矛盾した欲求
女性にとって、ファッションは大事な自己表現の手段です。
もちろん、男性にとっても大事ですけれど、女性のこだわりは半端じゃないですよね。
女性の場合、新しく服を買う時たっぷりと時間をかけますが、矛盾した欲求のはざまで悩むせいじゃないでしょうか。それは、ひとつは、「他の人と違う、自分らしさを演出したいという気持ち」、もう1つは、「あまり他の人と違い過ぎたくない」という気持ちです。
自分らしさを演出したいという気持ちは、認められたいという欲求(承認欲求)につながるものです。つまり、集団の中でその他大勢として埋没したくはない、だれかに自分の存在を認知して欲しいということ。
一方、あまり他の人と違い過ぎたくない」というのは、違いすぎると異端扱いされてしまうので、そうならないよう、周りの人とうまくやっていきたいという欲求(同調欲求)が働いています。
人はそれぞれ異なる人格を持つ独立した存在でありながら、集団を作ってお互いに助け合いながら生活する社会動物です。このため、個人としての存在と社会の中での存在がしばしばぶつかることがあるわけですね。
こうした矛盾が発生するのは、そもそも自分と他人という区別を人間が意識するようになったからでしょう。
「えっ、それはどういう意味?」と疑問を持たれるかも知れませんが、たとえば、アリや蜂などはおそらく自分と他の仲間の違いを意識していません。もちろんお互いに触覚を突き合わせてコミュニケーションを取りあいますが、それは、一人の人間の頭脳が自分の手足や胃などの各器官とコミュニケーションを取り合うようなものです。つまり、アリや蜂の巣全体がひとつの生命体であり、一匹いっぴきのアリや蜂は、個別に自由に動ける器官にすぎない、と考えることができるからです。あの人間に近い知能を持つイルカでさえ、実は、自分と他の仲間が違うという意識を持っていないそうですよ。
「自我」の芽生えが、いろんな面で人を悩ませていますね。
もっとも、スーパーモデルのナオミキャンベルくらいになると、同調欲求は不要ですね。突出した存在であることに価値がありますから。また、彼女の承認欲求の強さがトップにのし上がる上で大事な要素になっています。先日は、自分と似たドレスを着ていたからという理由で、モデルのイヴォンヌ・スキオに殴るけるの暴行を加えたくらいです。
投稿者 松尾 順 : 2005年10月15日 09:35
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