話さないと声が出なくなる?

友人から聞いたんですが。

一人ぐらしの70、80歳代のご老人たちがスペイン語の勉強とかしていて、
特に海外に行く気もないし、学んだことを使う機会はまずないのに
熱心に勉強しているのはなぜかと本人に尋ねたら、

家の中にじっとこもっているだけだと、何日もまったくしゃべることがない。
そうすると声が出なくなるらしいんですね。

声帯の使い方を忘れてしまうんでしょうかね。

しかも、単に声が出ないというだけじゃなくて、
頭もだんだん使わなくなって、ぼけてしまうのがいやなようです。

これから本格的な高齢社会が到来しますが、
これからのお年寄りは全般的にみたら、とても健康で活動的。

激しい運動はできなくなるとか、多少の身体機能の低下はあるにせよ、
老人向けの様々な補助器具とかより、
人とふれあい、言葉を交わすことのできる機会を提供するサービスの方が
ニーズ高そうですね。

投稿者 松尾 順 : 12:02 | コメント (1) | トラックバック

サウナ大王のオススメ

こんな話がありますよね。

------------------------------------------------------------

街灯の下で、男の人が下を向いて目をきょろきょろさせています。

「何かお探しなんですか?」

「はい、恩師からもらった大切なネクタイピンを落としてしまって」

「このあたりで落としたんですか」

「いえ、落としたのはあっちの方なんですけどね。
あっちは暗くて見えないので、明るい街灯の下を探しているんです」

------------------------------------------------------------

「なんだ、バカな奴!」とお思いかもしれませんがが、
あなたが、インターネットでしか情報を探さないとしたら
この男の人とやってることは同じですよ。

おぢさんの昔話になってしまいますが、
私の20代、シンクタンクの研究員として調査をやっていた頃、
まだインターネット前でしたから、情報収集と言えば、
まず図書館に行くのが基本行動でした。

今は、インターネットのおかげで、机に座ったままかなり豊富な
情報が入手できますが、それらは、あくまでデジタル化された
情報だけという点を認識しておく必要がああります。

まだまだ紙でしか調べられないことってたくさんあるんですよ。
インターネットが簡単だからといって、インターネットが照らしている
情報以外に目を向けないのはかなりまずいと思いませんか。

というわけで、図書館は、こんなに使えるんだ、もっと有効活用
しましょうという本が発刊されています。

「図書館を使い倒す!―ネットではできない資料探しの「技」と「コツ」
千野 信浩著、新潮新書

純粋な読みものとしても大変面白いですよ。
ずいぶん売れているみたいですね。

えっ、タイトルの「サウナ大王」はどこいったかって?

そうでした、そうでした。

千野さんは、週刊ダイヤモンドの経済記者なんですが、
実は、全国のサウナを踏破した男。サウナ大好き人間。

つまり、「サウナ大王」さまなのです。

実は、昨日、千野さんの講演をお聞きし、そこで本も購入して
サインをいただいたんですが、その時、サウナ大王さまに
おうかがいをたてました。

「日本一のサウナはどこですか?」

サウナ大王さまのオススメは、

「それは、ラクーアです。大江戸温泉物語(お台場)は比じゃないよ」

とのことでした。

なんと、ラクーアは、私の事務所から徒歩10分程度。
かなりの頻度(といっても月に1回程度)で行っているのでした。

実は、私の将来のささやかな夢のひとつは、
本郷の事務所での仕事を夕方くらいにはさっさと終えて、
毎日のようにラクーアに入り浸ること。
もちろん、サウナは何度も入ってたっぷり汗を流します。

サウナ大王さま太鼓判のラクーアに歩いていける距離に
事務所を持っている幸運に感謝したい。

神様、ありがとう。

投稿者 松尾 順 : 10:14 | コメント (1) | トラックバック

本のタイトルあれこれ

今年は、ここ数年で一番たくさん本を購入してしまいました。

「マインドリーディング」を体系化していくための研究用
としての心理学や社会学関連の本もろもろ、

そして、

ISIS編集学校の上級コースと言える「離」を受講したら、
自分の知識不足が次々と露呈したので、それを補うために
とにかく次々と青天井に近い予算を本代に投入しました。

私にとって、本は、斬新な発想、企画を生み出すための
「原材料」です。
したがって、純粋な娯楽本を除いては必要経費なのですが。

せいぜい数千円以内で買える本には、
有益な情報や知識、知恵が詰まっていますよね。
そのことを思えば、本は安い買い物ものです。
しかし、さすがに大量に買うと請求金額も膨大になります。

実は、今年下期には会社の資金繰りに影響が出てしまい、
あわてて財布の紐を締めました。(^^;;

ここまでくると、自分でも狂ってると思います・・・


さて、仕事柄、ビジネス系のベストセラーの本は
一通り読むようにしていますが、ここ数年は明らかに、

・キャッチーなタイトル(書名)
・巧妙なマーケティング

のおかげで、
それほど内容的には新味のない本でも、
バカスカ売れてしまうという現象が目立ちますね。

マーケターとしてこのことを否定する気はありません。
出版業界も本格的にブランディング、マーケティングに
取り組んできたということです。

ですから、読み手側もタイトルやマーケティングに
ただ乗せられるのではなく、内容の良し悪しをきちんと
見分けられる眼を磨くべきでしょうね。


ところで、本のタイトルについていえば、
最近、惜しいなあと感じている本があります。

「人は見た目が9割」(竹内一郎著、新潮新書)

です。

内容は非言語コミュニケーションについての入門書。
マンガの手法などを取り上げながら、
わかりやすく説明してある良い本だと思います。

しかし、このタイトルは、なんとなく不快感を与えますよね。

確かに目を引くし、思わず購入させてしまう力がある。
実際、かなり売れているようです。

でも、このタイトルは、「そこまで言い切らなくてもねぇ・・・」
というものだし、内容はどちらかと言えばまじめな書き方なので
タイトルと内容がマッチしてないんですよ。

アマゾンの書評を見るとかなり低くなってますが、
こうした不快感が反映されているように感じます。

いくら売るためとはいえ、奇をてらいすぎだなあ・・・


また、「これは考えすぎですね・・・」というタイトルの本も
ありました。

この2冊の本です。

「ハッピー社員」(金井壽宏著、PRESIDENT BOOKS)
「部長のハート」(河合薫著、PRESIDENT BOOKS)

どちらもキャリアや社内のコミュニケーションについて
書かれた素晴らしい内容の本なんです。

でも、このタイトル、はっきり言ってよくわからんですよね。

編集者の方は相当なこだわりを持って、このタイトルを決定
されたそうですが、伝える力が弱いように感じます。


まあ、こうやって偉そうに評論家ぶってますが、
実際、商品のネーミングは難しい。

当事者になると、様々なタイトル案を見比べながら
頭を抱えてしまうものなんですよね。夜も眠れなくなるほど。

やはり、もっともっと「言語感覚」を磨きたいです。

投稿者 松尾 順 : 11:26 | コメント (0) | トラックバック

言語感覚を磨く

現在、私は、ビジネスパーソン向けのEラーニングである

「ISIS編集学校」(編集工学研究所主催、松岡正剛校長)

で師範代をやっています。

「編集学校」は、一言で言えば

「アイディア発想力」

を高める実践的なスキル、すなわち「編集術」を学ぶところです。

私は2年前に入学して、現在は、まだまだ未熟ながら生徒さんを
指導する立場(師範代)にあります。

最近、編集術を学び、また生徒さんたちを指導しながら思うのが、
アイディア発想力を高めるためには、特に言葉に敏感になること
が大事だなということです。

つまり、「言語感覚」を磨くということです。


言語感覚を磨くことの大切さを痛感させられる事例が、
日経ビジネス最新号(2005年12月26日)から拾うことができます。

例えば、P&Gが今年9月に投入した新製品の室内芳香剤、
「置き型ファブリーズ」。

これが最近ばか売れしているそうです。
売れている背景には、インテリアに溶け込む優れたデザインや
ファブリーズという既に認知されたブランドを活用したこと
など、様々なマーケティング要素の相乗効果がもちろんあります。

しかし、一番効いているのは、広告宣伝で使ったこの
ストレートなキャッチコピーでしょう。

「香りに頼らない、ホンモノの消臭効果」


芳香消臭剤に対して消費者が抱く一般的な気持ちは、

「臭いを消しているんじゃなくて、
 単に別の匂いでごまかしているだけじゃないか?」

です。

これは口にはあまり出さないけれど、誰もが抱く気持ちでは
ないでしょうか。

P&Gのキャッチコピーは、この消費者の懸念を払拭する
クリアな回答を示したわけです。

消費者としては、

「‘ホンモノの消臭効果’そう、その言葉を聞きたかったよ」

と感じたに違いありません。

また、P&Gの洗濯用液体洗剤「アリエール」の容量表示は、
重さ「1.1Kg」と表示されています。

液体洗剤ですから、「1000ミリリットル」と表示するのが
普通ですし、実際、他のメーカーはそのように表示されています。

しかし、「アリエール」がキログラム表示するのは、
日本の消費者が、液体洗剤だと

「粉末洗剤に比べてすぐに消費してしまう」

というイメージを持っていたからです。

そこで、意図的に粉末洗剤と同じ表示とすることで、
「粉末洗剤と同じ回数使える」という印象を与えることを
狙いました。

このように、キャッチコピーを工夫し、また
表示方法を変えるだけで、これだけの効果があるのです。

言語感覚を磨くことが、本当に重要だと思いませんか?

投稿者 松尾 順 : 07:22 | コメント (0) | トラックバック

ワガママな3人の王様たち

人の心理を的確に読む、つまり「マインドリーディング」
するためにぜひ知っておきたいことに、

「脳の3層構造」

があります。

この「脳の3層構造」とは、人の脳は次の3つの異なる性質を
持つ脳で構成されているというものです。

・爬虫類脳(脳幹)
・動物脳(大脳辺縁系)
・人間脳(大脳新皮質)

進化論の考え方では、まず、体を動かす神経が発達して、
生命を維持するための本能をつかさどる「爬虫類脳」ができ、
次に、その外側に感情・情動をつかさどる「動物脳」が、
さらにその外側に、理性や思考を司る「人間脳」が
発達していったとされています。

つまり、人は、

「爬虫類の心」「動物の心」「人の心」

の3つを同時に持っているのです。

爬虫類の心は、食欲や性欲などの本能的欲求の命ずるまま
行動することを求めます。

動物の心は、感情のまま、気分のまま行動したがります。

人間の心は、言語を駆使して思考した上で行動を起こす
冷静な心です。

人の社会では、爬虫類の心、動物の心のまま行動すると
大迷惑を引き起こします。

例えば、周囲を振り回す気分屋の人って、
おそらく動物の心が強いんでしょうね(笑)

そこで、人間の心が爬虫類、動物の心をなだめたり、
時に強引に押さえ込むことで、良識のある社会的行動を
維持しているわけです。

しかし、しばしば押さえ込まれた欲求が爆発して外に
出てしまうことがあります。それが、犯罪行為や
心理的な病気につながったりします。

今まで、マーケティングや経営の世界では、
人間脳が得意な合理的・論理的な判断、思考を重視してきました。

しかし、最近はこんな脳科学の研究の成果の影響もあって、
感情や情動、本能的な欲求がどのように消費者行動に
影響を与えているのかに注目が集まるようになっています。
 
そうでないと、人の行動の要因が的確に理解できないことが
はっきりしてきたからなんですね。

ですから、私たちは、人の心理を理解する出発点として、
人の頭の中にはワガママな3人の王様たちが住んでいるのだと
いうことを念頭に置く必要があります。

このワガママな3人の王様の領土はそれぞれ、
爬虫類脳、動物脳、人間脳であり、それぞれ自分の欲求のまま
振舞おうとするため、この3人は常に葛藤を起こしているのです。

この葛藤の結果として、様々な人間の行動が生まれているのです。


*「ワガママな3人の王様」のたとえは、脳の3層構造について
わかりやすい説明をしてくれている本から借りました。

ジュラシックコード(渡邊健一著、詳伝社)

これは、なかなか面白い本ですよ。

投稿者 松尾 順 : 11:53 | コメント (0) | トラックバック

記録を残すのはPC内で十分。わざわざプリントしなくても。

クリスマスイブは、家族でお台場へ。

VENUS FORTなんぞは、渋谷の交差点並みの混雑。
ほとんど前に進めない状態でした。

イブに繁華街というか、あえて混雑している場所にいったのは
数年ぶりでしたが、やっぱ、次回からは出かけるとしても
落ち着いた場所にします。(^o^)

ところで、デジカメを事務所に置いたままだったので、
外出にはフィルムカメラを持って行きました。

ずいぶん前から数枚だけ残ったまま放置してあったのですが、
これでようやく現像・プリントできます。

ふと思ったのが、おそらく今回が、このカメラを使う最後の
機会で、フィルムを購入するのも、現像・プリントするのも最後
だろうなということ。

デジカメですでに画質は十分、フィルムや現像、プリント代
にお金をあまりかけたくないですからね。

素人のカメラは、記念を記録に残しておくためのものですが、
とりあえずパソコンとかCDなどに残っていればそれでOK。
だれかに見せるのもオンラインアルバムを使えば解決。

わざわざ、プリントしておく必要はないわけです。
以前は、カメラを取り記録を残すということは、
プリントすることを意味したんですけどね。

ただ、実際にプリントしても、大半の人は整理できないまま
放置してあるので、むしろ、パソコンに入ってた方が
以前の写真を探しやすいんじゃないでしょうか。

ま、こんなことをつらつら考えて、街中のプリントショップは
ホント、どうやって生き残っていくんだろうと思った次第です。

投稿者 松尾 順 : 13:58 | コメント (0) | トラックバック

居酒屋で隣の人に作ってもらった生搾りのチューハイがおいしくないのはなぜか

日経夕刊の囲み記事にこんな興味深いことが。

5月に発売された新チューハイ「-196℃」を手がけた、サントリーの和田龍夫さんは、
タイトルに挙げた微妙な差異に気付いていました。

逆に言うと、

「なぜ、自分で作ったチューハイは、他人が作った生搾りのチューハイよりおいしいのか」

ということです。

そして、和田さんは発見したんですね。

自分で果実を搾って作る際に、皮などからにじみだした香り成分が手に付着する。
その手で飲むから、気分がさっぱりしておいしく感じていたことを。

つまり、飲むときに手が口元に近づく、そのときにまず果実の香りを先に楽しんで
いたわけです。

そこで、「-196℃」では、果実を丸ごとセ氏マイナス196度の液体酸素で
瞬間凍結させ、微粉末にしてアルコールに漬けて、香りを酒に封じ込める。

この新製法により、果汁にアルコールと炭酸ガスを混ぜる従来の製法では
無理だった豊かな香り付けを可能にしたそうです。

日常の微妙な差異をまず発見すること、そしてその理由を探り出すこと。
今の商品開発に求められるのはこれなんでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 15:36 | コメント (0) | トラックバック

2つの共感力

以前も書きましたが、相手の気持ちが的確に読める、
つまり、マインドリーディングができるための基礎力は

「共感する力」

です。

今日は、「共感力」とは何か、少し学術的に説明してみましょう。

実は、共感には2種類あります。

・情動的共感
・認知的共感

「情動的共感」とは、他人と同じ気持ち、感情が自動的に
作り上げられるものです。

楽しいことがあって喜んでいる人を見て、
自分も楽しい気分になる。

逆に、悲しんでいる姿を見て、自分も悲しくなる。

「同情」に近いものと言えるでしょう。
思わず(自動的に)、感情移入してしまうので
自然に同じ気持ちになる。

一方、「認知的共感」とは、他人の視点からものごとを
認知できるというものです。

つまり、相手の立場に自分が立った時、周囲をどう受け入れ、
理解し、どのような感情が生まれるか、を推測できる力です。

さて、よりよいコミュニケーションに役に立つ「共感力」を
発揮するためには、このどちらも必要なんですが、
「認知的共感力」は、しばしば失われてしまうことが多い
ようです。

例えば、傲慢な人。
生まれつき傲慢な人はいないと思いますが、
恵まれた環境で周囲を慮る必要がない人が、相手の立場に
立って見ることはとても難しい。
(そうすることの必要性をそもそも感じない)

あるいは、相手の立場がそもそもわからない人。
若いうちに偉くなって、送り迎えの車がつくようなレベルの
生活になると、庶民の立場がそもそもわかりません。
推測のしようがないわけです。

数日前に書いた「一所懸命、生活しましょう」というのは、
一般消費者を相手にする商売だったら、
絶対的に必要なことなのです。

マーケターは、共感力の中でも、特に「認知的共感力」を
高めるべきなんですよ。

投稿者 松尾 順 : 18:31 | コメント (0) | トラックバック

ちゃんと名前を付けるころから始めましょう

いきなり質問です。

「バツイチ」

の意味は?

もう誰でもわかると思いますが、

離婚(1回目)を経験した方

のことですね。

では、

「ボツイチ」

の意味は?

この言葉は最近よく耳にするようになった新語のようですが、
初めて聞いた方でも推測つくんじゃないでしょうか。

そう、「配偶者に先立たれた方」です。
アンケートの回答だと「死別」というところにチェックを入れる
方になりますね。

さて、これまでは明確な呼び名がなく、説明的な言葉
(離婚経験者とか)しかなかったものごとに対して、
「バツイチ」や「ボツイチ」とかのちゃんとした名前をつけると、
俄然使いやすくなるのを感じませんか。

通常、呼び名は抽象的で短い表現になることが多いのですが、
逆に抽象的で短い言葉であるからこそ、
新しい意味を加える可能性が広がります。

実際、バツイチ、ボツイチという呼び名は、やや揶揄的な言葉
ながら、離婚や死別の暗さが払拭されますね。
そのおかげで、そうした方々のための結婚相談所など、
新たなビジネスも展開しやすくなりました。

さて、こんな名前(呼び名)も最近生まれてます。
(企業によって意図的に作られたというのが正しいですが)

「ママリッジ」

ママ+マリッジ、つまり、「できちゃった婚」という、
恥ずかしい響きのある呼び名を
ちゃんとした言葉に言い替えたものです。(^o^)

日経MJ記事の「ネーミングナウ」によると、
今の花嫁の3人に1人はおなかの中に赤ちゃんがいるそうです。
20歳の花嫁さんだけ見るとなんと80%が妊娠中。

例外的な意味合いのあった「できちゃった婚」は、
もはや時代にそぐわなくなっていたわけです。(笑)

そこで「ママリッジ」。

妊娠した新婦のためのウエディングドレスやハネムーンなどが
このネーミングなら楽に展開できる。

まずは「ちゃんとした名前」をつけてあげるところから、
何事もスタートすることが肝要なんですね。

投稿者 松尾 順 : 12:06 | コメント (0) | トラックバック

一所懸命、生活しましょう

今年5月に一号店が開店した「ストア100」は、
ローソンが手がける100円コンビニです。
現在は、都内に14店舗を構えています。

ストア100は、「中高年向け、均一価格、家族志向」が
基本コンセプトであり、コンビニの「若者向け、定価販売、
個食志向」のコンセプトとは大きく違います。

このため、ストア100の展開をまかされたローソンの担当者は
当初、主婦の感覚がわからなくて相当苦労したようです。

例えば、コンビニではよく売れる一人用の漬物とかが、
まるで売れなかったのです。

ストア100は、最初はコンビニの延長と考えてたようですが、
売れるものがコンビニとはぜんぜん違う。主婦に聞くと、
「量感」や「安全性」を重視していました。

主婦の金銭感覚を考えると、割高になる小分けを買うより、
たくあん一本とかで買えた方がいい。

そうじゃないと量も足りない。
まな板の上で切って食卓に出すことは、普段料理する主婦に
とってたいした手間ではない。

最近は、小分けにした方が売れるという定説が浸透していますが
すべてのターゲットに通用するものではなかったわけですね。

また、納豆についても、量感に欠ける2パックではなく、
家族みんなで食べられる4パックのセットにした方が、
いいのではと考え、4パックを置いてみた。

そうしたら、納豆の売り上げは2倍になったそうです。

面白いのは、こうした気づきを得られるようになったのは、
担当者が、自らスーパーに足を運び、食材を選び、
料理をしてみたからだということです。

主婦の気持ちがわかること、つまり共感できるためには、
ただ販売データなどの感情の抜け落ちた数字を見ているだけ
ではダメなんですね。

商品開発のプロであるためには、なによりも、
いち生活者、いち消費者であることが必要なのです。

このことは極めて普遍的な原則だと、私は確信しています。

なぜなら、ヒット作を連発してきた稀代のプランナーたち、
たとえば、今年お話を聞いた、

元リクルートの創刊男、くらたまなぶさん、
作詞家の秋元康さん、
TVプロデューサーのおちまさとさん

は、皆、上記の点では一致していたからです。


「一所懸命、生活しましょう」

(生活の一面にしか過ぎない、仕事にばかりのめりこんで
 いると、消費者への共感力は確実に低下しますよ)

投稿者 松尾 順 : 06:19 | コメント (2) | トラックバック

旧型の魅力を高めるための新型

今年の夏、バカ売れしたデジタルカメラは6月4日発売の

「ルミックスDMC-FX8」(松下電器産業)

でした。
解像度は500万画素。手ブレ補正機能が売りです。

同製品は、6月、7月は機種別シェア首位を取り、
8月も同2位と、その強さを維持しました。

さて、松下さんは、8月26日に後継機種「FX-9」を投入します。
画素数は600万画素、液晶画面のきめ細かさが2倍になりました。

通常、デジカメの新型が投入されると、旧機種の価格があっと
いう間に下がり、在庫処分されて生産中止になるところです。

ところが、旧機種「FX-8」は、女性ユーザーの支持を受け、
「FX-9」投入後もほとんど値崩れせず、売れ続けました。

日経ビジネス(2005年12月19日号)の特集記事では、
これは、周到に仕組まれた戦略であったことを紹介しています。

松下さんの戦略のポイントは次の3つです。

1 旧機種(FX-8)と新機種(FX-9)のデザインをほとんど変えず、
  旧機種を持つことの恥ずかしさを感じさせないようにした

2 旧機種だけに、女性が好むマニキュアの色に近い、
  「ミスティピンク」のボディカラーを設定した

3 旧機種の方が5千円安くなるよう、新機種FX9の価格を
  設定した(価格に敏感な女性を意識)
  

実に的確に購買心理を読んでいると思います。

おそらく、小売店の店頭で、FX-8とFX-9を比較してみた女性は
こう考えたに違いありません。

「FX-9の方が新しいけど、ほとんど性能は変わらないし、
 デザインも大きく変わってない。だったら5千円安い
 FX-8でいいよねぇ。ミスティピンクはFX-8しか選べないし」

こうして、松下さんの狙い通りFX-8は売れ続けました。

つまり、FX-9は、FX-9の新規ユーザー層を拡大し、売れ行きを
維持するために、意図的に投入された釣り玉、別の言い方を
すれば、「見せ筋」であったわけです。

レストランなどでも、最も売りたい価格帯のメニューより
ワンランク高いメニューを掲載することで、相対的に安く
思わせるという心理的効果を狙いますが、
松下さんの価格戦略もそうした効果を狙ったものですね。

機種選択におけるデザインの重要性も十分に考慮されています。

デジカメは、既にどの製品も性能的には大差のない成熟商品です。

機能が優れているだけで買ってくれるお客さんは
ほとんどいなくなりました。
しかも、機能の良し悪しを判断できる知識を持たない
一般ユーザーに購入層が広がっています。

デジカメに限らないのですが、松下さんのような、
人間心理の機微を読みきったマーケティング戦略が
ほんとに重要になってきたと思います。

投稿者 松尾 順 : 12:22 | コメント (0) | トラックバック

客に勧めないカレー

いつもバンド練習をしている都立大学のスタジオのそばにインドカレー屋さんが
あります。

先日そこで、メニューの中で一番辛いと書いてあるビンダール
とかいう名前のカレーを注文しようとしたら、

お店の人が

「止めといた方がいいですよ」

という。

よけいなお世話だと思いましたが、聞くと

「いつもお止めしているんですよ」

だそうで。

メニューに載せときながら、客に食べさせないとは何事だと思い、
店の人の強い制止を振り切って注文しました。


やっぱ、止めときゃ良かったです。(笑)

口に入れた一瞬は、「へっ、この程度か」と思うまもなく、
強烈な辛さが脳天を直撃。

結局、半分しか食べられませんでした。
幸い、おなかをこわしたりはしませんでしたが。

ただ、翌日トイレに行った後、お尻が火を噴いていました。
ホントに。

投稿者 松尾 順 : 10:03 | コメント (0) | トラックバック

面白いと人が寄ってくる

元ディズニーランドのキャストで、
現在は「香取感動マネジメント」というコンサルティング会社を
立ち上げてらっしゃる、香取貴信さんの昨日の話です。

香取さんの知り合いの会社(制作会社かなにからしい)では、

「俺たちはクリエティブなことをやっているんだから、
 電話の出方もクリエイティブにしよう!」

ということで、毎日枕詞を変えることにしたそうです。

例えば、私の会社名を使ってみると、

「はい、いつもニコニコ、シャープマインドです。」
「はい、真心のサービス、シャープマインドです。」
「はい、いつもおそばに、シャープマインドです。」

みたいに、社名の前につける一言を365日変えていく。

これは、やる社員の人たちも楽しいでしょうけど、
お客さんの方も面白がって、周囲の人に口コミするらしい
んですね。

それで、ぜんぜん知らない人が、この枕詞を聞くためだけに
電話してくるそうです。これはちょっと迷惑でしょうけど。

また、よっぽど暇なのか知りませんが、
この枕詞のウオッチャーみたいな人もいて、
用も無いのに毎日電話してくる。

そして、

「今日の枕詞は、X月X日の言葉に似てますね・・・」

とか指摘するらしい。

この会社では、自分たちが仕事を面白がるために
こんなことを始めたらしいんですが、実は、
この枕詞のおかげで、これまで3本も仕事が受注できたらしいです。

365日枕詞を変えるなんて、よく考えるとたいしたことじゃない
ですけど、面白いことはみんな好きだし、人が集まってくるし、
口コミしたくなる。

そんなことから、仕事につながることもあるんですね。

投稿者 松尾 順 : 06:18 | コメント (0) | トラックバック

相手を楽しませるコミュニケーションのコツ

昨晩参加した、「コミュニケーション集中治療室」の
出版記念パーティは大盛況。
数百人の来場者で会場があふれんばかりでした。

ゲストとして最初に登場したのは、中谷彰宏さん。

5分程度の短いスピーチでしたが、有名人の登場で、
会場は盛り上がりました。

中谷さんに続いて、主役のDr.はるかこと、須子はるかさん、
ナース香織こと、松村香織さんを含むパネルディスカッション。

パネラーの一人は、香取貴信さんという、元ディズニーランド
のキャストで次の2冊のベストセラーを書いた方です。

「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」
―そうか、「働くこと」「教えること」「本当のサービス」って
こういうことなんだ! (KOU BUSINESS)

社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった
〈2〉熱い気持ち編(KOU BUSINESS)

どちらもディズニーランドのサービスの真髄がわかる本で
最高に面白い。私だけでなく、家族みんなが大好きな本です。

著者の香取さんの話を聞いたのは初めてでしたが、
さすがに面白い本を書くだけあって話も楽しかったです。

それで、香取さんの話の中で、これはぜひ紹介したいというものが
あったのですが、それは明日に回します。すいません。(笑)

今回は、パーティの主役の須子さん、松村さんが
パネルディスカッションで話してくれた、
相手を楽しませるコミュニケーションのコツについてご紹介します。

須子さんのコツは、「自分が楽しむことを心がけている」と明確。
相手を楽しませるためには、自分が楽しむことが先決だという
ことなんですね。

おお、須子さんも、私が先日書いた「心は共鳴させるもの」と
同じ考えだったのだとわかり、うれしかったです。

須子さんはいつも元気いっぱいですが、生来、明るいキャラクター
であるだけでなく、相手をわくわくさせるために、まず自分が
わくわくしようと意識しているんでしょうね。

だから、

女医&ナースのコスプレによるコミュニケーションセミナー
「コミュニケーション集中治療室(ER)」

みたいな楽しい企画が、次々と生まれてくるんだと
改めて納得しました。

一方、松村さんのコツは、相手が好きなこと、関心があることを
どんどん話してもらうよう仕向けること。

誰だって、自分が好きなこと、関心のあることを話していれば
気持ちいい。楽しい気分になりますからね。

なるほど、わざわざ何か面白いことを言って相手を笑わせようとか
考えなくてもいいんだなあ。

相手が自分で話して、気分が良くなる話題が自然と出てくるように
こちらは聞き役に徹すればいいんです。

コーチングでいう「傾聴のスキル」を使うんですね。

投稿者 松尾 順 : 05:58 | コメント (2) | トラックバック

初恋ダイエットスリッパ

このネーミングははっきりいってすごい。

ご存知の方も多いと思いますが、

「かかとのないスリッパ」

のことです。

このスリッパは、はいているだけで腰痛が治ったり、
体重が減るそうです。

ネーミングの何がすごいか、解剖してみましょう。

まず、この名称が、

「初恋」+「ダイエット」+「スリッパ」

の3つの単語の組み合わせであること。

この3つは普通一緒に使う言葉じゃないですよね。
だから、この名称を聞いたり、見たりすると、

「変な名前だなあ」

と注意が向き、

「いったい、何なんだ?」

と関心を高めさせるパワーを持っています。

しかし、なぜ「初恋」なんですかね・・・?

ネーミングの由来を調べてもよくわからなかったのですが、
なんにせよ、「初恋」と聞くとほとんどの人が、
コドモ時代の思い出が浮かんできて、甘酸っぱい感傷的な
気分になるはずです。

物事を記憶しやすいのは、感情が伴う時であるということが
心理学の実験でわかってますが、

「初恋ダイエットスリッパ」

は1回聞いただけで覚えてしまうはそのせい。

つまり、この名称が脳に深く刻まれた記憶になってしまうのは、
奇妙な名前であることに加えて、心が動かされるからでしょう。

さらに、ダイエットという明確なベネフィットが
名称からわかる。

つまり、この製品の多面的な価値を的確に伝えているんですね。
具体的には、次のように説明できるでしょう。

スリッパ=機能価値・・・屋内で足を保護する機能の明示
ダイエット=便益価値・・・やせるというベネフィットの明示
初恋=情緒価値・・・若き日の思い出(=細かった頃)の喚起

さて、このネーミング、模倣品がたくさん出てきたので、
6年前に改称したものらしいです。

当製品の発明者は、中澤信子さんという主婦の方ですが、
ネーミングも中澤さんご自身でやられたんでしょうか。

もし、インスピレーションでこの名前を思いついたとしたら、
ほんと、人間心理の機微を理解されている天才だと思いますね。

投稿者 松尾 順 : 06:03 | コメント (0) | トラックバック

キャラ立ち娘

日経エンタテイメントが発表した2005年のエンタテイメント分野
の人気者ランキング1位は、「恋のマイアヒ」。

2位「レイザーラモンHG」、3位「電車男」。

日経の分析によれば、上位3つに共通するのは漫画のような
キャラクター性だそうです。

マイアヒの場合、ノマ猫の空耳アニメが面白かったのが、
大ヒットした理由ですし、ラモンの腰を振る様子は
まるで人形のよう。アキバ系の電車男のキャラクターも
漫画チックですね。

最近は、これまで以上に「キャラが立っていること」
が、人気者になる条件になってきてます。

意表をつく個性というんでしょうか。

その意味で、今年のビジネス界の「キャラ立ち娘」と、
私が命名したいのは、先週、

「コミュニケーション集中治療室」(東洋経済新報社)

を出版した、ジャストレード(株)
の須子はるかさんと、松村香織さん。

コーチングをベースとしたコミュニケーションセミナーを
なんと、`ドクター&ナース’のコスプレで講師を務める二人です。

コミュニケーション上で抱える問題を病気と見立て、
この二人が治療してあげます、というのが売り。
よく練り上げられたビジネスセミナーにこのような漫画的面白さを
取り入れたのは素晴らしいアイディアですよね。

このセミナーが始まったのは昨年のことですが、
本が出版されるほどの人気を博したというわけです。

私も、「こりゃ、面白そう!」と思って、一番最初の頃に
受診、治療を受けました。効果ありましたよ。(笑)

コミュニケーションに関わる病気のネーニングも秀逸です。

・伝えたつもりがひとりよがり病
・オレオレ症候群
・会話マンネリ化ウイルス
・ネガティブな思い込みシンドローム
・自己主張不全症候群

などなど。
誰もがみんな、思い当たる症状ばかりです。

実は、須子さんとは5年ほど前からの友人。
当時から元気いっぱいでしたが、会社を設立してからの
アイディア発想力、実行力、バイタリティは、
半端じゃありません。

まだ20代後半ですが、すでに大器の片鱗が。
ブログもやたら楽しい。(眞鍋かおりより面白いと思う)
「夢を実現させる起業日記」

というわけで、キャラ立ちまくりの須子さんと松村さんの
今後の大化けが楽しみです。

投稿者 松尾 順 : 06:00 | コメント (2)

頭痛か胃痛か


バンド仲間でもある阪本啓一さん( http://www.palmtr.com/ )
から、つい先日聞いたばかりの話です。

日本人はストレスがかかると胃が痛くなる。
一方、米国人は頭痛が起きるそうです。

そういえば、ハリウッド映画やTVドラマで、
あっちの人は、よく「アスピリンちょうだい!」って
言ってますよね。

仕事や人間関係など、ストレスの元を「ストレッサー」、
ストレッサーの結果として現れるものを「ストレス反応」
と呼びますが、同じようなストレスに対して、
日本人と米国人で身体的なストレス反応は異なるんですね。

でも、よく考えるとこれは変です。

インフルエンザのようなビールス性の病気の場合、
感染すれば全世界のだれでもほぼ同じ症状を示すのに、
ストレス反応の初期段階は、国によって異なるなんて。

興味深いのは、日本に長く住んでいる米国人は、
ストレスがかかると「胃」が痛くなるようになるらしいこと。
日本人が米国に住んだら、逆に頭痛がするようになるんでしょう。
(全員そうなるとは限らないでしょうけど)

私の勝手な推測ですが、ストレス反応は、

「このままの状態が続くとヤバイぞ」

というシグナルを自分、および周囲に伝える役目を
果たしていると考えられるわけです。

すると、各国の文化的背景の中で、最も効果的にそのシグナルを
伝える方法が選択されるようになる。

したがって、米国は頭痛文化、日本は胃痛文化と言えますが、
住んでいる場所に応じて、「ストレス反応」も適応してしまう
んでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 05:01 | コメント (0) | トラックバック

心のふれあいの対価

最近、ガソリン代や灯油が高騰してるおかげで、
家計が圧迫されていやですよね。

寒さも本格的になってきましたし。

我が家では、自動車のガソリンは、いつもセルフ式スタンドです。
自分で入れるのはたいして面倒でもないし、やっぱり安いほうがいい。

それで、ふと思い出したのですが、松戸のあるガソリンスタンドは
地域で最も高い店と言われていたそうです。

しかし、そこにはしっかり固定客がついていて、なじみにの
お客さんが、オーナーに旅行のおみやげを持ってきたりする。

そして、ガソリンを入れるついでに与太話をしていったそうです。

よく考えてみれば、個人で自動車に乗ってる場合、
安いガソリンスタンドに行ったところで節約できるのは
月々せいぜい数千円にもいかないでしょう。

そのくらいのお金は、気のいいスタンドオーナーとのふれあいの
対価としては、決して高くなかったのかもしれません。
(お客さんはそんなお金に換算するような意識を持っていたわけでは
ないでしょうけど)

いまそのオーナーは引退して悠々自適の生活を送っています。
しょっちゅうあちこちに旅行に行ってますが、オーナーの人懐こさ
であちこちに友人を増やしているようです。

投稿者 松尾 順 : 19:44 | コメント (0) | トラックバック

プロセスを楽しめないなんて・・・

本を早く読みたい。そしたら、もっとたくさん読めるのに。

本好きなら誰でも一度はこんな思いがよぎりますよね。
私もそうで、速読術とかずいぶんやりました。

若い頃は、速読術のコースに20万円くらい払ったのに、
読むのはたいして早くならず、むしろ目が悪くなって(それまで両眼1.5!)
メガネをかける羽目になりました。とほほ・・・

でも、仮に早く読めるようになったとして、小説をガンガン読みたいですか。
私は小説を早く読みたくはありません。
じっくり行間まで読んで、読むプロセスをかみしめたい。

最近は、なんでも早く早くでじっくりプロセス自体を楽しむことが
できなくなりましたね。仕事でも、遊びでも、目的、目標があるのは
結構だけど、そうした目的、目標へ到達するプロセスが本来大事なはずですけどね。

プロセスとは、あなたの限られた希少な時間を投じることです。
結果はおまけにしか過ぎない。

いい結果が出る方がいいけれども、いい結果にならなくてもまあ、
いいじゃないですか。

プロセスがどれだけ楽しかったか、そして納得できるかですよ、
そう思いませんか。

投稿者 松尾 順 : 18:50 | コメント (0) | トラックバック

心は共鳴させるもの

ずいぶん前ですが、「フィリピンパブ」に行ったことがあります。

あまりに昔のことなので、誰に連れて行ってもらったのか、
場所がどこだったのか思い出せません・・・(遠い目)

ただ、はっきり覚えているのはショータイムの時間。

過激な内容ではなくて、フィリピン人の女性が、
きれいな衣装を着て踊るというだけのものだったんですが・・・

残念なことに、そのダンサーの女性は仏頂面のまま、
本当にいやそうに踊っていたんです。

「私は本当はこんなことしたくない、
 こうするしか生きていけないから、しぶしぶやってるだけなの」

という気持ちが120%伝わってきて、
悲しくなったことを覚えているんです。

ショータイムは、お客さんを楽しませるためのものですよね。
でも、逆に悲しくさせられてしまった。
だって、ダンサー本人が、悲しみの心を抱えていて、
ぜんぜんショーを楽しんでいなかったからです。

さて、ところ変わって高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン大阪」

40代の夫婦が、結婚記念日に宿泊予約を入れました。
さっそく、ホテル内の中国料理レストラン「香桃(シャンタオ)」
の従業員たちは、有志を募りアイディアを出し合いました。

当日、夫婦は食事後、1階上の教会に案内されました。
教会の中では、従業員が扮した司祭や聖歌隊など総勢40名以上
が歌うゴスペルが夫婦を包んだのです。

この夫婦が、深い感動に打ち震えたのは間違いありません。

そして、従業員たちも、このような演出を楽しみながら準備し、
心からの祝福を夫婦に捧げたのではないでしょうか。

だからこそ、夫婦に大きな感動を与えることができたのでしょう。

相手の心は、動かそうとするものではないと思います。

まず、自分が心から信じる、楽しむ、愛する、捧げる
そうしたことで自分の心が先に動く。

そして、その自分の心の動きに、お客さんが共鳴するんです。
心は動かすものではなくて、「共鳴させるもの」だと思います。

投稿者 松尾 順 : 11:50 | コメント (3) | トラックバック

顔見なきゃ、安心できない

一度も会ったことのない人と、メールや電話だけで仕事するのは、
なんだか胸のあたりがもやもやしませんか?

先日、神戸在住のWEBデザイナーの方と初めて仕事をする機会が
ありました。
それまで、お会いしたことのない、名前さえ知らなかった方です。

最初のうち、メールだけでやり取りしている間は、
彼との心理的距離がすごく遠く感じましたね。

その後、電話やり取りして彼の肉声を聞くようになると、
少し心理的距離が短くなり、彼が上京した折に直接会ったら、
いっきょにその距離が短くなったのを感じました。

胸のもやもや感が、直接会うことでようやく払拭されたんです。

結局、デザイナーの彼とは1度しか直接お会いしてませんが、
メールなり電話でやりとりしているときも、無意識に相手の顔を
浮かべていることに気づきます。

メールの人格、電話の人格、本人(に会った時)の人格は
それぞれ微妙に違いますよね。

そもそも、情報の質がまるで違います。

・メールだと、基本的に言語情報だけ。

・電話だと、言語情報に加えて、音声情報から得られる相手の感情
 を読む手がかりがある。

・直接会うと、言語情報、音声情報に加えて、顔の表情やしぐさ、
 着ている衣服など、感情や性格、価値観までも知ることのできる
 豊富な情報が入手できます。

特に、顔の表情や体の動きは、無意識に出てくることが多く、
コントロールが難しいのです。端的に言えば、うそをつけない。
ごまかせない。

また、人はそうした表情や体の動きから、相手の真意を敏感に
感じ取る能力を持っています。例えば、私たちは、
つくり笑いと本当の笑顔の違いがすぐにわかりますよね。

だから、本当の意味で相手を信頼し、安心して付き合うためには
直接会う必要があると私たちは(意識的、あるいは無意識に)
考えているのです。

一度でも会えば(もちろん繰り返し会う方がさらに良いのですが)、
相手の真意が現れる顔の表情や体の動きのパターンを学習すること
ができるからなんです。

要するに「顔見なきゃ、安心できない」ということなんですね。

では、インターネット上で積極的に面識のない人たちと
つながりあい、コミュニケーションしあうという行動は
どう説明できるのか。

私も考えてみますが、どなたか教えてください。(^o^)


そうそう、今日の話は、

ハーバード大学の心理学の先生、スティーブン・ピンカー氏の著作、

「心の仕組み」(NHK出版)

という本にインスパイアされて書きました。

投稿者 松尾 順 : 10:59 | コメント (2) | トラックバック

JOY(楽しさ)という報酬

販売促進につきものなのが、「おまけ」。

専門用語では「インセンティブ」、つまり、
購入や試供品・資料請求、メルマガ登録などを促進するための
動機付けとなるオファー(プレゼント)です。

リピート購入を促したい場合は、ポイントシステムが定番ですね。

こうしたインセンティブは、要するに、

「何かあげますから、こちらの望む行動(購入、資料請求など)
 をしてくれませんか?」

という交換条件をお客様に提案しているわけです。

これは、お客様も企業の両者に取ってメリットのある結果に
つながるのであればなんら問題はないと思います。

ただ、プランナーとして私が留意しとかなきゃと思うのは、
ただ、「何かあげます」じゃ効果は低く、その仕掛けの中に
「面白さ」「楽しさ」の要素を付加する必要があるということです。

なぜなら、単なる交換条件になってしまうと、
そのインセンティブがどれだけ価値(特に金銭的価値)があるか
という判断をされてしまうため、
価値を感じないお客さんにとっては魅力に乏しいからです。

むしろ、インセンティブ自体に実質的な価値はなくても、
面白そう、楽しそうと思わせる仕掛けがあると、思わず
反応してしまうんじゃないでしょうか。

人は金銭に換算できるようなものでは必ずしも動かないし、
慣れが生じて反応が低下してしまいます。

こんな話はご存知でしょうか。

ユダヤ人が経営する商店に、いつも子供たちがやってきて、

「やーい、ユダヤ人!」

とはやし立てるのに業を煮やした主人は、

子供たちに、1回はやすたびに1ドルあげようと約束します。
もちろん、子供たちは喜んではやし立てました。

翌日、主人は金がないからとか言って、1回50セントに
値下げしました。さらにその翌日は25セントに。

子供たちは、そんな安いお金じゃやってられないと言って
はやし立てるのを止めたというのです。

逆にこんな心理学の実験もあります。

ゲーム的な面白さのある作業を
あるグループには金銭的報酬なしでやってもらい、
別のグループには金銭的報酬をあげました。

作業の合間に休み時間があったのですが、
報酬なしのグループは、休み時間もその作業を続けたのに、
報酬ありのグループは、休み時間になると、
すぐに作業を止めてしまったのです。

単にモノで釣ろうとするのでは、ダメなんですね。

阪本啓一氏( http://www.palmtr.com/ )も提唱する

「JOY」(喜び、楽しさ)

という、非金銭的な報酬も必要なんです。

投稿者 松尾 順 : 08:58 | コメント (3) | トラックバック

背中に刺さる弁当欲しい視線

このところ出張続きで、新幹線によく乗りました。

以前の編集後記にも書きましたが、新幹線の最大の楽しみは
仕事が終わってほっとした車内で、ビールや弁当を食べること。
ですから、車内販売が早くこないかと心待ちにしているんです。

しかし、先日の京都からの帰りの車内販売の人はすごかった。
なにせ、つむじ風を巻き起こしつつ、足早に過ぎ去っていくので、
頼もうと思ったらもう視線から消えています。

「おねえちゃん、ちょっと!」

などと衆人環境で声を出すのは恥ずかしいですし、
次に回ってきた時でいいか、とか思ってしまいました。

この車内販売の人、まだ新人さんなのか、販売センスがないのか、
どちらにせよ販売機会をずいぶん失ってますよね。

でも、何事もプロになると全然違うんです。
まさに乗客との心理戦に勝負をかけています。気合が違う。

結構前の日経夕刊に取り上げられていたんですが、
社内販売のプロ、斉藤泉さん(31歳)の場合、
JR山形線の東京⇔新庄の往復約7時間で、30万円以上の売上げ。

24時間営業のコンビニの日商が、だいたい40-60万ですから、
この売上げが半端じゃないことがおわかりになると思います。

斉藤さんは、最初の一往復で乗客400人の視線に注意します。

少しでも斉藤さんの方を向けば、車内販売に関心があり、
購買意欲も高いと思われる「見込み客」と判別。

次に通りかかったときに、斉藤さんの方から、

「お飲み物はいかがですか」

とお勧めします。

これで王手、だいたい売れてしまう。
さらに、注文するかどうか迷っているお客さんには、
斉藤さんの視線で‘落とす’そうです。

なんだかすごいですね。

最近では、後ろにいるお客さんの、「弁当欲しい視線」が
背中に刺さるそうです。

どんな分野もプロの境地にまで達すると、五感の世界の勝負に
なってきますが、斉藤さんも、まさに「車内販売の神様」と
言えるところまできてますよね。

投稿者 松尾 順 : 12:47 | コメント (0) | トラックバック

先が読めないからうれしい

金儲けが主目的でなくて、純粋に楽しみのためにギャンブルを
やっている時、100戦100勝、いつでもあなたが勝つとしたら
そのギャンブルは楽しいと思いますか?

おそらく、最初は勝ち続けるとうれしいでしょうけど、
そのうちうんざりして止めてしまうんじゃないでしょうか。

スポーツの試合なども同じですよね。
自分がプレーヤーであれ、観客であれ、どちらが勝つか負けるか
わからないから、ハラハラ・ドキドキの興奮が楽しいんですよね。

逆に、今の大相撲の朝青龍のように、ずば抜けて強い力士だと、
どの取り組みもほぼ彼が勝つだろうと思ってしまうので
なんだかつまらない・・・

以前のブログで、人は、安定した、変わらない部分を求める一方、
変わる部分、つまり不確実で予測できないことを期待している
のだと書きました。

これは、最近の脳科学では「偶有性」と呼ぶそうです。

「偶有性」についての詳細は、私の知っている限りでは、
脳科学者、茂木健一郎氏の本「脳」整理法(ちくま新書)が
わかりやすいので、この本をごらんいただくとして、

茂木氏は、

「偶有性、すなわち、半分は規則的で半分はランダム(不規則)
な状態が、脳にとってもっともうれしい体験だ」

と述べています。

個人差はあるでしょうけど、人はあえて結果の読めないリスク
を取ることに快感を感じるということが
脳科学レベルで検証されているわけです。

商品やサービスについても常に変わらぬ良さを維持しつつも、
お客さんの期待をいい意味で裏切る、
新たなことを仕掛けていくことが、お客様の愛顧を
得つづける秘訣であることは間違いありません。

ついでに言えば、人生だって、どう転ぶかわからないけれど
あえてやってみるという生き方が、おそらくもっとも楽しい
んじゃないかと思います。

投稿者 松尾 順 : 13:36 | コメント (3) | トラックバック

味が塩っ辛くなってくると赤信号点滅?

日曜日は家族で「牛角」へ。

なんだかんだ言っても、
焼肉は結構高くつきますから、めったに行きません。(笑)
実際、牛角も数ヶ月ぶりです。

久々に食べてみて気づいたのが、肉のクオリティを若干
さげたのかなということ。
まあ、これについては焼肉業界はあいかわらず大変な時期なので
しょうがないかなと思います。

しかし、味付けが塩っ辛くなりすぎていたのにがっかり。
肉だけでなく、ユッケやサラダまでかなり味が濃くなっています。

我が家やどちらかというとうす味好みなので余計そう感じたのですが、
他のお客さんはどう感じているのか気になりました。

ともあれ、私はしばらく牛角はいいかなという気分です。

ところで、実は数年前、長崎ちゃんぽんのリンガーハットが
やはり味が塩っ辛くなってきたので行かなくなったことがありました。

当時、リンガーハットは業績不振になっていました。
私と同じように、味に疑問を感じたお客さんが増えたせいかなと
勝手に思い込んでいたんですよ。

現在は、味も元通りおいしくなりましたし、業績も回復しつつある
ようです。

牛角の今後の業績を見てみようかな。

投稿者 松尾 順 : 19:38 | コメント (0) | トラックバック

えくぼりんご

ひょうが降ると、りんごに傷がついて売り物にならなくなる。
でも、大きくなる前に傷ついたりんごを取ってしまうと、
栄養分が幹に滞留し、翌年りんごが育たないそうです。

農家の方にとっては、売れないとわかっているりんごを
育てるのはとてもつらいことでしょうね。

ひょうで傷ついたところは、りんご自身がその傷跡を修復
しようとする働きで、えくぼのようになるみたいです。

しかも、そのえくぼのところほどおいしいらしい。

最近は、生協で買ったりんごを毎日のように食べてるんですが、
生協を通じて販売すれば、買う人は多いと思うんですけどね。

現代の流通システムは複雑すぎて、たとえ生協でも
えくぼりんごのような規格外品はなかなか乗せられないんでしょう。

どうにかならないもんでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 22:48 | コメント (4) | トラックバック

デザインが主導する時代

今バカ売れしているビール(正確には雑種扱いの第三のビール)
は、キリンの「のどごし<生>」です。

2005年の1-9月の累計販売数量は、1911万ケース。

一番搾り(ビール)、淡麗<生>(発泡酒)が、それぞれ同時期に
3000万ケースを売り上げており、キリンは第三のビール分野でも
パワーブランドを構築できたことになります。

この売れ行きのおかげで、キリンのシェアが、トップのアサヒに
肉薄するところまで来たそうです。

さて、のどごし<生>が売れている理由、それはもちろん、
製品、プロモーション、営業など、マーケティングの各要素が
うまく組み合わされた結果ということでしょう。

ただ、キリンさんがどんなにプロモーションや営業に力を入れても、
最終的に購買決定をするのは消費者です。
またそもそも、日本のビールは味覚には大した差がありません。

ですから私は、のどごし<生>が売れている最大の要因は、

「ビールが飲みたいよ~~欲」

をそそるデザインにあると思います。

のどごし<生>のデザインの特徴は、
ビールそのままの見え方であること。
泡のシズル感もたっぷりの、
まさにエモーショナル(情緒的)デザイン。

ストレートに飲酒欲中枢を刺激しますよね。

一方、売れ行き不振でデザインを変更する羽目になったのが、
アサヒの「新生」です。

スーパードライに似せたシルバーなデザインですが、
スーパードライのブランドにおんぶしてもらおうとしたのが
敗因でしょう。

新生は、デザインだけでなく、名称も「アサヒ新生3」
と変更されて、現在プロモーション中です。
電車内広告でもよく見かけますね。

しかし、あいかわらず、センスはいいものの、
飲酒欲中枢を刺激するデザインではありません。
(実際の味は、悪くないと思います)

直感的には売れそうもないと感じてしまうのですが、
皆さんはどう思いますか

しかし、つくづくデザインがきわめて重要なマーケティング
要素になってきたのだと実感します。

日用品メーカーの花王の社長でさえ、
これからは「機能価値」ではなく、「情緒価値」を重視すると
発言していますし・・・

まさに、現代は、「デザインが主導する時代」になのでしょう。

*日経デザイン12月号では、「デザイン・マーケティング」
の特集の中で、上記に挙げたようなビールデザインの比較が
行われています。面白いですよ。

投稿者 松尾 順 : 12:51 | コメント (0) | トラックバック

いい気分

このメルマガを読んでいる今この瞬間、
あなたはどんな気分ですか?

普通? ウキウキ? 落ち込んでる?

「気分」って、変わりやすいものですよね。
ちょっとしたことで、良くなったり悪くなったりします。

気分は、生まれつきの性格などとの関係は弱く、
自分の身の回りの出来事や、今自分がいる環境によって
決まってくることが多い一時的な感情です。

さて、心理学研究でこんな実験が行われました。

ある教授が、大学の講義を2つの教室で行います。
講義内容はまったく同じです。

しかし、教室の環境を変えてありました。
ひとつは、ごく普通の殺風景な教室。

もうひとつは、床にはじゅうたん、壁には絵を掛けました。
観葉植物を黒板の隣に置きました。
つまり、教室の環境を心地よいものにしたのです。

そして講義の後で、学生たちに講義の評価を行ってもらいました。
すると、まったく同じ講義なのに、
心地よい教室の学生たちの評価が、
殺風景な教室の学生たちよりも良かったのです。

この実験結果は、気分の良い環境を作り出すと、
人の物事に対する受容性が高まるということを示唆しています。

つまり、気分が良い時には、
言われたことを受け入れやすくなるのです。

昔から、人を落としたいなら(ビジネスであれプライベートであれ)
食事をしながらやるのがベターだと言われていますね。

食事は食欲を満たしてくれるわけですから、
「快」の気分をもたらします。
そんな気分の時だと、相手の言うことにも
ついついうなずいてしまうわけです。

同様に、実は「心地よい気分」を作り出すことが、
リアル、オンラインに関わらず、店舗やコミュニティが
繁盛する鍵を握っているようなのです。

ただ、「気分」というのはなんともつかみがたいものですね。
全体的な雰囲気が生み出すものですし、
環境の構成要素を分析すれば、
いい気分を生み出す方法がわかるといものではないでしょう。

「心地よい気分を作り出すこと」

こればっかりは、「ロジカルシンキング」(論理力)では
解決できそうもありませんね。

「エモーショナルフィーリング」(感応力)を
磨くしかなさそうです。

投稿者 松尾 順 : 06:16 | コメント (2) | トラックバック