変えないところ、変え続けるところ
以前、沖縄にセミナーの講師として出張した時、
とても好きになった小料理屋がありました。
セミナーのアシスタントをやってくれた方の紹介でした。
「子福」という名前のお店です。
なんかあったかい店名ですよね。
カウンターが8席くらい、お座敷3卓くらいの大きさです。
年の割(失礼)には、かわいらしい感じのママさんの
素朴な客あしらいには心が癒されましたし、
ママさんのお姉さんがつくる料理はなかなかおいしかった。
時々、ママさんの娘さんがカウンターの手伝いをしていました。
そこそこ食べて飲んで、客単価5千円程度。
「子福」には、際立った特徴はありませんが、
また来てもいいかなと思わせる安心感がありました。
たぶんいつ来ても、上記に書いたような点は変わらないだろうから。
そして結局、その出張の時、
私たちは2日間連続で通ってしまったのです。
なぜそんな気持ちになったかおわかりでしょうか。
お手洗いに入ると、洗面台の壁に色紙が貼ってありました。
ママさんがちょっとした言葉を書いているのです。日替わりです。
聞けば、開店前に時間を見つけて書いているとのこと。
あいだみつおの言葉のような、印象的な内容ではないけれども
ママさんの人柄がにじみでる色紙の言葉をまた明日も読んでみたい。
そう思って2日目も、ふらふらと子福に行ってしまいました。
人の欲求は、矛盾を抱えています。
相反する欲求を同時に持っているのです。
例えば、変わらないことから来る安心感と、
変化することからの刺激の両方を同時に求めています。
おそらく、たいていの人は、8割くらいは安心を求め、
2割程度の刺激を求めるんじゃないかと思います。
「子福」さんの場合、食事やサービスといった変わって
欲しくないところと、色紙のちょっとした変化のバランスが
絶妙だったのでしょう。
実際、色紙見たさに常連になるお客さんがいたようです。
私も、沖縄に今度行ったら、「子福」さんに立ち寄って
また、あの色紙が見たいと思い続けています。
色紙を毎日書き続けるのはちょっと面倒ではあるけれど、
良く考えると、その程度の工夫で「ちょっとした変化」を
生み出せて、常連客を増やせるとしたらなんでもないことですね。
投稿者 松尾 順 : 2005年11月21日 05:02
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