感覚優位性
松下電器がヒット製品を連発しています。
おかげで業績も絶好調、V字回復を成し遂げました。
この背景には、中村邦夫社長の強烈なリーダーシップや
マーケティング部門の再編があるのですが、もう1つ、
デザインの要素があると私は考えています。
松下の製品は、以前より明らかにセンスの良いデザインが
増えていますね。特にパナソニック製品(テレビ、DVD、
デジカメなど)には、一貫したブランドイメージが反映されて
いることが感じられます。
ソニーも安閑とはしていられない高いレベルのデザインです。
実は、パナソニックには、門外不出の「デザイン原器」と
いうものが研究所に置かれています。この「デザイン原器」は、
パナソニック製品のデザインに一貫性・統一感を与えるための
「デザインのひな型(プロトタイプ)」です。
この「デザイン原器」の特徴は、
“遠くから見ると単純明快なフォルムながら目を引く特徴を
持つこと、そして近くで見れば細部へのこだわりと
高い感性品質を持ち、全体と部分が絶妙なバランスを
保っている”(*1)
だそうです。
「デザイン原器」が製作されたのは3年ほど前のようですが、
すべてのパナソニック製品は、このデザイン原器と照らし合わせて
チェックされます。もし、デザイン原器とかけ離れたデザインで
あった場合はやり直しになるのです。
企業のブランド構築において、デザインの重要性はこのところ
急激に大きくなってきていますが、松下もまた、デザインの重要性
に目覚め、こうした取り組みに積極的に取り組んだわけです。
結果として、ヒット製品を連発できる成果につながったのでしょう。
デザイン、それは、前日も書いた五感を刺激します。そして理屈
を超えた感情をわきあがらせます。ブランド力とは、信頼に加えて
感情的なつながりのことです。好ましい感情を引き出すデザイン
でなければ、ブランド力は強化できません。
他の業界の例を紹介すると、自動車メーカー、マツダの最近の
ブランド力復活の背景にあるのも、優れたデザインへの投資でした。
私は、デザイン(形状のデザインだけではなく、音、香り、肌
ざわりなどのデザインも含みます)に注力することは、言い換えると
「感覚優位性」
を確立することを目指しているのだ、と定義したいと思います。
本来、人は、機能・性能といった理性で評価・判断するだけ
でなく、デザインのような感覚を通じてメッセージを受け取り、
無意識のレベルで評価を下しています。
ですから、今までのように機能・性能レベルの次元だけでは、
優位性を確立することはできません。
「人の感覚に訴えるという視点での優位性を確立すること」
これからの企業はこれが求められていると思いませんか。
(*1) 日経デザイン2004年2月2日の記事より引用
投稿者 松尾 順 : 2005年10月19日 11:51
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