積分する経験
日経MJが実施した「わくわく消費調査」。
これは、消費者を対象に、ブランドに抱く感動の度合いを
調査したランキング化したもの。
品質や利便性だけでなく、心地よさや楽しさなどの感情、
デザインなど感性の評価などを含む18項目で測定し、
ブランドが消費者にどんな経験や体験を提供する魅力があるかを
指標化しました。日経MJでは、これを「経験価値指数」と
呼んでいます。
さて、この調査、店舗・施設、および消費財のそれぞれの
カテゴリーのブランド(商品・サービス)を調べたんですが、
総合ランキング一位のブランドは何かおわかりでしょうか?
そうです。「東京ディズニーランド・シー」です。
日経MJを読んでなくても、すぐにおわかりに
なったんじゃないでしょうか。
東京ディズニーランド・シーは、いまさら言うまでもなく、
わくわく、ドキドキの感動体験を与えてくれる場所としては、
文句なしのナンバーワンです。
確かに園内では、クオリティの高いサービスを提供してくれる
のですが、他のエンタテイメント施設と大きく違うのは
リピーター比率の高さ。
近年では、園内に来ている人の9割がリピーターだということを
聞いたことがあります。それであれだけ混雑しているのは、
リピートも1回や2回じゃなくて、何回も繰り返し訪れている
ということです。
実際、私もこれまで6-7回は行っています。
なぜ、ディズニーランドには繰り返し行きたくなるのでしょうか。
逆に言えば、なぜ、何度行っても飽きないのでしょうか。
他のテーマパークは大体1回か2回行けば、「もういいかな」
と感じて、二度と行くことがありません。いきおい、リピーターを
獲得するためには、絶叫マシーンなどの新しい施設を継続的に
投入していく必要があります。そのための投資は莫大。
それでも、やはりお客さんはすぐに飽きてしまうのです。
結局のところ、他のテーマパークでの経験は消費するもの、
使い尽くす経験になってしまっているのです。
繰り返し行くたびに、ワクワク感が減衰していく。
これは、「微分する経験」(右下がりに感動が減っていく)
と言えます。
ところが、ディズニーランドは「積分する経験」なのです。
行くたびに、右肩上がりに思い出が積みあがっていく。
消費してしまうのではなく、蓄積されていく。
例えば、家族で訪れ、はしゃいでいる子供を見ながら、
「前回は、身長制限で引っかかってスペースマウンテンに
乗れなかったけど、今回は乗れるようになったんだな・・・」
とか感慨に浸る、ということがおそらくあちこちの家族で
起きています。
この‘ディズニーランドでの経験は「積分する経験」である’
という考え方(仮説)は、一橋大助教授、楠木建氏から
1年ほど前に聞いた話です。
以来、この言葉がずっと引っかかっています。「積分する経験」
となる要因が明確にできれば、それは、他の商品やサービスの
リピーター率向上の特効薬になるからです。
残念ながら、今はまだ、私の中に明確な答えはありません。
一緒に考えてみませんか?
投稿者 松尾 順 : 2005年10月25日 20:26
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コメント
できがあまりよくないサービスを、クレームをつけていってだんだんと育てていく、というはその例でしょうか。
僕の勤めている会社がそうかもしれませんが^_^;。
投稿者 TJ : 2005年10月25日 22:22
TJさん、どもです。
未完成の製品とかサービスを一緒に作り上げていくというのも、いい積分する経験ですね。
ただし、その製品とかサービスに、荒削りでも相当の魅力がないとお客さんもつきあってくれないでしょうけど。(^o^)
なにか、お客さん側の変化と結び付けられる感覚的、感情的な体験を与えることがコツじゃないかと思えてきました。
投稿者 松尾順 : 2005年10月25日 23:04
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