのは、バラに水をあげたり、ついたてを立てて
風から守ったり、いろいろと時間をかけて面倒を見たから。

つまり、物事の価値は、自分がその物事に対して投じた
(無駄にした)時間によって上がるものなのです。


これで思い出すのが、
最近注目されている「ユーザー参画型」の商品開発です。

企画段階からユーザーの意見を積極的に取り入れたり、
あるいは、あえてソフトのベータ版のように未熟な子供の段階で
市場に出して、バグのない立派な完成品(大人)ユーザーに
育て上げてもらう。

企業側が勝手に企画して作られた商品をポンと
あてがわれるのではなく、
商品開発プロセスにユーザー自身が首を突っ込み、
手間と時間をかけた商品が登場したなら、
それは、ユーザーにとって「特別な」価値のある商品ですよね。


まあ、星の王子さまの強引な解釈とおっしゃる方もいる
でしょうけど、私が、マーケターとして「星の王子さま」
に見出した価値は、「ブランド本」としてのものであると
お考えいただけますでしょうか?


余談ですが、これまでの話は、
ブロードウェイミュージカル「Rent」のテーマ曲、
『Seasons of Love』の歌詞にも通じるところがあると
思います。

------------------------------

How do you measure a year in the life?

「あなたの人生の一年一年をどんな尺度で図る?」

How about ‘LOVE’?

「‘愛’ではどう?」

------------------------------


「今年どれだけ儲かったか」

なんていう尺度で一年を測るのもわかりやすいですけど、
「愛」という尺度で測るのも悪くないですよね。

投稿者 松尾 順 : 11:00 | コメント (6) | トラックバック

「e託販売サービス」は何の前兆か?

アマゾンユーザーの方はお気づきかも知れませんが、

「e託販売サービス」

が開始されてます。


これは「委託販売」のオンライン版。

委託販売は、リアル版だと、
古着のリサイクルショップが典型的ですね。

リサイクルショップでは、通常、売主が持ち込んだ古着を
一定期間店頭に陳列します。そして、売れた分だけ、
委託手数料を差し引いた売上を売主渡します。
売れなかった分は売主に戻すので、店舗側は
在庫費用を負担するだけで済みます。


アマゾンでも同様に、インディーズCDや自主出版物など、
あまり大きな売上は望めない、いわゆる「ロングテール商品」
を委託販売していこうというわけです。

「ロングテール商品」とは、大手の卸やリアル小売店構成される
従来の販路(チャネル)では、仕入・在庫コストと比較して、
たいした収益が望めないのでなかなか扱ってくれなかった、
ニッチな商品のこと。

巨大な顧客ベースを抱えて圧倒的な販売力を誇るアマゾンが
委託販売をやってくれるのは、
「販路開拓」が最大のボトルネックとなっていた「ニッチ商品」
にとって大きなチャンスになりますよね。

「e託販売サービス」の場合、売上額の6割を売主に還元する
ということですから、委託手数料は4割ということになります。


さて、このサービスは、出版業界、特に卸会社には結構な波紋を
投げかけているようです。

元々自分たちはあまり扱いたくなかった商品とはいえ、
中間業者の卸を中抜きして直接小売店と取引するという動き
だからです。


実は、出版業界は、実質的には委託販売型。
本屋で売れなかった本の大半は、出版元にあっけなく返品
されてしまう。

なので、アマゾンのような巨大小売店が在庫管理と販売を
やってくれるなら、出版社としては「卸」を通す意義が
なくなってしまうわけですね。


今回の動き、
今はダムの壁にあいた小さな穴に過ぎないように見えますが、
本格的なミドルマン淘汰への前兆なのかもしれません。

投稿者 松尾 順 : 10:52 | コメント (2) | トラックバック

あのヒトは、一人じゃない。

これ、コピーライターの仲畑貴志さんの言葉です。

次のようなエピソードがぶらさがってます。
(宣伝会議、2006.3.1)

即席ラーメンの新商品開発のために行った事前調査で、

「減塩ラーメンを選びますか?」

という問いに対して、大多数の「賛同」というデータが出た。
ところが、この数字に背中を押されて売り出した

「減塩ラーメン」

は売れず、

その真逆の価値である

「激辛ラーメン」

が売れたそうです。

これはどう捉えれば良いのでしょうか?


仲畑さんの答えは、

「ひとりの人間の中には、複数の人格価値観が存在している」

ということです。

「減塩ラーメンを選びますか?」

という問いに好意的な反応を示したのは、健康に留意するという、
その人の中の「理性的」な人格。

ところが、即席ラーメンを食べるときのその人は、

「腹へった、とりあえず、なんか食お」

というゆるい価値観で行動しています。

したがって、ゆるい価値観で選択されているラーメンという
商品を理性反応の数字の集積で判断したのが間違い、

だというのが仲畑さんの考え。


まあ、まったくもってその通りです。
調査のやり方、データの解釈の仕方が適切じゃなかった
ということです。


こうした、

消費者の言ってること(調査結果)と
やること(購買行動)は違うじゃん

という悲劇はかなりの頻度で起きているようですが、
そもそも仲畑さんが指摘されているように、

「ヒトは複数の人格を持っている」

という点を忘れがちな点が問題でしょうね。

ただ、「複数の人格」を持っているといっても
精神が分裂しているということじゃありません。

より正確に言うと、

「消費者は市場というステージで様々な役を演じている」

ということです。

会社員、夫(妻)、親、子、ミュージシャン、ゴルファー

など、時と場合、相手との関係によって、
私たちは、まるで俳優のように複数の役を使い分けています。

もちろん、それぞれの立場で、価値観も違う。
購買行動だって変わってきます。

これは専門的には、

「Role Theory」(役割理論)

と呼ばれるものですが、

よく引き合いに出される、

高級車に乗り、100円ストアで買物をする

といった一見、一貫性に欠けた行動に見えることも、
一人の人間が複数の自分の役を使い分けていることを
考えると、なんら不思議ではないわけです。

ちなみに、即席ラーメンを食べる時の自分は、欲望のままに生きる
「素の自分」を演じているんだと考えられるでしょうね。(笑)

投稿者 松尾 順 : 10:24 | コメント (0) | トラックバック

時間無駄使い型商品

資本主義かつ拝金主義の今の世の中で、面倒なことは、
常に「生産性」を求められることですよね。

「生産性」とは、端的には、

一定時間内にどれだけの価値(換金できる価値)を生み出すか

ということです。

そして、「生産性」を高めるためには、

作業スピードを上げること、無駄な時間を減らすこと

が必要になってきます。


まあ、ビジネスは競争であることは真実ですから、
生産性を高めなければならないことはしょうがない・・・

でも、機械には絶対になれない、動物の一員である人間にとって、
生産性を意識して行動するのって本能に反しています。
だって、生産性を上げようと考えて行動する犬とか猫って
いませんよね。(人間と同じように強制されないかぎりは)


ただし、ゆっくり休息すればいいわけじゃないんですよね。

人間の場合、あえて時間を無駄に使う、
自分のペースで気ままにできる何かが必要です。


最近、大人のための「塗り絵」がちょっとしたブームに
なっているそうですが、

1時間以内に1枚仕上げなければ・・・

なんてことを考える必要のない、
贅沢な時間の使い方ができる趣味として
受け入れられたんでしょう。

こんなマイペースで取り組める趣味として、
「奥の細道」をえんぴつで写し取るための本も
出版されて売れているようです。
これは、まるで写経ですね。


ジャーナリストの川崎由香里さんは、
このトレンドについて

情報の豊かさ、便利さゆえに削られた

「味わう時間」

を買い戻そうという皮肉な心理を思い知らされる

とおっしゃってますが、


時間を節約するための商品

ではなく、時間を味わうため、極端に言えば、

無駄に使うための商品=「時間無駄使い型商品」

は、これからどんどん増えていきそうですよね。

投稿者 松尾 順 : 10:39 | コメント (0) | トラックバック

消えないウワサ

人のうわさ、つまり口コミはネットによってとんでもない
速さで伝わるようになりましたよね。

良いウワサなら歓迎ですが、悪いウワサが広がると、
最悪の場合、企業の息の根を止めてしまう可能性さえあります。


さて、従来の口コミとネット口コミの決定的な違いは、
おわかりですよね。

それは、従来の口コミは「揮発性」が高く、
ネット口コミは、「揮発性」が低いということです。


従来の口コミは文字通り口伝えでした。

つまり伝えたい情報は、言葉として発声され、
すぐに消えてしまう。(=揮発性が高い)

情報が瞬時に消えてしまうからこそ、
最初の人と最後の人で内容がまるで違ってしまう「伝言ゲーム」
が面白いわけです。


ところが、ネット口コミは、その大半が掲示板やブログなど、
文字データとして発信され伝わっていきます。

すると、良い内容であれ、悪い内容であれ、
長くオンライン上に閲覧可能な状態で残ったままに
なりますよね。(=揮発性が低い)


つまり、昔の口コミと違って、
人のウワサがオンライン上では消えてしまわない。
「人のウワサは75日」ということわざは、もはや成立しない
世の中になったんじゃないかなと思います。

もちろん、どんな出来事でも、時を経つにつれ人々の関心は
薄れていくことには変りありません。

でも、ネットで軽く検索しただけで、当時の情報がいくらでも
出てくる。出来事の記憶がリフレッシュされてしまう。
「忘れ去られてしまう」ことがなくなったといえるわけです。


これ、いい情報ならともかく、
悪い情報の場合だと、大変困ったことなんですよ。


以前、Googleで温泉宿を探していた時のことなんですが、
ある旅館で食中毒を起こしていたという情報が
引っかかってきました。

ニュース記事ではなく、地元の人のWEB日記に書かれていた
情報です。ただ、その食中毒事件は5年も前のことした。


その旅館も、5年後の今は厨房施設を一新しているかも
しれませんし、衛生管理にもには気をつけていて特に
問題はないと思います。それでも、食中毒を起こした旅館と
いう情報を見たら、当方の希望にぴったりの旅館だったにも
関わらず、なんとなく予約する気がなくなりました。

これは、理屈では説明できない感情レベルの問題ですが、
多くの人が、同じような気持ちになるんじゃないでしょうか?


企業側としては、
起こしてしまった事件についての情報が流れるのを防ぐのは
できませんが、その後の対応についての情報や、
根も葉もないウワサ、風説の扱いには、細心の注意が必要
ということになりますね。

しかし、まだまだこのことがわかっていない企業が、
東横インやシンドラーエレベータをはじめとして、
たくさんあるようですけど・・・

投稿者 松尾 順 : 11:11 | コメント (0) | トラックバック

企業の本性

死亡事故を起こしたシンドラー社のエレベータ。

同社日本法人は、
速やかな状況説明や、真摯な態度を見せることができず、
まるで責任逃れをしているように見えますね。

危機対応の最悪の見本が、また生まれました。

シンドラーエレベータは、世界シェア15%の伝統ある大手企業です。
ですが、日本でのシェアは1%に過ぎません。

今回の死亡事故に対する対応で、
もともと希薄だったシンドラー社のブランドイメージは
地に墜ちましたが、
もう日本市場はどうでもいいと考えているんでしょうか。

このような対応を続けるなら、もはや日本市場を撤退するしか
道は残されていないでしょう。

現場でまじめに働いている同社の社員の皆さんはさぞかし
情けない思いと不安な気持ちを抱いてらっしゃることでしょうね。


日本のエレベータ市場は、
三菱電機、日立製作所、東芝エレベータの3社でシェア7割超を
占める寡占市場です。

エレベータは、オフィスビルなどに組み込まれる製品ですから、
ビル建築を請け負う建設会社(ゼネコン)とのつながりや、
保守点検が欠かせないという点で、保守サービスの充実が必要で
あるため、外資の参入は簡単ではありません。

このため、シンドラー社では、入札で決まる官公庁向けを
事業の主体とせざるを得ませんでした。


しかし、今回のような誠意の感じられないずさんな対応を
しているようだと、もはや官公庁としてはシンドラー社を
入札に呼ぶわけはいかない。

つまり、日本市場から実質的に締め出されることになるわけです。

同社経営陣は、会社の将来より自己保身に走っているようですが、
やはり危機において企業の本性が現れますね。


企業の本性とは、企業の経営者そのものの人間性と言えるんじゃ
ないかと、今回あらためて思いました。


一方、シンドラー社と対照的な、
毅然とした態度を取っているのが、ソフトブレーン社です。

同社は、昨年8月に村上ファンドの村上世彰氏を社外取締役に
招いていました。

先日の村上氏の逮捕に際して、村上氏と懇意にしていた
日本企業の経営者や有名人は、マスコミの取材から
逃げ回っています。

しかし、同社だけは、村上氏の問題について
マスコミの取材をすべて受け、誠実に対応しています。

こうした企業姿勢には、
創業者で同社会長の宋文洲氏の意向が反映されているようですが、
中国人である宋氏のリーダーとしての卓越した人間性が
証明された一方で、日本人の経営者の中には、
リーダー失格の人がやはりたくさんいたんだなと、
なんだか情けない思いをさせられますね。

投稿者 松尾 順 : 09:39 | コメント (0) | トラックバック

機能性と使い勝手

製品ができること、つまり「機能」が増えると、それだけ便利
になりますけど、同時に、操作が複雑になって使い勝手が悪く
なりますよね。

ケータイはその典型的な例でしょう。
実際、私が持ってる多機能携帯、操作を覚えるのが大変で
ほとんど使いこなせてません(⌒o⌒;

正直、こんなに機能がなくても間に合ってるので、
もっとシンプルな機種でいいと思っているんですが。

かといってシニア向けに発売されている電話機能だけのケータイ
では逆に機能が不足します。

つまり、今は、機能が多すぎるか、少なすぎるかの両極端の機種
しかなく、私のニーズぴったりくるものはなかなかありません。
困ったものです。


さて、「機能性」と「使い勝手」についての消費者心理がわかる
面白い調査結果があります。
(ダイヤモンド ハーバードビジネスレビュー June 2006、
 ‘便利で不愉快な機能過多を排す’より)

上記記事によると、3つの調査をやってるんですが、
ポイントだけ書くと次のようになります。
(この記事では、機能と性能がほぼ同じ意味で使われています)

・購入前の消費者は、機能が多くなると使いにくくなると
 わかっていても、使い勝手より「機能(性能)」を重視する

・自分で製品をカスタマイズできる場合、使い慣れるのが大変
 だとわかっていても、たくさんの「機能」を盛りこもうとする

・実際に製品を利用しだすと、消費者は、機能より「使い勝手」
 を重視するようになる!


要するに、私たちが体感的にわかっていることですけど、

買う時は、あれやこれや機能が多いほうがよさげに見えるけれど、
買った後では、やっぱりシンプルで使いやすいものが良かったな
と後悔する。

この普遍的な消費者心理を見事に実証してくれてるわけです。


となると、企業の製品やサービス開発担当者は
どうしたらいいんでしょうね?

購入に踏み切らせるためには、多機能がよさそうだ、
しかし、実際の利用満足度は多機能がゆえに低下する。
これはリピート率の低下につながるだろう。

1回売り切りの商品ならさておき、継続的に購入してもらおうと
するとジレンマに陥りますよね。


私も、これだという「答え」は今のところ持っていません。

ぜひ、ブログのコメント欄にあなたの考えを!

投稿者 松尾 順 : 11:19 | コメント (4) | トラックバック

時代の風を読む

最近のベストセラー本のひとつ、劇団ひとりの

「陰日向に咲く」(幻冬舎)

を通勤中にサクッと読んでみました。

今何が大衆に受け入れられているのか、流行っているのか、
いわゆる「大衆文化」を知るのはマーケターとして
大切なことですよね。

ですから、本来は若年層がメインターゲットで
40歳過ぎのおじさんが読むのはちょっと恥ずかしい、
上記のような本をあえて読んでみるのも
立派なマーケティングリサーチだと思います。(笑)


さて、劇団ひとりさんは小説を書くのは初めてなのに、
筋書きが巧みですね。文体はさらっとしてます。
大笑いさせるようなオオゲサなオチはありませんが、
柔らかい笑いを呼び起こします。

じんわりとした余韻が残るいい小説でした。
まあ、確かにかなりの「文才」があることを感じさせますが、
ものすごい!というほどではありません。

ではなぜベストセラーになっているのか。

それは時代の風を見事に読んでいることにあると思いました。

登場人物たちは、ホームレス、フリーター、ギャンブル好きの
多重債務者などです。
昨今の拝金主義、成果主義が生み出した格差社会の
「オチこぼれ」をメインキャラクターとして設定しています。

彼らは、村上ファンドの村上氏のように、
資産家の生まれでもないし、ずる賢くもありません。
むしろ、不器用で衝動的な感情に流されてしまいがちな弱い人間。

でも、私も含め、いわゆる大多数の市井の人たちは、
多かれ少なかれ弱い存在ですよね。運命に翻弄され、
しばしば、自分自身の蒔いた種で苦労することも多い。

現代は、そうした弱さが、結果において大きな差として
現れてしまう厳しい社会です。だから「格差社会」と
呼ばれている。

そんな世の中で多くの人が共通して感じている
漠然とした不安や恐怖、あるいはあきらめ感といったものを
劇団ひとりさんはしっかり受け止め、
巧みな筋書きと心理描写で小説化した、
ここにベストセラーになった鍵があります。

ひとりさんは、小説の素人だからこそでしょう、
実にわかりやすい「時代の風の読み方」と言えます。


最近は、ワン・ツー・ワンマーケティングが主流で、
どうしても、ターゲット顧客一人ひとりの個別のニーズに
焦点を絞りがちですが、一方で、今の時代全体をおおう時代の
雰囲気、風を同時に感じようとすることが必要ですね。

なぜなら、個々人のニーズは、そうした時代の雰囲気、風
にも大きく影響されているからです。


現代のビジネスは、いくら市場を細分化したところで、
一定数以上の顧客を確保しなければ利益が出ない以上、
個々のニーズに加えて時代の風も的確に読み、それを
商品開発なりマーケティングコミュニケーションに反映
させることはいまだ重要なポイントだと思います。

投稿者 松尾 順 : 09:38 | コメント (2) | トラックバック

ガキが着るものはイヤ

子供服ブランドで急成長してきたナルミヤ・インターナショナル。
ご存知でしょうか。

同社社長、成宮雄三氏の本、

「チャンスは6時の方向にある-小が大に勝つ逆張りビジネス論」

を読むと、成宮さんは、前例にとらわれない大胆なアイディアで
逆境をチャンスに変えてきた人であることがわかります。


さて、事業に100%の成功はなく、時に失敗することも
覚悟しなければなりませんが、
ナルミヤインターナショナルさんも最近、

「ブランド拡張戦略」

に失敗しちゃいました。
(日経MJ、2006.05.26の記事より)


同社の主力ブランドは、小学校高学年~中学生のジュニア向けの
「エンジェルブルー」です。
ジュニア服としては異例の1万円を超える値段のものでも
飛ぶように売れているというので、注目されていたわけなんですが。

ナルミヤさんはここで欲を出しすぎたか、エンジェルブルーの
支持層を広げるべく派生ブランド、

「エンジェルブルーキッズ」

を04年8月、発売します。小学校低学年層向けです。

子供服という同じカテゴリーながら、新たなターゲット市場を
狙った「ブランド拡張戦略」を採用したんですね。


ところが、しばらくして既存ユーザーだった小学校高学年~
中学生女児が同ブランドを購入しなくなり、
ナルミヤの百貨店などでの売上げは、04年11月から前年割れを
始めるようになります。

結果として、直近年度の2006年1月期の決算は、1995年以来、
初めての減収減益に陥りました。


エンジェルブルーのような、既に確立されたブランドをテコと
して新市場に展開するのは、新たなブランド構築のための投資が
最小限で済むので大変効率的ですが、
同時にブランド拡張の「リスク」にも注意を払う必要が
ありますよね。

ブランド拡張のリスクの一つは、あまりにも広範囲にブランドが
拡散してしまうことによる「希少価値の減少」です。

もう一つは、新たに加わったネガティブなブランドイメージが
もたらす「ブランド価値の破壊」です。


「エンジェルブルーキッズ」の場合、後者のケースです。

キッズという言葉が付いてはいるものの、

エンジェルブルーは低学年のガキが着る服というイメージ

が広がりました。
このため、従来の小学校高学年~中学生のユーザーにとっては、
「ガキが着るものはイヤ」だということで、
ネガティブなブランドイメージが付加されることになったんですね。


一般論として、ユーザーのライフスタイルを表現するような
高級ブランドの場合、それが格下の層(下層階級や低年齢層)に
広がった時点で、従来のユーザーはそのブランドから離れて
いきます。自らのライフスタイルとのイメージのズレが発生
するからです。

このような従来のユーザーが購入をやめてしまうような
新たなユーザーのことを、オピニオンリーダーの逆の意味で、
「ディスオピニオンリーダー」と呼びます。

エンジェルブルーの場合、低学年が
「ディスオピニオンリーダー」の役割を果たし、
従来のユーザー離れが起きたということになりますね。


まあ、おじさんの私から見れば、小学生~中学生はみんな
ひとくくりで「ガキ」にしか見えないんですけど。

とこんなことを言ったら、
中一の娘に怒られてしまいそうです。(笑)

投稿者 松尾 順 : 11:02 | コメント (5) | トラックバック

フリスク vs ミンティア

「フリスク」(カネボウフーズ)というと、
あの「ニヤリ」とさせるTVコマーシャルを思い出しますよね。

フリスクを口に入れたとたん、うるさく飛び回っていた蚊を
一発でやっつけたり、念力でどうしても曲がらなかったスプーン
の替わりに、自分のメガネの柄がグニャリと曲がっていたり・・・

息をさわやかに保つ錠剤状として、
「フリスク」のブランドはしっかり確立してますよね。

TVコマーシャルのトーンを見ればわかるようにターゲットは
ビジネスパーソン。30―40歳代の男性がユーザーの6割を
占めています。

一方、「ミンティア」(アサヒフードアンドヘルスケア)は、
どうでしょうか、ビジネスパーソンの方々にとっては、
ブランドイメージはかなり薄いんじゃないでしょうか。

実際、当初ミンティアは、
フリスクと同じターゲットを狙って投入された後発商品
でしたが、やはりフリスクには勝てなかったそうです。


しかし、現在、ミンティアの売上げはフリスクを追い抜き、
その差を広げています。(日経MJ、2006/06/05、日経POS
情報サービスのデータの分析に基づいています)

この「ミンティア」の逆転劇は2005年に起きたんですが、
成功要因は、ターゲットを若年層にずらしたことにありました。

2005年、アサヒフードアンドヘルスケア(以下アサヒフード)
は、「ミンティアガール」を結成し、若者向けに徹底した
プロモーションを展開、フリスクがカバーできていなかった
若年層の取り込みに成功したというわけです。

「ミンティアガール」の結成は、昨年の販促会議の記事で
掲載されていたのを覚えています。
(実物を拝んだことはありません(⌒o⌒;)

ミンティアガールとは、まあずいぶんベタなプロモーションだな
と感じたものですが、ちゃんと成果につながったんですね。


それにしても、疑問を感じるのは、当初、ミンティアは、
すでに強力なブランドだったフリスクと同じ市場を狙った点です。

後発商品は、よほど、先発商品を上回る優れた特徴がない限り、
先発商品とは異なるターゲット、市場を狙うべきですよね。

ポジショニング分析とかやったら、競合製品のない空白地帯に
向けた商品の開発、またコミュニケーション戦略を立案する
というのが一応定石のはずですが。

ただ、現実には、「柳の下のどじょう商品」はあちこちに
氾濫しているところを見ると、
空白地帯を狙うのは定石ではないようです。


まあ、実はメーカーの内部事情を覗いてみると、
営業サイドからは、

「あのヒットしている商品みたいな(売れる)ものを作ってくれ」

とプレッシャーがかかるし、

上層部からは、

「この新商品が売れる確証を見せろ」(前例はあるのか?)

と言われている可能性が高いですよね。


となると、ヒット商品のマネをするのが無難なわけです。
(勝てなくてもそこそこ売れますから)

ミンティアの場合、内部事情が上記のようなものだったのかは
わかりませんが、ともあれ、一度失敗したおかげで、
思い切ったマーケティング戦略の転換ができたわけです。

マーケティングも、現実の企業内では
そうそう教科書どおりには実行できないものなんですよね・・

投稿者 松尾 順 : 18:21 | コメント (5) | トラックバック

創造力と問題発見能力

先日ご紹介した「ハイコンセプト」の主旨は、
これからは「新しいこと」を考え出す人の時代であり、
コンピュータや、より賃金の安い国の労働力で代替可能な
仕事は「やばい」ですよということでした。


「新しいこと」を考え出すというのは、創造力、あるいは
問題発見能力を持っているということですよね。

じゃあ、どうしたら創造力や問題発見能力を高めることが
できるのか。

このテーマについては、
これまでもいろいろと書いてきてますけど、
ほぼ答えは見えています。様々な方が語っていることの
本質はほぼ同じなんですよね。

でも、特に、最も的確に上記テーマに対する答えを返して
くれているのは、精神科医の和田秀樹氏でしょう。

つい先日公開されたばかりの、
和田氏執筆の「ビジネスリーダーの心理学」
NECの会員制サイト、Wisdomに掲載)

の第12回のタイトルは、

「創造力と問題発見能力をつける」

でした。

概要をご紹介しましょう。

ポイントは次の5つです。

1 「豊富な知識」に基づいて「たくさんの答え」を出せること

 インプットなくしてアウトプットはないということですね。
 一発ですばらしいアイディアがでることはまれです。
 たくさんのアイディアを出すなかから、原石を探し出す必要
 があります。

2 観察眼を鍛えること

 物事を「問題意識」を持って考えることです。
 流行っている店に行ったら、なぜ流行っているのか、と
 その要因を考えてみる。つまり仮説を立ててみるということ
 でしょうか。

3 自分の感情を大切にすること

 銀行の窓口が混んでいて長いこと待たされてイライラした。
 コールセンターのオペレーターの対応にむかついた。
 自分の感情が動いた時、特にネガティブな感情、つまり不満、
 不安、怒りといったものを認識することが、新たな発想に
 つながる「問題」を発見し、創造性を刺激することになる。

4 うまく行っているものから学ぶこと

 要するに「守・破・離」ということでしょう。
 まずは、成功者の型を素直にまねする。そして、そこに
 自分のオリジナリティを加えていき、独自の型を創造する。
 まったくのゼロからは何も生み出すことができないのです。

5 とにかく試してみること

 学ぶことは失敗することです。失敗の種をつぶしていけば、
 最後には成功が残る。


上記のポイントを見ると、テクニックというよりは、
生き方や仕事の仕方に対する基本的な取り組み姿勢の
問題であることがわかりますね。

単に、○○発想法みたいな発想技術が書かれた本だけ
買ってきても、らちがあかないはずです。

投稿者 松尾 順 : 09:34 | コメント (0) | トラックバック

広告の見かた

「月刊アイ・エム・プレス」で先月から始まった連載、

「DR(Direct Response)広告改造屋」

がなかなか面白いですよ。


毎回、ダメダメ広告を取り上げて、問題点を指摘し
こうすればよくなるよという改善例を示すというもの。

「広告ビフォア・アフター」です。

執筆者は、ダイレクトマーケティング専門広告代理店の
「ラップ・コリンズ」の創始者、トーマスコリンズ氏。
業界では超有名人です。


さて、コリンズ氏によれば、
広告には次の4つのタイプがあるそうです。

1.商品の固有なベネフィット、優位性、ニュース性、
  差別化ポイントなどを訴求し、または再認識させ、
  説得を働きかけ、行動を促すもの

2.商品に決め手となる差別化ポイントがない場合、
  読者の心の中に、継続的に好意的なマインドシェアを
  築き強化することを狙うもの

3.主目的として1を。副次的に2を達成するもの

4.1も2も達成できず、ほとんど広告としての価値が
  ないもの


4はダメダメ広告ですから論外ですね。

1は、明確な競合優位性がある場合、それを前面に押し出して
合理的な説得を図ろうとするものです。

例えば、ノートパソコンなら「パナソニック レッツノート」。
広告の訴求ポイントは、軽量さと長時間駆動に絞ってます。
モバイルPCユーザーの最も重視するニーズに対する答えを
明快に伝えています。


2は、端的にいえばブランド広告です。
合理的な判断を超越し、共感を呼び起こすもの。

焼酎の「いいちこ」が典型例でしょう。
様々な自然の風景の中に、「いいちこ」のボトルがぽつんと
置かれている。コピー最小限。


コリンズ氏の4つの広告の分類法は極めて基本的なことですが、
この視点で、自分が目にする広告を評価してみると、
「マーケティング眼」を磨くとてもいいトレーニングになりますよ。

投稿者 松尾 順 : 11:15 | コメント (0) | トラックバック