意味のある行動

「君たちは、ただ生きるために生きているね、たぶん悩みなんか
 ないよねぇ。いいなあ」

日のあたる縁側で気持ちよさそうに手足を伸ばしている猫や
ボールを追いかけて元気に遊んでいる犬を見ると、
いつもこんなことを思います。(笑)

犬や猫に感情がないとは思いませんが、少なくとも、

なぜ自分はここにいるのか、またなんのために生きるのか」

といった自問はしないでしょうね。

幸か不幸かわかりませんが、人間だけがこんな哲学的な問いに
悩まされるんだと思います。ようするに、自分の生きる意味や
価値を求めずにはいられない。

だから、モノを買う、サービスを受けるといったことにも、
金を使う、消費する以上の何かの意味を求めます。そして、
衣食住の最低限の欲求がほぼ満たされている欧米や日本では
特に、この「消費行動に意味を求める」傾向が強くなっています。

先日ご紹介しましたが、修道士が運営するオンラインショップ
から物を買うのは、ただ安いだけじゃなくて、それが修道院
の運営やチャリティに貢献できるという、大きな意味が付加
されているからなんですね。

モノがあふれる今の世の中、‘何を’買うかではなくて、
‘どこから’買うかが重要。したがって、自社製品・サービスに、
「消費以上の意味」を与えることが必要なんです。


さて、これに成功した企業のひとつが、高級腕時計ブランドの
「オメガ」です。150年の歴史を持つオメガは、最近びっくり
するほど売れているそうです。老若男女、幅広い層に支持
されています。

ところが、ほんの10年ほど前はどん底にあえいでいました。
中高年層が支持するだけの時代遅れのブランドであり、また
日本ではブランドイメージ自体が希薄でした。

こんな状況だと普通は大々的な販売促進活動に
乗り出すところですが、オメガは違いました。

環境保護活動に積極的に時間と金を投じたそうです。
皮切りは、ジャックマイヨールの起用でした。

ジャックマイヨールは、映画グランブルーの主人公のモデルと
なった人で、素潜りの天才。オメガは彼と一緒に、海洋保護の
ための様々な活動に取り組みました。

以来、ジャック以外にも、一般には知られていないけれど、
海洋関係の有名人と組んだり、日本では、「地球交響曲」
(ガイアシンフォニー)の映画製作にも協力してきたそうです。

環境保護活動自体は、オメガに直接の収益をもたらしません。
それどころか、利益が減る元となる金食い虫です。トップの
信念がなければ、とても続けられなかったそうです。

しかし、オメガが環境保護活動に本気であることは、着実に
人々の心に伝わっっていきました。そして「本物」「信頼」
「真面目」といったブランドイメージを構築することに
成功したのです。

オメガは、自らのコミュニケーションを「間接話法」と
呼んでいます。自らの声で製品を積極的に売り込んだりする
ことは控え、環境関連のオピニオンリーダーとの協調によって
間接的に「オメガの思い」を伝える方針を貫いてきました。

オメガがやったことは、一見遠回りに見える活動ですが、
オメガを購入することに、環境保護への支援という意味を
付加することに成功し、長期的なブランドイメージの向上と、
結果的に業績の回復につながりました。

今回紹介した事例はまだまだ特殊なものかもしれません。

しかし、いつまでもただ、製品の優秀さや安さを訴えるだけでは、
消費者は振り向いてくれなくなるかも知れませんよ。

投稿者 松尾 順 : 2005年10月21日 12:12

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コメント

バブルの頃、メセナ運動というのが流行りました。
企業が社会貢献をすることを目的に、文化やスポーツ振興に寄与するといったものでしたが、15年経った今、一体何社残っていることでしょう。
しかし細々と活動を続けている企業は、ゼロではありません。

オメガというブランドと、商品の持つイメージが合致できた好例ではないでしょうか。

オトナになると、モノを買うことにこだわりを求めます。若いときに欲しかったものが容易く手に入る収入があるのに、今はもうそれは欲しくない。ゆえに自分が何が欲しいのか、自分の中の目利き氏と時折議論を交わし、負けてしまうことが多々あります。

オトナ買いはしませんよ。

投稿者 swan : 2005年10月25日 15:50

swanさん、コメントありがとうございます!

>バブルの頃、メセナ運動というのが流行りました。
>企業が社会貢献をすることを目的に、文化やスポーツ振興に
>寄与するといったものでしたが、15年経った今、一体何社
>残っていることでしょう。

結局、色気があったんでしょう。
メセナに、短期的、明確なリターンを求めてしまったから、バブルで経営が苦しくなると止めざるを得なくなった。

>オトナになると、モノを買うことにこだわりを求めます。
>若いときに欲しかったものが容易く手に入る収入があるのに、>今はもうそれは欲しくない。ゆえに自分が何が欲しいのか、
>自分の中の目利き氏と時折議論を交わし、負けてしまうことが>多々あります。

それは、欠乏を満たすための購入じゃないからですね・・・
どうしても買う必要のあるものは今ほとんどないので、なぜ買うのか、明確な理由づけが、たとえこじつけでもないと買いにくいというのがあります。

私は、オトナ買いをします。(笑)
過去に満たされなかった欠乏を今になって満たしているのです。(^o^)

投稿者 松尾順 : 2005年10月25日 20:35

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