旧型の魅力を高めるための新型
今年の夏、バカ売れしたデジタルカメラは6月4日発売の
「ルミックスDMC-FX8」(松下電器産業)
でした。
解像度は500万画素。手ブレ補正機能が売りです。
同製品は、6月、7月は機種別シェア首位を取り、
8月も同2位と、その強さを維持しました。
さて、松下さんは、8月26日に後継機種「FX-9」を投入します。
画素数は600万画素、液晶画面のきめ細かさが2倍になりました。
通常、デジカメの新型が投入されると、旧機種の価格があっと
いう間に下がり、在庫処分されて生産中止になるところです。
ところが、旧機種「FX-8」は、女性ユーザーの支持を受け、
「FX-9」投入後もほとんど値崩れせず、売れ続けました。
日経ビジネス(2005年12月19日号)の特集記事では、
これは、周到に仕組まれた戦略であったことを紹介しています。
松下さんの戦略のポイントは次の3つです。
1 旧機種(FX-8)と新機種(FX-9)のデザインをほとんど変えず、
旧機種を持つことの恥ずかしさを感じさせないようにした
2 旧機種だけに、女性が好むマニキュアの色に近い、
「ミスティピンク」のボディカラーを設定した
3 旧機種の方が5千円安くなるよう、新機種FX9の価格を
設定した(価格に敏感な女性を意識)
実に的確に購買心理を読んでいると思います。
おそらく、小売店の店頭で、FX-8とFX-9を比較してみた女性は
こう考えたに違いありません。
「FX-9の方が新しいけど、ほとんど性能は変わらないし、
デザインも大きく変わってない。だったら5千円安い
FX-8でいいよねぇ。ミスティピンクはFX-8しか選べないし」
こうして、松下さんの狙い通りFX-8は売れ続けました。
つまり、FX-9は、FX-9の新規ユーザー層を拡大し、売れ行きを
維持するために、意図的に投入された釣り玉、別の言い方を
すれば、「見せ筋」であったわけです。
レストランなどでも、最も売りたい価格帯のメニューより
ワンランク高いメニューを掲載することで、相対的に安く
思わせるという心理的効果を狙いますが、
松下さんの価格戦略もそうした効果を狙ったものですね。
機種選択におけるデザインの重要性も十分に考慮されています。
デジカメは、既にどの製品も性能的には大差のない成熟商品です。
機能が優れているだけで買ってくれるお客さんは
ほとんどいなくなりました。
しかも、機能の良し悪しを判断できる知識を持たない
一般ユーザーに購入層が広がっています。
デジカメに限らないのですが、松下さんのような、
人間心理の機微を読みきったマーケティング戦略が
ほんとに重要になってきたと思います。
投稿者 松尾 順 : 2005年12月19日 12:22
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